太平洋フェリーきその一等インサイドに乗ってみた

今まできたかみの一等クロスツインには乗ったことがあったが、一等インサイドは初めてである。部屋の間取りは新日本海フェリーのらべんだあ・あざれあの一等ステートと同様だが、きそといしかりの一等インサイドは内側の吹き抜けに面しているので海は見えず、正面には向かいの部屋があるので、光が入ってくるだけである。そのため、きたかみの一等クロスツインよりも1000円安い。

きたかみの一等クロスツインとの違いはもう一つある。一等クロスツインは定員1〜2名なので繁忙期に1人で乗っても貸切料金がかからないのに対して、一等インサイドは定員2名なので繁忙期に1人で乗ると貸切料金がかかる。そのため、繁忙期に1人で乗るならきたかみの方が有利、それ以外の時期ならいしかり・きその方が少し安い。

新日本海フェリーはQRコード入りの乗船票を印刷するかスマホで提示するかすれば乗船手続不要なのだが、太平洋フェリーは乗船手続が必要で、しかも苫小牧港には出発2時間前までに乗船手続を済ませる必要がある。車で乗船する場合、乗船の順番を確保するためにどのみち早めにフェリーターミナルに到着する必要がある。その結果、乗船手続完了から車での乗船開始まで1時間ほど時間が余ってしまう。冬は車の中で待っていればよいとして、夏はエンジンを切ると車内が暑い。だったら乗船手続の締め切りをもっと遅くできないものだろうか。仕方ないので、冷房の効いたフェリーターミナル内で乗船開始まで待つことになる。苫小牧港のフェリーターミナルにはレストランと寿司屋があるので、値段を気にしなければターミナル内の飲食店で早めに夕食を取ることもできるが、仙台港のフェリーターミナルには飲食店が無いので手持ち無沙汰である。手前のスーパーで弁当を買って待合室でもぐもぐするくらいしかやることがない。

きたかみといしかり・きそとでは苫小牧港で接岸するときの向きが違う。いしかり・きそは船首側に車両甲板に出入りする扉があるため、苫小牧港では港の奥に向かって接岸する。きたかみは船首に扉が無いので右舷側と船尾に扉があるので仙台港では奥に向かって接岸し、苫小牧港では出口に向かって接岸する。こちらは仙台から苫小牧までは両方の港で回頭するのに対し、苫小牧から仙台までは回頭不要である。どうしてきたかみだけ接岸する向きが逆で設計したのか謎である。船舶も航空機も左舷側はポートサイドなのだが。

車両甲板からきそに乗船したが、3デッキから入り、乗用車は上の4デッキに誘導された。きたかみは下に乗用車向けの天井の低い区画が3層あるので乗用車は3デッキ以下に押し込められるが、きそは下に2層しかないし、名古屋苫小牧間を通しで乗船する客もいるようなので仙台苫小牧間の区間利用だと4デッキに誘導されるのだろうか。4デッキならエントランスホールのある5デッキから近いので、荷物が少なければエレベーターを使うまでもなく階段で移動できそうである。

車両甲板からエレベーターで5デッキに上がると、明らかにきたかみとは雰囲気が異なる。きそといしかりは姉妹船だが、きそは木曽の森をイメージしているのか木の色合いが基調になっている(公式設定では南太平洋のリゾートホテルのようとなっているが)。5デッキには大浴場と売店がある。きたかみにはシャワー室があるが、いしかりときそにはシャワー室がない。6デッキにはレストランとカフェと給湯室と電子レンジがある。ショーが開催されるラウンジも6デッキにある。6デッキには椅子が多数設置されており、しかも大きいので、開放寝台利用でも快適に過ごせそうである。7デッキは客室のみである。

1等インサイドは内側の吹き抜けに面しているが、部屋の間取りは新日本海フェリーの新潟小樽航路の1等ステートと同じで、入口側に机とバスルームがあり、奥にはツインベッドが並んでいる。こちらの間取りの方が机を大きく使えるし、ベッドへの出入りも楽なので、特に制約がなければこちらの間取りの方が使いやすい。きたかみの1等クロスツインの方が客室の幅が狭いので、そちらの方が省スペースなのだろう。慣れてしまえばいちいち外の景色を見ないし、そもそも夜間には外の景色が見えないので、部屋が広くて間取りが使いやすい方がよい。それでいてきたかみの1等クロスツインよりも安い。ただし、海に面していない分、携帯電話の電波の入りは劣る。外が見えなくても電波が入れば不自由しないのだが、電波が入らないのは困る。天井の照明にはカバーがかけられている。このカバーがないと、ちょうど枕元で光源が見えてしまって眩しいからだろう。窓は曇ガラスで光が入ってくるだけだし、どのみち夜にはカーテンを閉めるので窓があろうがなかろうが関係ないのだが、これがあるおかげで閉塞感はない。

きそは2005年就航と太平洋フェリーの船の中で最も古いので、客室内のトイレにウォシュレットがついていない(きたかみにはついている)。また、シャワーブースの中に小物を置く場所がなかったのが不便に感じられた。机には電気ケトルの代わりに机に作り付けのIH式の湯沸かし器があったが、お湯が湧くまで時間がかかった。古いが故の不便さを挙げればきりがないがそれでも落ち着いた内装で居心地が良いし、大きな船なので多少時化てもそこまでひどく揺れるわけではない(もちろん時化れば揺れるが)。

客室の大半が船の前方にあるためか、エンジン音はほとんど気にならなかった。その代わり下からココココココという6Hzくらいの突き上げを感じたが、あれは一体何だったのだろうか。

太平洋フェリーのレストランのブッフェは夕食2100円と高めだが、カフェは比較的リーズナブルな値段なので、よく利用されている。夜はカレーがよく売れていた。きたかみにもカフェがあればいいのにと思う。船内の売店は船内価格である。船内で購入できるだけでもありがたいが、必要なものがあれば乗船前に購入しておいた方がよいだろう。

苫小牧から名古屋まで乗り通せば2泊なので、ラウンジショーあり映画ありで、長い船旅を退屈させないよう工夫されている。ラウンジショーは映画と違って人件費がかかるが、その代わり乗客を楽しませようという工夫に満ちている。ケチな名鉄が親会社とは思えないほど大盤振る舞いだが、ここぞというところでお金を使うのは名古屋的でもある。娯楽が充実していると悪天候で少々船が揺れても気にならない。

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