稚内から日帰りで礼文島と利尻島に行ってみた

稚内で1日時間が取れたので、日帰りで礼文島と利尻島に行ってみた。結論から先に書くなら、利尻島のベストシーズンと礼文島のベストシーズンは異なるので、両方まとめて訪問するよりも、それぞれのベストシーズンに単独で訪問する方がよいのではないかと感じた。こういうのは実際に行ってみないとわからないものである。

夏は利尻島までフェリーが1日3往復、礼文島まで1日3往復、利尻島と礼文島の間が1日3往復あり、概ね朝の便と昼の便と夕方の便なので、朝の便で礼文島に行き、昼の便で利尻島に行き、夕方の便で稚内に戻ったり、逆に利尻島から先に回ったりすることができる。利尻島には空港があり丘珠から飛行機で直接行くこともできるし、夏には新千歳からANAも飛ぶので新千歳乗り継ぎで全国各地から飛行機で到達することができるが、礼文島の空港は滑走路が800mしかないため定期便が飛んでおらず、稚内または利尻島から船で渡るしか交通手段がない。

利尻島の鴛泊(おしどまり)港の前や礼文島の香深港の前にトヨタレンタカーがあるので島でレンタカーを利用することもできるが、礼文島は島の西側に自動車が走行可能な道がなく、島の南の香深港と北端のスコトン岬の間を往復するだけなので、敢えてレンタカーに乗るまでもない。路線バスでも定期観光バスでも十分である。しかも島のレンタカーの相場が高いこともあり、トヨタレンタカーには離島料金もあり3時間でも1万円程度と割高である(複数人で乗るならレンタカーという選択肢もあるが)。フェリーの車両航送も往復で5万円以上して高い。そんなこともあり、今回は珍しく礼文島と利尻島で定期観光バスを利用した。

定期観光バスはフェリーと接続しているので、効率よくスケジュールを組むことができる。利尻島、礼文島ともにフェリーの便に合わせて午前のコースと午後のコースがある。フェリーのスケジュールにもよるが、今回は午前に礼文島、午後に利尻島を訪問するスケジュールだと礼文島滞在時間が長くなるので朝一番のフェリーで礼文島に行くことにした。

定期観光バスはフェリーを降りてからフェリーターミナルの宗谷バスの窓口で乗車券を購入することもできるが、さほど長くない接続時間で乗車券を購入するのは煩雑である。発車オーライネットで予約・購入すれば当日にメールの決済画面を見せるだけなので手軽である。ただしフェリーが欠航になって定期観光バスに乗れない場合には手数料を払って払い戻す必要がある。天気予報を見ていればフェリーが欠航しそうかどうかわかるので前日に購入すればよい。冬の日本海は気象条件が厳しく欠航しやすいが、夏の日本海は穏やかなので欠航しにくい(それでも欠航することもあるらしい)。

早朝の礼文島行のフェリーに乗るためにはかなり早起きしなければならない。フェリーターミナルに駐車場があるが1日1000円するので、宿泊料金にもよるが駅周辺の宿から歩いたほうが有利である。フェリーターミナルの売店は5時40分からだが、おにぎりやサンドイッチはセイコーマートのものである。フェリーターミナルに入る道の角に5時から営業しているセイコーマートがあるので、昼食はそこで買うとよいだろう。定期観光バスはフェリーに接続しておりフェリーターミナルであまり時間を取ることができないし、フェリーターミナルの売電は品揃えが良くないので、稚内で昼食とできれば夕食も購入しておいた方がよい。実は利尻島にも礼文島にもセイコーマートがあるのだが、フェリーターミナルから離れているので公共交通機関利用の観光客には利用しにくい。

フェリーの搭乗受付は出港20分前からである。出港5分前までに搭乗口を通過しないと乗船できない。ハートランドフェリーのホームページでは出港30分~40分前に乗車券購入を済ませるべきとあるが、そこまで急ぐ必要はなく出港20分前に到着しても十分に間に合う。1等船室ならどうせ予約するだろうし、2等船室は定員が多いのでよほどのことがない限り乗船できないことはない。

礼文島も利尻島も初めてだったし、暖かかったので、外のデッキで過ごした。ノシャップ岬を回り込んだ辺りから利尻富士が見える。利尻富士は天塩から稚内にかけてのランドマークで、利尻富士が見えてくると稚内に近づいたと感じる。利尻富士は本土からでもよく見えるが、利尻島に近づくと裾野からよく見える。

礼文島の香深港に到着すると定期観光バスが待っている。夏の観光シーズンだし、同じことを考える人が多いのか、定期観光バスは乗客が多く大盛況だった。大型バスが離島特有の狭い道を縫うように走るので感心するが、自分で運転しなくてよかったとも思う。礼文島の観光資源は海抜0mから生息している高山植物である。バスの車窓からでも見えるのだが、バスの速度だと小さな花まで見えにくい。

バスは最初の訪問地澄海(すかい)岬に到着すると駐車場から岬の展望台まで坂を登る必要があり、そこでガイドさんの解説つきでいろいろな高山植物を見ることができる。自分で車で訪問するといろいろ花が咲いているということまでしかわからない。ガイドさんの解説のためにも定期観光バスに乗る価値がある。澄海岬はその名の通りこの海域の澄んだ海を眺めることのできる場所である。ただし気象条件に恵まれないとただの海である。晴れていてかつ風が弱くて波が立たないときがベストで、必然的にベストシーズンは夏である。そもそも礼文島も利尻島も冬は風が強く寒いうえ、海の近くであっても積雪1.5mくらいある。海抜0mで高山植物が生息するということは、海抜0mでも高山並の気象条件である。

次の訪問地はスコトン岬である。ここは日本最北限の場所として知られており、トイレにも「日本最北限のトイレ」という看板がある。日本最北端は宗谷岬で、宗谷岬は択捉島よりも北にあるが、宗谷岬にはほぼ何もなく、北の最果て感があるのはスコトン岬である。スコトン岬には「島の人本店」というお土産屋さんがあり、地元の昆布製品を購入できる。

バスは香深まで戻ってから桃台猫台展望台に行くがここは島で唯一島の西側に車で出られる場所である。香深港から新桃岩トンネルを越えてすぐである。トンネルが開通するまでは狭い山道を15分くらいかけて走る必要があったが、トンネル開通後は5分で出られるようになった由。桃台猫台展望台に着くと、桃岩や猫岩や地蔵岩といった奇岩を眺めることができるが、島の西側に出て島や海を眺められる場所でもある。

バスは北のカナリアパークを経由するが、香深港を経由するので先に香深港で下車することもできる。北のカナリアパークをスキップすれば香深港で昼食の時間を取ることができる。北のカナリアパークは映画「北のカナリアたち」のロケのためにわざわざ建設した小学校校舎が保存されている場所である。いかにも古めかしい校舎だが、10数年前に大道具さんが古い校舎のように仕上げたものである。なぜここを校舎のロケ地としたかというと、背景に利尻富士が映るからである。礼文島から利尻富士がよく見える場所なのだが、夏の日中は利尻富士に雲がかかりやすく、せっかく北のカナリアパークまで来ても利尻富士がよく見えない。利尻富士が見えないなら北のカナリアパーク訪問をスキップして香深港でのんびり昼食を食べるのがよいだろう。

礼文島はそんなに大きな島ではないし、島の南から北まで往復するだけだし、立ち寄る場所もそんなに多くはないのだが、それでも4時間近くの時間を充実して過ごすことができたのは意外である。

6月から9月までの間は香深港から利尻島の沓形港への便がある。昼に礼文島から利尻島に行く便は沓形港行きであり、利尻島の午後の定期観光バスも沓形港発である。沓形港は島の西側にあり、利尻町の中心である。利尻高校も沓形にある。冬は風が強いのでフェリーの接岸に適さない。

利尻島の観光資源は利尻富士と利尻昆布である。利尻島のベストシーズンは夏以外である。夏は気温が高く利尻富士に雲がかかりやすいからである。夏に定期観光バスの乗ると雲のかかった利尻富士を眺めながら海沿いに何箇所からある観光スポットを訪問することになる。

最初の訪問地は神居海岸パークである。ここでは1000円でウニの殻を割って食べることができる。利尻富士の溶岩が海まで到達しており、海岸でも黒い溶岩を見ることができる。バスの車窓から人面岩、寝熊の岩といった奇岩を眺めつつ、次の訪問地は仙法志御崎公園である。仙法志は昆布漁の盛んな利尻島の中でもとりわけ昆布の漁獲高が多く、昆布の直売所があり、他よりも割安な値段で購入できる。海のいけすには稚内の水族館から出張してきているゴマフアザラシが泳いでいる。

バスはオタトマリ沼に立ち寄る。ここは利尻島で最も大きな沼である。利尻富士の火山島である利尻島は富士山と同様に湧水が豊富で、それが昆布の生育に適している。沼の周囲にはエゾマツやアカマツの原生林がある。ここは利尻島で最も有名な観光スポットで駐車場にはお土産屋がある。

最後の訪問地は鬼脇の集落の奥にある利尻島郷土資料館である。ここはかつての鬼脇村役場の建物が使われている。主に江戸時代以降の産業遺産が展示されている。鬼脇の集落は北方の森に囲まれており、その中に建物尾がまばらに建っているので、町並みは米国北部のような景色である。

そこからは島の東側の海沿いの道を通って鴛泊港まで行く。天塩から稚内にかけての対岸が見え、風力発電の風車がたくさん見える。鴛泊港の手前でやっと雲が晴れて利尻富士の山頂が見えてきた。沓形港から鴛泊港まで約3時間。うち途中休憩が30分x4あり、島を4分の3周する約45kmの道路を正味1時間くらいかけて走る。立ち寄り先の観光地で観光地価格のおみやげや食べ物に気前よくお金を落とす人にとっては便利なバスだが、そうでなければ、2000円出して路線バスで島を1周するか、複数人で訪問するなら割高であってもレンタカーで島を1周する方が手っ取り早いかもしれない。

あとは鴛泊港から稚内まで夕方のフェリーで戻るだけである。フェリーが鴛泊港が出港したくらいから気温が下がったようで利尻富士の全容が見えるようになった。船の後部デッキからは左に利尻富士、右に礼文島が見える。礼文島に日が沈んだ後もしばらくは島が見えていた。


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