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ブルータル・ジャスティスの感想(ネタバレあり)

出町座で鑑賞。
平日の夜に観に行ったけどかなり混んでた。
僕も含めみんな京都はないのかと待ちに待っていただけに出町座に感謝。

S・クレイグ・ザラー監督作品。

以前NETFLIXで配信していた時期に「トマホーク ガンマンvs食人族」を観てファンになり劇場公開が決まり楽しみにしていた。

トマホークの方は一見緩い会話劇が多かったり、映画のテンポもどちらかというとゆったりめなので家で観るには集中力が続かなくて前半は結構しんどかったのだけど、食人族側の暴力描写がいよいよ牙をむいてくる後半でかなり引き込まれた。

個人的に映画の暴力描写で一番怖いのは「暴力性が無表情」な瞬間だと思っていて、暴力を振るう側が怒りや快楽を感じている様に見えると逆に人間性が見えてどんなバイオレンスでもちょっと安心感があるのだけど、「なんの為にどういう感情でその方法で殺すの?」とか共感できない暴力性みたいなものの演出の仕方がとても上手い監督さんだと思う。
食人族モノなので人間を解体するシーンの無慈悲さを「グリーンインフェルノ」とかと比べると面白いかも。イーライ・ロスが優しい人に感じると思う。

そして今作を映画館で観たのだけど、改めて映画館で観るのが一番良い映画だと思った。
トマホークから引き続き会話シーンが多いのだけど集中して観れる環境だと登場人物達の一挙手一投足が人間臭くてとても味わい深い。
本編が2時間半位あったと思うのだけど全く飽きずに最後まで観れた。

暴力描写の怖さ

とにかく暴力描写の無軌道さというか当たり前にそこにある感じが恐ろしい。特に一般市民に振るわれるシーンがとてもキツイ。最初のコンビニ強盗のシーンの引きで突き放した撮り方をしているのが本当嫌。
出産後に会社に復帰した女性のエピソードも急に始まるので大分戸惑うのだけど、どこにでも居そうな人としての語り口が上手いし演じてる女性も華があって引き込まれる。
彼女の後ろを例の車が通り過ぎてから、嫌な予感しかしなくて落ち着かないし、復帰祝いをするおじさんの話が長いのとかハラハラ観ているこちらは遊ばれている感じがして逆にコミカルさすら漂っている。

そして当たり前の様に突き放したトーンで大惨事。しかも全員がその後どんな目にあったのか詳しく分からないのがまた嫌。

登場人物

刑事二人。
最初の犯人宅への突入シーンからして乱暴。
女性にシャワー浴びせて天井扇を付ける拷問まではいかないけど地味に嫌な尋問シーンがひどい。「なんて言ってるの?」「わかんない」のやりとり最低で好き。
案の定停職処分になるが、ハーレイクインも言ってた通り刑事は停職になってからが本番。

昔の伝手をたどってシノギの匂いがする案件はないのかと脅すシーンとかほぼ悪役っぽい。しかし映画観終わって振り返ると、この辺の行き当たりばったりな行動って本当全然何も考えてなかったんだなぁ。ヴィンス・ヴォーン誘って「やめるなら、やめていいよ」というスタンスの割になかなか説明しないで車の運転させる所とか絶対断らないの分かっていてやらせてそうだし普通にかなりズルいダメ人間な気がした。

ただ奥さんとの関係性は結構グッときた。「何とかするけど理由は聞くな」とだけ言って、奥さんもそれを信じるのみという関係性がカッコいい。ラストの金を受け取るシーンとかも凄く好き。

それに対してヴィンス・ヴォーンはかなりまともな人に感じた。
メルギブのやる事の危険度も分かった上で付き合っている感じがカッコいい。彼だけが一般市民が亡くなる事に胸を痛めていただけにラストの死に方がなんとも皮肉だ。

強盗チーム
ヘンリーの出所した所から映画が始まる訳だけど、ダラダラしたシーンに見えて彼の母親との関係性や、弟の意外な境遇とか、人となりの見せ方が上手い。
だから危険な仕事を選ぶしかない彼の生き方が切実に響いていくる。映画が終わって振り返ると彼が地獄めぐりの果てに成功を掴むまでを描いたストレートなサクセスストーリーだったんだなぁ。

一緒に行動を共にする友達の存在感も良かった。自己犠牲でヘンリーを助けるシーンの筈なのに鍵のみ込んで一回吐く所のコミカルさとか意地悪で笑っちゃった。

そしてもちろん、マジで話が通じないマスクの2人が最高。何が目的で何を考えてるか最後まで分からなくて怖い。トマホークで言うと食人族ポジション。

それと短いけど良かったのが途中に出てくる車屋さん。全く怯む事なく商売していて普段どんな相手に売ってんだよ、と笑う。

ゆったりした語り口

ゆったりしていると言いつつただ冗長な訳ではなく、例えばヘンリーが弟とライオンを狩るゲームをしている一方で、メルギブが娘ちゃんとライオンの親子のふれあいを映したほのぼの番組を見ていたり、シーンとシーンが微妙に響き合う演出とか何気に繊細。

しかしちょっと他の映画と違うと思うのはそういうゆったりとした語り口から急にギアが上がってショッキングな展開に突入するというより、ゆったりした語り口の中に同時に自然と暴力的なものがスッと入ってくる感じが独特だし、それこそが怖い。

そんな感じでかなり独特なので観る人は選ぶと思うけど僕の様に暴力映画が好きな人は2時間半という時間もあっという間に感じるんじゃないだろか。
S・クレイグ・ザラー監督、今後の新作の情報など色々聞くけどどれも面白そうだしとても楽しみだ。

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