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自然と対話が生まれる、フォルケホイスコーレの場のデザイン

2019年夏〜2020年春にかけて筆者が滞在したデンマークの市民学校、フォルケホイスコーレ。「フォルケレポート」と称して、筆者が体験したこと、考えたことをテーマごとに章立てたレポートをお届けします。第一回目のテーマは「対話」です。
全章立てはここから!

ここまで、フォルケホイスコーレにおける授業内の対話について書きました。今回は少し視点を変えて、対話が生まれる空間づくりを考えてみたいと思います。

対話を促す教室レイアウト

フォルケホイスコーレでは、授業内容に応じて教室のレイアウトをしょっちゅう変更します。そのため机も椅子も動かしやすいよう、軽いものを採用していました。

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先生が解説して生徒が聞くスタイルの講義の際は、椅子だけを並べる「シアター形式」もしくは机ありの「スクール形式」で授業を展開します。これはどこの学校でもよく見る光景です。一方、フォルケホイスコーレではもう一つしばしば採用する教室レイアウトがあります。

それは、椅子だけを円形に並べるレイアウト。生徒どうしの対話をおこなう時、また授業の最後に授業のまとめを共有し合うときなどはこのレイアウトになります。

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なぜ椅子だけで円を描くのか。机を含めた障害物をなくし、相手の表情や手振りがよく見える状態にするためです。参加者どうしがお互いの話に傾聴し、一人ひとりが話しやすい状態になります。全員の顔を見渡せるので、誰かが話している間にどこかで雑談が生まれる可能性も低くなります。

大げさにいうと、目の前にいる人々に全神経を注ぐことができるのです。

教室外で対話を生むスペース

対話が生まれるのは教室だけではありません。むしろ、教室を出た場にこそ対話があり、生きた学びがあります。生徒どうしが集まり、リラックスした雰囲気のなかで対話がはじまる。フォルケホイスコーレには、自然発生的に対話が生まれるようさまざまなスペースがあります。

・Common room(コモンルーム)

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多くのフォルケホイスコーレには、生徒が自由に集まれる共同のフリースペース「Common room(コモンルーム)」が存在します。上の写真は、私が1校目に滞在したフォルケホイスコーレ「International Peoples College(IPC)」のコモンルームの様子です。大きめのソファ、円形のテーブル、暖炉、飲み放題のコーヒーとお茶があります。毎食ごはんを食べるダイニングホールと地続きの場所にあるので、人の行き来が多く、いつも誰かしらいる状態です。

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休み時間や食事の前後に集まり、思い思いに自由な時間を過ごします。気軽な雑談から、ディープな対話に発展することも。

・自家製サウナ

サウナといえばフィンランドが有名ですが、デンマークでもサウナを楽しむ文化があります。学校によっては、学校の敷地内にサウナがあることも!サステナビリティに関わる授業をもつ学校では、生徒主導でサウナをつくった所もあるようです。

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Brenderup højskole(ブレネロップ)の自家製サウナ(友人提供)

心も体も温まった状態だと、本音で話しやすくなります。本場のサウナでは人と話さないことがほとんどですが、学校のサウナだからこそできる対話もあるでしょう。(なお、サウナには水着で入ります。)

・焚き火エリア

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夜には焚き火を囲み、ゆらゆらと揺れる炎を眺めながらゆっくり対話を始めます。そこに、誰かがギターやウクレレを演奏してくれればパーフェクト!

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楽器の音色と炎のゆらぎ効果が相まって、とてもリラックスした空気感に包まれます。

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すべての学校に焚き火エリアがあるわけではありませんが、敷地の広いフォルケホイスコーレには木でできたベンチやイスが置かれていることが多いです。天気のいい日はベンチに集まって、対話が始まる光景も見られます。

「ヒュッゲ」が対話づくりの鍵

教室の外で友人たちとじっくり向き合い、対話を楽しむためにはリラックスした場づくり、空気づくりがとても重要です。その考え方の背景には、デンマーク文化を語る上で欠かせない「ヒュッゲ」が関係しています。

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ヒュッゲとは、デンマーク語で「幸福感の高い、心地よい時間」のこと。英語ではCozy(居心地のよい、くつろげる)が近いとされています。ただし明確な定義はなく、場に集まる人の感覚値で心地よければ、その場その瞬間はヒュッゲなのです。

顔が見える配置、オープンさ、心地よさ。この辺りが自然と対話が生まれるキーワードではないでしょうか。

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