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保育と人との繋がりの話 2

『先生、子どものこと好きじゃないでしょ』

言われた言葉は今でも心に、抜けない棘みたいにずっと刺さっている。
それでも、子どもと関わる仕事からは離れられなくて、保育士という選択肢を選んだ。毎日の流れが違うこと。勤めていた幼稚園とは理念が全く違うこと。悩んでいる時に色んな人の話を聞いて、私はある会社に就職しようと決めた。


保育士になって、最初は本当に難しかった。今までやってきたことと考えが全く違うことが、なかなか上手くいかなかった。今までの『当たり前』が、何とも思ってなかった『普通』が全く違うことを知った。幼稚園教諭と保育士は全く違う職業だと、その当時は強く感じていた。

自分らしく働くことができずに、最初はとても苦戦した。だが、そんな私を変えたのが保育士2年目。私は2歳児の担任だった。


初めての乳児。たくさん学ぼう。そんな気持ちで1年が始まる。一緒に組んだ先生は、とても素敵な先生だった。園児が16人。担任が3人。クラスリーダーをしてくれていた先生は、本当に丁寧に色んなことを教えてくれた。勤めていた園は『担当制保育』をしていた。

『担当制保育』とは、子どもたち1人1人の身の回りのこと(排泄や着替え、食事等)の援助をする職員が決まっていて、その子の生活リズムに合わせて1日の流れが決まっている、その子主体の保育である。みんなで『いただきます』をすることもない。『今から○○の時間だよ』とみんなに声を掛けることもない。自分でやりたい遊びを見つけて、遊び込む。着替えも排泄も先生と1対1で行う。食事も順番。遊んでいたらご飯の用意ができて、先生が準備ができたよと優しく声をかける。

今まで私がやってきたこととは全く違うその保育に、学ぶことがいっぱいだった。そして本当に丁寧な保育だった。やりたかったことはこれかもしれない。


環境がとても大切なこと。大きな声で保育をする必要がないこと。その子の生活リズムに合わせること。1人1人と関わる時間があるからこそ、成長をしっかり見守ることができること。遊びがとても重要で、全ては遊びから始まること。


初めての乳児担任だったからこそ、偏見もなく受け入れられたのだろうと思う。担当制保育について学べば学ぶ程、奥が深く面白かった。


そして私にチャンスがやってきた。


担当制保育をしているハンガリーに研修に行けることになったのだ。保育士で海外研修に行かせて頂けるなんて、なかなかない経験だと思う。一緒に組んでいた先生が、私を推薦してくれての事だった。

研修に参加するメンバーは、みんなはじめましてだった。1週間、はじめましての人と一緒に過ごす。元々コミュニケーションは苦手ではなかったが、どんな人と過ごすことになるのか不安がなかったと言えば嘘になる。


そこで知り合ったのは、私より1つ歳上の他園の保育士だった。笑顔が素敵で、自分の保育観をしっかり持った人だった。仲良くなるのはあっという間だった。

同じ思いで保育をしている人と知り合えたこと。他にも仲良くなれる友だちができた。同じ職場ではないけれど、それが逆に良かったのかもしれない。色んな話を聞くことで、今の自分に何ができるのか、真剣に一緒に考えることができた。この1週間は、私にとってかけがえのない時間になった。

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