脱走ヤムヤム、待つ力を試された10日間
脱走初日8/24
オスのヤムヤム去勢済の2歳、来客があると隠れてしまう人見知りが、8/24の朝、脱衣所の窓から外に出た。
散歩から帰宅すると、ヤツはお隣の黒猫スズリちゃん(女子)と並んでいるではないか。正直、ワタシは驚かなかった。
「ヤムヤムはいつかやらかす」と予想していたのである。
お隣には、スズリちゃんともう一匹のキジトラ雄猫ピート君がいて、彼らは外出自由なのである。我が家のデッキにもよく遊びに来ているので、お互い面識はあったのだろう。
ヤムヤムはしっぽをピンと立てて、瞳をキラキラさせていた。
コイツは自分で帰って来るから大丈夫。
和歌山のときも、数日間どこかに出かけることがあったのだ。
氣が済むか、外に飽きたか、腹が減ったか、わからんが、いつもちゃんと帰って来た。
「遊びに行ってもいいけど、早めに帰って来てね」
こういうとき、追いかけると間違いなく逃げる。
それより他の5匹の在宅確認が先だった。
脱走歴のあるちぃちぃ(14歳オス)、今年2月に11日間迷い猫をしたタオ(1歳メス)、数日の家出は常習のわこ(16歳メス)、脱走歴のないトーマ(16歳オス)と猫嫌いの夏子(19歳メス)、5匹は家にいた。
オッケー、オッケー、あとはヤムヤムの帰りを待つだけだ。
この日のブログはヤムヤムが家出後に書いたもの。
折しもこの朝、ワタシは5年後の計画を思い立ったのであった。
この日、ヤムヤム帰宅せず。
腹が減ったら帰ってくるだろ。
最近、ちょっと太り氣味だったから、ちぃーとシェイプアップしてくるといいわ。
ご近所の猫仲間
我が家周辺には猫のいるお宅が多い。
タオが脱走したとき、捜索中に皆さんにはいろいろとお世話になった。
今回は表立った捜索はせず、「信じて待つ作戦」ではあったが、一応事情説明に回っておく方がよさそうだ。
「あら、なんりさんとこの猫ちゃんでしたか」
「今朝がた、ギャーギャー騒いでたの、アレ、そうかな」
案外、目撃されているようだ。
タオの迷い猫騒動記詳細は下記の③~⑥。
タオを捕獲器で捕まえてくれたヒメノさんからはご夫婦の目撃談。
「ビニールハウスにいるのが、2階の窓から見えます」妻
「うちの軽トラの下にいました」夫
どうやら、タオが隠れていたところと同じ、今は解体途中のビニールハウスにいるらしい。
2日目、3日目、庭やデッキに姿は見せるが、まだ帰ってくる氣はないらしい。
ヒメノ夫さんから、
「姿はみえるけど警戒心が強くて近寄れません。さっきトカゲを咥えて走って逃げました」
あ~、トカゲ食べてるんだ、あっちゃ~。
元野良なので、虫でもなんでも食べるヤツなんである。
変なもの食べて、おなかにムシわかなきゃいいけど……。
まぁ、元氣そうではある。この時期、トカゲで生き延びちゃう?
タオのときは極寒の2月だったから、外で捕食することもできなかったろうが、今ならいくらでも食べるものはあるもんなぁ、今回長びくかしら、あらら~。
4日め 8/29
日課の日の出前散歩に行こうとすると、愛車の下からヤムヤムの鳴き声。
はいつくばって車の下を覗くと、ヤツがいた。
「そろそろ帰ってきたら、どうよ?」
正直、ワタシもそろそろ、待つのに疲れてきていた。
ほんで、家の前まで来たヤムヤムに、マジで帰宅を懇願していると、5mほど離れたところから、首輪をつけた猫がこちらを注視しているではないか。
ややや、ひょっとして、キャツメはさっき、ぎゃんぎゃんやり合ってた相手か?
ってことは、ワタシはけんかの仲裁に入った過保護な母親みたい?
この状況だと、ヤムヤムの面目丸つぶれになっちゃう?
やっぱ、猫には猫のメンツってものがあるだろ?
ここはヤムを信じて、かぁちゃんは立ち去るべ。
「じゃ、散歩行ってくるわ、いつ帰ってきてもいいからさ、じゃあね」
実際、外で出会うとツンデレになるのが猫って生き物。
で、やはり捕まえるんじゃなく、「ただいま~」って帰ってきてもらうのが一番いい。
この日、翌日も帰宅せず。
9日目 9/1
深夜1時過ぎ、タオの鳴く声で目覚めると、庭に面したデッキにヤムヤムが来ていた。
「タオちゃん、にぃちゃんが帰ってきたの教えてくれたの、ありがとね」
しかし、サッシ戸を開けて、近寄るとサッと逃げる。
くぅ~、ここまで来たのに……。
帰りたいけど帰れない、そんな感じがビンビン伝わってくる。
「そりゃ、あぁたが勇氣出すしか、しゃぁないやん?
そもそもあぁたがジブンから家から出たんだからね」
とりあえずデッキと玄関にキャットフードを出して、再び就寝。
ヤキモキしても始まらない。
追いかけっこは負けるに決まってるし。
ちゃんと寝て、体力氣力を充満にしておく方が大事。
日中姿見せず。しかし、玄関のドライフードが減っていた。
10日目 9/2
深夜1時過ぎ、ヤムヤムの鳴き声で目覚める。
デッキのサッシ戸の向こうにヤツがいた。
家の猫が外に出ないよう十分に注意しながら、サッシ戸をそっと開ける。
ヤツはニャオニャオと鳴き続けている。
「おかえり~、ヤム」
ヤツはちょっと考えてから、そろーりと家の中に入った。
すかさず戸を閉める。
やれやれ、である。
帰還したヤムヤムに対して、ちぃちぃとトーマはシャーっと威嚇した。
ハハハ、変な匂いがするかもね。
ちっとも痩せてなかった。
ノミもついていない。
ケガもなく、からだはほとんど汚れもなかった。
さすが若いからねぇ。
一夜明けて
帰宅直後、ヤムヤムの耳たぶは熱かった。興奮しているだけで病氣ではないらしいが要注意だ。
ヤム、帰宅後平静を装ってはいたが、何度か不安げに鳴いた。
「ヤム~」
と声をかけると静かになる。朝までにこれを2.3回繰り返した。
しかし、夜明け前から、ヤツは「ごはん、ごはん~」と騒ぎだした。
「はい、はい、散歩から帰ってくるまでもうちょいお待ち」
朝ごはんのあと、ヤムヤムは眠りについたが、しきりに寝言を言う。
どうやら夢でなにかと闘っているらしきうめき声である。
お外もけっこう大変だったのかも?
ゆっくり眠れなかったんだろうね。
そして、目覚めるとワタシに執拗にスリスリした。
「わかった、分かった。ヤムは偉かったよ。次はもっと早く帰っておいでね」
でも、当分外には出ないように思う、うん。
待つ力
今回の課題は無事クリア。
待つ力を試された10日間だった。
なにもしないというのも、なかなかにエネルギーが要る。
信じてはいても、ないかの瞬間、時として、その思いが揺れる。
それを吹っ切るのに、ちょっとした勇氣がいった。
捕獲器、借りてこようかな、という考えがよぎったこともあった。
いや、でもヤムヤムは自ら家に帰って来る。
これに賭けよう。
きっとこの結果が、今後のワタシと猫たちとの関係性の基盤になるはず。
帰還の2日前、ヤムヤムがワタシをめがけて駆け寄ってくる夢を見た。
リアルだった。
たまたまであっても、忘れがたい夢である。
ワタシたちは猫を所有しているのではない。
猫をコントロールすることもできない。
この前提を忘れてはならない。
謙虚にありのままを受け入れる。
猫は思い通りにならない。
そもそも思い通りにしようとしないことだ。
思い通りにならない猫だから、ワタシは猫にあこがれる。
要求があるとき、猫はやってくる。
そのとき、しなやかに猫の要求に応えられるジブンでありたい。
そのとき、猫から一目置かれるニンゲンとして認められるのではないだろうか。
8月はお休みしていた「玖磨問わず語り」、もうすぐ再開します。
ヤムヤムは玖磨問わず語りの重要な狂言回し役ですからね。