糸島ショローのちょっとお出かけ・Ritzwell 糸島シーサイドファクトリー見学記
氣になる建物
建物の横を通るたび、いつも思っていた。
いったい、なんの会社だろう?
Ritzwell、なんて読むの?
外国の会社だろうか?
ある日、インターネットで「Ritzwell」と入力して調べてみた。
なんと国産の家具工場とな!
木製品好きのハートがうずきだす。
おまけに工場見学を受け付けている。
さっそく申し込んだ。
ネットで拝見すると、どうやらこのリッツウエルさん、海外で高い評価を得ているらしい。国内では、というか一般ピープルにはあまりなじみがない。そういう戦略なのかしらん?
看板ないしな、もっとも自己主張しないのは、自社製品に自信がある証拠。
ワタシ自身、パッケージが派手とか、おまけをつけたり、やたらセールをする会社はあまり好きではない。
ということもあり、このRitzwellさん、ワタシのこころを妙に刺激するのだ。
ちょうど読書用の椅子をさがしていたところ。
買うならどれがいいかな?
昔から椅子にはまぁまぁ投資してきた。
有名な椅子は海外のものが多いけれど、椅子は見るものではなく座るもの、「日本人の体型に合った椅子は国産に限る」というのが長年の持論である。
一応の目星をつける。
BLAVAのハイバックタイプが好みだわ、おおよそ30万円くらい。
大事なのは、値段ではなく、己のビジョンに合わせること。
これまでの経験から、ビジョンに合わせた買い物が悔いがない。
反対に値段が安いから買ったものはたいてい失敗してきた。
なので、ここぞの買い物は値段で選ばない。
そして具体的なお目当てがあれば、見学もし甲斐があるというもの。
うまい具合にBLAVAの製作過程を見学できるかしら?
建物の向こうは、ワタシが毎日散歩する福吉海岸である。
見学ツァー
応接室
玄関で、ワタシとサカグチを、営業のKさんがにこやかに出迎えてくれた。
たったふたりのために、時間を割いてもらって申し訳ないっす。
「お時間はどのくらいありますか?」
「この後特に予定はないので、大丈夫です」
直前、サカグチが「見学は30分くらいでしょうかねぇ」と言っていた。
しかし、熱意溢れるKさんの口調からして、30分ってことはなかろう、と直感する。
玄関横の応接室には、大きな円卓があった。
お、このなめらかな触り心地、大きさは同じでも、我が家の円卓とは段違いである!
よく見ると、縁部分が美しく削られて角部分がない。
こりゃ、すごい!
加工に半端ない労力がかかっているのがすぐ分かった。
さらに、円卓の脚部分、椅子が当たらない構造になっている。
うちの円卓は8人がけだが、どうしても机の脚が邪魔な箇所が生まれてしまうのだ。ところが、この円卓は無理なく8人が座れる、ブラボー。
いいなぁ、交換してほしいなぁ……。
我が家の円卓は熊野ヒノキ産で特注したものだったが、考えが浅かったなぁと悔やむ。
のっけから、リッツウエルさんのこだわりが、ぐいぐいとワタシに迫ってきたんである。
これは楽しいことになりそうだわ。
2階へのアプローチにて
ゆるやかなスロープを上がると、海が見えるショールーム。
丸いテーブルの縁をご覧あれ、この丁寧な仕上げがこの会社のまごころ(のような氣がする)。
外の緑を背景に重厚感がありつつも、包容力たっぷりのベアトリックスが映える。
創業者の方の心意氣を現した像が、工房全体を見渡している。
やっぱり創業者の思いが、働く仲間に明確に伝わるような工夫が大事である。案内のKさんが瞳をキラキラさせながら「創業者は……」と、誇らしげに説明をしてくれた。聞いていて、まことに氣分が良い。
風車に向かっていくドン・キホーテ、ヒトに何と言われようと突き進む。
ちなみにリッツウエルは造語だそう。
ここでも、直観を大事にする姿勢が見られる。
裁断と皮
2階は主に裁断と縫製。
みなさん、RitzwellのTシャツ着用である。
全体的に若々しく、静謐でありながら朗らかさが漂う。
大きな窓から見える福吉海岸の景色がこれまたいい。
内側から見るとこんななんだなぁ、素敵、素敵。
こういう環境でモノづくりすることのメリットは計り知れない。
この環境が製品に現れないはずがない。
床はチーク材。
コレ、和歌山の猫楠舎(現在売り出し中)の道場と同じである。
整理整頓、掃除の行き届いた清潔な工房。
職人さんたちはみなさん、にこやかに挨拶をしてくださる。
仕上げのこだわり
ステッチが均等になるよう、あらかじめ機械で穴を開けるのだそう。
そんな機械があることにまずもって驚愕。
副産物
それでも切れ端などが出るので、コレを使っていろんな副産物も生まれているらしい。
ワタシは2023年限定色のターコイズブルーのRをチョイス。
サカグチはこげ茶色。
1階 組み立て
2階から1階に移動して、組み立て、張りの作業を見学する。
木の素材、布、皮素材の組み合わせによって、何通りもの製品が生まれる。もうこれは完全オーダーメイドである。
「数ミリしか見えないところにまで、こだわってホンモノを使っています。だれも見ない部分だったりするんですが、職人のこだわりはどんどん深化するので、時間がかかって大変です」
目には見なくても存在するモノは、ある。
それは分かるヒトにはかならず伝わる。
そこに掛けている会社だな、と思った。
ホンモノを見抜く目を持ったヒトを信頼しているのだ。
「職業病とかありますか?」
「テニスやらないのにテニス肘、いったら全身職業病です」
と言って笑う張りの職人さん。
それでも、このヒトはリッツウエルの椅子づくりが好きなんだろうな。
見学終了後
あっという間に1時間半が経過していた。
「よかったら、冷たいお飲み物でもいかがですか」
ええー、そんなぁ、と言いつつ、その氣遣いが嬉しい我々。
応接室でアイスコーヒーをいただく。
「工場見学をしてから、ショールームに行っていただくと見方がまったく違うと思います。これが理想のパターンですが、案外そうする方は少ないので、今回はご案内できてよかったです」
「私たちもとても勉強になりました。ブラバを買う意欲が増しました」
「近くなので、お手伝いできることがあったら、なんでも言ってください。企画や営業はけっこう得意ですから」
ちゃっかり売り込むショローである。
モノづくりが好きなサカグチは、こっそりワタシにつぶやく。
「こういう作業は何十時間でも平氣です」
「ずっと氣になっていた建物に入れて、お庭を見れたのもよかったです」
「そうですよね、なんの建物か、どこにも書いてないですからね」
まぁね、ミステリアスな部分もRitzwellらしさなのかもしれない。
おそらく、ワタシはまた見学に行くと思うのだ。
そして、いつかワタシの椅子をここで作ってもらおう。
近いので、出来立てを納品してもらえるのかしらん、ワクワク。
すでにドン・キホーテ化したワタシである。
Ritzwellスタッフの皆様、本当にありがとうございました。
今後とも応援して参ります。
海散歩の際には必ず手を振りますよ~。