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めざせ、自給自足!猫楠舎の恵み 那智勝浦の築200年古民家「猫楠舎」
フキの佃煮
猫楠舎だより195(2020年4月の記事を改訂)
コロナ自粛が続き、スーパーへの買い出しにも十二分な注意が必要な状況となってきた。いつまで「南紀は陸の孤島だから大丈夫」と言っていられない。
しかし、まずは毎日食わねばならぬ。仕事をしなくても時間になればきちんと腹が減る。これを無視することはできないので、このところ真剣に自給自足を考えている。現在うちの畑はソラマメ、ニンニク、ラッキョ、タマネギ、ワケギのみだ。これだけでは足りないし、そろそろ夏野菜も植えねばと氣ばかり焦る。
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そんなある日、畑の草取りをしていて、石垣沿いのフキに目が行った。瑞々しい葉っぱがワッサリ、ワッサリ。
いつの間にこんなに大きくなって。柔らかそうな茎、美味しそう。そうだ、フキの佃煮作ろう。
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さっそくひと抱えほどのフキを刈り取る。食べることに関する行動だけは早い。丸い葉っぱを切り取り、茎だけにして水洗い。大鍋にお湯を沸かし、フキを投入。しばらく火にかけ、お湯がグラグラし出したら火を止めて、そのまま1晩おいて冷ます。
梅雨前のフキは柔らかいのでわざわざ筋を取る必要はない。夏になって茎が太く硬くなってから、たまに筋を取ることもあるが、たいていそのまま圧力鍋で炊いてしまう。
さて、翌日前日のフキを鍋から取り出し、食べやすい大きさに切る。水、酒、醤油、麺つゆなどを適当に入れ、フキをいっしょに煮る。一通り火が通ったあたりで、輪切りの鷹の爪投入。少し煮汁が残っているくらいで火を止め、そのまま冷ます。冷めてきたころ味見をして、再度火にかけ今度は煮汁がなくなるまで煮る。フキのほったらかし簡単調理。出来立てより、冷めてじっくり味がシミシミになったころがうまい。
フキの佃煮、猫楠舎の恵みはふんわりとした苦味と、シャキシャキした歯応えでご飯が進む。日本酒にも合う。
フキは数少ない日本原産の野菜とか。おまけに猫楠舎では春から秋の10月くらいまで、このフキが後から後から生えてくるのだ。ということは、万が一買い出しに行けなくなっても、コメさえあればなんとかなるかも。猫楠舎自生のフキによって生き延びる、悪くない。
約800坪の敷地内には、フキ以外にも食べられる野草があるはず。これはサバイバルのためにも研究する価値ありだと思う。
※その後、ヨモギ、ノビル、ツクシ、イタドリなどの食用野草を発見した。
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野草ブリコラージュ
改訂版・2022年5月猫楠舎だより298「猫楠の野草ブリコラージュ」
若杉友子『野草の力をいただいて』という本がある。この本の著者・若杉さんは京都の山奥で、野草と自家製野菜でほぼ自給自足を実践しておられるそう。この本を絡めて、猫楠舎に生える野草たちとその活用法についてのお話したい。
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●ヨモギ…入浴剤として使える。カラカラに乾燥させたヨモギを、水といっしょに小鍋に入れて煮出し、お湯に入れる。煮汁だけでなく、葉っぱ部分はリネンの巾着に入れお湯の中で揉む。
若杉本には「現代の添加物と農薬まみれの食生活で、我々のからだは毒のかたまりだがこの毒はそう簡単に出て行かない。しかし、ヨモギでからだにたまった老廃物や毒を抜くことができる。ヨモギは干すことで陽性になり、さらにグラグラ火にかけて煮出すことで陽性が増す。そこに陽性な塩を入れ、そのチカラで全身の毒素を出す」とある。なるほど、塩を加えることで毒抜き効果が倍増なるのか。ヨモギは味噌汁、油炒め、てんぷらなどで食べるとおいしいだけでなく、血液がきれいになる。そして、これからの季節、伸びたヨモギを刈り取って干しておくと止血剤、浄血剤、増血剤といった「手当て」用として重宝する。さらに「日射病かな、頭が痛い、めまいがする」といった場合、生のヨモギを帽子の中に入れて被るとだんだん症状が治まる、まさにヨモギ大明神。これまで草払い機で刈り飛ばしていたのは、まことにもったいないことであった。
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●フキ…敷地内に3カ所あるフキ群生地、毎年9月ごろまで茎部分を煮て常備菜にしている。母が生きていたころ、ワタシがフキの葉っぱ部分を佃煮にしたら、「そんなものまで食べるなんて」と言われて以来、いじけて作るのを止めていたが、若杉本には「葉っぱを捨てるのはあまりにもったいない」とあった。若杉レシピには、フキの生の葉っぱはアク抜きをして酒と薄口醤油で煮る。茹で干しした葉っぱは、ごま油で炒めて酒と醤油、みりんで味付け。超簡単、実践するしかない。
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●スギナ…広島に原爆が落とされたとき、焼け野原から最初に芽を出したのが
スギナだそう。そのくらい生命力が強いスギナ、雑草と考えたら、こんな厄介なものはないが、薬草という視点で見たら宝物に変わる。で、猫楠舎ではスギナの腎臓強化の効能を期待して、猫用の腎臓機能低下予防サプリメントを作っている。スギナを天日干し、カラカラにして、さらにフライパンで煎る。それをすり鉢に入れ、すりこ木でゴリゴリ擦る。目の細かいザルで2回漉してパウダー状にして完成。これを猫のごはんに耳かき1杯分をふりかけて出しているが猫たちは全員完食。猫サプリも自給自足である。
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敷地内の恵みたち
梅、茶、イチジク、柿、柚子など毎年、何もしないのに食べ切れない量が実る。
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新芽を摘み、2番、3番は番茶にする。
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加工保存は皮ごとコンポートに。
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1本のかきの柿の木から900個採れた年も。
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思えば、猫楠舎の豊かな実りに計り知れない恩恵を受けてきた。
収穫し、加工するのはなんだかんだ言っても楽しい時間だった。出来上がったものをお中元やお歳暮として使って、喜んでもらうのも嬉しかった。
ないもの以外すべてある土地、それが猫楠舎。