「共に学ぶ」楽しさに魅せられた3年。これからは豊かな学び場をデザインします
はじめまして、花田奈々と申します。
2019年の夏からデンマークの市民学校「フォルケホイスコーレ」に留学し、この春日本に帰国しました。社会人半ばでデンマークに渡った理由は以前noteに書きましたが、振り返るとかなりの収穫があったと感じています。
この一年フリーランスのライター・コミュニティマネージャーとして活動していましたが、この度「会社人」に戻ります。人生の重要な転換期と言えるデンマークでの8ヶ月を経て、最後に掴んだ大きなチャンスが株式会社Laere(以下、レア)への入社でした。
レアは、「人の想い」から始まるプロジェクトを北欧をヒントに、引き出し、支援し、実践する、共創型アクションデザインファームです。日本やデンマークの企業や教育機関と協働しながら、社会を豊かにする組織や個人の支援をおこなっています。
正直なところ、私のキャリアはジグザグで、一見して迷走していたように思います。ただ、過去3年間を振り返ると、キャリアもプライベートも「学び」という軸があり、レアとの関わりがありました。その3年を紐解くことで自分の大切な価値観を明らかにできると考えて、振り返っていきたいと思います。ようやく出来たひとつの覚悟を記しておくために、書いています。
ここからは「学び」を軸に3年間を辿りながら、その時々の想いや考えを書いていこうと思います。
1. 大学卒業後に見つけた「デザイン思考」への好奇心
はじまりは、「デザイン思考」(デザイナーの思考プロセスを用いて、新しいアイデアを生み出すマインドセット)への好奇心でした。2017年3月に慶應義塾大学を卒業し、入社までの春休みを消化していた頃、大学院であるSDM(システムデザイン・マネジメント研究科)主催のオープンワークショップに参加しました。
講座名は『初めてのシステムxデザイン思考』。何の知識も持ち合わせていませんでしたが、「デザイン思考」に対する強い興味だけはありました。学生時代インターンで関わっていた会社で、尊敬する上司が意思決定やプロダクト設計においてデザインを重視し、サービスをめきめきと成長させていたこと。これが「デザイン思考」に興味を持ったきっかけだったと思います。
当日のワークショップに集まった参加者は、50名程の参加者のうちほとんどが社会人で、1〜2割が学生という感じ。年齢も職種も異なる人々と一緒になって、新しいヘルスケアサービスを考えていきました。
ブレインストーミングや親和図、強制連鎖法などの思考ツールを教授から教えてもらいながら、みな手探りで思考し、形づくっていく──。お互いの専門性、経験に基づきアイデアを出すことこそあれど、そこには肩書きや年齢で判断される上下関係はありません。普通に勉強したり働いたりするなかでは交わらない人たちと議論し、学ぶことがとても新鮮でした。
ただ、当たり前ですがたった一日のワークショップで「デザイン思考」を理解し、実践に活かすのは困難です。面白かったからこそ、その煮え切らなさにしばらく悶々とすることになります。
2. 不確実な時代をリードする「カオスパイロット」という学校
そんなこんなで迎えた社会人生活。新卒で入ったIT企業では広告営業を担当していたので、直接的にデザイン思考に関わることはありませんでした。会社では一社会人として鍛えていただきながら、プライベートではデザイン思考に関する情報を探索。(といっても、インターネットで「デザイン思考」と検索したり、デザイン思考に関する書籍を数冊読むだけでしたが。)そんなある日、「デザイン思考」の検索結果に、あるインタビュー記事が飛び込んできます。
「クリエイティビティは才能じゃない」 デンマーク発ビジネスデザインスクール・カオスパイロット卒業生、大本綾が語る創造的なチームとは?
https://epmk.net/ayaomoto/
「実践、内省、理論を通して、自分の行動を支えてくれる羅針盤となるような教科書を自分でつくっていく」「『学び方を学ぶ』場のあり方」。インタビュー記事に出てくることばに惹かれ、胸をはずませている自分に気がつきました。さらに調べていくと、大本綾さんが経営するLaereのイベントを発見。気がつくと申し込んでいました。
当日のイベントには、大本綾さんの卒業校であるデンマークのビジネススクール『カオスパイロット』の校長がゲストスピーカーとして来ており、カオスパイロットはどんな学校なのか、どんな背景を持っているかを丁寧に解説してくれました。ざっくり理解したのは、不確実な時代をリードできる人材を育てていること、ケーススタディではなくプロジェクトベースの経験型の学びを重視していること。そのカオスパイロットがレアと協働してスタディコースを実施するというのです。
そのコースの体験者の生の声を聞くこともでき、俄然興味が湧きました。ただ、新卒が「えいや!」と出すには勇気のいるお値段だったのですね(笑)。なので結局「いつか機会があれば……」と据え置きにしていました。
3. 学びの楽しさにクラクラした「クリエイティブ・ファシリテーション」コース
月日は経ち、社会人2年目で転職。スクール事業を展開するスタートアップに入社し、会社が掲げるビジョンと紐づく事業内容に共鳴しながら、手触り感のある仕事に取り組むことができていました。すごく楽しかった。でも、(スタートアップだから当たり前ですが)すべてのことに前例がなく、だれもが手探りで進む日々。経験が少なく事業に貢献できていない自分に焦り、自信を失っていました。
夏の暑さと自分の不甲斐なさに目眩がしていた2018年7月、レアで新たに開講されるスタディコースが目に入りました。その名も『クリエイティブ・ファシリテーションコース』。仕事終わりの平日夜と土曜日に受講することを決めました。
ファシリテーションといっても、会議進行スキルを高めることが目的ではありません。もっと広義に、場に参加する人々の気づきや学びを促す「ファシリテーター」として、創造性を引き出すプロセスを設計し、創造性を発揮するための土台となる信頼関係を築くこと。実践や理論を通して、3ヶ月間学んでいきました。
受講した一番の感想は、「学ぶことって、こんなにも楽しかったっけ!?」でした。義務教育でも大学の講義でも味わうことのなかった学びの体験に、電流が走ったような衝撃。初日は興奮して眠れず、学んだことを無我夢中にノートに書き出しました。
コースのなかでは意図的に「不確実な状況」をつくり出し、異なるバックグラウンドを持つ人どうしで知恵を出し合い、納得解を見つける。そんな場面がたくさんありました。「たった一つの正解」なんてないんだ。どんな状況でも学びの場と捉えればいいんだ。そんな風に、困難を受け入れられている自分がいました。
4. デンマーク教育のスピリットを知るべく「フォルケホイスコーレ」へ
ファシリテーションコース修了後は、不確実要素の多い仕事に前向きに取り組めるようになり、できることも少しずつ増えていきました。その一方で、レアのコース受講をきっかけにデンマークへの興味が湧き上がり、「デンマークに行く」という選択肢が急浮上しました(!)
多様な価値観を持った人々との「対話」による学び、発展的な学びの土台となる信頼関係の構築。ここにデンマークの社会文化、教育文化が色濃く反映されているように思えてならなかったからです。その文化を、どうにか理解したかった。
結果、有力候補としてたどり着いたのが、デンマーク発祥の学校「フォルケホイスコーレ」でした。フォルケホイスコーレは「人生の学校」「民主主義の学校」「自分を知るための学校」などいろんな呼ばれ方があります。解釈に余白のある学び場に、自分自身を没入したい、未来に求められる学び場のヒントを得たいと考えたのです。まあそれ以外にもいろんな判断軸があったのですが、最終的には直感で選びました(笑)
そしていよいよ2019年7月、デンマークに飛び立つのでした。
フォルケホイスコーレでは、多様な価値観を持つ友人たちと暮らしながら、対話から生きた学びをたくさんもらいました。共に学び、共に生きる。文字通りそれを実践できた、人生でもっとも豊かな時間だったと思います。
私の目を通した「フォルケホイスコーレ」はぜひこちらのnoteマガジンを見ていただきたいと思うのですが、フォルケホイスコーレに行って本当によかったと思っています。
先の見えない時代だから「学びつづける」場をつくりたい
デンマーク滞在も終盤に差し掛かった頃、某ウイルスが猛威をふるい始めました。社会レベルで「経済がどうなるか分からない」、個人レベルでも「仕事が、生活がどうなるか分からない」。そんな「分からない」ことだらけの時代を迎えた私たち。前々からVUCA時代だ、正解のない時代だと囁かれてきましたが、これほどまでに全人類が実感を持って「不確実さ」に向き合う時があったでしょうか。
私は明日のことすら想像がつきません。だからこそ、不確実な時代を切り抜けられる力を個人に、社会に実装したい。そのためには私たちが「学びつづける」しかないと思っています。
それはきっと、かなり体力のいることです。誰も正解を教えてくれない、一度スキルを身につけても手放し、別のスキルが必要になるかもしれない。そんなタフネスが要請されるとき、拠り所となるのは、お互いが学びあえる場と、支え合える共同体なのだと思います。
ここまで取り留めもなくなってしまいましたが……私がこれから叶えたいことは、不確実な時代を生き抜く「学びつづける力」を培う場と共同体をつくり、根底にある文化をゆっくり届け、社会にじんわり浸透させることです。
前職やフリーランス時代の経験を活かし(長くなるので詳しいキャリアはLinked inに譲ります笑)、時代に応じた学びの機会をつくると同時に恒久的な学びのあり方を探求しながら、ラーニングフルな組織文化や学びの発信に力を入れていきたいと思います。上記の「叶えたいこと」を実現するためにできることを粛々と、着々と進めていく所存です。
いろいろお知らせ
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直近ではミミクリデザインさんとコラボした「問いの立て方」を考えるイベントや、
北欧気鋭のビジネススクール卒業生2人による「ストーリーテリング」の講義など、幅広く学びのコンテンツを用意しています。
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(個人の活動)書くと共に生きる人々の共同体「sentence」にも引き続き関わっています!
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