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玖磨問わず語り 第18話 ミンさんの贈り物 その6



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ひゃー、ミンちゃんの贈り物が、アノ母屋の夏子?
わーなんか、顔合わすたんびにシャーシャーゆわれとる。
普段はみんなといっしょにおらんしな。
へ? 前はいっしょにおったん?
耳が聞こえんようになって、母屋に移ったん?
ふーん、そうなんか。
桜舎のズズさん、玖磨じぃちゃん、ちぃちぃ、福ちゃんとはどうだったん?

茶白といってもいろいろ。

夏子さん、桜舎入居

ナンリさんは面会の帰りに「夏子」という名前を考えたそうだす。
「昔からなんとなく『夏子』という名前にあこがれてたの。なんかシャープでカッコいい感じがすると思わない? チャパちゃん、可愛いんだけど、ただの可愛さだけじゃない、一本芯が通ってるような感じがあるのよねぇ」

それから数日して、夏子さんのキャットシッティングに通っていたスタッフさんから、連絡が入ったんだす。
「了解、受け入れ準備して待ってるから、焦らず安全第一で連れてきてね」
まもなく動物病院で感染症チェックを済ませた夏子さんが桜舎にやってきただす。

待ちかねていたナンリさんが、夏子さんを胸に抱き、
「オンナノコはこんなにフワッと軽くて、柔らかいのねぇ。おんなじ茶白でもちぃちぃとはだいぶ違うわねぇ」
と笑っただすよ。
その夏子さんは、オラたちはまったく眼中になく、ナンリさんだけを見ているんだす。どうやら、夏子さん独自の特殊機能で、見えても見なかったモードが機能しているようだした。

「今度は猫嫌いの猫か。ミンのヤツ、ジブンとは真逆なタイプを送ってきたな」
ズズさんが言った通り、夏子さんは猫のだれとも付き合う氣はないのだした。
最初のころは、それこそナンリさんだけを見て、この世の中にはナンリさんしか存在しないかのように振舞っていただす。ナンリさんが紅一点の夏子さんを可愛がったのも当然だした。
「なっちゃんは可愛いからねぇ」
を連発し、すっかり口癖になってしまったほどだした。

人たらしな猫


「人たらし」というのは、夏子さんのようなことをゆうんだすな。
猫の場合は、意のままに操れるヒトがひとりいればいいんだす。

亡くなったAさんが夏子さんを溺愛していたというのも、夏子さんを見てると、なるほど納得できただす。
ジブンの魅力を最大限に発揮する術をちゃんと心得ている夏子さん、オラ、すごいなぁと思って見ていただすよ。
こういう生き方もあり、なんだすな~。

きゅるりんな瞳のカメラ目線は、天性のものだす。
オラなんか、カメラを向けられると目線を逸らす方だすから。
生まれついてのスター氣質とでもゆうだすかな。

おまけにナンリさんがこんなことを言い出したんだす。
「なっちゃん、誰かに似ているなぁと思っていたんだけど、鼻筋の角度が宮崎あおいにそっくり。このキュートなしゃくれ感が宮崎あおい」

鼻筋に注目

そんな夏子さんだしたが、押し入れに引きこもることもなく、すぐに自分のスペースを確保して、マイペースで桜舎暮らしになじんでいったんだす。
オラたちも、別段関わりを持たなければ何の支障もなかったので、こういうもんかなぁと思ってただすよ。

水は形を選ばない、流れる水は腐らない、ってアレの極意だすな。
夏子さんが入ってくれたおかげで、注目度が分散されてラクになったくらいだす。
なにしろ桜舎は、しばらくオンナノコがいなかったこともあり、夏子さんは期待のニューフェイスだったわけだす。
それになんといっても、ミンさんとのつながりだすな。
妄想といえば妄想、物語といえば物語。
ミンさんの魔法がかかったファンタジー。
ときどきオラの中で、
猫らしくない夏子さんが、実は一番猫らしい存在といえるのかもしれない、と思ったもんだす。

手前 ちぃちぃ、奥 夏子

続く

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