「死霊館のシスター 呪いの秘密」の感想(ネタバレあり)
死霊館ユニバース最新作。
ユニバースシリーズだとMCUやDCEU(もう終わるけど)等のアメコミ映画が強いし、MCUに続こうとして結局ダメになったユニバースシリーズがある中でコンスタントに映画を作り続けて何気にえらい。
そんな死霊館ユニバースの中で「アナベル」に次ぐ人気キャラであるヴァラクこと「死霊館のシスター」の単体では2作目。
前作なんやかんやで(うる覚え)アイリーンの口からキリストの血ぶっかけ攻撃によってやられたと思われた「ヴァラク」だったが、実は除霊を手伝ってくれたモリースに取り憑いて、フランス全土の教会で牧師やシスターを殺し回ってる所から映画は始まっていく。
ヴァラクの目的は何なのか?前作からは打って変わり逞しくなった主人公アイリーンが刑事の様に足取りを追っていく物語。
監督は死霊館ユニバースでは「死霊館 悪魔のせいなら、無罪。」のマイケル・チャベスだけど、僕はそちらの方は観れてなくて、その前に撮ったホラー作品の「ラ・ヨローナ〜泣く女〜」の印象が強い。
引き続き演出力の高さは流石でヴァラクが人を襲うシーンは全部面白い。好みが分かれそうだけどホラーとしての怖さより演出アイデアの面白さに振り切っている感じで、雑誌パラパラ登場とかめちゃくちゃ凝っていて怖さより登場のかっこよさが勝つ感じ。
それ故に怖さ強めのホラー描写を期待しているとちょっと物足りなさを感じるかもしれないけど、怖すぎるホラー映画が苦手な人はちょうど良い塩梅かもしれない。
お話し的にはアイリーンと助手的な存在になるシスター・デボラとヴァラクの行方を追うバディストーリーと、モリースの学校での母娘と絆を深めていくドラマの2つで構成されている感じ。
お話しの進み方は鈍重な気もするけど、どちらも役者さんの存在感が良いので結構引き込まれた。
前作から引き続きの主人公アイリーンを演じたタイサ・ファーミガは今回も大きい目を生かした怯え顔が素晴らしかったし、こないだの「search2」で名演を見せていたデボラを演じるストーム・リードも生意気さが前面に出ていて真面目そうなアイリーンとのバランスが良かったと思う。信仰とかを若干バカにしていたデボラが「信じる」事で2人が必殺技を放つラストが熱い。
モリースとの女学校の母娘とのパートも良くて、冒頭のミサンガをプレゼントするくだりや、レコードを流しながらダンスするシーンなど、結構丁寧にエピソードを重ねていき絆を深めていく。
最後の家族を作ってアイリーンと完全に道を別れていくカットも切なくて良い終わり方だった。
「信じればワインもキリストの血に変わる」という汽車でのセリフがそのまんま回収されるスプラッシュ攻撃は前作よりもぶっかけ量が多くて続編のサービス精神として正しい。
しかしワインの蒸留工場と教会の跡地にある学校って要素が多すぎて笑っちゃうな。
気になった所で言うと、モリースに取り憑いてヴァラクがしゃべりだす所はちょっとどうかと思った。
話の通じない化け物って存在っていうのが良いと思っていたのでなんだかただの悪いヤツみたいな身近な存在に感じて怖くなくなる。
あとラ・ヨローナの時も感じたけど、この監督はちょっとメインじゃないキャラクターのドラマに関しては弱い、というかいい加減な印象がする。
今回特に気になったのは校長と息子のエピソードとかあまりにも悲劇的な結末になるのだけど、ただただ雑に殺される印象で、嘘でも息子に会いたかったみたいな校長側の心の機微が描けてない感じがして個人的には好みなバランスでは無かったし、あれで殺されてしまう母親としての悲劇性とかもっと強調して救いが無い感じにして欲しかった。