「いいお医者さん」「いい病院」とは?
記念すべき(?)初めてのnote投稿です。
まずは、今までブログ「よしなしごと」で書いてきたことを振り返り、少しずつ私の考えをご紹介していけたらと思っています。
医者の仕事をしていると、色んな方から
「妹が出産するんだけど、いい産婦人科の病院知らない?」
とか、
「大阪に引っ越してきたんだけど、いい小児科のクリニック知らない?」
とか、
「お父さんががんだって言われて、今の先生の話に納得できないって言ってるんだけど、いい先生知らない?」
とか・・。
とにかく、「いいお医者さんを紹介して」「いい病院を紹介して」という質問というか、お願いをよく受けます。
でも、これって実は、とても難しい質問なんです。
なぜかというと、「いいお医者さん」や「いい病院」の定義が人によってさまざまであり、さらには同じ人にとっても、病状や状況によって定義が変わることもしばしばなんですよね。
普通であれば、医者から見ると、医学的知識が豊富で診療内容を信頼できるお医者さんや病院が「いいお医者さん」「いい病院」だと思うわけですが、患者さん側からは必ずしもそうではなかったりします。
例えば、「いい産婦人科の病院」だと、ある人は「何か急なことがあってもすぐに処置をしてもらえる大病院」をイメージし、ある人は「美味しいご飯を食べられるお城みたいなきれいな病院」をイメージし、ある人は「話しにくいことも話せる女医さんがいる病院」をイメージし、ある人は・・
また、「いい小児科のクリニック」という時、ある人は「経験豊かなベテランの先生がやっているクリニック」をイメージし、ある人は「気さくで話しやすい若い先生のいるクリニック」をイメージし、ある人は「駐車場が広くてクルマを停めやすい新しい建物のクリニック」をイメージし、ある人は「予約制で待ち時間なく診てもらえる近所のクリニック」をイメージし、ある人は・・
本当に千差万別な評価軸で、医療機関は見られているんですよね。
さらには、普段の風邪引きの時には「待ち時間なく診てもらえる近所のクリニック」のことをいいと思っていた人でも、がんのような大きな病気になると、専門的なことについて相談するなら「少々遠くて待ち時間が長くても専門家のいる病院に行きたい」と思ったりしますよね。
なので、「いいお医者さんを紹介して」「いい病院を紹介して」と言われた時、私はこう答えます。
「あなたがいいと思うかどうかは分からないけど、○○先生(○○病院)のことは私は普段から信頼していますよ」
・・もしかすると期待していた答えではないのかもしれませんが、これが限界なんですよね(^^;)
そして、私は在宅療養支援診療所の院長ですが、在宅医療だとさらに、この質問への答えに迷います。
医者から見ると、医学的知識が豊富で診療内容を信頼できるお医者さんや病院が「いいお医者さん」「いい病院」、と先ほど書きました。
ところが、在宅医療では外来診療と違い、基本的に1人の患者さんに1カ所の医療機関しか関わらないことや、治らない疾患や状態の患者さんに寄り添う医療であることなどから、医学的に正しいかどうかよりも、その患者さんと家族が満足したかどうかの方が、より大きなウェイトを占めることも少なくない印象です。
その上、「一人の先生が在宅医療を行う開業医」と「複数医師が所属する中〜大規模在宅医療専門クリニック」という、大きく異なる形が併存していて、このどちらが良いのかという論争は、場を変え時期を変え、ずっと続いている現状です。
・・次回はそのあたりについて、考えていることを書いてみたいと思います。
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