ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密の感想(ネタバレあり)
イオンシネマ京都桂川で鑑賞。
京都桂川の中では中くらいの大きさのスクリーンだったけど、ほぼ満席。笑い声も多くて良い環境で観れた。
単純にミステリー作品としての先の読めなさや、どこを切り取っても絵として決まった撮影、そしてなんと言っても活き活きした名優達のコメディ演技合戦、とてもリッチでずっと観ていたくなる映画。
あと移民の話などあの館を縮図にして現在のアメリカへの批評にもなっていてエンターテイメントとしての絡め方が上手い。
残酷描写もないし誰が観ても楽しい傑作だと思う。
個人的にはライアン・ジョンソンはルーパーが大好きで、最期のジェダイが嫌いという感じだったけど、今作はとても面白かった。(まあ最後のジェダイに関してはライアン・ジョンソンのせいで嫌いかと言うとそうでもないのでノーカン)
ダニエル・クレイグ。
今回はセクシーさを完全に抑え、とにかくコメディ的に楽しそうに演じていて観てるだけで幸せな気持ちになってくる。
遺産争いの外の人間だし「全員馬鹿だなぁ」と大体見透かしていて気楽な感じ。
現役007なので何となく身体能力高そうだし、頭も良いし、威圧感もあるし、常に誰と話してても一枚上手な感じで犯人は嫌だろうなぁ。
目を見開いた顔怖い。
しかしダニエル・クレイグ007も引退だしちょうど良い当たり役を見つけたんじゃないだろか、シリーズ化して欲しい。
アナ・デ・アルマスちゃんはブレードランナー2049の無垢な少女の様な良い娘役とイーライ・ロスのノック・ノックみたいな色っぽい悪女役、両方のイメージがあったので最初の方は彼女の目線で話が進むけど回想が入るまでどういう人間なのか?が、予想出来ない良いキャスティングだと思った。
彼女がきっかけでクリストファー・プラマーが自殺したのが分かるのだけど、その回想シーンもコミカルさすら漂う軽いタッチ。
人が死ぬのにそこまで哀愁が無い感じで、この辺でリアリティラインがそこまで高くない作品だと分かったし、コメディ映画的に楽しめばいいんだなぁと何となく心の準備が出来た。
それからは彼女がいかに探偵から疑われない様にするのかというサスペンスというかコメディになっていく。
絶妙なのは、彼女が何となく悪くないというのが観客にも予想出来る所。
解毒剤がない時点で誰かしらの陰謀があるというのは分かるし、今はなんとか一旦逃げて欲しいと、彼女を応援してしまう。
でも基本的に頭脳明晰な娘ではないし、何より嘘をつくと吐いてしまう弱点を抱えてるのが面白い。そしていちいち切り抜け方が乱暴で笑う。犬が出てくるくだり全部可愛い。
だからこそ、他の人に翻弄され続けた彼女が最後に黒幕であるクリエヴァを嵌めてゲロをぶっかける展開はとてもカタルシスがある。
何者でもない彼女が成長していくお話だった。
クリス・エヴァンス。
中盤からラストにかけ007vsキャプテンアメリカという英国とアメリカを象徴する様なヒーローが騙し合う構図になっていくのも面白い。
結局クリエヴァの方は自分の所の利益を何処の馬の骨か知らない奴に渡すなんて御免だぜ!というトランプ的な本性を出してキャプテンアメリカとは真逆のアメリカを象徴するような男だと分かるのが味わい深い。
クリストファー・プラマーが自分に1番近いのは彼だと言ってた通り、本当に頭が回る人。次から次に変わる状況で実はずっと主導権を握っていた。
クリストファー・プラマー
死んだ後も存在感が残り続ける貫禄。
実は気にかけてたクリエヴァとの関係の末路を考えると結構切ない。というか彼なりに家族に対して愛情があるからこそ、本心からお金と距離を置いてもらう選択をしてる気がした。
そしてお金が本当に必要である善良な彼女へ贈る事を選んだ訳だけど、移民である事が現在のアメリカへの批評みたいになっていて絡め方が上手い。
他の家族もまあ豪華でみんな楽しそうに金の亡者を演じている。
トニ・コレットは顔だけで笑いを掻っ攫うし、マイケル・シャノンは普段気弱めな役の時こそ何するか分からなくて怖いので常に不穏、ジェイミー・リー・カーティスの百戦錬磨感などなど、、、キャストを褒めていくとキリがない位最高。
ライアン・ジョンソン監督作品、湿っぽい作品よりこういう楽しいアイデアを詰め込めるブラックコメディ的な作品の方が合ってるんじゃないかなと思った。
次回作どうなるのか分からないけど楽しみだなぁ。(スターウォーズの新作どうなったんだっけ?)