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研究開発とは ~酸化チタンの触媒反応の矛盾という課題を解決する~

開発者、高松先生にお聞きしました。 ②

 ナノゾーンソリューションの開発の詳細を開示することはできませんが、研究開発とはどういうものかをお話しましょう。
 今回の課題は、酸化チタン粒子が、バインダー(糊)を使わなくても、あらゆる表面に結合することです。
 有機物であるデンプンやタンパク質などは、水で溶かすと接着剤となり、様々な物質の表面に塗って合わせると両者を貼り合わせることができます。でも、無機物質、鉄や銅のような金属やガラスや陶磁器のような鉱物などの無機物質ではそのように貼り合わせることはできません。特別な接着剤または溶接が必要です。溶接には1,000~2,000度のような高温で溶かして貼り合わせるという、特別な装置と技術が必要です。一般家庭で使得る方法ではありません。そのような物質の性質に基づき、金属酸化物の酸化チタンの製品は、接着剤、バインダーの使用は欠かせない条件でした。結合させる素材によってそのバインダーは様々に工夫する必要があり、光触媒製品の開発は約半世紀、バインダーの開発の歴史でした。一方、バインダーを使うと酸化チタンの表面を覆ってしまいます。他に類のない特徴である有機物を分解するという酸化チタンの触媒反応は、その表面のみで起こります。接着剤を使うとその表面は覆われてしまいますので、その表面では、触媒反応は起こらないという矛盾が、従来の製品が解決できていない課題でした。

 研究を始めるためには、課題を見つけて、その課題を解決するための仮説を立てます。自然科学では、従来の常識を疑い、それを批判するのではなく、どう考えれば常識を乗り越えて発展させることができるかを考え、その課題を解明し、新しく解決策を考えて実現することが進歩ということです。
 
 今回必要なことは、酸化チタン粒子そのものがあらゆる表面に自分で結合する機能を持つことでした。今回の解決策としての仮説は、酸化チタン粒子をとても小さいサイズ、重力の影響が及ばないほどのサイズまで小さくすると、様々な表面に結合するだろうというアイデアでした。私たちが実際に目に見える物質も、極めて小さい物質の結合によって成り立っています。
 小さな物質がどのような力で相互に結合しているのか。幾つかの原理は分かっています。その一つに強い力として働いている重力があります。全ての物理的原理がまだ完全には分かっているわけではありませんが、現状の物理学の理解においても、応用可能な理論はあります。重力から自由になれば、物質は別の力で引き合い、反発し合うという原理です。この理論に基づいて、超微粒子の酸化チタンの開発に集中することにしたのです。

果たして、酸化チタン粒子は、サイズがある一定の大きさから縮小していくと、その物理的挙動は確かに変化していきました。そして現在の製品サイズに至って、当初の仮説通り、酸化チタン粒子は、自分で様々な表面に結合することが確認されました。
 幸運にも、その技術的確定と安定した微細粒子の製造が果たされ、今の製品をお届けすることへと発展していきました。



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