常磐自動車道の早期4車線化を

東京仙台間では東北自動車道よりも常磐自動車道の方が距離が短く線形も良く、しかも雪の影響を受けにくいにもかかわらず、東北自動車道経由を選ぶ車が大半で、常磐自動車道は比較的空いている。一方、東北自動車道は線形が良くないにもかかわらず交通量が多く、しかも長距離を走る車ほど速度が高い傾向があるので、様々な車が入り乱れて走っていて事故が起きやすい。常磐自動車道が東北自動車道のバイパスとして選ばれれば東北自動車道の混雑が緩和して事故も減少するはずなので、東北自動車道の混雑対策と事故対策のためにも常磐自動車道を活用すべきである。いわば常磐道の新東北自動車道化である。常磐道自体は既にあるので、東北自動車道に並行して新規に新東北自動車道を建設するよりもはるかに安価に東北自動車道のバイパスルートを構築できる。

常磐道があまり利用されない最大の理由は広野山元間の88kmもの対面通行区間の時間が読めないためである。実際には追越車線の設置間隔が短く、空いていればさほど支障しないのだが、それでもたまたま遅い車が前を走っていると所要時間が延びるし、追い越し待ち行列が長くなると1回の追越車線通過ですべての追い越し車両の追い越しが完了せずに次の追越車線まで持ち越しになる。かつてはいわき中央広野間と山元岩沼間も対面通行だったので、128kmもの対面通行区間があった。これらの区間の4車線化工事によって対面通行区間の距離が短くなり、また、比較的交通量の多い区間が4車線化されたことから、かつてよりも走りやすくなったが、それでも88kmの対面通行区間は長い。

もう一つの理由は、交通量が少ないために特にいわき仙台間でサービスエリアやパーキングエリアの店舗が少なく、休憩に適さないことである。しかしこれは鶏が先か卵が先かの問題で、十分な交通量の裏付けがあればPAに店舗を設置したりできるようになる。SA・PAでは大型車の駐車スペースが不足しているが、常磐道のSA・PAに大型車向けの駐車スペースを潤沢に提供すれば、それだけでも大型車にとって走りやすくなる。SA・PAの店舗からの収益があれば地元の雇用の足しにもなるので、産業の乏しい浜通りにこそ外からの需要を誘致して産業を興すべきである。

常磐道は帰還困難区域を通過するので放射能も気になることろだが、2015年の常磐道全通時には9μSv/hくらいあったものの、それ以降除染が進んだおかげで空間線量はだいぶ低下しており、空間線量の高い区間は大熊IC付近のごく一部の区間に限られており、大熊IC付近で3μSv/hくらい、他の区間は1μSv/h未満と通常の地域とほぼ同水準である。高速道路の速度で通過すれば短時間で通過できる。それでも帰還困難区域内での工事には様々な制約が伴うので、常磐道を4車線化する際には最後になるだろう。

現在4車線化工事中なのは、NEXCO東日本のサイトによると以下の3区間である。

  • 浪江 ー 南相馬 2km

  • 相馬 ー 新地 9km

  • 広野 ー ならはSIC 5.3km

いずれも4車線化完成予定時期は未定とされている。上記の距離には既に付加車線が設置されている区間を含まないので、実際に4車線で走れるようになる距離はもっと長い。また、浪江山元間は4車線優先整備区間に指定されており、このうち早期に4車線化すべき区間に山元南SIC山元IC間が追加された。広野浪江間も将来4車線化すべき区間に追加されたことで常磐道全区間が将来4車線化されることになったが、前述の事情により帰還困難区域での工事は当分先になりそうで、帰還困難区域外かつサグで渋滞しやすい広野ならはSIC(ならはPA)間のみ先行して4車線化工事が始まったところである。ならはSICのすぐ先から富岡ICまでは比較的長い追越車線があり、完成すれば富岡まではほぼ4車線になる。ならはSICと富岡までの追越車線の愛大の短区間が中途半端に2車線にまま残っているのは、この区間を4車線化するためには架橋工事が必要なためである。橋梁とトンネルはお金がかかるので後回しになってしまう。富岡浪江間が最後まで対面通行で残るとしても、この区間は約14kmなので88kmもの対面通行区間がある現状よりは大幅に改善されることになる。相馬新地間が先行して4車線化しているのは、かつて災害による土砂崩れで通行止めになったことがあり、災害時の通行を確保するためである。

高速道路の整備は国の計画や予算が関係してくるので、常磐道だけ早期に4車線化することは難しいだろうが、東北自動車道の混雑対策・事故対策として予算を投入してほしいものである。常磐道は対面通行区間を含めてもともと100km/hで設計されており(日立市内のトンネル連続区間のみ80km/h制限)、対面通行では70km/h制限がかかっていても、4車線化すると100km/hで走れるようになるので、それだけでも所要時間が短縮される。

常磐道経由の弱点は三郷JCTから先の首都高速三郷線・向島線の上り線の渋滞が激しいことだが、千葉県内の外環道が開通したことで、東関東自動車道高谷JCTに出られるようになったし、それによって交通が分散されるようになったので、都心方向への混雑がいくぶん緩和された。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?