家族中毒:生きた光景

日が沈み一日が終わりを迎える。
 黄昏。
 
光と影が美しく境を築き、
陰影の立体感が生命の躍動を描く。
 
この印象深い光景に、
        君は 何を見た。
 
陸橋の上で私達は一層立体的になり、
表情の一つ一つ、シワの一筋ですら、
肉の弾みを思わせる
はずなんだ。
 
夕が来て日が沈む。
並列なオフィスビル。
一緒に並ぶ街路樹。
行き交う人々。
立ち尽くす私と君。
 
君の遠い目。
湛えた空気は儚くも君を平面的にする。
夜になれば姿を消しそうに……。
 
手をつなぐ親子を、
 談笑を続ける親子を、
  家族に向けられた食材を、
 
己と交錯させてはならない!
記憶の改ざんは許されない! 
惨めだ!
     決して結ばれることはない!
 
理想を描き続け、
 無謀という傷をえぐるから、
  今にも大気に溶けそうなんだ。
 
       早く……静かに夜が来る。
          今日はもう帰ろう。
 
日が沈み終焉を迎える。
 黄昏。
 
       盛りが過ぎて終わりへ向かう、
               君の人生の、
                  黄昏だった。

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