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つくる才能 池邉祥子のこと

ものづくりをしていると自然とものづくりをしている友人が多くなる。
誰か注目している人はいてる?と以前質問をもらったことがあるけど、近くにいる人ばかりのことが思い起こされた。近くにいるからこそ深く知り、才能やセンスに惚れ込む。

その質問に真っ先に名前を挙げたのが池邉祥子ちゃん。彼女はお洋服をつくる人でTALK TO ME というブランドのデザイナーである。


この人の作るものはすごい。ものづくりの姿勢がすごいと言うべきか。ここまで隙のない服を何枚も作り続けるのは正直しんどいだろうな、、とすら思う。

今流行りなのは一目見てあそこのブランドだなって説得できるようなデザイン、アクセサリーやバッグは記号的に一目で反応しやすいミニマムなモチーフがトレンドなのかなって思う。(このトレンドを生み出したのはインスタを始めとしたSNS本位のライフスタイルだからまさに「ファッション」なんだろうな)

それに比べると祥子ちゃんの洋服は、はっきり言ってオリジナル性を強く感じるようなデザインではなく、ごくごくスタンダードに見えるデザインだと思う。
シンプルゆえに拡散されにくい才能。

写真で伝わるのは世界観。ただ、この洋服の真髄は触れないとわからない。袖を通せば背筋が伸びる、ファッションではなく服飾。服飾とは記号的なファッションではなく自分をアップデートするための衣服なのかもしれない。

だから祥子ちゃんの作る洋服は写真にその魅力は写りにくい。一つ言えるのは、背の低い人も高い人も細い人もぽっちゃりした人も、身につけた女性が美しく見える不思議な服。
決して奇抜なデザインじゃないその洋服は、上質な布を纏うための解決策であり、自分の肌の質感や体のラインや所作を引き立てる、衣服という道具のようでもある。

思えば彼女と初めて会ったのは2014年、「かみこに学ぶ」というワークショップでだった。和紙に蒟蒻糊を吸わせて揉み込むと紙衣(かみこ)というしなやかで強い布のような素材になる。それを体験してクラッチバッグを作ろうというワークショップだった。(余談だけど、和紙が引っ張ってもちぎれない素材に変わっていくのがめちゃくちゃ面白かった、、)

このWSに講師としていて来ていたのが彼女。紙衣の歴史について資料を交えて話している様を見て、なんて聡明で上品な女性なんだろう、、、と関心し、驚愕したのは1984年生まれの同い年だったということ。同い年というと親近感を覚えるフレーズなのにショックを受けたのは初めてだった。
帰って彼女のwebサイトを見てもその世界観の美しさに圧倒された。

このサイトを見たことは、当時まだホームページを持っていなかった私が作らなければと思ったきっかけの一つだったと思う。
(これを受けて2年後の2016年に開設しました→https://kawainatsumi.com

その後TALK TO MEの名古屋での展示会に行き、京都に行き、東京に行き、着れば着るほど彼女の作る洋服のファンになっていき、こんな色んな場所に来る人は初めてだとカラカラ笑う彼女といつしか友人になっていた。

どうやったらこんな隙のないものづくりができるんだろう、と京都の北区のアトリエを訪ねてみた。

上品さの塊な人。上品さと裏腹な変態性とチャーミングさが時折見え隠れする愛しい人。この日ずっと首にかけていたメジャーは職人のアクセサリーのように見えた。


アトリエで話を聞いてみると、国内や海外からの生地の探し出し、全国の縫製工場とのやり取り、型紙のこと、染めのこと、衣服が出来上がるのに当たり前のプロセスなのだろうけど、一つ一つのストーリーの厚みが衣服の解像度を上げているように感じた。生地や形への追求に全くの妥協がない、、、!

洋服の貝ボタン一つにしても穴の大きさや位置、ツヤ感や薄さをオーダーして作ってもらっているそう。


今回話をして改めて知ったのはTALK TO MEの洋服は「すべて天然素材」ということ。こう書くとリネンのほっこり系の洋服をイメージしがちだけどそれとは対極するイメージ。そこが不思議で面白い。
でも裏地はツルツルしてるから化学繊維だよね、、?と聞くとキュプラという素材を使っていてそれは再生繊維というもので天然繊維を溶かして作るものだそう。
違う分野の話面白い、、、!

福岡で染めてもらっているという藍と泥を重ねた草木染めの1着。草木染めの中でもかなり手のかかる染めだそう。藍色を見つめていると色んな風合いが見えて山の景色のような布だった。

どの布を手に取っても一つ一つにストーリーがある。
インドのカディという布(手つむぎ、手織り)は男性が織り手ということもあり力強く、ダイナミックさがある。そのダイナミックさゆえか、異色糸や化学繊維が時折入っていることがあり苦労が多いそう。(布を染めに出すと星屑のように染め上がらない箇所が出てきて発覚するらしい)

一方、ラオスの生地は織り手が女性の農耕民族で、農作業の合間に織ってるからかおだやかでたおやかな仕上がりなんだそう。
布を通して文化や思想いろんなことを見てるんだろうなあと思う。


色んな女性が色んな場面で着ることを想像しながら思考を重ねた彼女の洋服はどんな人でも似合う1着がある。カジュアルでもフォーマルでも着れる、友人と同じ服を選んでもそれぞれ違う服に見えるのもまた不思議。

言ってしまえば洋服なんてただの布の筒なのに、彼女のその筒は柔らかな空気を内包する布の振る舞いに見える。
布が女性を引き立てる形にたどり着くまで思考と試行を繰り返しているようだ。

去年発表したシルクサテンの洋服は着た人も触れた人もその質感が記憶に残る。
シルクというと少し前の世代が好む素材で馴染みの少ないイメージなのに、抱きしめたら記憶に残る、忘れられない質感というコンセプトに作り上げたのは見事だと思う。

好きな人や久々に会う友達に会う時、取材、講演会、そういった機会にほとんど無意識に彼女の洋服を手に取っていることが多い。

ものづくりの視点から見てもファッションや服飾の視点から見てもアートや工芸の視点から見ても、はっきり言って彼女のものづくりは他に類を見ないと思う。

おばあちゃんになった時も着ていたい、シーズンを越えても価値ある1着。しかもおうちで洗濯できる洋服が多いのも好感度大です。着てへたっていくのではなく、風合いが変わっていくのも衣服の楽しみ方の一つにしたい。


そうそう、大事なことを書きそびれていたけどファッションブランドは毎シーズンコレクションが変わり前のシーズンの服は過去の遺産になってしまうけど、TALK TO MEはスタンダードコレクションとして少しずつ新作が加わり更新されていくスタイルなので、去年や一昨年に作られたものも同じ価値ある衣服として捉えられるのもいいなと感じています。

今月末に京都と東京で展示会があるから、是が非でも体験してほしい。TALK TO MEの洋服が1つクローゼットに加わるだけできっとご機嫌でいられるはず。今年からメンズ展開もしてるので男性陣も要チェックです。


今回スタンダードラインに加わる新作は長年考え続けていた「赤」について。
思考と試行を繰り返した研究の結果のこの色と質感と形。彼女の作る洋服全てに言えることだけど、ハンガーにかかった姿は仮の姿なので必ず着てみてほしい。

【TALK TO ME 展示会 / 東京
会期:2019.4.23 (火)- 4.28(日)
時間:11:00-19:00
※23,24日は要予約。
場所:蔦サロン
東京都南青山5-11-20
090 7391 3358

【TALK TO ME 展示会 / 京都】
会期:2019.5.8 (水)- 5.15(水)
時間:12:00-19:00
※8日(水)-11日(土)は要予約。
場所:TALK TO ME atelier
京都市北区小山中溝町14-18
090 7391 3358

【予約について】
東京展示会、4月23日(火)、24日(水)と京都展示会、5月8日(水)-11(土)は予約制となります。
件名に「展示会予約」と記載の上、本文にお名前とご都合のよい日時・人数・電話番号を記し、lab@sicl.jpまでご連絡下さい。

今年中にサイト内にオンラインショップもオープンするそうなので、またその時は情報アップしますね。取り扱い店舗は最後に記載しておきます。

TALK TO MEのインスタグラムはこちら

weddingや晴れ着などフルオーダーのtalk to herのラインもあるので、そちらはサイトをチェックしてみてください。

これから先、数十年に渡って池邊祥子のものづくりを見届けたいなと思い今回記事にしました。おばあちゃんになっても彼女の服を着続けたい。

【TALK TO ME 取り扱い店】
ten
東京都江東区佐賀 2-1-17
web: https://www.10-tokyo.com
instagram: @10_tokyo

LIVETART

LIVETART コレド室町店
東京都中央区日本橋室町1-5-5 コレド室町3 2F
LIVETART 吉祥寺店
東京都武蔵野市吉祥寺本町2-3-1 東急百貨店 2階
web: http://livetart.jp
instagram:  @livetart_official

unum
宮城県仙台市青葉区大町2-6-27岡元ビル7F
web: https://www.unum.company
instagram: @unum_sendai

夏至
長野県長野市大字長野大門町54 2F
web: http://www.geshi.jp
instagram: @gallery_geshi

AUTHOR
愛知県名古屋市北区駒止町1-18-1 トータス駒止1F
web: http://author-web.com
instagram: @author_no_tensyu

archipelago
兵庫県篠山市古市193-1
web: http://archipelago.me
instagram: @archipelago.me


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