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ロキ(シーズン2)の感想(ネタバレあり)

前シーズンからの意外な幕開け

前シーズンのマルチバース解放直後からお話しは始まっていく。
「在り続ける者」が居なくなった事で「征服者」のカーンにマルチバースを支配されてしまったんじゃないかと思わせる様にカーンの大きい銅像が建設されたTVAにロキが迷いこんでしまった所で不穏にシーズン1は終わっていたので、マルチバース間の戦争や、もっと強力で悪意に満ちたカーンの登場を期待していたのだけど、そこは良い意味で裏切られた。

第一話冒頭で実はシーズン1の終わりにロキが迷い込んだTVAは過去のTVAだったという事が明かされる。
理屈はよく分からなかったけどロキ自身に時間移動の力が備わり、タイムパッドを必要としないタイムスリップだけじゃなく、TVA内の時間軸の時間移動も可能になっている。
時間を管理している組織の中での時間移動が出来るというのが彼がより高次元の存在になっているのだけど、このTVA内のタイムスリップに関しては神聖時間軸と違い枝分かれは無くて、一本道で過去にした事がそのまま影響されるのが面白い。

通常世界では過去に戻り未来を変えると時間軸が分岐していくだけで、マルチバースとしてどちらの未来も存在する形になるのに対して(「ドラゴンボール」とかと同じ)、今回のロキの時間移動は過去に戻り未来を変えるとそのまま現在も書き換わるルールになっている。(「バック・トゥザ・フューチャー」とか「ルーパー」とかと同じ)

MCU内で二つ時間移動のルールがあるのよく考えたら凄い。いよいよ複雑で難しい世界観になってきたな、、、。

ロキの終着点

ロキらしいこれまでの能力を活かした見せ場は第二話に集中していて、嘘つきへの尋問の仕方は流石でMCUキャラの中で一番の嘘つきらしい楽しいシークエンスだった。
ブラッドを追い詰めながら彼が話す事の何が嘘なのか見抜く場面は彼が一段上の嘘つきであるのを示している様で「さすがはロキ!」という感じ。
空間をだんだん狭めていく拷問器具も見た目のポップさに対しやられるのを想像すると異常な暴力性の高さを感じてすごく良かった。(その後使われた時のドックス達の死体がどうなっているのか想像するとバイオレンス過ぎる、、、)

そして何よりこれまでずっと彼が欲しかった「王座」が手に入ってしまうラストが素晴らしかった。
いくつもの世界を収めるその姿は父親であるオーディンの様で自分の複雑な出生とも折り合いを付けている様だった。彼が収めようとするマルチバースの束が、かつてオーディンが宇宙を統治していた時の世界樹と同じビジュアルになっているのが泣かせる。
シーズン1の第一話でメビウスとの対話で皮肉に響いていた彼の「名誉ある目的」に到達するのだけど、それがそのまま彼のこれまで行ってきた非道の償いにもなっているし牢獄でもある。
「安らぎは無い、どの重荷を選ぶかだ」というメビウスの言葉で「シルヴィを殺す」か「今ある世界のみを守るか」の選択を迫られる中、自分を犠牲にする事でどちらでもない選択をしていく。
シルヴィや虚無空間にいた大量のロキと会った事で自分と客観的に向き合った事で、元々は悪役だった彼が奇妙で壮大な自分探しの旅の末に、すべての人生の可能性を見守る様な良き神になっていくフィナーレがとても感動的だった。
そしてこの自分の全てを犠牲にしても人々の「自由」を守ろうと足掻く姿は、これまでMCUで何度も描かれてきたヒーローの姿そのもの。
自分の選んだ道を肯定する様なラストの表情にもめちゃくちゃグッときた。

気になった所

全体的にはシーズン2途中の話は結構要らない思う要素が多く感じた。
「時間折り機」のくのだりとかもう機械の名前を聞く通り分岐した時間軸を増幅させるものじゃ無いと分かるし、案の定時間折り機を調整しても意味が無いのがクライマックス直前で明かされる。
だったらシーズン2でロキ達がやってきた事の大半の意味が無かった気がしたし、最終話のロキの100年以上やったタイムループの後でやっとお話が動いていた印象。
正直これならもっと話を削れたし、なんならシーズン1をもう少し話数増やしたら纏められた気がする。
こんな勿体ぶる必要無かったんじゃ無いだろか。

あとタイムリー自体は在り続ける者ともこないだの「アントマン&ワスプ:クアントマニア」のカーンとも違う味のある良いキャラだったけど(ジョナサン・メジャースの演じ分け力がやっぱり異常だ)彼の絡み方も半端だと思うし、在り続ける者とレンスレイヤーとミス・ミニッツの三角関係の回収とかかなり中途半端な印象。
この辺のエピソードはまだ描く余地がありそうだし今後のMCU作品に繋がっていくのかも知れないけど。

レンスレイヤーのやったドックス達の皆殺しシークエンスはあまりに残酷過ぎたしもっと報いを受けた方が良い気がした。
虚無空間でどうなったかよく分からないので彼女の最後として微妙。
ミスミニッツがリセットされる前に言い残した言葉とかもどう受け取るべきなのか。
あとレンスレイヤーを剪定したブラッドもあの後どうなったの?

それとロキの物語の完結として最高だったの同時にMCUのここ数年の作品群である「マルチバースサーガ」としても完結した感じがしてしまった。
もう神ロキが今後コントロールしていく流れでハッピーエンドを提示出来ている気がする。
カーンを演じたジョナサン・メジャースの不祥事に関係しているのかは分からないけどこれから先にアベンジャーズとカーンが闘うお膳立てが無くなってしまった感じがしてちょっとどうなっていくのかよく分からなくなって不安になってきた。

そんな感じでモヤモヤする所もあるけどロキという人の物語の完結としては素晴らしい終わり方だったと思うし、とても好きな作品になった。
今後MCU作品に登場するかは不明だし、「アントマン&ワスプ:クアントマニア」のラストで集まっていた大量のカーン達と絡みがありそうな気もするけど、ひとまずこれまでロキを演じ続けていたトム・ヒドルストンに「長い間お疲れ様でした」と称えたい。

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