クロール凶暴領域の感想(ネタバレあり)
イオンシネマ京都桂川で鑑賞。超巨大台風19号が日本直撃中にまさかの上映。
ド級のハリケーンが発生し浸水と共にワニ(大群)が思い出の我が家にやってくるという、話だけ聞いていると馬鹿馬鹿し過ぎるB級映画にしか思えないのに、めちゃくちゃ面白い映画になっているんだから、さすがはアレクサンドル・アジャ監督作品。
主人公ヘイリーが水泳の選手として頑張っているシーンから映画は始まりタイトルの所だけ見ると「青春スポ根映画かな?」と勘違いしてしまう爽やかさ。ただここのシーンも結構重要でまさにタッチの差で対戦相手に負けるのだけど、後に父親が言う通りそれはトレーニングや技術の問題じゃなく「気持ちの差」で、彼女が迷いを振り払うまでを描いていく。
ただその乗り越える通過儀礼の相手としてワニを持ってくる辺りに、作り手のチャーミングさと狂気を感じる。
しかしフロリダはワニがその辺にいるらしく、ネットの情報を見たら同州には約100万匹程いるそうな。日本に住むツキノワグマの約100倍。水辺に近づかない限り基本的には安全らしいけど今回の様に全部水辺になったらあんな事になるのかも知れない。(知らないけど)
でも今作のワニは映画用のアレンジとしてとにかく気性が荒い。しかも陸上戦ではジュラシックパークの恐竜だし、水中では完全にジョーズというこういう映画には持ってこいの戦闘力。おまけに繁殖率も抜群で数もほぼ無限というサービス具合(あの卵見つけるシーンは完全に恐竜パニックで笑っちゃった)
それにプラスで超大型ハリケーンも来ているというディザスター映画としての側面もある。主に水位が上がってくるタイムリミット的な役割が多いけど、途中の「あ、台風の目に入った」という「そのタイミングで!?どんだけツイてないんだよ!」のシーンは爆笑した。
そんだけ色々モリモリだと普通はシーン単位のやりたい事だけが前に出て面白くならない気もするのだけど、何といっても監督がアレクサンドル・アジャなので綺麗にまとめられている。敵がワニという事と、シュチュエーションがハリケーン接近中である事をこれでもかと見事にドッキングさせてて、さすがの腕。
最初にワニが襲ってくるシーンのタイミングの良さ。お父さんを上に上げようと階段に近づいたらドーンとぶっ壊して「こんにちはー!」と登場する所の出てくるのは分かっていたけど、こちらの気が緩んだ瞬間を計算しまくっているので普通にビックリした。あとお巡りさんが飛び出したワニに引きずり込まれるシーンも油断してたので驚いて席からお尻が浮いた。
ワニから逃げてどうすんのかと思ったら狭くて入れないセーフティーゾーンを見つけて逃げ込むというのもルールが分かり易い。
基本的にはこの「ワニがいて危険だけどあそこに行かないと!→セーフティーゾーンに逃げ込む」というパターンが繰り返されるのだけど、最初の地下での鬼ごっこから、上に上がる為にワニの巣を通り抜ける、台風の目の中でボートを手に入れる、キッチンから屋上に逃げる、などバリエーションも豊かだしワニとの戦い方も毎回違うので(噛まれて銃ぶっ放し攻撃が1番好き)飽きる間がなくて常に緊張感がある。
ラストのワニによる謎の水中クルクル攻撃に、とりあえず目ん玉に何でも突っ込んどけ攻撃で応戦。
フラッシュバックで子供の時の記憶が出てくるとなんか良いシーンに見えるから不思議。ぼくはピンチに子供時代のフラッシュバックが入ると大体なんでも泣く人間なので泣いた。
ヘリがこちらに向かってくるラストカットの切れ味も好き。こういう家族モノだと父と娘の和解シーンとかでいい話風に終わるのが多いと思うのだけど(個人的には嫌いじゃないが)この後どうなるのかは分からないけど、とりあえず生きてて良かった!位で終わるのが後を引かなくてちょうどいい。
家族のつながりは家(場所)じゃないという結論の「家離れ」映画としても綺麗な終わり方だったと思う。あとワンコ死ななくて良かった。
ヒロインのカヤ・スコデラリオさんのキリっとした顔が良い。僕はメイズランナーのイメージが強いけど今回の演技が一番好き。気の強さ故に不器用な今回の役柄にピッタリ合ってた。大きい目を見開いて驚くシーンがとにかく映えるので、今後はホラー映画とかにも沢山出て欲しいなぁ。