今日の夏子さん 2023.10.17.
プレイバック夏子
夏から「玖磨問わず語り」を書きあぐねていた。
義務感で書きたくないので、書きたくなるまで放置しよう、と。
そうしているうちに秋になった。
夏子のラストランに伴走するなかで、猫たちの声が聞こえてきた。
ミンちゃん、夏子をワタシのもとに導いた猫。
ミンちゃんのような可愛い女子猫がほしいわ、ミンちゃん。
ミンが亡くなる前、ずっとお願いをしていた。
やがて、飛び切り可愛い夏子がやってきた。
「なっちゃんがマッチ売りの少女だったら、バカ売れしちゃうよね」
「錆びたナイフなんかでも数十万で売れるわ、きっと」
「なっちゃん見ると『なんでも買ってやるけん』オジサンモードになっちゃう」
「人たらしですよね」
「罪作りななっちゃん」
「なっちゃんは可愛いからねぇ~」
そんな会話が飛び交った。
かたや猫嫌いも半端なかった。
他猫は「見えてない」ことにするか、威嚇するか、固まるか。
ときどき他の猫たちをムッとさせていた。
そのうちに他の猫が諦めた。
そういうかたくななところも夏子の魅力だった。
空と雲と、影法師
夕方の散歩、昨日より波音が高い。
夕陽を受けた雲がほんのり色づき、空はその最後の青を走らせる。
ワタシの影はあしながオジサンのよう。
ここでなっちゃん、波の方にずんずん歩いて行ったわ~。
そのときの様子を思い出して、思わず笑ってしまう。
思い切って、海に連れ出してよかった。
あんな大胆、勇氣りんりんななっちゃんの姿を見れたんだもの。
田んぼ道を歩くときもそう。
ここをタッタタターと歩いたよね、なっちゃん。
うん、うん、楽しかった。
夏子のいない夜
からだはくたくたなのに長く寝ていられない。
何度も目が覚めて、その都度本を開いてみる。
なんか違う……。
両腕の中にあるべきものがない。
こうなることは予感していた。
深夜、夏子との星空散歩を思って、外に出た。
玄関を出て、街灯を避け、真っ暗な庭に回り込む。
転ばないように、おそるおそる歩く。
庭の真ん中付近夏子のミカンの木「なっちゃんミカン」の真上に星空が広がっていた。
うわ~、すごい、なっちゃん、ここは眺めがいいねぇ。
庭からの視界には街灯がなく、かろうじて黒い山並みがあるだけだ。
なっちゃんプラネタリウム。
なっちゃんからのギフトに違いない。
こんなときでも、いやこんなときほど思い込みの強い己に苦笑しながら星空を眺めた。
夜風でからだが冷え切る前に部屋に戻る。
このへんはショローの分別というものか。
トーマが寝ているバスケットの上のヌイグルミに目が行った。
お、これだ!
ヌイグルミのココピーを抱いてみると、夏子の柔らかさだ。
ココピーを両腕の間に入れると、うまい具合にいつもの読書姿勢になった。
ん?
ってことはなんだ、なっちゃんがある意味ワタシの読書ルーティンをコントロールしてたってこと?
そーか、そーか、そりゃ愉快だわね。
夜中にニヤニヤして、少しして、ちょっとじんわり、きた。
母のことを思い出した。
「猫の森生涯保証」で数か月間お預かりしたダイちゃん(雄)が去ったとき、母は、
「毎晩抱いて寝ていたから、寂しくてしょうがないよ」
と言い、母の枕元にどこかで買ってきたヒツジのぬいぐるみがあった。
「なんでヒツジなの? 安物でセンスが悪いったらありゃしない」
あのときは、母の氣持ちも考えずに、容赦ない言葉をを投げつけた娘。
今はわかるよ、おかあさん。
おはよう、なちゅこ
朝、やっとちぃちぃが寝室に来た。
しかし、ちぃちぃの大好物だった夏子の食べ残しがもうない。
「仕方ない、ちょっとかまってやるか」といった感じで、布団に上がってゴロゴロと、のどを鳴らす。
ちぃちぃは体温が高い。
これからの季節、ちぃちぃはさらにみんなの人氣者となるのだ。
ワタシも仲間に入れてね。
なんだい、ずっとなっちゃんとばかり寝ていたくせに。
ええー、そんなこと言わないでよ~。
コーヒーを持って、デッキに出る。
植物たちに水やりをする。
昨日、夏子ミカンのまわりにタイムを3株植えた。
パソコン作業をしながらすぐに見える場所にある夏子の木。
おはよう、なちゅこ。
たましいは雲に乗っても、まだここにとどまっている氣配も感じる。
それは、2012年にAさんの部屋に打ち合わせに行ったときにも感じたものだ。※トップの写真
Aさんは夏子の行く末が心配だったのだろう。
なっちゃん、ワタシは大丈夫だけど、まだいてくれたら、それはそれですごくこころ強いわ~。
まだ行ったり来たりしてね。
なっちゃんにまつわる新しい習慣ができた。
続く