アークザラッドR ネタバレ考察&あらすじ紹介 ~3との繋がりや“改ざん点”等を考えつつ、アークR世界に想いを馳せる
アークザラッドR(以下、アークR)は、“改ざん”された結果、“元の世界”とは異なる軌跡を歩むことになった世界を描く物語である。
なおここで言う“元の世界”は『アークザラッド(以下、アーク1)』『アークザラッドII(以下、アーク2)』『アークザラッドIII(以下、アーク3)』などで主に描かれる世界だと考える(詳しくは後述)。以下は簡単な時系列だ。
2018年8月にアークザラッドシリーズの完全新作として配信開始されたアークRでは、序盤からR世界が「3世界とはパラレルな別世界」であるかのように描かれていた。R時点の残存地形や人々の状況がアーク3と異なるにも関わらず、なぜか“アーク2の続き”のような形で物語が進むのだ。
一方で作中には、OPから「歴史を作り変えると公言する者(=改ざん者)」が登場。物語が進むにつれ「R世界とは、『改ざん者』が勝手に世界を“改ざん”したことで生まれた時空」だと判明した。特に4章7幕以降は様々な事実が明らかになったが、“改ざん”の全容にはまだいくつか謎が残っている。
とはいえこれだけは断言できる。
アークRの世界は、アーク3の世界と繋がっている。
R配信開始以降、巷では「Rは3を無かったことにした、黒歴史にした」という感想が散見された。確かに序盤は作中描写が分かりづらかったのは事実だし、ゲーム外事情も相まり、そう見えても仕方なかったかもしれない。
だが実際のシナリオでは、黒歴史どころか「3世界こそ“元の世界”だ!」と叫ばんばかりの直球描写が登場する他、3からRへ至る道筋も見えてきた。Rは単なるパラレルワールドの話ではなく、むしろ“3への回帰を目指す物語”ではないだろうか。アークザラッドの世界構造をふまえれば3とRは十分に両立しうる物語であり、ともに正史だとしか思えないのだ。
当記事では考察の前提として、まずシリーズにおけるRの立ち位置を考えた後、物語の概要が分かるようRのあらすじ紹介&解説という形でストーリーをざっくり振り返る。
さらにこれまでのシリーズ作品もふまえた上で、「クロイツはなぜ神に抗ったのか?」「大災害が大崩壊へ変わった経緯は?」「世界を浄化する仕組みとは?」など、主にアークRの描写を中心に、アークザラッドの世界について独断と偏見で考察していく。
※非常に長い記事(約10万字)のため、かなり読みにくいと思います。下記の目次をご利用いただくと、少し読みやすくなるかもしれません。
アークザラッドシリーズにおける「R」とは?
まずはシリーズにおける『アークR』という物語の立ち位置について考えていこう。以下はシリーズ作品(主なゲームのみ)をまとめたものである。
なおアークザラッドには漫画や小説などの展開もあるが、そこまで含め考察しはじめると際限が無くなるため、今回の記事では取り扱わない。
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アークザラッドは、“異なる世界”が共存しうる物語
アークザラッドシリーズは歴史が非常に複雑な作品だ。その最大の要因は、時間を行き来できる者の存在だろう。そして時渡りが可能だからこそ、同じ物語の中に複数の“異なる世界”が存在しても何ら不思議はないのである。
そもそもアーク達が揃ったのは、彼の父ヨシュアが過去に未来に時を走り続けたからだという。2では割れた精霊の鏡に再び力を取り戻すため、ヨシュアの形見で過去へ飛んだ。機神復活はフィニアが過去へやって来たことから始まる。Rではミズハが現代に来るために時を渡った以外にも、確認できただけで最低5回は時を行き来した。
時を超えることで、彼らは何度も歴史を変えている。だがヨシュアの時渡りにはチョンガラやサリュ族らの話から読み取れるだけの情報しかなく、詳細はほぼ不明。ククルやフィニアはともかく、ミズハやワイトも今までどれぐらい時を渡ったかはまだ作中で明言されていない。
彼らが具体的にどのタイミングでどのように歴史を変えたのか、私達にはその全容が分からない。世界は知らないうちに変わりゆき、様々な要素が複雑に絡むことでアークザラッドの物語が進んでいくとも言える。そしてその全容が分からない以上、どの可能性も否定できないのが現状だろう。
R世界と、これまでのシリーズ作品の世界との関係は?
アークRは“アーク2の続きを描く物語”のように見える。これはある意味正しいが、ある意味では間違っている。なぜならR世界では「3000年前の七勇者の戦い」や「アークの旅立ち」から既に歴史が書き換えられているからだ。
R序盤のトッシュやエルクらが記憶する戦いは、私達が知る戦い(アーク1~2)とは異なる。それが分かりやすく明示されるのは「ゴーゲンのキャラクエスト」とメイン5章以降で描かれる「黒騎士誕生に至る物語」だろう。
アークRは、単純な2の続きではない。「アーク1~3などで描かれた歴史」を作中の存在が“改ざん”し、さらに別の存在が“改変”し……いくつもの書き換えが重なり絡まり合うことで初めて成立する、もっと複雑な続編なのである。
アーク1~3が“元の世界”と考える理由
メインシナリオに追加された最後のシナリオ『???』にて、“最後の戦い”直前のミズハは「改ざん者を倒して“元の世界”に戻る」と認識していた。この“元の世界”こそ“アーク1~3などで描かれた世界”のことだと思われる。
物語に散らばる中で注目すべき描写は『ロシュフォール家の極秘事業計画』だろう。こちらは番外編的なシナリオなのだが、なんと冒頭から「改ざんされていない時空のお話」というストレートな言葉から始まる。その内容はアーク3の同名ギルド仕事No.096の前半をかなり忠実に踏襲したものだった。
アークRのアレクは帝国軍人だ。しかしこの“改ざんされていない世界”のアレクはハンターをしており、どう見てもアーク3の物語を切り取ったようにしか思えない。
また公式インタビューの「(アンリエッタの6章登場は以前から決まっていて)せっかくなら『III』を再現したいよねと作ったイベントが「ロシュフォール家の極秘事業計画」」との言葉もふまえると、当シナリオは「“アーク1から3に至る世界”=“改ざんされていない元の世界”」をほぼ直球に示すものだと確定してよいだろう。
なお3世界とR世界の在り方を変えた最大の要因は、2ラストで起きた大崩壊(3で言う大災害)の影響だと考える。3とRの違いの大半は、詳しく見れば見るほど崩壊状況が関係するような気がしてならないのだ。
例えば、3でほぼ水没していたスメリアは、Rだとそれなりに陸地が残っている。Rでスメリアへ帰郷し復興に尽力しているトッシュが、3では遠く離れたテスタを仕切っていたのも無関係ではないはずだ。3の彼はそもそも故郷のスメリアに帰れなかったのだから。
よっておそらく最大の“改ざん点”も、この崩壊に関する事項だろうと推測できる。(詳しくは「改ざん」の項目で後述)
アークRのストーリー解説&あらすじ紹介
2022年現在、アーク1~3をはじめアークザラッドシリーズ作品の大半はソフトと本体さえ入手すれば今でも物語を楽しめる状態だ。対して今から新たにアークRを楽しむのは困難だ。個人的にはできれば物語は皆様がおのおの実際に実機で遊んで楽しんでほしいところだが……アプリ配信が終了したアークRの新規ダウンロードは不可能となっている。
ということでここからは“あくまで考察の前提”として、アークRのメインストーリーをざっくり紹介しつつ、注目ポイントを解説していこう。
【YouTube】アークRプレイ動画リスト(原則登場キャラ編成/実況無し)プレイ動画を観たい方は↓からどうぞ。アークRのストーリーやクエストを実況無しで、片っ端からひたすらクリアしまくった動画のリストです。
OP(オープニング)の解説
OPは基本、アークやエルク達の戦いの軌跡を振り返る内容だ。アークとククルの出会いから始まって、2ラスボス後のEDにあたるシーンまでと、アーク1~2をプレイ済の方にとっては懐かしい場面ばかりだろう。
だがこの段階で既に、不穏な点がいくつもある。
当動画の紹介内容が、部分的に“元の時空”と異なる。例えばアーク3や精霊の黄昏などでは『大災害』と表現されていたあの悲劇(2のED)が、OPでは『大崩壊』となっている点。この違いについて詳しくは後述する。
OP最後に突如として不穏な音楽が流れ、“歴史を作り変えよう(改ざんしよう)とする何者か”が言葉を発する。
その不穏な空気のままに作品タイトルが表示される。まるでこの改ざんからRという物語が始まることが暗示されているようでもある。
なおこのOPムービーは、原則として「最初のプレイ開始時に1回きりしか観られない」ため、サービス中も振り返りにくいコンテンツであった。
第1章の解説とあらすじ
主人公ハルトと、謎の少女ミズハの出会いから始まる1章。
ミズハは帝国の侵略を阻止するため、サニアやトッシュらが目指す『三国同盟』締結に向けて協力することになる。ハルトは「ミズハの護衛」として共に各地を回る形だ。
第1章は、世界情勢や人物を大まかに知れる物語でもある。序盤から飛行船コマンドシップに乗り込み、ミルマーナ、スメリア、グレイシーヌ、ブラキア、アララトス、ニーデル、アルディアという7ヶ国を駆け回るのだ。
世界各国を訪れる中で、アーク1~2でおなじみの人物達と多数出会うことになる。かつて世界を救った彼らは“英雄”と呼ばれ、アーク3と異なる生活を送っているが、ここにも“改ざん”の影響が出ていると考えてよいだろう。
主人公のハルトは基本寡黙で無関心に見えるが、時々感情をむき出しにする瞬間がある上、英雄達について妙に詳しい。そしてミズハには「どうしてもアルディアを食い止めたいと願う理由」がある模様。散りばめられた様々な謎は、これから物語が進むことで明らかになっていくはずだ。
<第1章のあらすじ-1>
世界の人口と大陸の半分を失った“大崩壊”から10年経った。
復興が進むミルマーナ。自警団に所属する少年ハルトは、大国アルディアの戦艦から謎の少女ミズハを助ける。
彼女はサニア公女に「まもなく戦争を起こそうとするアルディアを止めてほしい」と訴えた。
サニアから“ミルマーナの特使”に任命されたミズハは、護衛のハルトと共に飛行船コマンドシップにて飛び立った。
スメリアに着いたミズハは、“ショーグン”ことトッシュにもアルディアを止めるよう戦ってほしいと頼み込む。
だがトッシュは戦争を拒否し、実は水面下で戦わずにアルディアを止めるべく動いていると打ち明けた。
それこそが「ミルマーナ・スメリア・グレイシーヌによる三国同盟」なのだと。
<第1章のあらすじ-2>
同盟締結に向けてトッシュに協力することになった2人は、世界各地をコマンドシップで駆け回る。
グレイシーヌではラマダ寺の権僧正イーガに、ブラキア難民キャンプではリーザに会った。
アララトスにて、黒いオーラに包まれた謎の女“聖母”と、ハルトのかつての自警団仲間であるヴァリオに遭遇。
ミズハは「“聖母”は“黒騎士”の仲間であり、皆やハルトを殺した」と主張し周囲を困惑させる。
ヴァリオは、ミズハを“時渡り”と呼んだ。
楽団の団長ポコと合流したハルトとミズハは、アルディア帝国に潜入。
協力者であり、アルディアの情報を持つ歌姫シャンテを救出した。
第2章の解説とあらすじ
2章では各国におけるアルディアの不穏な動きが活発になり、黒騎士や神獣まで立ちはだかることになる。
そして「戦わずして世界を守りたい」というサニア・トッシュ・ミズハらの願いむなしく、最終的にはアルディアの宣戦布告によって本格的な戦争が始まってしまった。
なんとアレクは敵軍アルディアの士官として、傭兵のシェリルと共に登場。ハンターとして活躍していたはずのアーク3とは明らかに異なっている。
アーク1~2を遊んだ方は、シルバーノアの復活、ヤゴス島のリアが成長した姿、七勇者ノルと同名の少女なども気になることだろう。またロマリアに関する話題が頻繁に出てくることも不穏に思うかもしれない。
アルディアは各国で大量のキメラモンスターを生み出し兵士として利用しようとしている。その実験に使われているのはかつての“白い家”の技術そのものではなく、崩壊前より大きく進歩した技術だという。
ミルマーナで倒した敵が、漆黒の痕(旧ロマリア)のモンスターと同じ。
漆黒の痕は、かつてロマリアの空中城が存在し、大崩壊の引き金となった場所。現在は瘴気に満ちた荒野で、何者も生きられない死の国と化した。
そして黒騎士は、姿も技もあの“彼”に酷似している。アーク2に続く物語ならば、これが彼であるわけがないのだが……。
<第2章のあらすじ-1>
シャンテが入手したのは「アルディアの戦争に向けた動き」を裏付ける内容だった。
ミルマーナのサニア公女は、モンスターの襲撃を受けたこともあり、アルディアに対抗するための“ミルマーナ正規軍”の設立を渋々ながら許可。
アルディアの賊に襲撃されたスメリアでは、戦いの末にハルト達が異空間に閉じ込められた。
だがミズハの叫びに呼応し強い光が広がったかと思うと、元の場所へ転移し戻ることができた。
ここで敵の襲撃目的が「スメリアを混乱させ、その間に三国同盟調印式を阻止すること」と判明。
急ぎ向かった調印式会場のグレイシーヌは、既にアルディアから攻撃されていた。
襲撃者を追い詰めたところで黒騎士が登場したが、“時渡り”の姿を確認すると「今日のところは見逃してやる」と去る。
この襲撃によりラマダ僧の勢力が弱まり、逆にアルディアとの同盟を主張する派閥が勢力を強めた。
<第2章のあらすじ-2>
西側諸国は東以上にアルディアの影響を受ける地域であり、ハルト達はその状況を目の当たりにした。
ブラキアのバンザ山では「“精霊”の書き換え」を行う少女ノルを見かけ、巨大な“赤の神獣”との戦いになった。
アララトスは隣国に侵攻されつつあり、侵攻を支援するアルディア軍には士官アレクと傭兵シェリルの姿も。
ニーデルでは、アークスを率いるヴィルマーが捕われた。
彼の孫娘リアとヂークベックと協力してヴィルマー救出に成功したハルト達は、そのまま“漆黒の痕”へ向かう。
そこには、かつてアーク達と共に世界を救った飛空艇シルバーノアが眠っていた。
“黒の神獣”に襲われそうになりつつも、シルバーノアを発進し脱出に成功。
時を同じくしてアルディアの皇帝クロイツが全世界に向け宣戦布告。
世界を揺るがす大きな戦争が始まってしまったのだった。
第3章の解説とあらすじ
2章最後の開戦を受け、3章では各国がアルディアに侵略される様子が描かれる。さらにシュウがアルディア軍に所属していることまで判明した。
流れを変えたのは、満を持して現れたエルクだろう。それまで後手後手に回っていたサニアやハルト達は、エルク登場を機に徐々に攻めの姿勢に転じ、その流れのまま敵の空中要塞を撃破。ここから彼らの反撃が始まるのだ。
アーク3等との比較ではシュウがRでも敵側組織に組する点は見逃せない。(3ではアカデミーに、機神復活ではMMMに……それぞれ諸事情ありだが)
引き続きアレクにも注目したい。アレクはアルディア軍に所属する兵士でありながら、今回の開戦に違和感を抱く描写がある。またサニアはアレクについて「もし何かが違っていたら、力強い仲間になれるかもしれない」と話している。このあたり、“本来”ならばアレクはサニア達と似た志を持つ者であり、敵対するような人物ではないことを示唆していると考えてよいだろう。
<第3章のあらすじ-1>
ミルマーナ正規軍がクーデターを起こし、アルディアに寝返った。
ハルトはサニアらと合流し、ミルマーナを脱出。
スメリアはアルディア襲撃で壊滅しかけていた。
ハルト達はトッシュを救出しようとするが、アルディア軍の大佐となったシュウがトッシュを連行していった。
グレイシーヌでは、アルディア軍と結託する南軍とラマダ僧による内戦が起きようとしていた。
ブラキアでは既に首長会議の場にアルディア軍が入り込んでいた。
追い詰められたリーザを助けたのは、行方知れずだった“炎のエルク”。
彼は身を隠しつつ、敵へ対抗するための組織を編成しつつ動いていたという。
<第3章のあらすじ-2>
アララトスもアルディア軍に侵攻されていた。
ハルトとミズハとサニアは遺跡で出会った士官アレクを説得し、一時的に敵軍の攻撃を弱めることに成功。
チョンガラを救出するが、国はアルディアに占領される。
チョンガラが仕入れた情報をもとに、敵の空中要塞の隙をつき攻撃すべく、エルク率いる反帝国艦隊が集結。
ハルト達はシルバーノアで空中要塞に突入し内部から破壊し、立ちはだかる黒騎士も撃退して脱出。
ハルト達が敵戦力を削いでアルディア軍の侵攻を食い止めたこともあり、各国では反アルディアの声が高まることとなった。
彼らを代表しサニアは全世界に「反アルディア同盟の設立と、アルディアへの反撃」を宣言した。
第4章の解説とあらすじ
4章では反撃に転じたサニア達が、各地を少しずつアルディアから解放していく。依然として占領されたままの地域も多いものの、風向きは悪くない。
またエルクを中心に準備を進め、アルディア本拠地のクロイツ皇帝と対峙したが……その後に登場した黒騎士にやられてしまう。絶体絶命の中、ハルトとミズハがなぜか過去に飛ばされたところまでが描かれている。
これまで敵として立ちはだかってきたアルディア軍だが、特に4章では彼らが一枚岩ではないことが浮き彫りになる。ブラキアでは「人間のキメラ化」という非人道計画を進める勢力と、それを阻止する勢力が存在すると判明。またアルディアを統治するクロイツ皇帝は、黒騎士と盟約を結んでおきながら、実は相手をよく思っていないのだと。
クロイツによって、アルディアの背後にいる“根源の神”を名乗る存在も明らかにされた。その神こそが「この世界の全てを仕組んだ」のだという。
そしてエルクは、黒騎士のことを「アーク」と呼んだ。メインシナリオではトッシュやイーガ達が黒騎士に反応する描写こそあったものの、直接名前を呼んだのはこれが初めてのはずだ。
なおミルダとのやり取りではミズハが未来から来たと明言。また4章ラストでハルトとミズハが過去のトウヴィルのシオン山(アーク1開始直後のアークとククル初対面時)に飛ばされるという実際に“時を渡る”描写があった。
<第4章のあらすじ-1>
反アルディア同盟設立宣言で、各国でアルディアに抵抗する動きが活発化。ハルト達は各地を回って支援する。
スメリアでは飛空艇ドック防衛に成功し「元はアンデル率いる旧スメリア軍の飛空艇艦隊」を新戦力に加える。
グレイシーヌではまたもや黒騎士に遭遇するも、ペイサス図書館の司書ミルダが“ある人物”から預かった“精霊の護符”の力を借りて難を逃れる。
スメリア艦隊合流により、サニア達はアルディアに奪われていたミルマーナを奪還。
グレイシーヌでは内戦が落ち着き、反アルディアに舵を切る。
時期は逸したものの、ようやく状況が整ったことで三国同盟の正式締結に向けて動き始めたのだった。
反アルディア同盟は次の戦いに向け準備を進める。
英雄グルガが姿を現したブラキアでは「人間を大量にキメラ化する」という非人道実験を阻止し、アルディア兵士の増加を食い止める。
アルディア占領中のアララトスではレジスタンスを救うついでに、敵の輸送艦や物資を奪った。
さらにニーデルにある敵の巨大ドッグの無効化に成功し、アルディア艦隊の一部の足止めに成功。
<第4章のあらすじ-2>
準備が整った反アルディア同盟は、敵の本拠地であるアルディア皇帝府に艦隊で乗り込む。
エルクと共に突入したハルトとミズハは、密かに脱出したトッシュと合流。
ついに対面したクロイツを見て、ミズハは「私の知っている皇帝じゃない……」と驚愕。クロイツとの戦闘になる。
戦いに負けたクロイツは「この世界は“根源の神”によって仕組まれたもの」だと話す。
彼は神に従うふりをして、英雄や精霊の力に頼ることのない“人間の為の新たな世界”を作ろうとしているという。
そこへ黒騎士が姿を現し、裏切ったクロイツとハルト達を攻撃。
絶体絶命のピンチと思われた瞬間、叫んだミズハを光が包む。
直後ハルトとミズハは雪の中にいた。
ハルトはそこを10数年前のトウヴィルだと断言し、動揺する。2人は過去に飛ばされたのだ。
第5章の解説とあらすじ
主に5章は、黒騎士との決着編である。これまでたびたび対峙してきた黒騎士は、恐ろしく強い存在だ。さらにアークの肉体を乗っ取っていること、山の精霊を利用していること等が判明した。
強大な敵から隠れつつ「対抗手段」を守り通していたゴーゲンが、ようやく5章で合流。ハルトとミズハは“五大精霊”や“ある男の意志”の力を借り黒騎士を打ち倒してアークの肉体や山の精霊を解放し、黒騎士を消滅させることができた。黒騎士との戦いは、綺麗に一区切りついたと言える。
だが全てが解決したわけではない。背後にいる者との戦いはまだ続くのだ。
4章の終わりに続き5章でも、この世界に何が起きたかが怒涛の勢いで判明していく。ゴーゲン・創造者の記憶・黒騎士・五大精霊との会話は初出の重要情報が多く、物語を考える上で外せないはず。特に「神は二人いた」という点は世界の構造を考える要になるだろう。
アーク1~2を遊んだ方は、各地の五大精霊達を巡る5章の展開や、当時の雰囲気そのままに描写される各精霊に懐かしさを覚えるのではないだろうか。
またメインシナリオと直結するサイドストーリーに『記憶浄化(浄化編)』がある。4章ラストから5章6幕までの裏に、サニア・トッシュ・グルガ・リーザ・シャンテ・エルクの浄化編が進行している流れであり、一部の登場人物の動向を理解するには記憶浄化を押さえる必要がある。
ここに来てやっとハルトが主人公らしくなった気がする。序盤は無感情に命令に従う描写が多かったが、徐々に感情を出す場面が増えた。5章では精霊探しを通して、ハルトが自身と向き合ったり、何かを考えたりする描写が各所に見られる。一時的ながら勇者の力を得て、黒騎士を倒すことができたのも、ハルトがミズハと共に成長したからに他ならないだろう。
ハルトとミズハの背景も見えてきた。ハルトはククルの弟だが、養子のためワイトの血は引いていないらしい。そしてミズハいわく「自分がいた未来ではハルトが殺されたため、ハルトに生きてもらうためにこの時代へ来た」と。だが二人の出自をはじめ“肝心な部分”にはまだ不明点が多いようだ。
<第5章のあらすじ-1>
ハルトとミズハは大崩壊前のトウヴィルで、松明を巡って会話する過去のアークとククルを見た。
そこでハルトが「ククルが自分の姉で、自分はトウヴィルで姉と一緒に暮らしていた」と打ち明ける。
「アークが精霊の加護を受ける光景」を目にするが、アークの中に入っていったのは奇妙な塊だった。
2人を追って現れた黒騎士はその塊を“種”と呼び、それを植えた理由は「世界を生まれ変わらせる為」だと。
黒騎士はシオン山の精霊を隷属させており、その力の前にハルト達は成す術も無かった。
ミズハの発した光に包まれたハルトとミズハは、再び現代に戻ってきた。
出迎えたミルダは、ここが“北の最果ての地”であり、皇帝府での戦いから既に数ヶ月が経ったという。
“最果ての神殿”で復活したゴーゲンによれば、「この世界には“創造者”と“改ざん者”という2人の神がいた」。そして「この世界は改ざん者によって すでに書き換えられた世界」であるとのこと。
ハルト達は神殿の最下層で「“創造者”の記憶」と会話し世界の仕組みを知る。
黒騎士に対抗するには精霊の力が必要だが、そのために大崩壊後に眠りについた五大精霊を呼び覚ます必要がある。
ハルトは“精霊の鏡”を、ミズハは“ヨシュアの形見”を、それぞれゴーゲンから受け取った。
<第5章のあらすじ-2>
ハルト達は、目覚めのカギとなる“精霊の巫女”を探し各地を回った。
その過程でミズハの時渡りの力が強制的に何度か発動しつつも、五大精霊全員の力を授かる。
5人の巫女による試練に合格したハルトは、「一時的に勇者に匹敵する“精霊の加護”」を受けた。
「ミズハが時渡りの力を使い続ければ死ぬこと」を知ったハルトは、黙っていたミズハに怒る。
ミズハの体に必要以上の負担をかけないためにも、ハルトは改めて最後の時渡りでケリをつけることを誓う。
再び時渡りで過去のトウヴィルを訪れるが、黒騎士により引き離され、それぞれ1人きりに。
ミズハは雪降る中で必死に山頂を目指して山道を登り、ハルトはヴァリオや自身の幻影に打ち勝ち、2人揃って黒騎士や山の精霊と対峙。
“精霊の鏡”や“ある男の意志”の力を借りて黒騎士を倒したことで、アークの肉体もシオン山の精霊も解放された。
ハルトとミズハは、時渡りで現在の“最果ての神殿”に戻る。
“アルディア軍”と“神の手”が攻め込んできた際、行方不明だったトッシュと七勇者ソルが、ハルト達に加勢。
神殿を脱出しようとしたが迎えに来たシルバーノアは、突然現れた七勇者ノルと黒の神獣により攻撃され、吹っ飛ばされてしまった。
第6章の解説とあらすじ
アークRの最終章である6章。中盤では「古代遺跡で異変の対応にあたるハルト達」と「旧ロマリアでアルディア軍と交渉するエルク達」の二手に分かれ物語が進む。交互に切り替わりながら進む描写には、アーク2の南の塔(エルク達)&北の塔(アーク達)攻略っぽさもあるのではないだろうか。
アーク3でおなじみのアンリエッタ・マーシア・ルッツもそれぞれ登場し、ようやくアレクも活躍を見せる。世界が“改ざん”されたことで別々の人生を送っていた彼らだが、こうやってまた違う形で出会い、そして同陣営でチームを組むことになるあたり、絆の強さを感じる気がする。
ハルト達は、ちょこと共に、古代遺跡の地下71階の先へと進むことになる。地上に戻るための「ルリラルラパパ」も健在だ。
遺跡最深部に待っていたのは、囚われのククルと、元凶である“改ざん者”。ここで操られたククルと戦わなければならない。ただでさえ辛い展開な上、この『黒衣の聖母』戦はRメインシナリオ屈指の難易度だった。敵のクセの強さもあって、苦戦したプレイヤーも少なくないようだ。
そんな辛い戦いを乗り越えると奇跡が起きる。
皆の強い意志に応え、“彼”が復活したのだ。
こうして何とかククルを救い出すことには成功したが、結果としては改ざん者が計画を次の段階へ進めて逃げてしまった。
さらにハルト達は脱出後、軍服を着替えたアレク達と合流し、改ざん者陣営の古の七勇者達と戦うことになる。だがノルはともかく、ワイトは意味深な発言を残し去っていったあたりからして、何か真意があるようだ。
ハルトやミズハと共に戦うのは、かつて世界を救った英雄達はじめ世界各地の人々、復活したアークとククル、人類陣営の七勇者のゴーゲンやソル達。さらにアレク達の活躍で元帝国軍の一部との共闘も決まったことで、「アルディアvs反アルディア」だった構図は「改ざん者vs人類」へ変わった。
これはこの星に息づく者の存亡をかけた戦いなのだ。
アークRの本編は、サービス終了10日前というギリギリのタイミングまでストーリー更新が行われた。まだ明かされていない謎もあるため、物語としては完結していないと言わざるを得ない。だが以下の点をふまえると、個人的には「アークRは、あえてここで終わらせることなく、未来へ繋げる道を選んだ物語」だと考える。
6章4幕で、ハルトの物語としては既にひと段落ついていた。ハルトは物語開始当初と比べ成長しており、さらに義姉のククルを救出できた。ある意味では「アーク2のガルアーノ編までのエルクの物語」を思わせる。終わろうと思えばこの時点で終われたはずなのに、その後に続く展開は「あえて物語を詰め込んだ構成」になっているように見えた。
ラストシーンのシルバーノアが旅立つシーンが、明らかにアーク1のオマージュであった。アーク1は、アーク2の前日譚とも言える物語である。さらにラスト直前の台詞には、続きを匂わせるようなものが複数存在した。
サービス終了後、公式Twitterにて『ミズハからのビデオメッセージ』が公開された。内容はもちろん、ミズハの3Dモデルが一新されているのも興味深く、色々と想像を膨らませることができるのではないだろうか。
またその後のアプリは、実質オフライン版とも言える仕様にアップデートされた上、さらに『???』というタイトルの新たな物語が追加された。内容は「最後の戦い直前のハルトとミズハ」を描くものとなっている。
<第6章のあらすじ-1>
脱出を妨害されたハルト達はいったん“最果ての神殿”に退避。
だが七勇者ノルや黒の神獣、アルディア軍らに押され、状況は非常に不利だった。
そこへアンリエッタ率いるロシュフォール家の軍艦が救援に入る。
追ってくる黒の神獣も撃退し、脱出することができた。
<第6章のあらすじ-2> ※エルクsideをまとめたもの。「あらすじ-3」と交互に話が進む。
アルディア軍は改ざん者側とそうでない側の2つの勢力に分かれ対立していた。
シュウの働きで、英雄のエルク達と、改ざん者につかなかったアルディア軍のゲラー達とで「共闘を前提とした会談」が行われることになった。
堂々巡りのにらみ合いや、敵による強制中断を挟み、アンリエッタが「ロシュフォール財閥が旧アルディア軍を私設軍として再編成する」と宣言。
アレクの言葉もあって、結果として英雄と帝国軍の共闘が決まった。
<第6章のあらすじ-3> ※ハルト&ミズハsideをまとめたもの。「あらすじ-2」と交互に話が進む。
ハルト達はアララトスの古代遺跡で改ざん者側に襲われるが、シュウと元科学造兵廠のルッツに救われる。
ちょこを仲間に加え、地下71階の先に行くと、“神の住処”だという船のような建造物があった。
道中ハルトとヴァリオが対峙し、ヴァリオの目を覚まさせる。
先に進んだところで、“黒衣の聖母(ククル)”と“改ざん者”と対面。
その場の全員が協力し、ククルが強い意志を爆発させた瞬間、アークが蘇り、ククルも解放された。
だが無理に力を使い過ぎたハルトが意識を失ってしまう。
改ざん者が、上空からもう1つの巨大な“天の船”を呼び寄せ、自らの精神を“天の船”に転移させた。
脱出後、“影の男”の導きでミズハが時渡りし、改ざん者によって替えられた3000年前の時の流れを元へ戻す。
ワイトから“絆の光”を預かり、倒れていたハルトが目を覚ました。
<第6章のあらすじ-4>
敵艦隊の奇襲を受けたハルト達はアレク達と合流し、ワイトとノルを撃退。結果として敵艦隊をも撤退させた。
英雄とロシュフォール(元アルディア)とが共闘する方向性できちんと同意したことにより、「改ざん者vs人類」という構図が確定。
アークとエルクが言葉を交わしてから、作戦会議を開始。
“天の船”の中には改ざん者の同胞達が眠っており、彼らが目覚めた時に“審判”が始まるという。
だが“天の船”が動く様子はなく、中にいるはずの改ざん者の仲間がいつ目覚めるかも分からない。
そこに勝機を見出した一同は、各地に散って敵やモンスターへ対処しつつ、大規模な反攻作戦のための準備を整えることになった。
数週間後、作戦を遂行すべくシルバーノアにて旅立つハルトとミズハを、岸壁からアークとククルが見送ったのだった。
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世界を創造した神、世界を改ざんした神
そもそもアークザラッドでは、アーク2までの段階で「神の名を冠する存在」がいくつも描写されている。ヂークベックやグロルガルデをはじめとする機神、アミーグにそびえ立つ神の塔、レイラの鏡や髪飾りで知られる女神レイラ、ギーア寺院にまつられる神ギーア、各地に点在する神殿など。
そして今回の考察で特に注目する神は、アークRの5章1幕17話にてゴーゲンが『創造者(正しき神)』『改ざん者(悪しき神)』と呼ぶ二人だ。彼らについては、ノル・ゴーゲン・アーク・ククルのキャラクエスト、4章7幕以降のメインシナリオで非常に多くが明かされている。
二人の神は世界の誕生やRの物語に大きく関わる存在のため、まず彼らについて考えることこそ、R世界への理解を深める最初の一歩になるはずだ。
創造者とは?
創造者は、アークザラッド世界に命や理をもたらした者だ。
アーク1のスメリア国王が語った聖櫃に関する伝説、アーク2のペイサス図書館の書籍『いにしえの伝承』や『いにしえの時代と人間の王について』などにて語られる“神”は、この創造者を指すと思われる。だが古の時代の伝承はどれも表現が曖昧な上、様々な要因で信憑性には少々欠けるようだが。
現代では既に肉体が滅んでいるが、その記憶だけは、『最果ての神殿』の最深部にある『創造者の記憶』という石碑に残されている。
改ざん者(根源の神)とは?
改ざん者は、アークRで初めて明かされた存在で、アークザラッド世界を書き換え(=改ざんし)支配しようとする者だ。(おそらく『闇黒の支配者』『人間王』とは別人と考えて良い。)
本人は「根源の神」を名乗り、自身を「この星を統べる唯一絶対の力を持つ神」と説明。だがその行いから、ゴーゲンやハルト達は基本この者を“改ざん者”と呼んでいる。
かつて創造者によって“身体”と“精神”を別々に封印させられた。だが“大崩壊”により精霊達の力が失われた影響で“精神”の封印のみが解けた後、アークの身体に入り込み『黒騎士』として行動することになったと思われる。
二人の“神”はこの世界で何をしたか?
神の正体は「他の星から来た者」つまり異星人だと作中で判明した。ここでは本編で語られた内容を元に、推測も交えて解説する。
遥か昔、二人の神は「生まれた星」を失った。彼らはその星で至高の力を持つ存在となったが、代償として地が枯れ、多くの生命が果てたという。
新たな故郷を探した彼らは「この星」に目をつけ、次の故郷にすべく準備を開始。だがこの星は生命力が強すぎて、神自身が制御するのは難しかった。
そこで「精霊(力の管理者)」や「人間たち(力の運用者)」といった生命を生み出して星の力をコントロールさせ、「いずれ訪れる予定の神の同族たち」の来訪に備えることにしたようだ。
しかし二人の神は目指す未来の違いから衝突。戦いに勝利した創造者は、改ざん者の“精神”と“肉体”を別々に星の中へ封印。さらに「改ざん者のように考える者を排除し、星の生命を守るべく、世界を浄化する仕組み」を付加した。だが創造者自身はその仕組みが発動しないよう願っていたとのこと。
そして長い時が流れた。すでに創造者の肉体は滅び、その知識だけが『最果ての神殿』の『創造者の記憶』という石碑に残された。その後、改ざん者が封印から復活。自らを『根源の神』と名乗り、自分の描く未来のために世界を書き換え始めたようだ。(※これがアークRのOPに繋がると思われる。)
以上が、二人の神の発言を元にまとめた内容だ。
さらにゴーゲン達の推測では「別々に封じられた“精神”と“肉体”が同時に解き放たれるとも、いきなり融合するとも考えづらい」「大崩壊により精霊の力が失われ、その影響で封じられていた改ざん者の“精神”が解き放たれたのでは」と。ミルダの推測によれば「星の浄化の仕組みは大崩壊の事」だと。
だが本当に、ゴーゲン達の推測は正しいのだろうか?
前提として、私は「上記の神自身の説明」だけに限れば疑う余地は無いと考える。おそらく創造者は真実のみを話しているだろう。改ざん者は自分にメリットがあれば平気で嘘をつくが(参照:ククルのキャラクエ)、上記の解説部分だけなら創造者の話と矛盾しないため、疑わなくてよい気がする。
だが“神”の言葉は全体的に回りくどい。しかも『創造者の記憶』に至っては「会話能力にやや欠ける仕様の記録媒体の石碑」に見える。聞かれたことに回答するだけで、質問以外の言葉へは無反応のようだ。よって仮に質問者が見当違いの解釈をしていても、聞かれない限り石碑は訂正しないだろう。
それをふまえ5章1幕18話のハルト達と『創造者の記憶』とのやり取りを見ると、彼らは「自分の推測が正しいかどうか」の確認が足りない気がする。
また作中でもゴーゲンは「これはワシの推測にすぎんが」と予防線を張っている上、「話のスケールが大きすぎて、このじじいの頭でもついていけん」と自信の無さを見せることからも、ゴーゲンやミルダ達の推測が間違っている、もしくは少しずれている可能性も考えるべきだ。
具体的にどの推測を疑うべきと考えるかは、世界についてもっと掘り下げた上で随時後述する。
創造者と改ざん者の違い
少なくとも二人には「目指す未来」「他者との関係における理想」「能力」「ものづくりに対する姿勢」に違いがあるようだ。
創造者は「星の生命と、神の同族たちの共存」という未来を目指し、星を発展させるために精霊や人間たちを生み出した。さらに状況にあわせて“理”を付加するというカスタマイズを行っている。
描写から推測するに、創造者は「0から何かを創造すること」が得意なのだろう。また世界構造の根幹には「“他者との絆”や“他者との協力”が力を引き出す源だ」という考え方が見られることもあり、「他者と関わる上でお互いに高め合える関係」を理想としていると思われる。
また創造者は「精霊が眠ること=機能を停止」「精霊が目覚めること=再起動」などと表現している。もしかしたら創造者は理系エンジニア的な感覚で生命のことを機器やシステムとして捉えて世界を創ったのかもしれない。
だが一方で作り出した生命を“子供たち”と呼んでいつくしみ、自分の同族たちと共存させる道を目指した。いうなれば「創作物を愛するクリエイター」なのではないだろうか。
改ざん者は「星の生命を隷属させ、支配した星の力で自分が同族たちの主導者となる」という未来を目指し、生命を隷属させようとした。しかし“創造者が生み出した精霊”をコントロールできず敗北したのだ。
そして改ざん者は、自分で新しいものを生み出せない人種なのだと思う。「わざわざ創造者の創作物に頼らず、自分で新しいものを作ったほうが早いのでは?」と思われる場面が多いのは「“生み出さない”ではなく“生み出せない”」と考えたほうがしっくりくる。かわりに改ざん者は「亡くなったものを蘇らせること(死者蘇生/再生)」が可能なようだ。創作物という観点でいえば「壊れたものの修理・修復」と言い換えても良いかもしれない。
またその言動から「何事においても自分が1番で、自分こそが頂点に立つべき」という理想が見られる。創造者が生み出した生命を“ただの物”扱いして平気で破壊したり分捕ったり、自分の所有物にするためにはどんな計略も辞さないあたりからして「征服者気質の乗っ取り屋」だろう。ある程度は他者にへりくだった態度もとれるあたり、結果的に頂点に立てるのであれば過程はそこまで気にしないようだ。
1度は創造者に敗北したこともあってか、世界を手中に収めるために計画を立てて動く慎重さは見られる。だが肝心の計画に粗が多いのは「人間を下等生物として見くびっているから」というのが大きいと思われる。アークはそれが改ざん者の弱点だと6章で言いきった。
アークザラッド世界において「人を愛しいつくしむ心」「人を守りたいという意志」等が力を引き出すカギとなる理由は、おそらく「創造者がそのように創ったから」だろう。「創造者自身が善人だからこそ、性善説に基づき世界を創ったのでは?」と考えると、つじつまが合う仕組みが非常に多い。
また創造者は「改ざん者のような考えを持つ者から星の生命を守るため、世界を浄化する仕組みを付加した」と。諸々から推測するに、おそらく浄化には犠牲がつきものなのだろう。だからこそ創造者はその仕組みが発動しないことを願っているのではないだろうか。仮にこの推測が正しければ、この描写は「創造者は良心を持ち、自身が“全ての生命”を愛している」ことの裏付けにもなり得ると考える。
しかし全員が全員善人というわけじゃない。“悪人”の代表格こそが改ざん者だろう。自分さえ良ければ良く、黒騎士として平気で何個も街や村を滅ぼしたし、他者を騙したり隷属させたりするのも躊躇しない。改ざん者にとっては自分だけが“唯一の神”で、人間など取るに足らない下等生物であり、全てが自分の思い通りになって当然なのだ。
このような違いをふまえると、ゴーゲンの「正しき神」と「悪しき神」という表現は、言い得て妙だと思う。
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創造者が「崩壊」を仕組んだ背景
詳細は後の『精霊』の項目で後述するが、精霊はじめ創造者の作った「世界」というシステムは「壊れないこと」を前提に作られているようだ。とにかく壊れかけた&壊れた時のリカバリー体制が甘く、実際に時間経過と共に壊れるしかない状態の現実を見る限り“欠陥”だらけに見えてしまう。
とはいえ創造者自身もそんなことは分かり切っていたはず。実際にシステムを稼働した結果、“悪意を持つ改ざん者”により阻害されたため、苦肉の策で“浄化の仕組み”を付加せざるを得なかったのだから。
詳しくは後述するが、付加された「世界が壊れた時の浄化(修復)方法」の中には、少なくとも「世界の崩壊(大崩壊/大災害)」が存在するはず。
アーク2をクリアした方ならご存じの通り、これは「世界の大半を強制崩壊させる」という強制リセットだ。この星では失われた生命は基本的に戻らない上、壊れた世界の修復には膨大な時間と労力が必要なため、リカバリー方法としては決して最良とは言い難い。なぜ創造者は、「こんなにも乱暴で残酷なリセット方法」を仕様として付加してしまったのだろうか。
仮に一般的なITシステムに置き換え、5章1幕18話の説明を考えてみよう。
創造者が作った「命や理」はこの星の環境に合わせ設計・構築したこの星のためのシステムで、我が子のような存在だ。中でも「精霊」は、さながら“仕組み非開示のブラックボックス状態な基幹システム”といったところか。
そんな大規模システム完成後、おそらく仲間のはずの改ざん者がシステムを乗っ取り、独占しようとしたのだろう。だが肝心の精霊や神獣などを制御するスキルが無かった改ざん者は失敗。封印されて動けなくなった。
創造者にとって「改ざん者の裏切りは想定外だった」と思われる。「意図的に壊される事」が前提なら、設計段階で何かしら対策していたはずだから。
そこで創造者は、今後に備え「改ざん者のような者が生まれた場合、その存在を排除し、システム保守を最優先とすべく、『世界を浄化する仕組み』」を付加。だが創造者自身は「できればその仕組みが発動しない事」を願っていた。
創造者の性格をふまえると、たぶん「創造者だけでは、このシステムを構築するのが限界だった」のだと思う。限界というのは能力面だけじゃなく、精神面はじめ他の要因も可能性として考えられる。
創造者だって寿命があるため、ずっとシステムをサポートできない。となると必要なのは自分亡き後も有効な自動リカバリーシステムであり、これこそが「浄化の仕組み」だろう。また「その発動を望んでいない」という創造者自身は、浄化発動にマイナス面があることも認識していたと考えられる。
■可能性1:創造者は全力を尽くしたが、あの浄化システムしか作れなかった
浄化の仕組みは、既に1度完成したシステムに付加された。だが「多数の生命が暮らす星1つ分のシステム」ともなれば構成要素も気が遠くなるほど膨大だろうし、コードの依存関係を少し紐解くにも一苦労なはず。よって創造者が全力でがんばっても「あの浄化システム」を作るのが限界だった。
■可能性2:創造者は“悪意”への怒りを抑えきれず、あえて爆弾を仕込んだ
信頼していた仲間に裏切られ怒りを覚えた創造者は、いつかの未来に再びシステムが乗っ取られることを危惧し浄化システムを付加。だが創造者の怒りはあまりに大きく、未来に生まれるであろう“悪意”に満ちた者も、それを止められないであろう人間達も許せなかった。だからあえて「極端な天罰」を浄化システムとして仕込んだ。しかし創造者自身はそんな事態にならないこと(自分の子供たちが善人であること)を願っていた。
もちろん創造者が何を思いシステム改修したかは、本人のみぞ知る部分だろう。ここで挙げた可能性が部分的にでも当たっているかもしれないし、全く見当違いかもしれない。「創造者の生前の描写」が少ない以上、私達は限られた情報をもとに妄想するしかないのである。
そして改ざん者にはせっかくリカバリーに有効っぽい能力(蘇生)があるのだから、二人が協力していれば、共に欠点を補い合い、得意を活かしあった共同作業で素晴らしいシステムを作ることができたかもしれない。
しかし改ざん者は「創造者と戦い、世界を好き勝手に“改ざん”すること」を選んだ。その理由は「自分が頂点に立つのは当然で、他の全ては自分の踏み台」と考えるからだろう。“他人と高め合う関係を理想とする創造者”と相容れるはずもなく争いに発展したのだと思う。
さらにアーク2あたりの描写を見る限り、最近の人間の大半はそもそも創造者の思惑なんか知るよしもない。無数の彼らがより豊かな生活を送ろうとして遠慮なく世界を壊し続けていくわけだから、「壊れた時の対処が甘い“欠陥”だらけのシステム」が耐えきれるわけもない。
創造者亡き後、長い時を経るにつれ、実際にその世界で暮らす者の手で(=システムを運用する者の手で)実状に従い改修されていくのは、ある意味では自然な流れと言える。その改修が進む様子を実際に見られるのが、アークザラッドシリーズという作品群なのかもしれない。
とはいえ何事も整然としていればよいわけじゃない。「解読困難で不条理・非合理だからこその美しさや面白み」というのも存在し、それは時として完全無欠なものではなかなか味わえないオンリーワンな奥深さにもなり得る。
世界が“欠陥”だらけだからこそ、運用や改修の過程に魅力的なドラマが生まれやすいのだろう。そして世界の構造が複雑に入り組み過ぎているからこそ興味深く、私みたいな人の考察欲をかき立てて止まらないのだろうと思う。
世界に付加された「浄化の仕組み」とは?
5章1幕では、かつて創造者が「世界を浄化する仕組み」を付加したことが判明した。あわせてミルダは「星の浄化の仕組み=大崩壊(大災害)」と推測している。確かにミルダの推測は的を射ているだろう。
だが私は、それだけでは無いような気がするのだ。
5章の創造者の記憶によれば、世界を浄化する仕組みを付与した目的は「もしカノ者のような考えを持つ者が生まれた場合、その存在を排除し、星の生命を守る事を最優先とするべく」とのこと。また「その仕組みが発動しないことを願う」との言葉から、浄化の仕組みの発動にはマイナスな側面もあると考えられる。
そもそも『浄化』は「汚れや悪を取り除き、清浄・清潔にする」という意味である点から、創造者は改ざん者を“悪”または“汚物”扱いしているようだ。
また二人の神と精霊らの言動を総合すると「カノ者のような考えを持つ者」は「自分達のことだけを考えて星の生命を害したり、自然を傷つけたりしようとする者」であり、世界における「清浄」とは「自然が本来の状態に保たれた状態」のことだと考えられる。つまり、この星における「世界の浄化」とは、「世界から悪を排除し、世界を元に戻すこと」だろう。
先の「全ての行動に意味がある」という解釈に沿って考えると、「創造者がこの世界に作った命と理はすべて何らかの役割を持っている」ことになる。多くの『生命』は「力の運用者」で、『精霊』は「力の管理者」。創造者は星が運用され発展する様子を見守りつつ、必要に応じ「新たな役割」を追加したようだ。
そして世界には「おそらく浄化を役割に持つもの」がいくつも存在する。世界が正常に稼働しているとしたら、あまりにも能力が強すぎるのだ。それこそが『聖柩』『勇者』『聖母』『時渡りの力』等であり、これらもまた「世界を浄化する仕組み」の一端だと考える。以下でさらに詳しく見ていこう。
『聖柩』と、『勇者』『聖母』の役割
3000年前に精霊に選ばれ、世界から悪を排除した者達こそ『古の七勇者』であり、悪を排除するために託されたのが『聖柩』だった。仮に「世界の浄化=悪の排除」だとすると、七勇者や聖柩はまさに浄化を役割として任された存在のように見える。
七勇者の役割は後の世代にも受け継がれ、それこそがアーク1の面々なのだという。作中では“運命”というような表現もあった。
精霊の巫女のケースをふまえると「七勇者の役割を受け継ぐ因子」がアークやククル達にも受け継がれているのだろう。勇者も巫女と同様に代々子孫へ受け継がれると思われるため、継承の仕組みも同様だと考えられるからだ。
さて以下は、聖柩(聖櫃)・勇者・聖母関連の描写の一部である。
3000年前に闇黒の支配者を聖柩に封じた後、ワイトは1人トウヴィルに残り、聖柩の封印を守る村を作ったという。(ファンクラブ会誌情報)
ククルは、天の声に「とじるトウヴィルに入り勇者をささえる」よう命じられた。(アーク1)
ククルは聖柩から得た力(聖母の力)で、聖柩に眠っていた邪悪な力(闇の力?)を抑えているが、トウヴィルから動けなくなった。(アーク2)
邪悪な力が増幅し、ククルの力では抑えられなくなった際、ワイト家に伝わる『精霊の鏡』と五大精霊の封印の力で、一時的に封印した。
アークは、自分の持つ全ての力を剣にそそぎ込み、闇黒の支配者を封じた。(アーク2)
新たに作った“聖櫃”で闇黒の支配者を封印。封印にはさらにアレク達が強い意志を示すことが必要だった。(アーク3/※3のみ聖櫃表記)
『精霊に承認された者』であるリリアが、操られて聖柩の封印を解く際に「聖柩を収めし、勇者と聖母の意志よ」と発言した他、意識を取り戻した後にかつてのアークと同じ方法(みずからの命を聖柩の力に変え闇黒の支配者を封じた)をとろうとした。(精霊の黄昏)
七勇者が託された聖柩は、邪悪な力を封印するためのアイテムである。ただしアーク1では聖柩に“滅亡を防ぐための最後の力”などないと語られる。アーク2の風の精霊によれば「聖柩自体にはなんの力もない」「しかし聖柩の中には、無限に力を蓄えることができる」という。また実際にアンデルらが聖柩へ人間の欲(負のエネルギー)を溜め込む描写があった。
3000年前に七勇者が聖柩で闇黒の支配者を封印できた理由は、おそらく「闇黒の支配者を強大な力ごと聖柩に閉じ込め、さらに聖母の力で封印を行ったから」と考えられる。
アーク1で聖柩にさまざまな封印が施されていたことを示す描写をふまえても、「聖柩単体での長期封印は無理」である。3000年前のワイトや、現代のククルが1人でトウヴィルに残り封印を行ったことを考えると、おそらく「邪悪な力の封印(封印の安定)」は、『聖母』の役割なのだろう。
では『勇者』の役割はというと、私は「邪悪な力を閉じ込めることができる器」だと考える。なお精霊の黄昏では「みずからの命を聖柩の力に変えた」と表現されていた。この言葉を信じるなら、“先に聖柩が存在し、勇者はその代わりを担当できる存在”ということになる。
もしかしたら神は、『聖柩』と『聖母』を本来のセットで考えていたのかもしれない(共に『聖』という「神を思わせる字」が入っていることもその理由)。しかし何らかの要因で聖柩が壊れる可能性は十分にある。だからこそ「聖柩の代わりを果たすことができる『勇者』」という役割を作ったり、「聖柩の作り方」を精霊へ教えておいたりした可能性も考えられる。
またワイト家には、五大精霊の力を蓄えることで一時的に聖柩の代わりもこなすことができた『精霊の鏡』が伝わっている。神の血を引くとされるワイトが持つ以上、これも創造者が生み出した可能性もあるが、“精霊の”とつくこともあり精霊由来の可能性もある。
「勇者がその身を器と変えて邪悪を閉じ込め、聖母が封印する」、仮にこれが「創造者が作った浄化の仕組み」の一端という説が正しいとしよう。
もしそうなら「Rでアークが邪悪な存在(改ざん者)に乗っ取られたのは、改ざん者が世界を支配する上で必然だった」といえるし、ゴーゲンの「改ざん者が世界を変えるためにもっとも邪魔で、必要不可欠な存在こそがアーク」という推測もしっくりくる気がする。
また2のラストをふまえると、「浄化には犠牲がつきものでは?」という説ともかみ合うだろう。
さらに2のペイサスの書籍によれば、「精霊達は、自分達が選んだ人間に聖柩を託し、世界が崩壊する前に人間王の意志である闇の力を封印するように命じた」とのこと。つまり「事前に創造者が、特定の精霊へ“浄化を行う者(勇者や聖母)の任命権限”や“聖柩”を与えていた」ということだろう。これもまた「創造者が作った浄化の仕組み」ということになる。
3000年前の七勇者が聖柩に闇の力を封じることに成功。(現代に残された聖柩の状態はじめ各種情報をふまえ確定してよいと思われる)
アーク達は七勇者とは異なり、せっかく授かった聖柩を奪われ、失ってしまった。だからこそアークが「みずからの命を聖柩の力へ変える」ことで闇を封じる選択を取ることになった。
アレク達が、アーク・ククル・精霊の助けも借り、“聖櫃”で闇を封じた。(※3は“聖櫃”表記)
この3つのケースは、過程こそ異なるものの「神が残した浄化の仕組みが、しっかりと機能した例」といえるだろう。
『七勇者』と『勇者の力』
アーク1のラストでアーク達は啓示を受けた。「精霊も神により役割を与えられた存在」ということもふまえ、この啓示は神の意向に沿ったもので、『勇者の力』を得たアーク達に与えられた使命だろう。
それから彼らは啓示に従い、各地で様々なことを行った。そしてアーク2のラストで闇黒の支配者を封印したのである。
3000年前には七勇者がおり、アーク達と同じく聖柩を授かった。彼らは聖柩で悪を封じることに成功。戦いの結果、使命を果たし崩壊だけは防ぐことができたが、地上にいた生物のほとんどが姿を消していたという。
ペイサス図書館の本の内容から、七勇者の使命は「世界の崩壊を防ぐべく、聖柩にて闇の力を封印すること」だったと思われる。現代にて確認できるのはあくまで伝承で、その正確性は不明である。
だがその具体的な使命の内容は、おそらくほぼアーク達が担った使命と同じなのではないだろうか。状況の類似点もふまえるとそうとしか思えない。聖柩を前にしたゴーゲンが特に何も言わないのも、そのような内容の啓示をうけると元々知っていたからかもしれない。彼は3000年前にも聖柩を授かる場にいたはずである。
3000年前は「七勇者」ということで7人の勇者がいる。だが現代において勇者の力を得たのはあくまでアーク1人だけという違いがある。(アーク1のサルバシオの滝で『アークは「勇者の力」を手に入れた』とのテキストあり)
もしくはそもそも『七“勇者”』と、アークが得た『“勇者”の力』とでは、“勇者”の意味が異なるのではないか。
ならばアーク・ククル・ポコ・ゴーゲン・トッシュ・イーガ・チョンガラの7人は「現代の七勇者」というところだろうか。
だからRでは「3000年前の七勇者にわざわざ“古の”を冠して説明している」という可能性も考えられる。
おそらく3000年前の『七勇者』は
・世界の崩壊を防ぐべく、聖柩にて闇の力を封印する
・得た力を使い、他の仲間と力をあわせ、人々を気付かせ導く
という使命を与えられた者のことだろう。
そしてアークが得た『勇者の力』は
・自らの命を聖柩の力へ変えることで、闇を封じる力
のことだろう。(もしかしたら他にも含まれるかもしれないが)
なお『精霊の鏡』が五大精霊の力を蓄えると一時的に聖柩の代わりもこなせることから、「精霊の鏡と聖柩の発動条件は近い」と考えられる。
・アレク達が、おそらく『勇者の力』無しで聖櫃(聖柩)を扱えたこと、その前に精霊の承認を得ていたこと
・ハルトは一時的に勇者に匹敵する“精霊の加護”を得て鏡を扱ったこと
・ゴーゲンは鏡を「“精霊の加護”を受けた勇者や聖女が使うべきもの」と言ったが、『勇者の力』や『聖母の力』が必要とは言っていないこと
・「精霊の承認を受けた者」であるリリアが、聖柩を扱えたこと
上記より「精霊の鏡および聖柩の発動(=闇の力の封印)だけなら『精霊の加護(=精霊の力)』だけで十分であり、必ずしも『勇者の力』は必要ない」という可能性がある。
『勇者の力』を得る条件とは?
ここでは、さらに『勇者の力』について掘り下げる。
特に注目したいのは、Rにおける『精霊の鏡』関連だ。
5章では、ハルト達が奮闘し、再び五大精霊の力を授かることで『精霊の鏡』が力を取り戻した。しかしゴーゲンによれば、精霊の鏡は「あらゆるモノの真の姿を映し出し、闇を封じる力」を持ち、本来「精霊の加護を受けた勇者や聖女が使うべきもの」で、「今のハルトやミズハでは精霊の鏡を使いこなせない」と。
そのためハルトは、精霊の鏡を使うために、五大精霊の巫女の試練(巫女たちに心から認めさせる、巫女いわく「心の見極め」)をクリアし、五大精霊の加護を与えられることで、一時的に“勇者に匹敵する精霊の加護”を得た。
さらに5章7幕にて自身の闇と対峙したハルトは、“勇者”に背中を押され、これを乗り越えた。その後、黒騎士と対峙したハルトは「彼の意志は消えてなどいない。彼が残した世界に、彼が救った人々の中に常に彼の意志はあり続ける」と言い、精霊の鏡を使うことで黒騎士の力を封じた。その背後には“勇者”の姿が見えた。
そして6章4幕でハルトは『五大精霊の力』を解放し、周りの皆と力を合わせたことで“奇跡”を起こすことができた。ただしハルト自身の体は耐えきれなかった。力を引き出した結果、心臓が止まってしまったのだ。
ハルトが得たのは、あくまで“勇者に匹敵する精霊の加護”に過ぎず、“勇者の力”と明言されていないのも興味深い。さらにアークザラッドの物語を見るに、精霊の加護は精霊の力とほぼ同義と考えられる。
アーク=「勇者の力を得る条件」を満たした
・精霊の力:得た(山の精霊から)
・勇者の力:得た(聖柩から)
ハルト=「勇者の力を得る条件」を満たしていないと思われる
・精霊の力:一時的に得た(精霊の巫女から)
・勇者の力:得ていない、と思われる
このような状況をふまえつつ、「一時的に勇者に匹敵する精霊の加護を得たハルト」と「正式に勇者の力と精霊の力を得たアーク」の“違い”を考えることで、「勇者の力を得る条件は?」と「勇者の力とは?」に対する答えをさらに絞れるだろう。
少なくともハルトは養子であり、ワイト家の血は受け継いでいないという。だが彼のルーツがはっきりしないこともあり、「スメリア王家やワイト家に関連する人物」という可能性も否定できないといえる。
神の血を引く一族『ワイト家』に託された浄化の力
アーク1の冒頭で、ワイト家は「神の血を引く一族(民)」と表現されている。そしてワイトのスキル『トキワタリ』の覚醒時の台詞は「神よ、私に加護を」なことから、時渡りの力もまた神(創造者)に由来すると思われる。
仮に「世界の浄化=悪の排除」だとすると、時渡りの力はまさに浄化のための力だといえる。分かりやすい描写はヨシュアだろう。彼は悪しき者を倒すため、自らの命を捨てて「時渡りの力」を入手し、アーク達が集まるために過去へ未来へと走り回ったという。そしてミズハはハルトを助けるためとはいえ、結果的に命を削って何度も過去へと飛んだ。
過去を改変できてしまう時渡りは、いわば“理を外れた力”である。5章のゴーゲンも「ワイト家でも、力を持つ者にしか知らされぬ禁忌の技」であると。
だからこそ使用者は原則としてワイト家の者に限られ、使用の代償(使い過ぎると体調を崩したり、死に至ったりする)も大きいのだろう。ワイトのホームボイスには明らかに体調が悪そうな台詞があり、これは彼女が時渡りの力を多用していることの表れのような気がする。
聖柩の封印を運命づけられ、時渡りの力と技が伝承されるワイト家は「浄化を運命づけられた一族」と表現してもよいかもしれない。ただしワイトやククルと違ってミズハの正体は不明だが、各所の描写や時渡りの力を持つ辺りから、「何らかの形でワイト家に関係する」のは確定してよさそうだ。
過去ゴーゲンは「(ミズハには)まるで邪気を感じず、逆に安らぎさえ感じる」というようなことを話している。もしかしたらこの時、ミズハから“ワイトの力”を感じ取っていたのかもしれない。
さらに作中には分かりやすく口に出して「浄化」を行う技が存在する。それこそがワイトが使う『天の裁き』だ。ワイトのみならず、ククルやミズハの天の裁き使用時の台詞にも“浄化を思わせるもの”がある。
『天の裁き』使用時の台詞
(※注:アーク1のククルは『天のさばき』という特殊能力)
・ククル(1&2)「不浄なるものへの天の裁きを」
・ククル★3(R)「神よ」「不浄なるものに天の裁きを」
・ククル★4(R)「決める時は決める」「不浄なるものに天の裁きを」
・ククル★5(R)「神よ、感謝します」「不浄なるものに天の裁きを」
・ミズハ★3「驚かせてあげるわ」「不浄なるものへの天の裁きを」
・ミズハ★4「さぁ見てなさいよ」「不浄なるものへの天の裁きを」
・ミズハ★5「私を怒らせると怖いのよ」「不浄なるものへの天の裁きを」
・ワイト★5「罪を償いなさい」「天の裁きによる浄化を」
ククルの台詞にも“神”という言葉が出てくることもあり、このスキルにおける「天=神(創造者)」と考えてよいだろう。『天の裁き』は神に代わり浄化を行う技だと考える。
なおアニバーサリーミズハは天の裁きのかわりに『天の祝打』という技(ビンタしてダメージを与えつつ、全ての状態変化を除去する魔法攻撃)を使う。使用時の台詞は「全部、綺麗にしてあげるわ」ということもあり、手のひらから“天の裁き的な何か”を出して直に浄化しているのかもしれない。
この視点をふまえ、現在確認できる『天の裁き』の使用者を見ていこう。
ワイト/ククル/ミズハ(?)らワイト関係者や機神のヂークはともかく、シャンテ&アルフレッド姉弟も「天の裁き」を使えるのは興味深いところ。
アルフレッドはガルアーノによって能力を高められた結果、現在の力を得たとのこと。シャンテは、特殊追加能力という“個別に異なる秘められた力”を引き出すシステムにより仕様が可能になることをふまえると、「アルフレッドもシャンテも本来、天の裁きを使える素養を持っていた」かもしれない。
案外シャンテ姉弟は、ワイトの因子(血筋)を薄く受け継いでいるか、もしくは他の何らかの“世界の浄化に関わる因子”を持つのかもしれない。ただし特にアルフレッドの場合、ガルアーノが“天の裁きを使えるモンスターの因子”を注入した可能性も否定できないが。
生命における『因子』『魂』『意志』
こちらの世界で『因子』といえば、主に生物学で「ある個体の形状・性質、全体としての働きに重要な作用を及ぼす要素」のことなのだそうだ。
創造者の話によれば、精霊の再起動には“カギとなる人間”が必要であり、カギとなる因子は代々その人間の子孫へ受け継がれていくという。これは『精霊の巫女』のことであったが、アークザラッドの世界にはこれと同様に子孫へ受け継がれるものがいくつもある。
例えばアーク1にてククルは、自分を「神の血をひく民」と語った。そして「一族には不思議な力が伝わる」とも。これはワイト家のことである。さらにRの描写からしても、ククルには七勇者ワイトの持つ力がしっかり受け継がれていると見てよいだろう。精霊の巫女とシステムが似ていることから考え、ワイトの力も同様に『因子』によって受け継がれている可能性が高い。
アークがスメリア王家の血を引く者であり、スメリア王家には「勇者の証」と「聖柩」が伝わっていたことをふまえると、アークもまた七勇者の子孫と考えてよいだろう。その先祖はグラナダで確定のはず。
では他の七勇者はどうだろうか。ゴーゲンはトッシュを「古の旅から定められた魂」と称し、さらに「魂はめぐる」「かつてスメリアに聖柩を運んだ仲間(七勇者)が再び集まる」と話した。よってもし仮に他の古の七勇者についても、ワイトと同様に子孫に『因子』が受け継がれているとしたら、それは魂に関する部分となりそうだ。
また各種描写から、この世界の生命は「精神(意識)」と「身体(肉体)」で構成されていると考えられる。肉体ではないと思われることから、消去法で「魂および因子は精神に含まれる」のだろう。だが親子で精神は同一ではなさそうなため、全てが受け継がれるわけではない。となるとこの世界では「親から子へ、精神の一部が受け継がれる」という仕組みなのだろうか。
なお「魂はめぐる」との表現だが、七勇者とアーク達の繋がりは、いわゆる生まれ変わりや転生者ではなく、“魂を継承する者”的なニュアンスらしい(※注:ソースが公式ではないので出典は明記しない)。これはそのまま「因子が受け継がれる」と言い換えても成立すると思われる。
ではそもそも、この世界における『因子』『魂』とは何だろう?
創造者の話から仮定を広げ、仮に『因子』が「星から“特定の力”を引き出すためのカギ全般を指す」とする。実際に「魂を受け継いだとされる者が七勇者の能力も受け継いでいる」ことから「魂=因子」なのかもしれない。
またこの世界では力を引き出すカギとして『精霊の加護』もあるが、案外これも因子の一種なのかもしれない。もしそうなら精霊が加護を授ける際、実際は特殊な因子を生命に後天的に付与していることになる。この仮説から、様々な可能性がうまれる。
例えばポコは七勇者ハトの魂を受け継ぐと思われるが、ポコは人間、ハトは獣と種族が違う。だが後天的に因子を付与可能であれば、必ずしもポコがハトの子孫である必要はない。ポコ本人、あるいはポコの祖先が何らかの方法で後天的にハトの魂を受け継いでいればよいのだ。(もちろんポコが本当にハトの子孫なら、それはそれで「獣の子孫が人間」という事例になるため、考察する上で非常に興味深いが)
Rでは月光がトッシュのことを「ソルの意志を受け継いだ剣士」と呼んだ。またアーク1のパレンシアタワーではヨシュアが「我が意志は、息子アークに引き継がれた」と。トッシュは七勇者ソルの魂を受け継ぐ者であり、ヨシュアは息子のアークと同じく七勇者の血を引いていると思われることもふまえて、この2つの場面を考えるともしかしたら『意志』もまた、『魂』や『因子』と関連する可能性が出てくる。
2のラストで、闇黒の支配者に取り込まれククルの肉体が滅びてしまった。だが彼女は精神のみの状態で現れ「魔王が弱っている今なら意志の力で動きを封じる事ができる」と言ったことから、『意志』は肉体ではなく、魂や意志と同じく「精神に宿るもの」だと考えられる。
また精霊の巫女が精霊を目覚めさせる際、『祈りの言葉』が必要となるとのこと。大半の巫女が伝承通りの言葉で祈りを捧げる中、唯一ファンロンのみは祈りの言葉を使わずに精霊を目覚めさせた。描写を見るに、祈りの言葉はあくまで「因子の力を引き出すためのトリガー」に過ぎず、実際に精霊を目覚めさせたのはファンロン自身の強い“意志”だったのだろう。もしかしたら「因子=意志」であり、「魂=因子=意志」なのかもしれない。
そして因子は1つだけしか持てないとは限らない。案外1個人が複数の因子を持てる可能性もある。例えば精霊の加護の場合、1人が複数の精霊から加護を受けることが可能なのだから。ゴーゲンの言葉を借りれば、アーク1の精霊達は認めた者に「石、すなわち意志」を託した。
この他にも「星の生命力を引き出すには“人の意志の力”が重要らしい」という点をふまえて様々な描写を見返すことで、『因子』『魂』『意志』の関係がよりはっきり見えてくるのではないだろうか。
クロイツは、なぜ神に抗ったのか?
アルディア帝国の皇帝クロイツは、アークRの物語を語る上で欠かせない人物の1人だろう。彼は、“英雄”とはまた違った形で「人間のために世界を救う」と心に決め、神に歯向かった人物だと思われる。
ではなぜクロイツは、神に抗おうとしたのだろうか?
その答えは、先に考察した「世界システムの“欠陥”」にあると私は考える。
クロイツの真意は、主に4章7幕19話で語られる。ただしこれだけだと表現が抽象的なこともあり、少し分かりづらいかもしれない。だが5章1幕18話で判明する「世界の真実」や「創造者と改ざん者の思惑」を合わせて考えることで、彼が語る言葉の意味や背景が見えてくるはずだ。
本人の言葉によると、クロイツは「大崩壊に巻き込まれ、そのまま死ぬ運命にあった」という。だが改ざん者(根源の神)に命を救われた。その代わりにクロイツは改ざん者に従属し、命じられるままアルディアの皇帝になったとのこと。
しかしそれはあくまで表向きに過ぎない。改ざん者から話を持ちかけられたことで、クロイツは「自分の成すべき事」に気が付いたのだ。
彼は改ざん者に話を持ち掛けられた際、「世界の真実(創造者が作ったこの世界の仕組み)」を知ったはずだ。星の強い生命力を『精霊』が管理し、その力を効率的にコントロールできる存在こそ「精霊の加護を受けた『英雄』たち」である。そして『大崩壊』の仕組みのことも。
だからこそクロイツは、この世界の“欠陥”に気づいたのだろう。キャラ図鑑によれば「元々ロマリアの科学者でキメラ研究にも携わっていた」という彼は、描写からおそらく「優秀で科学に精通している」と思われる。ならば少し話を聞いただけでそのシステムの全容や、改ざん者の思惑を把握したって不思議ではない。だからこそ、この世界を人間の為のものに作り変えることを決意したのではないだろうか。
仮に、創造者が構築した欠陥システム(精霊や英雄)に世界を任せれば、人間が普通に生活しているだけでいつかは『大崩壊』で世界が大ダメージを受ける。だが改ざん者の思惑通りに事が進み、世界が支配されたとしたら、それはそれで人間は終わりだ。つまり二人の神のどちらが勝っても、人間にとっての世界は破滅してしまう。
よってクロイツは「人類を“英雄や精霊の力に頼ることなく、大崩壊さえもものともしない存在”に進化させ、人間のための世界を作る事」を目指したのだと思われる。
4章7幕19話のクロイツの「英雄よ、それが貴様らの限界」「その力では奴を止めることなどできぬ」「その力でこの世界を滅ぼすことになる」「大崩壊さえも、ものともしない人類へと進化しなければならない」は、このあたりの事情から出た言葉と考えられる。
しかしこの世界の神は「強大な力を持つ絶対的な存在」だ。人間の身でありながらそんな存在に歯向かうのは生易しい事ではない。
だからこそクロイツは、表向きは改ざん者に従うフリをしつつ、その裏で自分の理想の世界を作るための準備を進めたのだ。おそらくそのやり方が最も成功率が高いと考えたのだろう。
彼は「人は本来とても弱い生き物だ。その弱い人類がこの厳しい世界を生きていくには、高い技術とそれを扱う強い意志を持つ指導者が必要なのだよ。」と。クロイツが帝国の皇帝になった背景には、改ざん者の指示だけじゃなく、このような自身の思惑も関係しているはず。
クロイツはスキルムービーで「英雄を超え、神をもひれ伏させるこの力」と発言。ここでいう英雄は「創造者の生み出したシステム」、神は「根源の神(改ざん者)」のことか。クロイツが二人の良いとこ取りをしつつ、研究により神達を超えようとする気持ちが強く表れた表現な気がする。
理想世界を実現するため、クロイツはこのような行動を取ったと思われる。
改ざん者から「神の技術」を入手。創造者の話をふまえると、これは「神の故郷の星で長年積み上げられ進化した科学技術」と考えられる。
改ざん者の指示でアルディア帝国を建国し、自身が皇帝となって世界支配を進めた。ただしクロイツ自身がかなり積極的なこともあり、これは彼の「人間の為の世界を作る計画」の一端でもあったと考えられる。
未来を見据えて帝国の組織作りを積極的に進めた。ゲラー達とのやり取りを見るに、改ざん者への対抗策&人類のための世界作りの一環だろう。
さらに自身でも「英雄や精霊(創造者の作ったシステム)」を研究し、その仕組みをふまえ、神の技術を組み合わせて、独自に人類のためのシステムを開発。クロイツビットはその研究段階で生まれたものだろう。
合わせて研究結果をもとに、神の眠る“天の船”への対抗手段として『8月計画』を進めた。これは改ざん者に対抗するための秘匿兵器でもあり、アルディアの皇帝府の地下に存在する。
英雄達とクロイツビットの能力比較
クロイツが愛用する『クロイツビット』は「精霊や英雄の力を人類のために使うべく、根源の神の技術を利用して作り出した機械」であり、クロイツの研究の成果の一端だろう。
以下は、英雄とビットの能力の比較動画だ。
【YouTube】“英雄”達とクロイツビットのスキル比較&考察(長さ48秒)
ビットは、それぞれ以下の英雄の能力を抽出したものと考えられる。名前はそれぞれのロールの能力の傾向をドイツ語で表現したものだろう。(厳密にはあの世界にドイツ語があるか不明だが、少なくとも類似する言語は存在する可能性がある)
なおレーベンは、なぜかシア(英雄ではない)とスキルエフェクト&音が一致する。とはいえ「シアもレーベンも同じ精霊由来の力を使用」という可能性を否定できない以上、エフェクトが一致しても別に不思議ではない。もしくは「シア自身が何らかの英雄や精霊の関係者」との可能性も考えられる。
シルト
ドイツ語で「盾」を意味し、ロールはタンク。使用スキルは「シュトーラル(ドイツ語で「光線」)」。ヂークベック実装時の「マルチファイア」とスキル効果が同じで、エフェクト&音がほぼ一致。
グロル
ドイツ語で「恨み」を意味し、ロールはデバッファー。使用スキルは「フルーフ(ドイツ語で「呪い」)」。サニア実装時の「イクスクレイト」とスキル効果が同じで、エフェクト&音がほぼ一致。
シュテルケン
ドイツ語で「強くする」という意味で、ロールはバッファー。使用スキルは「ムジーク(ドイツ語で「音楽」)」。ポコ実装時の「へろへろラッパ」とスキル効果が同じで、エフェクト&音がほぼ一致。
レーベン
ドイツ語で「生命」を意味し、ロールはヒーラー。使用スキルは「リヒト(ドイツ語で「光」「希望」など)」。シアの「スイートヒール」とエフェクトがほぼ一致だが効果は異なる。エフェクトや音ならミズハの「キュア」やククルの「プレアー」も割と近いが、こちらも効果範囲や効果が異なる。
シュヴェーアト
ドイツ語で「剣」を意味し、ロールはアタッカー。使用スキルは「ピュロマーネ(ドイツ語で「放火(火+狂乱)」)」。エルク実装時の「エクスプロージョン」と効果は同じだが、音やエフェクトは異なる。
さらにクロイツのスキル2「ヴァイスハイト/ヴァ―ルハイト(ドイツ語で「知恵/真実」)」は、使用時にシュヴェーアトが3体登場し、無敵を付与するスキルだ。上記のようにシュヴェーアト自体の能力がエルク由来と考えると、こちらはエルクの能力「インビシブル」由来のスキルだろう。
そしてスキル1「レールザッツ/グライヒュング(ドイツ語で「定理/方程式」)」は、シュテルベン(作中で瘴気をエネルギー源にしている描写あり)を使うことから、改ざん者の神の技術をメインに使って開発を進めたものと思われる。
またクロイツビットは宙にふよふよ浮いている。黒衣の聖母ら「改ざん者の力を受ける者」の一部が同じような浮き方をしているのと何か関係あるのだろうか。もしかしたら使用する力に何かしら共通点があるのかもしれない。6章3幕の改良型ザムザ(瘴気を動力源とし、根源の神の技術により生まれ変わった次世代の機神)やシュテルベン(瘴気がエネルギー源)と似たような構造なら、瘴気が動力だろうか?
そういえば空中城も浮いていた。まさかあれも瘴気が関係するとでもいうのだろうか。
アルディア帝国の成り立ちと、勢力拡大の経緯
大崩壊後に建国されたアルディア帝国は、歴史が非常に浅い国だ。その成り立ちについては、エルクやシャンテのキャラクエスト、メインクエストなどで断片的に紹介されている。
「クロイツが表向き黒騎士(改ざん者)に従っていた」ことをふまえて解釈すると、おそらく帝国の建国経緯は以下のような形だろう。
旧アルディアは、大崩壊で多大な被害を受けた。
生き残った人々でインディゴスのデリントン地区に「国再建の為の議会」を作り、街の復興を進めた。
クロイツが、臨時の会議を招集。(黒騎士の指示?)
会議に参加すべく議員会館に集まった議員達を、黒騎士が全員虐殺。後にこの事件は『デリントンの大虐殺』と呼ばれることになった。
政府要人が全員死亡したことで、クロイツはスムーズにアルディア帝国を作り、皇帝になることができた。これは黒騎士の指示のようだ。
Rの物語開始は大崩壊からたったの10年である。この事実をふまえると、大崩壊後に生まれた新興国であるはずのアルディア帝国は、建国から数年で裏から世界を支配しようとするほどの権力を持つまでになったことになる。
この異常な成長速度を見るに、『デリントンの大虐殺』以外にもヤバいことを多数やっているのはほぼ確実と言える。
例えばゲラーのキャラクエでは、「アルディアの血」と呼ばれる反軍組織を秘密裏に処分した際のエピソードが描かれている。このように皇帝や改ざん者に盾突こうとする勢力を適宜葬るというのも、勢力を分散させず、国を大きくすることに繋がり得る政策だろう。
さらにカフカのキャラ図鑑では、かつて帝国の情報部には『暗部養成施設』があったと。暗部を稼働し裏から国内外の情報を得たり、邪魔者を消したりしようとした可能性もある。キメラ兵器の開発がすすんだことで施設は凍結され、存在が闇に葬られたとのことなので、“表に出せないこと”を担当する施設だったことだけは明らかだ。
またアルディア帝国は、ある程度は旧アルディアのシステムを踏襲していると考えられる。
例えばキャラ図鑑によると、先代将軍を父に持つグレーゴルは、代々将軍の家系に生まれたと(ただし本人は落とし子らしい)。またグレーゴルの弟のエーリヒも揃って帝国軍に従事していた。「建国10年にも満たない帝国で代々将軍の家系」と言われると正直意味が分からないが、これが「旧アルディアで代々将軍の家系」なら成立するはずだ。
また士官学校を経由して帝国軍に入ったマティアスは名家出身で、ゲラーに圧倒的な力の差を見せつけられ心酔するようになったと。おそらくこの“名家”は旧アルディアから続く家系であり、だから帝国の士官学校に入ったと考えるのが自然だ。他国から引っ越してきた場合、この表現は無い気がする。
おそらくクロイツは、このような旧来の名誉ある家系を、早い段階でいくつも勢力に組み込んだのではないだろうか。
あわせてゲラーのように優秀な人物を重要職に登用することでも、勢力の拡大を狙ったと思われる。皇帝が任命に関わっているかは分からないが、旧ロマリアのマゼンダが登用されたのも、この政策の一環かもしれない。少なくとも彼女は相当に頭が切れるようだから。
『英雄』を世間に広めたのは誰?
アーク3とアークRの世界における違いの1つが、「『英雄』という存在が世界中に広まっていること」だろう。私はこれもアルディア帝国の異常な成長を支えた要因だと考えている。
そもそもアーク3では、エルク達が世界を救ったことすら一部の人々しか知らない事実だった。特にアカデミー本部に乗り込んだ際、浮遊した空中城を見た際のアレク達の会話が分かりやすいはず。
例えばヴェルハルトの認識では、空中城は「確か『大災害』の時に滅んだロマリアの王城」に過ぎず、闇黒の支配者という存在や、ロマリアのせいで大災害が起きたことすら知らなかったようだ。ましてやエルク達がロマリアと戦ったことなんて知るわけもない。
それがアークRでは、世界各国で“英雄”という存在や、彼らが何をしたかまで割と詳しく知られている。特にエルクやサニアら“英雄のキャラクエストを見ることで、その浸透っぷりを実感しやすいだろう。さまざまな作中の描写を見るに、おそらくRでは大崩壊後の早いうちに、何らかの形で世界中に以下の情報が広まったと思われる。
ロマリアこそが世界征服を企んだ悪で、大崩壊を引き起こす要因。
アークたちと共にロマリアと戦って潰したのが“英雄”たち。
英雄たちは世界を救ったが、大崩壊を止められなかった。
トッシュのキャラクエでは、明らかに復興が進んでいない村に住むアマクニまで英雄の功績を知っていた。おそらく何らかの手段で、世界の隅々にまで届く情報配信が行われたのだろう。
例えば3章6幕18話では、サニアが「全世界のみなさん」に向けて反アルディア同盟の設立を宣言した。ということはつまり、この世界には少なくとも「音声による全世界への放送手段が存在する」ということ。こういう感じのシステムを使えれば、上記の内容を世界中に伝えられるはずだ。
ただし元々顔を知られていたサニア王女や炎のエルクらとは違い、ポコやリーザは一部を除きあまり顔を知られていなかった。チョンガラに至ってはその名前すら知られていなかったどころか「お前みたいな変な英雄がいるかよ」と言われる始末。情報の広まり具合にはムラがあるようだ。
となると問題は「ではいったい誰が、どんな目的で『英雄』に関する情報を広めたのか」という点である。おそらく改ざん者やクロイツの仕業だろう。
人間の欲望や思惑というのは千差万別であり、短時間でまとめ上げるというのは非常に困難だ。しかしそれを可能にする手段は確実に存在する。そしてアルディア帝国での勢力拡大に利用されたのは「『共通の敵』もしくは『共通の目標』を認識する」という方法だろう。
大崩壊後はただでさえ世界中が不安定だった。そこへ「英雄によって世界が救われた」と情報が入れば、希望を感じた人は少なくないはずだ。
しかし中には同じ情報を耳にした結果、英雄を恨む人だっている。
例えばゲラーは6章3幕で英雄達に「貴殿らがロマリアと戦い引き起こした大崩壊で、一体どれだけの尊い命が失われたと思っているのか?」「もっと別の選択をすれば、多くの命を救えた可能性もあったはずではないのか?」と問いかけ、シャンテは言葉を詰まらせてしまった。
また大崩壊直後は仮に英雄に希望を抱いたとしても、英雄たちは人数が少ないため復興を助けるにも限界がある。1度は「英雄の存在に希望を抱いた」としても、実際に自分達が救われないのであれば、手のひらを返して英雄の存在を疑問視する人が現れてもおかしくはない。『ロストレガシー Part.2』のフォンの「英雄たちのようにみんなを切り捨てたりはしない!」という叫びは、それを端的に表しているような気もする。
そしてマゼンダのキャラ図鑑より、彼女は「大崩壊後にロマリアや貴族を恨む人々から報復を受けた」とのこと。ロマリアに心酔する彼女からすれば、ロマリアを滅ぼした英雄は憎い敵でしかないはずだ。
6章3幕のゲラーやグレーゴルの語りを聞く限り、おそらく改ざん者やクロイツは「まず崩壊直後に英雄の功績を広めておき、英雄を疑問視する声が高まった頃合いを見計らって、その怒りや敵対心をアルディア帝国の求心力へと利用した」のではないだろうか。
クロイツは元々ロマリアの科学者であり、空中城内部もしくはその近辺にいてもおかしくない。ならば世界を救った英雄たちの姿も直接確認できた上、設備さえあれば彼自身が世界へ情報を伝える事も可能だったと思われる。
なお「世界を支配したい改ざん者」にとっては創造者が生み出した精霊や英雄が邪魔である。そして「人間の為の世界を作りたいクロイツ」にとっては改ざん者も敵だが、創造者が生み出したシステムの精霊や英雄も敵となる。
帝国の建国と皇帝就任が改ざん者の指示であるなら、英雄の存在を広めるように指示したのも改ざん者だろう。そしてそれはクロイツにとっても都合が良い展開となるものだったからこそ、彼は大人しく指示に従ったのではないだろうか。
クロイツ行方不明後の各地の勢力
アルディア帝国は、4章7幕後にクロイツ皇帝が行方不明になった後、複数の勢力に分かれた。元々帝国内の勢力は水面下で分かれていた。皇帝が行方不明になり、かわりに改ざん者が率いる『神の手』が帝国を支配するようになったことで、それが表面化した形といえるだろう。
ここでは主な勢力3つの、R最終話(6章6幕12話)時点の状況を考える。
■勢力1:人類側
英雄率いる人々、一部の七勇者、ロシュフォール私設軍(旧アルディア帝国軍含む)など。改ざん者側の侵略から各地の人々を守るべく、「改ざん者を打ち破り、書き換えられた世界を元に戻す」ことを目指している。
<主なメンバー/6章6幕12話時点>
・ミズハ:改ざん者により滅ぼされかけ、ハルトを殺された未来から時を渡ってきた。ハルトを死なせないために、改ざんされた世界を元に戻したい。
・ハルト:ククルの義弟で姉の死後は自暴自棄になっていたが、ミズハに会って徐々に変わる。試練を乗り越え、一時的に五大精霊の加護を受けた。
・英雄達:ロマリアとの戦いの後、アークの意志を継ぎ、各地に散って復興を進めていた。新たな敵の台頭で再び結集。手分けして作戦を進めている。
・各地の人々:ミズハやハルトや英雄達と共に戦っている。五大精霊の巫女や各国の有力者らも多く味方しているが、全人類というわけではない。
・アーク、ククル:ロマリアとの戦いで命を落とした後、無理やり蘇生させられ悪しき者となっていた。6章4幕にて仲間の元へ戻り再び戦うことに。
・ソル、ハト:古の七勇者であり、本来は3000年前の存在。現世に存在する経緯は明かされていないが、人類のために現代の人類に協力している。
・アンリエッタ:父亡きあとロシュフォール家の当主となり、各地の英雄を支援。旧帝国軍の一部を私設軍として再編し、英雄との共闘を後押しした。
・旧帝国軍(東方方面軍、西方方面軍):旧アルディア軍の一部で、ゲラーとグレーゴルが率いる。改ざん者へ従わなかったため、現帝国から追われる側に。アレクの提案もあって、英雄と共闘することになった。
・クロイツ(?):帝国の皇帝として改ざん者に従うフリをしながら、裏では改ざん者に対抗する『8月計画』を独自に進めていた。失踪していたが、6章で発見された。おそらく人類側についたと思われるが、詳細は不明。
・五大精霊:遥か昔に創造者によって生み出された、この星の力の管理者。基本はこの星の生命の味方であり、ハルト達に力を貸している。
・影の男:ミズハを3000年前に導いた謎の男。現世に存在するかは不明。
英雄&七勇者と、ロシュフォール&元アルディアが共闘を決めたことで、6章6幕12話時点は一致団結している。細かい思惑の違いはあれど「人類の未来を守るために戦う」との目的が一致するため、協力体制は盤石だろう。
ただし“神”と戦うには戦力に不安が残る。当面は各地を守りつつ、来たる決戦の日へ向けて「改ざん者側への切り札(神の記憶、神に対抗し得るクロイツの秘匿兵器)」を揃える作戦のようだ。彼らの最大の強みは「かつて世界を救った精霊の勇者アークら英雄達と、世界に生きる者達の意志」だろう。
■勢力2:改ざん者側
改ざん者、一部の七勇者含む神の手、現アルディア帝国軍など。「世界を支配しよう」とする改ざん者の指示で動いている。だが思惑には個人差があり、真の意味で改ざん者に心酔しているのはボイドだけのような気もする。
<主なメンバー/6章6幕12話時点>
・改ざん者:創造者(伝承上の神)と戦い敗北した、創造者の同胞。今度こそ世界を支配すべく、“根源の神”を名乗って世界を勝手に書き換えている。
・ワイト:古の七勇者であり、本来は3000年前の存在。改ざん者に従い、おそらく過去を改ざんした張本人。表向きは改ざん者に従いつつも、その真意が見えない。ミズハとハルトを試し、見極めるような言動が見られる。
・ノル:古の七勇者であり、本来は3000年前の存在。ただし3000年前とは姿も言動も異なり、おそらく本体から分裂した存在の模様。モンスターを操る力を持ち、神獣を従える。改ざん者の目的を理解していなかったようだ。
・バルダ:古の七勇者であり、本来は3000年前の存在。ラマダの教えの基礎を作った人物(ただし彼の生存時、ラマダ山は名もなき霊峰だった)。世界と人の行く末を見ることができれば、それでよい」と語り改ざん者に従う。
・月光(シン):七勇者グラナダの弟で、本来は3000年前の存在。「あの男との決着さえつけられれば、汚れた世界や人間になんの未練もない」と、改ざん者に従う。(決着をつけたいのはおそらくグラナダ。敗北描写あり)
・ボイド:現在のアルディア帝国の実質トップで、大量のクローンが存在する。“神の計画”が進む様子に興奮するなど改ざん者に心酔している様子。
・エイギル:アルディア北方方面軍の将軍。皇帝失踪前から改ざん者側についていた描写あり。手柄を立てて『神の手』に入ろうとしている。
・マゼンダ:アルディアの補給大隊をまとめる将官。皇帝失踪後に改ざん者側についた模様。ロマリア出身で、ロマリア帝国再興を心に誓っている。
・ヘレーネ:アルディアの研究者だが、実は長い時を最強の機神の創造に費やしてきた魔族。機神を生み出すことにこだわり、改ざん者に従う。
6章6幕12話時点は、アルディア帝国の実権や、創造者の記憶がある『最果ての神殿』を握る。改ざん者の計画は最終段階に入り、神の同胞達が眠る『神の船』を召喚した。各地で活性したモンスターやアルディア空中要塞による襲撃を激化させるなどで人間側を攻撃。神獣は姿を消しているらしい。
“神”を自称するだけあって、改ざん者は強大な力を持つ。ワイトの時渡りやノルのモンスターを操る力も脅威だろう。ただし精霊や英雄など創造者側の戦力を削り切れておらず、人間の力を過小評価している上、個人の思惑にばらつきがあり統率が取れていないことなどが彼らにとっての不安要素か。
ただし『ザ・ミッション Part 3』によれば、改ざん者は「いずれ量産したボイドと洗脳した強化兵でアルディアを埋め、エイギルらを切り捨てる」予定のため、仮にその計画がうまくいけば不安要素が減るのかもしれない。
■勢力3:ログリードとコンラート
ログリードとコンラートは、改ざん者側にも人類側にもつかず、独自の勢力を築こうとしているようだ。
<主なメンバー/6章6幕12話時点>
・ログリード:旧ロマリアではガルアーノに仕え、白い家の警備にも携わっていた。権力と金に執着する野心家で、アルディア帝国では情報部将校としてのし上がろうとしたが、非合法な手段で独自に動いたために追われる身となった。現在はコンラートと協力関係にある。
・コンラート:アルディアの天才科学者だが、研究一筋で、己の真理と科学などだけにしか興味がない。出世欲と権力欲の権化であるログリードと手を組んだことで、彼の研究の使われ方は大きく変わった。
・トロア:旧ロマリアの名家オベール家の生き残りで、父はロマリアの優れた研究者だった。トロアはコンラートが新たにつけた名で、彼の元でD.O.L.L.と呼ばれる人体兵器に改造された模様。現在はコンラートしか見ておらず、コンラートのためなら何でもやるように見える。
エルク記憶浄化ではログリードがガルアーノのクローンを殺して「すべてを引き継ぐ」と宣言し、6章6幕ではコンラート達が英雄勢からうまく逃げ去ったとの描写があった。
現在は少数陣営に見えるが、ロマリアベースのキメラ化技術や能力強化技術などを持つことから、兵力の増強は十分に可能だろう。レイガルやガルアーノのように、ロマリアが保管していたサンプルを有効活用して戦力とする可能性も十分にある。
コンラートとログリードには「優秀な頭脳」「絶大な野心」「手段を選ばぬ狡猾さ」「ロマリアの遺産」「神の技術」「アルディアの研究成果」などが揃っている。しかもログリードとトロアはロマリア出身。コンラートもロマリアのことを知っているような描写があるため、何らかの形でロマリアに関係している模様。もしかしたらこの先、かつてのロマリアのように自らの欲を満たすべく世界を侵略する巨大勢力に成長するのかもしれない。
クロイツとコンラートの理想の違い
皇帝クロイツとコンラートはことあるごとに精霊や英雄にこだわり、実証研究や開発を進めていたようだ。少なくとも4章7幕後にクロイツが失踪するまでは、コンラートはクロイツの指示を受けており、研究成果をある程度はクロイツに還元していたと見るべきだろう。
動力石でモンスターを生成したり、英雄のリーザを捕らえて研究しようとしたり(メインクエスト)、モンスターの能力移植実験を行ったり(トリック・オア・トリート)などコンラートの研究は多岐に渡る。さらに8月計画のゼロやトロアも彼の管轄だ。キャラクエストによれば「キメラ兵器とD.O.O.L.と呼ばれる極秘兵器研究に携わっている」とのこと。
コンラートの研究目的は明かされていないが、断片から推測はできる。キャラクエストでは「(研究を進めれば)世界を救った英雄たちのようなものだって作り出せる」と、特殊依頼『セム討伐』では「(研究成功により)英雄や精霊も創り上げることができるようになる」と発言。クロイツが人造英雄的な機械のクロイツビットを愛用している点から見ても、ここまではある程度クロイツの意向に沿ったものだろう。
だがコンラートは「全てのものはこの私の手によって生まれ変わる」とも発言している。こちらは「人間のための世界作り」とのクロイツの意向に完全に沿うものと思えないため、コンラート自身の望みを大いに含むのでは?
またコンラートはキャラクエストで「現在の科学造兵廠の研究の進め方では手ぬるい」と発言。“科学造兵廠=クロイツの組織”と考えると、これは即ち「クロイツのやり方には賛同できない」という反抗だともとれる。さらに利害が一致したログリードとも手を組んでいる。
コンラートの研究は、主に以下の3つに分類されると考えるべきである。そして彼が行う研究の内容を細かく分類することで、クロイツの計画がより詳しく見えてくるはずだ。
クロイツの意向を反映した研究
コンラート自身がやりたい&ログリードの計画に必要な研究
上記2つの目的に共通する研究
またシュウのキャラクエストより、コンラートはロマリアのキメラ研究所も再稼働して研究を行っていることが伺える。コンラートいわく「ロマリアのキメラは欠陥が多い」「皇帝が望んでいるのはそのような欠陥品ではない」と。クロイツは元々ロマリアのキメラ研究に携わっていたからこそ、彼の命を受けたコンラートが詳しく断言できるのだろう。
コンラートの過去も気になるところだが、作中では「過去にドミニクを見たことがあるらしい」ぐらいしか情報がない気がする。彼は自分のことをほとんど語らないのだ。
作中では明言されないが「クロイツの意向を反映せず、コンラートがやりたい研究」の途中経過が「キメラ系の強化兵」だと思われる。キャラクエストでコンラートは「新しく強い人間」に強い興味と研究意欲を示していた。
その研究の支援をしているのがログリードだ。4章ではゲラーとの会話で、グスタフの肉体の改造がログリードの指示だと判明。またログリード自身も難民キャンプの人間への結晶投与による兵士化を計画しており、それがコンラートの研究だとも話している。
コンラートのキャラクエストやセム討伐、フォンのキャラ図鑑の「能力強化剤の副作用で肉体のキメラ化が進んでいる」などの描写から考えても、彼の研究は人間をベースにしたものが多い。その点ではロマリアと同じだが、彼の場合はロマリアの技術をふまえ、さらにそれを進化させようとしているように見える。
だが描写から“ゲラー=クロイツの賛同者”と考えると、強化兵なグスタフへ対するゲラーの「自らの肉体を改造し力を得るなど邪道以外の何物でもない」「人を捨てて得た力で勝利を得たとしても何の意味もない」という言葉は、すなわちクロイツの意向であるとも考えられる。(確定ではないが)
仮にクロイツが人間のキメラ化を素晴らしいものとしているなら、ガルアーノのように自身を改造していてもおかしくないはず。だがクロイツ自身はキメラ化した様子はなく、あくまで機械を従えているだけだ。
コンラートは上に内緒で人体実験していた。もし合法or上の指示で行っていたなら、内緒にする必要はないはずだ。またログリードの「人間の死体でも、生体でも、老人でも、赤子でも、どんな非合法なものでも手配する」という言葉もふまえ、クロイツが治める帝国では、原則として人体実験は禁止と思われる。(多少の例外はあるかもしれないが)そういう意味でも、コンラートとクロイツの理想は相容れないものなのだろう。
クロイツと、人間王やガイデルの違い
この星は何度も征服されそうになっている。人間王(人間の王)、ロマリア王ガイデル、アルディア皇帝クロイツ。彼らは全員「侵略者」とも呼べる存在だが、それぞれの事情は大きく異なるといえる。
人間王は3000年ほど前、「科学」と「自らの欲の力で生み出したモンスター」を使い神に挑んだという。目的は「すべての世界を手に入れる」こと。闇の力を入手し『闇黒の支配者』となるが、七勇者に封印された。
精霊の黄昏では「邪悪な心」を持つと語られている他、後に何度も蘇っては世界征服しようとするあたり「恐ろしく強欲な男」なのだろう。その姿勢は「1度失敗して創造者に封印されたのに、諦めることなく再び蘇って世界を支配しようとする『改ざん者』」と重なる気がする。
ロマリア王ガイデルも「全世界を手に入れる」ことを望んだが、それはただ闇黒の支配者に利用されただけだった。アークらに追い詰められ、逃げるために10年前の『大崩壊(大災害)』を引き起こし、最後は裏切られて死亡。
ガイデルも人間王と同じく強欲ではあった。しかし城からほぼ出ず、敵に怯え、四将軍に守られ利用されたのみで虚しい最期を迎えたあたり、支配者の器ではなかったのだろう。
Rで登場したアルディア皇帝クロイツもまた、世界を支配しようとした。
改ざん者に“利用された”という意味ではガイデルと同じだ。しかしただ利用されただけのガイデルとは異なり、利用されていることを理解しており、それを逆手にとって改ざん者を利用しようとしていた。
また自身の欲のために世界を独占しようとし、神に挑んだ人間王とも異なり、クロイツが神に挑むと決めたのは、あくまで多くの人間たちのためだったとのこと。ゲラーやグレーゴルの6章での言動も見る限り、クロイツが本心から人々を救いたいと考え水面下で動いていたのは事実だろう。
また「人は本来とても弱い生き物であり、彼らが生きるには技術や強い意志をもつ指導者が必要」「人間自身も強く成長しなければならない」的な主張もしている。おそらくクロイツは弱い人間も見捨てることなく、原則は全ての人間に手を差し伸べたいのだろう。(ただし自分の理想を理解できず、邪魔をしてくる奴は、目的のために容赦なく殺すが)
いうなれば人々のために立ち上がり、人々を導こうとした彼もまた、ある意味では“英雄”なのだ。ただし本人はそう呼ばれるのを嫌がりそうな気もするが。クロイツは「これまで描かれてきた侵略者達とは、明らかに一線を画した存在」といえるのではないだろうか。
だが仮に、その目的が本心から人間達のためを思っての行動であったとしても、クロイツの手段は“正しい”とは言い切れない。皇帝に忠誠を誓うグレーゴルも「(アルディアの行いが)いずれ裁かれるべき罪であることも十分理解している」と発言したし、そんなのクロイツ自身も分かっているはず。
それでも茨の道を歩もうと決意したクロイツ。それほどまでに人間のための世界を作ろうとしたのには、どんな理由があったのだろうか?
クロイツの過去はほとんど判明していない。もしかしたら「かつて自身を守ってくれた誰か」のように、自分も人間たちを守りたいと思ったのだろうか。それとも人間たちの中に「自身を犠牲にしてまで守りたい特別な存在」がいるのだろうか。
クロイツが目指した世界とは?
4章7幕や6章3幕の話を総合すると、クロイツが目指したのは、「神が作った『英雄』や『精霊』に頼ることなく、『大崩壊』にも屈しないほど人間自身が強く成長して実現する、人間のための世界」だと思われる。
……あれ? これ、アーク3の世界っぽくないか?
3の段階では、ゴーゲンいわく「いにしえの時代から人間たちが世界を傷つけてきたから、精霊たちは力を失い、次第に姿を見せなくなってしまった」「先の大災害以降は、誰も精霊を見た者はおらん」とのこと。(ただしこの段階の精霊は消えたわけじゃなく、“精霊の夢”で静かに生きている)
さらにエルクたち“英雄”は、Rに比べれば、全体的にひっそり暮らしている。もちろん各自それなりに人々と関わってはいるが、「多くの人間が頼る対象
か?」というと、そうではないと思われる人が大半だ。彼らの活躍(ロマリアを倒し闇黒の支配者を封印したこと)すら知られていない。
アーク3では、大災害を乗り越えた後、精霊や英雄にほとんど頼ることなくたくましく生きる人々が描かれているのではないだろうか。3世界を主導するのは精霊でも英雄ではなく、各地に生きる普通の人間達だ。主人公のアレク達だって、別に精霊の力をもって生まれた特別な人間ってわけじゃない。
そして最終的には「(何かに頼るのではなく)自分たちの力を信じて切り開く」のがEDの結論だった。仲間たちと世界を駆け回ったことで、クロイツの目指す理想に自然とたどりついたのが、3のアレク達ではないだろうか。
案外アレクが「クロイツ率いるアルディア帝国軍」に導かれたのも、何かしらもっと深い意味があったのかもしれない。アレクもクロイツもロマリア出身っていう共通点もあるし。
『精霊の黄昏』によれば、この500年後には精霊の力はほぼ失われたと。さらにその500年後には「闇黒の支配者を倒すために、精霊が完全に世界から消えてしまう」というのがアークザラッド世界の“本来の歴史”である。
つまりクロイツの「精霊にも英雄にも頼らない、人間による世界」との理想は、ハルト達と一緒に歴史を“元通り”に修正することで自動的に実現できるということになる。Rの6章でクロイツはエルクに確保されたし、ハルト達との共闘ルートも結果的にはなんだかんだ成立しそうな気もしなくもない。
まぁでもそうなるとクロイツは本来「大崩壊前に死んでた人間」なので、世界が元に戻れば消えてしまうことになる。大災害から3年後のアーク3時代まで生きられるわけもなく、クロイツ自身が“限りなく理想に近い世界”を実際に見るのは難しくなってしまうわけだが。
『8月計画』とは?
以下は、8月計画に関係すると思われる描写をピックアップしたものだ。
ゼロとトロアはタイプとして《8月計画》を持つ(ステータス詳細)
8月計画の資料では、D.O.L.L.プロトタイプでナンバーゼロの被験者はセドリック・オベール。投薬による被験者の記憶の混濁や健忘、性格の過激化などの欠陥があった。(グルガ浄化編、トロアキャラクエ)
「ゼロ」は実験で暴走し、処分されそうになったが逃げ出した。闘技場にて利用されていたところでグルガと出会う(ゼロ/グルガキャラクエ)
D.O.L.L.は帝国の研究所の実験で生まれた人体兵器。D.O.L.L.計画の三番目の実験体が「トロア」で、元は旧ロマリアで暮らす身寄りのない少女。ゼロの時とは異なり、投薬した物質が体内で順応。(トロアキャラ図鑑)
コンラートは、ログリードの支援を受けて『強化兵』に関する研究も続けていた。人間を強化兵化するには『能力強化剤』の投与が含まれ、投与の副作用でキメラ化が進む。(フォンキャラ図鑑、他)
ジュリエスがトロアを「3式」と呼んだ(“慈悲深き”セム討伐)
未来ゴーゲンによれば「ミズハはアルディアのD.O.L.L.と似ている」「ミズハの時間跳躍の力はワイト(の力?)」「(ミズハは)神に逆らったクロイツの8月計画の遺産だというのか……?」(ゴーゲンキャラクエ)
8月計画の情報によれば「クロイツはあの天の船に対抗する手段を用意していた」「クロイツは改ざん者に対抗するための秘匿兵器を製造していた」「秘匿兵器はアルディア皇帝府の地下に存在」(6章6幕)
改ざん者が進めた「強化兵生産と司令官クローン(ボイド)生産」は、神の技術を、クロイツの計画に応用して実現した。(ザ・ミッションPART3)
クロイツが進めた『8月計画』は、「改ざん者や天の船に対抗するための秘匿兵器を作るためのプロジェクト」だと考えられる。神の技術を入手した彼が、精霊や英雄の研究を進めていた1番の目的もおそらくこれだろう。
どんな兵器かは不明だが、トロアのキャラ図鑑で彼女が「D.O.L.L.と呼ばれる人体兵器」と記載されている。D.O.L.L.プロトタイプがゼロで、三番目の実験体がトロアということは、「8月計画で作り上げる秘匿兵器」もD.O.L.L.と同じく「人型兵器」なのだろうか。
となると順当ならミズハが該当しそうだ。ゴーゲンの「D.O.L.L.と似ている」発言から、彼はD.O.L.L.自体は知っていたがミズハを知らなかったのだろうというあたり、秘匿兵器を思わせる。またミズハは暗闇を怖がるところも、もしかしたら暗闇にずっと隠されていたのかもしれない(暗闇で何か嫌なことがあった、などの可能性もある)。彼女がチョンガラの名前を覚えられないのも、妙に攻撃的なのも、ゼロと同じく投薬で記憶の混濁・性格の過激化が起きた可能性が考えられる。
だがそんなにシンプルに考えて良いのだろうか。あまりにも直球過ぎて「そう見せかけて実は……」と来るんじゃないだろうか。
そもそもトロアはコンラートが手塩をかけて作り上げた“兵器”だ。途中まではクロイツの意図する方向性だったとしても、途中からはコンラートの独断で進めていたっておかしくない。
クロイツが自身をキメラ化しておらず、ロマリアのキメラ化を欠陥扱いしていた。ゲラーが人体改造を忌避していた。クロイツが愛用しているのはクロイツビットやシュテルベンのように純粋な機械型であり、人型ではない。このような点もふまえ、8月計画が目指す兵器の形態が、D.O.L.L.のように人型ではない可能性や、機械ベースである可能性も考慮するべきだろう。
なお『ザ・ミッション Part 3』や『親愛なる人へ』等のクローン描写をふまえると、8月計画の中身は、「(本物の人間ではなく)限りなく人間に近いクローンを人為的に作り出し、それを精霊や英雄の能力の仕組みをふまえ強化して兵器を作り出す計画」なのかもしれない。
ワイトの力を持つミズハは「ワイト家の者のクローンを使った人造兵器(人造ワイト)」という可能性も考えられる。「倫理的にクローンを人間扱いするかどうか」は、私達の世界でも意見が分かれるところだが、クロイツの中ではセーフなのだろうか?
また8月計画関係者に「浮遊機械」使用者が多い(トロア、クロイツ、ミズハ)ことから、むしろ「あの浮遊機械部分こそが、8月計画の目指す兵器の最終形態に近い」可能性も。さらに「その兵器を扱うのにふさわしい個体をクローンで作り上げた」という形もありうるだろう。
D.O.L.L.実験体の命名規則からの考察
D.O.L.L.の実験体として登場したゼロとトロアは、本来は別の名前を持っていた。トロアはコンラートが名付けたことから、ゼロもそうだろう。それぞれ三番目の実験体の「トロア」、プロトタイプでナンバーゼロの「ゼロ」のためフランス語(と同じ規則を持った言語)の数字由来と考えられる。
以下はフランス語における数字だ。
ここでふと気になった。
フランス語の8、ハルトの名前に似てないか?
8月計画における「8(Huit)」は止めの数字で計画においては特別な意味を持つこともあり、ここからは「ハルト自身が8月計画の関係者な可能性」について考えていく。
まずは8月計画関係者と比較する。
『8月計画』というタイプを持つゼロとトロアの服は、どことなくハルトの★4に似ている気がする。材質が異なるように見えるが、胴体中央に白線が入り、二の腕が出ているあたり、特にゼロの★3とデザインが近い。
D.O.L.Lの実験体の服には、初期段階に数字を付ける傾向にあるようだ。ゼロもトロアも★3では服の一部に数字が入っており、それぞれ実験体としての番号である。ただしハルトの★4衣装に数字は見られない。
なおハルトの★4衣装は、作中で登場していない。★3や★5とは大きく雰囲気が異なるものの、「★3ククルの腰の紐と似た紐」が★3に続き描かれているあたりはハルトらしい着こなしかもしれない。いったいどのような場面で着用するのだろうか。
もう1つ注目したいのが、ハルトとクロイツがどことなく近いこと。
ハルトの★5と、クロイツの★5の左目の傷の入り方が似ている。
武器を装備していない時の立ち姿が近い。(左手だけ腰に当てる)
髪の色が近い。
共に表情が硬めな傾向で、基本の眉毛の角度も近い。
クロイツ率いるアルディア軍に「アインブリッツ」「シュトルム・ツヴァイ」というスキルを使う兵士がいる。特にアインブリッツは非常に多い。
1つ1つの要素はややこじつけっぽいもの、他のキャラにもあてはまるものもある。だが「ハルトとここまで類似するキャラ」は、クロイツだけのはず。
そもそもハルトは出生不明であり、どんな経緯があっても不思議ではない。例えば「同一人物(未来ハルトがクロイツ)」「ハルトはクロイツの息子」「ハルトはクロイツのクローン」など2人には何か関係があるのだろうか。クロイツは8月計画の中心人物なため、仮に彼と関係するなら、ハルトもまた必然的にこの計画の関係者ということになるだろう。
ミズハを作ったのが未来ハルトの可能性もある。例えば「何らかの形で8月計画を受け継いだorそもそも中心にいたハルトが、その技術を結集して“ワイトの力を持つミズハ”を生み出した」など。
少なくとも「ミズハ」にフランス語やドイツ語っぽさはないからコンラートやクロイツの命名では無いし、スメリアの響き以外の何物でもないからスメリア関係者による命名だろう。漢字では「魍魎(山や川や木や石等に宿る精霊、または水神的な意味)」と思われる。
未来ハルトは英語版のOPもふまえて、おそらくハルト★5か覚醒時の姿と思ってよいはず。また5章7幕によると「今のハルトより年上で渋い」「顔に大きな傷がある」とのことで、これから科学力を身に付けたとしても不思議じゃない。
なおハルトはククルの義弟として育てられたが、ワイトの血を引いてはいないとのこと。5章でハルトは「(自分が)生まれた場所はわからない」「赤ん坊の頃にワイトの家の人に拾われて養子になっただけ」と語った。
しかし時渡りとの仕組みがある世界なので、現代の人間かどうかも怪しい。ワイトやヨシュアら時を渡る人間により、ワイト家の近くへ運ばれた可能性もあるだろう。アーク2までの段階でハルトという存在は確認できていない。もしかしたらハルトもまた「改ざん者が“改ざん”し始めた後に、何らかの要因で大きく運命が変わった者」なのかもしれない。
なんならハルトはワイト家の人間(ククルやワイト)やグラナダらと目や髪の色が近いし、実は七勇者関係者の可能性もある。ハルトだってそれなりに訓練もしただろうが、精霊の加護を受ける前から各地で英雄と共闘できる程度の実力があったのをふまえると、むしろ「何らかに選ばれし者の要素」を持っているぐらいのほうが自然な気もする。
浮遊機械とクロイツビットとD.O.L.L.
仮に『D.O.L.L.計画』と『8月計画』が必ずしも同一のプロジェクトではないとしても、計画の一部に共通点、もしくはどちらかの発展形となるものが含まれているのは間違いないはず。
D.O.L.L.のうちトロアと、D.O.L.L.に似ているというミズハ。その武器である浮遊機械は、「8月計画の中心人物であるクロイツが従えるビット」と似ているあたりから、何らかの形で8月計画に関係する機械だと思われる。
他に登場する浮遊機械的な存在は、『アルディアの新型兵器を叩け!』等で出てきた兵器X(シュヴェーアトと同型ですごく強かった)や、ドローン、メフォラシュ(飛行)、ドクトゥス&ストゥルトゥスなどが存在。
また装備で実装された浮遊機械には、メティス(ミズハ魂装備)、イレーネ(ミズハの総選挙装備)がある。『メティス』はギリシャ語で「知恵」という意味、『イレーネ』はギリシャ語で「平和」という意味を持つらしい。クロイツのスキル『ヴァイスハイト』はドイツ語で「知恵」という意味らしく、かつビットが登場する。メティスとクロイツビットには力の源や機械構造などに何か共通点があるのだろうか。
さて「D.O.L.L.」はおそらく「何かの略」だと思われる。仮にこれがコンラート主導プロジェクトなら注目すべきはドイツ語ではなくフランス語だろう。もしかしたらフランス語(にあたる言葉)の頭文字をとった結果、このようになったのかもしれない……ということで「フランス語翻訳ツール」「フランス語辞典」で片っ端から「D」「O」「L」で始まる言葉を探してみた。
私はフランス語に自信がなくこれ以上の考察は厳しいが、トロアの父はコンラートも知る科学者だったようなので、家名「オベール」も綴りによっては候補だろう。(AかOで始まる? 英語版アークRで確認できると思われる)
あとコンラートやトロアのスキル名は英語っぽいこともあり、英語で「D」「O」「L」を探してみるのも面白いかもしれない
dieu:神
dépasser:超える
développement:開発、発展
Oeil:目、眼球
oeuf:卵
(Ober:ドイツ語で「上級の」)
Lune:月(※もしくは定冠詞をつけ「la lune」)
l'étude:研究
l'espoir:希望、望み
lumière:光
la vie:生命
なおクロイツが愛用するビットの「レーベン(Leben)」はドイツ語で「生命」、そのスキル「リヒト(Licht)」はドイツ語で「光」。使用スキルのエフェクトも効果もミズハと近いこともあり、ビットの中でもレーベンは「8月計画の中核」と関係が深い機体なのかもしれない。クロイツビットがもらえるミッションでも、最後の条件達成でもらえるのがレーベンだった。
となるとレーベンとほぼ同一のスキルエフェクトを持つシアは?
フランス語の「6=six」で、「シア=Sia(英語版表記)」と近いあたりから想像するに、六番目のD.O.L.L.実験体だとでもいうのだろうか。そうなるとトロアの成長具合と時系列が合わない気もするが、この世界には“時渡り”が存在するため、必ずしも時系列通りに事が運ぶとは限らない。
シアの場合は武器が浮遊機械ではなくリンゴだが、物理攻撃でリンゴをぶつける感じはミズハやトロアの攻撃方法に近い。スキル発動時は魔法陣が発動しているあたり、魔法で物理的にリンゴを生成してるのだろうか。
星5まで進化するとリンゴが金色になる&後ろに機械っぽいパーツも付くし、林檎姫ドレスを着た時のスキル『アップルパーティー』は英雄にも負けないほど強力だし(リンゴを大量に降らせるだけの技なのに)。
まさかあのリンゴ、8月計画の力の片鱗なんだろうか。ミズハやククルの髪色などの系統が近いこともあり、何かしら近い因子を持つor後天的に獲得した可能性も否定はできない。
アークRは何が“改ざん”された?
冒頭でも述べた通り、R世界は「作中で“元の世界(アーク1~3などで描かれた世界)”が書き換えられたことで世界」となっている。まずは各国の状況を抜粋して紹介した後に、どういった点が改ざんされたのかを考えていこう。
Rにおける各国&人々の状況と、3との地形の違い
3でとRで確認できる各国の状況が異なる理由は、「大崩壊(大災害)における被害内容が異なる」ことの影響が大きいだろう。ここではRにおける各地と生存者の状況をざっくり紹介する。
3とRの世界の地形の違いを、最も作中で確認しやすいのは『ハルシオン大陸』の状況だ。「アーク2とアーク3/アーク2とアークRの地図や残存地域」をそれぞれ比べると、大まかな被害状況が分かる。
アーク3のハルシオン大陸
おそらくアララトスからミルマーナやスメリアにかけて、主に東西に横断する形で大陸が沈んだと思われる。
アークRのハルシオン大陸
おそらくフォーレスの北側からミルマーナあたりにかけて、主に南北に縦断する形で大陸が沈んだと思われる。(RのOPでは「アーク2→Rへの地形の変化を直接比較できる演出」があるため、可能なら確認してほしい)
ミルマーナ
・3では大半水没済み。(黄昏では後に「水に浮かぶ国」として復興)
・Rでもかなり水没したものの、3に比べればまだ国土が残っている。
・3で死亡していたはずのロアンがRで生存。(水没状況変化の影響?)
・「3ではジハータ(2のグレイシーヌ)で占い師として身を潜めていたサニア」が、Rでは公女としてミルマーナを治める。
・街の治安はサニアが結成した『自警団』らが守っている。
※ただし黄昏情報では、3の後にサニアがミルマーナを復興したらしい。
スメリア
・3では大半が水没済。(黄昏情報では後に隆起)
・Rでは、それなりに国土が残っている。首都はナミハナ。
・「3ではテスタ(2のバルバラードorアリバーシャ周辺?)にいたトッシュ」が、Rではスメリアに帰郷しショーグンとして国を治める。
・かつてスメリア王家に使えていたミカヅチ家のホムラ達が『百鬼隊』を結成し、トッシュを支援。
グレイシーヌ
・3ではジハータという国名。
・Rでは国名がグレイシーヌのままだが、世界地図を見ると大崩壊で南北の大陸が分断されており、地形に変化があった模様。
・大崩壊で前国王を失い、若き次代がリュウゲン国王として国を治める。
・「3でラマダ寺の大僧正代理だったイーガ」が、Rでは権僧正。
ブラキア
・Rでの首都はグーズで、「ダーラやジンバら6人の首長」の会議により国の方針が決まる首長連邦国家。
・首長の大半がアルディア帝国に賛同し、帝国軍が在留。
・リーザ(故郷のホルン水没済)が、アークスやチョンガラの協力で『難民キャンプ』を作り、大崩壊で住処を失った人々を支援。
アリバーシャ
・水の神殿を守るサリュ族のカノン村が、黒騎士によって壊滅。後にミズハとハルトが「一部の人が生き残る形」へ歴史を修正。
アララトス
・Rでは大崩壊の被害があまり無かった。ガザルアの街も無事。
・「3では大災害のショックによる記憶喪失でテスタの闇市にいたチョンガラ」が、Rではアララトスの国王を務めつつ、元気に遺跡を発掘&開発。
・後にアルディアらに侵略されるが、チョンガラの妹のアイーシャや街の者が結成したレジスタンスが積極的に抵抗している。
ニーデル
・闘技場の国として、それなりに栄えている模様。
・アークスの本部があり、ヴィルマー/リア/ヂークベックらが常駐。(後に帝国に占拠され、別に新たなアジトを作る)
ロマリア
・3では水没していたが、Rでは水ではなく『瘴気』が充満。
・大崩壊で壊滅して死の国と化し、『漆黒の痕』と呼ばれる。
・空中城に突っ込んだシルバーノアが眠っており、リア達が修理した。
・『黒の神獣』が徘徊している。
・瘴気の影響を受けたモンスターが大量発生。
・住民は少ないものの、地下集落でひっそり暮らす人々がいる。
アルディア
・プロディアスはじめ大半が水没したが、一部地域が現存。
・2のラストで水に流された描写があったインディゴスが、Rではそれなりに現存。エルクとリーザは当初インディゴスで共に暮らしていた。
・復興のための議会がインディゴスで発足したが、黒騎士により壊滅。
・後にクロイツがアルディア帝国を建国し、急激な成長を遂げる。
・3ではイティオ(クラーフ島周辺?)にいた歌姫シャンテが、Rではアルディアに戻り、帝国の闇に気づいて調査開始。
北大陸
・氷に覆われた大陸。太古の神を祭る『最果ての神殿』がある。
その他
・3ではサシャ村で育ち、ハンターになったアレク。Rのアレクはハンターではなく帝国軍の軍人になり、ルッツと会ったのも帝国軍に入ってから。(Rではハンターへのあこがれが無い事から、ハンターに助けられておらず、サシャ村で育っていないと思われる。ロマリアが水没しなかった影響?)
・Rのルッツの専門は考古学や遺物の調査収集。研究のために帝国の科学造兵廠に入ったが、命令を無視して好き勝手やっていた。
・3で生存していたアンリエッタの父親が、Rでは大崩壊で死亡済。その影響か、Rではアンリエッタ自身がロシュフォール財閥を率いて、世界各国を飛空艇で飛び回って復興活動を行っている。
元の世界との違い
ここでは主に「1~3」と「R」を比較する形で「元の世界と、R世界の違い」を確認していく。なお細かいところまで上げればきりがないため、ここでは描写が分かりやすいものだけをピックアップした。
大崩壊前の違い
※「1~2」と「R」を比較したR序盤の状況、R内の判明点を記載。
黒騎士がシオン山の精霊を呪縛。(5章7幕「黒騎士戦」勝利後に開放)
黒騎士がアークに“種”を植えた。(5章7幕の精霊解放後は行われない)
ハルトとミズハが、アーク旅立ちの日にシオン山へ。(ただしアークとククルは介入を認識しておらず、山の精霊のみ認識している)
大崩壊後の違い
※「3」と「R」を比較したR序盤の状況、R内の判明点を記載。
3で『大災害』と呼ばれていた出来事が『大崩壊』と呼ばれる。
『大災害』と『大崩壊』の被害が異なり、残存地形や生存人物も異なる。
存在する国や勢力図、生存人物などの現状が大きく異なる。
(おそらく)ミズハが存在。
闇黒の支配者の封印後、ゴーゲンに『ヨシュアの形見』を通じて、「未来のゴーゲンからのビジョン」が届いた。
(おそらく)ゴーゲンが『最果ての神殿』を発見。
(ゴーゲンの推測では)『瘴気』が発生。
闇黒の支配者を倒した面々が、各地で『英雄』と呼ばれている。
本来は大崩壊で死ぬ運命だったクロイツが生存。
「黒騎士」「黒衣の聖母」が存在。
七勇者の一部が蘇生された。
七勇者のうち、3で未確認のバルダ/ソル/ハト/ワイトが現代に存在。
3で未確認の月光(シン)/ボイドが現代に存在。
3で精神体のみ確認されたノルが、Rでは別人のような姿で肉体を所持。
『黒騎士』は何をした?
黒騎士は「アークの肉体だけを、改ざん者の精神が乗っ取った姿」と考えられる。改ざん者の意識が体を動かす形で、アークの持つ「精霊の加護による力」を扱うことが可能だ。
しかし時渡りの力はなく、1人だけで時を超えることは不可能。よって「作中での黒騎士による時を超えた改ざんは、“時渡りの力を持つ誰か”の協力によるもの」である。(6章描写から、協力者はおそらくワイトで確定)
作中で確認できる範囲では、黒騎士は主に以下のような経緯を辿ったと思われる。(ただし5章7幕で黒騎士の存在消滅後、「その所業を行った人物が書き換わった」or「所業自体が消滅」などという形に書き換わった)
過去に渡った“何者か”が「山の精霊」を呪縛。アークに種を植えさせる。
大崩壊後、改ざん者がアークを蘇生し肉体を乗っ取る→「黒騎士」誕生。
死亡したククルを蘇生し、「黒衣の聖母」へと改ざん。
世界各地で「都合の悪いもの」を破壊。(アルディアのデリントンの大虐殺、水の神殿を守るサリュ族のカノン村の消滅、帰らない義勇軍、他)
アルディア帝国がある程度力を付けた後、帝国軍と共に行動。各地でハルト達と対峙するが、この時点では本来の力を出し切れていない模様。
クロイツ皇帝の前に後に姿を見せ、ハルト達を攻撃。(4章7幕)
ハルト達を探し、過去のトウヴィルへ。(5章1幕)
1度はハルト達を追い詰めるも逃げられる。
再び戻ってきたハルト達と対峙→黒騎士敗北。(5章7幕)
山の精霊が解放される→「アークが黒騎士になる」という歴史自体が消滅し、黒騎士自体の存在消滅。
大半の人から黒騎士の記憶が消え、各地の侵攻は「黒衣の聖母&神の手&アルディアによるもの」と書き換わる。
黒騎士は主に、その圧倒的な力を活かして「各地での破壊活動をメインに行っていた」と考える。また4章6幕13話の描写から、神の手やアルディアへの指示出しも自ら行っていたようだ。
『黒衣の聖母』は何をした?
黒衣の聖母は、「蘇生されたククルが操られた姿」だと考えられる。ノルのキャラクエストや6章4幕を見るに、黒騎士(改ざん者が直接乗っ取ったと思われる)とは異なり、おそらく意識はククルがベースの別人格だろう。
ククルのキャラクエや6章4幕などの描写を見るに、元の意識が眠ったところを『瘴気』で無理やり操っていたと思われる。
ただし「黒衣の聖母が具体的に何をしていたか」は明言されていない。ここでは作中に点在する描写を元に推測した内容をまとめる。
大崩壊後、改ざん者がククルを蘇生し改ざん→黒衣の聖母誕生
何者かにより分裂した黒ノルを説得し、神の手に引き入れる。
ノルをブラキアへ案内し、役目を与える。
遺跡を訪れたヴァリオと遭遇し、瘴気の力を与える。(おそらく偶然)
遺跡を訪れたハルト達を攻撃。(1章5幕)
(しばらく動きが描かれず。この間、力を吸われ続けたと思われる。)
遺跡の最深部『神の住処』にてハルト達と対峙。改ざん者に暴走させられるが、皆の協力で操られていたククルが解放される。(6章4幕)
改ざん者によれば「黒衣の聖母は、我の計画を実行するための生贄」「聖母の力は我が計画に必要不可欠」と。また6章にて解放されたククルによれば「過去を改ざんしていたのは黒衣の聖母ではない」「黒衣の聖母は、あくまで天の船を召喚し、改ざん者の同胞たちを目覚めさせるための生贄」とのこと。また既に必要な“聖母の力”を改ざん者が奪い切ったという。
なお黒騎士消滅後は、その所業の一部が「黒衣の聖母の仕業だった」という形に歴史が書き換わった可能性があるため、上記以外にも色々動いたことになっているかもしれない。
改ざん者の本来の計画とは?
「星の生命を隷属させ、支配した星の力で自分が同族たちの主導者となる」べく、改ざん者はどのような計画を立てたのだろうか。
基本的には「まず精霊を書き換えコントロールし、英雄を倒し、星の力を掌握してから、自分が本当にやりたいことをやる」という段階を踏んだ計画になっているようだ。これは「かつて改ざん者が、精霊をコントロールできなかったために創造者に敗北した」という苦い経験から来るものだろう。
私は描写から、以下の10点が「改ざん者の本来の計画の柱」と考える。
1.『時渡り』により、過去を改ざん
七勇者ワイトを蘇生し、その時を渡る力を利用して様々な改ざんを行おうとしたと思われる。作中では少なくとも以下の2点を確認している。
・山の精霊の呪縛:アークに“種”を植えさせ、乗っ取りやすくする準備。
・3000年前の“何らか”を改ざん:(詳細は不明)
2.(※「大崩壊の被害状況を変える何か」を実行)
「3でいう大災害」が「Rでいう大崩壊」へ変化したのは、何らかの“改ざん”が行われたからだろうが、現状は詳細不明。(詳しくは後述)
3.クロイツを引き入れ、アルディア帝国を建国&成長させる
ロマリアの科学者だったクロイツを引き入れて帝国を建国させ、数年のうちに急成長させた。改ざん者自身も黒騎士として補佐。成長した帝国は『神の手』の隠れ蓑であり、改ざん者の計画を促進する起爆剤となった。
4.ノルによる『精霊たち』の書き換え
モンスターを操れるノルを引き入れ、力の管理者である『精霊』を書き換え、『神獣』を従えさせることで星の力を手中に収めようとした。(改ざん者の封印が精霊により行われていると思われることから、精霊書き換えにより「改ざん者の封印を完全に解く」ことが目的の可能性もある)
5.他にも3000年前の強い人間を蘇生し、『神の手』として戦力に
他の古の七勇者や、七勇者と対峙した異端者である月光(シン)達を蘇生し、自分の配下に『神の手』として置くことで戦力を強化した。
6.ククルを蘇生し操ることで聖母の力を手中にし、かつ戦力に
蘇生したククルを操って計画に必要な「聖母の力」を吸い取り、かつ『黒衣の聖母』として計画の駒に加えた。(ミズハによれば「黒衣の聖母は未来ハルトらを殺した」ようなので、未来では積極的に戦闘に参加しているかも)
7.自身は『黒騎士』は帝国を実効支配しつつ、各地の障害を破壊
改ざん者自身は蘇生したアークの肉体を乗っ取って「勇者の力」を手にし、星の力を扱えるようになった。自ら各地の邪魔者を破壊し、かつ実効支配したアルディアや神の手に侵略させて、世界を掌握しようとした。
8.『英雄』や『精霊の巫女』をはじめ、邪魔者を根絶やしに
星の力を引き出すことができる『英雄』や『精霊の巫女』をはじめ、改ざん者に逆らう邪魔者を殺すことで、計画をスムーズに進めようとした。(ゴーゲンに送られてきた未来のビジョンなどより推測)
9.『最果ての神殿』の確保
『最果ての神殿』を手中に収めることで、計画に役立つ「創造者の残した知識や技術」といった遺産を手に入れようとした。
10.空の向こうから『天の船』を呼び寄せ、中に眠る同胞を目覚めさせる
上記までのステップで星の生命を隷属させ、力を手にしたら、最終段階として、改ざん者の同族たちが眠る『天の船』を呼んで目覚めさせようとした。ククルによれば呼び寄せには「聖母の力」と「最果ての神殿に残された技術」を使用したとのこと。おそらく星の力さえ自分が手にしていれば、目覚めた同胞を従えるだけの計画もあるはず。
改ざんに多用される『瘴気』とは?
アークRにおける『瘴気』は、未だに謎が多い力である。アーク2で登場した「人間の欲の力、つまり負のエネルギー」に性質が近いような描写は見られるが、完全に一致しているとは思えない。負のエネルギーでは見られなかった描写もあるのだ。
例えばアークのキャラクエストでは、改ざん者が瘴気を使って人間をモンスター化していた。これはおそらく「かの人間王がモンスターを作り上げた科学力」に近いと思われる効果だ。
『ロストレガシー Part 2.5』ではロマリアで瘴気に触れただけなヴィオラがキメラ化したこと、5章3幕ではヴァリオが人間のモンスター化をコントロールしていたことなどから、改ざん者本体の意志に関わらず「瘴気という存在自体がモンスター化効果を持つ」と考えられる。
セーラとシアのキャラクエストに出てきた『キメラ化細菌』は、『黒い女』が瘴気のような黒いモヤに包まれていた点から見ても、限りなく瘴気に近い性質を持つのだろう。
アーク2の紋次は「全ての人間の持つ「負」の感情につけ込み、モンスター化させるのが奴等のやり方」と話し、ペイサス図書館の書籍『古の時代と人間の王について』には「(人間王は)科学と自らの欲の力でモンスターを生み出した」と書かれている。モンスターを作るには『科学』と『負のエネルギー(欲)』という2つの要素が必要で、瘴気はそれを含むのだろう。
そもそも「負の感情や負のエネルギー自体が“闇”の一種」と考えることもできる。シリーズでは各所で「誰しも心に闇がある」「闇に打ち勝つ」というような描写があるのだが、その時にセットとなりやすいのが、その人物の悲しい過去の思い出や負の感情なのだ。そして欲望は人間にとって増幅しやすい負のエネルギーで、特にモンスター化する or した人間は欲望だらけであることが多い。
また直接表現されていないが、おそらくこの世界における『科学力』とは、おそらく「改ざん者(根源の神)由来の神の技術」と思われる。描写から見るに人間によりさらなる発展もされているようだが、根本にあるのは改ざん者がもたらした技術のようにも見える。
ゲラーのキャラクエストでのコンラートの報告によれば、残留瘴気を成分解析したところ「複雑なタンパク質からなる生物毒素、人為的な汚染物質、双方が検出されたが、依然として不明点が多い」と。憶測だが、生物毒素は人間の負のエネルギー由来、人為的汚染物質は改ざん者の力由来だろうか。
なおキャラクエストで、大崩壊から数年越しに初めて目覚めた直後のヂークベックは、「この霧と似たような成分のものをどこかで確認した事があるような」と発言していた。ヂークは3000年前の七勇者の時代から存在していることから、「大崩壊前(七勇者との戦い、もしくはアーク達との戦い)のどこか」で瘴気を確認した可能性も考えられる。
以上を総合すると、『瘴気』は「闇の力(負のエネルギー含む?)と科学由来の汚染物質(神の科学によるもの?)などが混じって視認化されたもの」と思われる。黒や紫が混じったガス状物質という表現も、シリーズにおける闇の力の視覚的な描写に近い。
作中では瘴気について、以下のような点を確認可能だ。
人間の心の隙に入り込んで蝕み、心の内に淀む闇を呼び覚ます。
瘴気に適応できるかどうかには個人差がある模様。
人間が瘴気を浴び続けると調子を崩したり、死に至ったりすることも。
人間をモンスター化できる。(改ざん者いわく「瘴気の中でも死なない体」になる)
モンスターや人間を凶暴化する性質がある。
瘴気が充満すると、人間が住めない土地になる。(漆黒の痕はアンデッドの巣窟になり、死の国と呼ばれている)
漆黒の痕(旧ロマリア)の瘴気は時間経過で濃くなっている。
アララトスの遺跡の奥からも瘴気や瘴気モンスターが確認されている。
強力な精霊の力で打ち払うことができる。(精霊の鏡、精霊の護符など)
「人間の負の感情」や「負のエネルギー」については、シリーズ作品を通して多数の関連描写を確認可能だ。例えばアーク3の闇黒の支配者は「私は、あらゆることを可能にするエネルギーを持っている」「これはお前たち人間の、長きにわたる憎悪や欲望といった負の意志を取り込んだもの」「この力は、私が破滅と殺りくの世界を創造するのに使ってこそふさわしい」と語る。これはRの改ざん者と非常に近い力であり、思想も近い気がする。
おそらくはこの辺りを掘り下げれば、瘴気についてさらに深く検証できると思われる。下記はその一部だ。
アーク2の風の精霊は「モンスター達も人間の欲や妬みなどの力に毒されている」「モンスターがおかしくなるほど自然界のバランスが崩れてきている」的な発言をしていた。
精霊の黄昏の真実の洞窟では、「闇黒の支配者の力は、憎悪や怨念、強欲やねたみといった負の感情を取り込んだもの」との話があった。(真実の洞窟では、これ以外にも世界の核心に関する話をいくつも聞ける)
アークRの地の精霊は、改ざん者側の七勇者を縛るものについて「負の呪縛」と表現した。(山の精霊やククルらも「呪縛」と表現されている)
改ざん者の今までの動向と、大災害が大崩壊へ変わった経緯
作中ではたびたび「誰でも何か意味があって行動を起こす」との主張が見られることから、「全く意味のない行動はない」「全ての行動に意味がある」と考えてよいはず。
では「大災害が大崩壊へ変化」という作中最大の“改ざん”が行われた背景には、どんな意味があるのだろうか?
私は「改ざん者が、“旧ロマリア”や“アララトス”あたりを良い状態で入手すべく、大災害を大崩壊に変えた」と考える。
3でも精霊の黄昏でもアララトスは出て来ない。アーク1や2であんなに象徴的に描かれたのに全く触れられないということから、『大災害』でアララトスは多大な被害を受けた可能性がある。
だがRの『大崩壊』ではアララトスにほぼ被害がない(チョンガラキャラクエより)とのこと。そして6章で描かれた通り、遺跡の71Fのさらに奥深くには、改ざん者が黒衣の聖母から力を吸い取るための装置はじめ、神の技術が詰まった『神の船』が眠っていた。おそらく改ざん者は「『神の船』を万全の状態で手に入れるべく、崩壊による被害を変えることで、アララトスへの被害を抑えたかった」のではないだろうか。
そして3では旧ロマリアの大半が水に沈み、2の頃の繁栄の面影もない。
Rの旧ロマリアは『漆黒の痕』と呼ばれ、街が瘴気に包まれてこそいるものの、キメラ研究所は無事に残っている。またゴーゲンキャラクエスト等で確認できる「漆黒の痕を見下ろす丘」の背景をよく見ると、霧に包まれた街のようなものが見える。3ではこんなに建物が残っていなかった気がする。
また描写から「瘴気は改ざん者にとってプラスの物質」と考えられるため、3に比べれば(改ざん者にとっては)ロマリアへの損壊被害が少ないのではないだろうか。
ちょこのキャラクエでは「災いの復活の前にあの場所へ」「既に変化は始まっており、あなたもこの遺跡もすでにその変化に巻き込まれている」などの描写からある。この時は意味深なまま終わったが、後に6章3幕になってようやくこのあたりの伏線が回収され始めた。
5章1幕の『神の記憶』によれば、改ざん者は身体と精神に分離させられ、それぞれ星の中へ封印されたらしい。6章では「漆黒の痕(旧ロマリア)」と「アララトスの遺跡」から瘴気モンスターがあふれているという。状況からして改ざん者の身体と精神は、その2ヶ所に封印されたと考えられる。
これこそ、旧ロマリアとアララトスが改ざん者にとって重要拠点となる最大の理由ではないだろうか。
なおどちらに身体が、どちらに精神が封印されたかは不明だ。6章5幕でトッシュが「この船がお前の身体だってことはわかってる」と発言したが、改ざん者は否定も肯定もしなかった。(状況を考えるとロマリアが精神、アララトスが身体でよい気もするが、現状は明言されていない気がする)
少なくとも「6章5幕段階で、改ざん者の精神は天の船に移された」という点は確かのようだ。
ではどのような手段で、大災害を大崩壊へ変えたのだろうか?
このテーマについて考える前に、まず確認したいのが「大災害(大崩壊)はどのようなシステムで発生するのか?」という点である。
アークRのOPでは、「溜め込まれた負のエネルギーの放出により」大崩壊が起きたと表現されていた。またこの文より「これは崩壊であり災害でもある事象」という情報も読み取れることや、後に観測できる各地の状況から、「大災害と大崩壊が発生するメカニズム自体は基本同じで、その被害状況と呼び名が異なるのみ」という可能性が考えられる。
アーク2における『殉教者計画』は、人間達を欲望のおもむくままに行動させて得られる『負のエネルギー』で空中城を浮上させ、人間王(闇黒の支配者)を復活させる計画だ。世界各地に『殉教者の塔』を建設し、塔の装置で人間を操って欲望を増幅させ、それにより発生した『負のエネルギー』を聖柩に溜め込むことで実現させようとしていた。ザルバドによれば、精霊力が無くなり、限界に達した瞬間に『闇黒の支配者』『闇の力』が復活を果たし、この世界は崩壊すると。それができるのは欲にまみれた人間だけのため、ガイデル王が利用されたのだという。
アークRでは、負のエネルギーにも近い性質を持つ『瘴気』が登場。1つ前の項目で述べたとおり、私は「瘴気は、負のエネルギーと改ざん者の力(闇の力?)などが混じったもの」と考える。
そしてもう1つ、大きな疑問がある。
改ざん者が自ら自陣に率いたのは、蘇生させた勇者や聖母や古の七勇者ら「特別な人間で構成される『神の手』」が基本だ。月光は七勇者グラナダといい勝負をしていた上、3000年前の戦いで『異端者』として何らかの渦を起こしたと思われ、違った意味で特別である。6章5幕で「改ざん者が月光を“別格”扱いする発言」があるのも気になる。あの発言の裏には何か理由がありそうだ。
4章7幕後の皇帝失踪後は、エイギルやマゼンダら“普通の人間”も中枢に近いポジションになった。しかし『ザ・ミッション Part 3』の「改ざん者に心から従うボイドや洗脳強化兵の量産が進めば、エイギル達は用無し」との描写から、エイギルらの登用は一時的であり、彼らを『神の手』に加えることなど現状考えていないことが分かる。
では「崩壊前に名前が出てこなかったように思える“一科学者”」を、改ざん者自ら勧誘したのはなぜだろうか?
先の「意味のない行動はない」との考え方にもとづくと、「その段階でのクロイツ勧誘は、改ざん者にメリットがあった」ことになる。クロイツの精霊を毛嫌いする言動、機械に頼る姿を見る限り「実は彼は精霊に選ばれし者で……」等の可能性はないと思う。
改ざん者の性格上は無駄な事をやらない気もするし、普通の人間などただの駒扱いなはず。ミズハがいた未来(改ざん者の計画が成功した未来)の「皇帝が違う」等の描写から、計画が順調に進めばクロイツはもっと早い段階で切り捨てるはずだったのだろう。よって「改ざん者にとっては、4章7幕より前にクロイツという駒が必要な瞬間or期間があった」ということになる。改ざん者は、クロイツのどこに“駒としての有用性”を見出したのだろう。
可能性としては
・クロイツの科学者としての技術力が必要だった。
・クロイツの人間性は、駒として扱いやすいと判断。
・クロイツに“人間王に通じる何か”or“人間王とは違う何か”を感じた。
・クロイツに皇帝としての素質を見た。(人心掌握力など)
・封印がほころび初遭遇したのがクロイツだった。(黄昏のザップ的な)
などが考えられる。
さらに私は様々な描写をふまえ、「クロイツこそが大崩壊への変化のカギ」ではないかと考えている。
ここまでの考察をふまえ、例えばこんな経緯はどうだろうか。
遥か昔、二人の“神”による争いが起きた。敗北した改ざん者は2ヶ所に分けて封印されてしまう。なお創造者による封印は精霊によるものであり、裏を返せば「精霊の力が弱まれば、改ざん者の封印が解ける」ということだ。
時が経ち、今から3000年ほど前。人間が自然を破壊したために精霊の力が弱まった。そのせいで改ざん者の封印も解けかけるが、まだ完全に解けたわけではないため、自分自身では動くことができない。
そこで目を付けたのが、後に『人間王』と呼ばれることになる欲深い男だ。改ざん者は彼に世界の真実(神の存在など)を教え闇の力(科学力)を授ける。力を手にした男は、人の限界を超えた『闇黒の支配者』となった。だが改ざん者は男に世界をくれてやるつもりは毛頭なく、実は彼の支配が進んだところで、自分が世界を乗っ取るつもりだったのである。
王はその力と自らの欲でモンスターを作り神に挑むが、「グラナダはじめ七人の勇者」と「創造者が授けた聖櫃」により封印された。戦いの過程で世界の生き物の多くが消える。改ざん者も、何らかの要因で再び動けなくなり、「計画を邪魔した精霊や、その加護を受ける七勇者ら」「創造者が追加した仕組み」のことを深く記憶に刻んだ。
それからさらに3000年ほど時が流れ、大国ロマリアはモンスターの四将軍に実効支配されていた。四将軍は表向きこそガイデル王に仕えるフリをしつつ、人間王を復活させるために空中城を建設し、殉教者計画を進めて負のエネルギーを集めていたのだ。
負のエネルギーが集まることで、精霊力はどんどん減少していく。これにより、再び改ざん者の封印も弱まった。そこで改ざん者は、クロイツに目をつけた。彼はロマリアの技術者でキメラ研究にも携わっていた人物だ。改ざん者は封印のほころびを利用して、クロイツを配下に加えた。
改ざん者はクロイツに命じて、何らかの方法で聖柩に溜まる負のエネルギーを技術的に操作し(横取りし?)、「負のエネルギーの総量を変える」または「負のエネルギーの放出方法を変える」などの変化を起こした。殉教者計画では各地で装置を使っていたことから、科学者であるクロイツが変化を起こせる余地は大いにあるはずだ。
この変化が影響し、2ラストで溜め込まれた負のエネルギーを、ガイデルが放出させた際の「世界の崩壊状況」が変化。後に『大崩壊』と呼ばれる災害が起きた。(この時に闇黒の支配者も復活したが、負のエネルギーが横取りされたとしたら、2で対峙した時よりも弱かった可能性あり)
3000年前の計画失敗の最大の要因は、精霊や七勇者の存在だった。よって今回の改ざん者はまず、前回の邪魔者(七勇者やその魂を継ぐ勇者、精霊)へ早めに対処し成功率を高めることにした。
何より従えたかったのがワイトとノルだろう。ワイトは時渡りで過去を書き換えられるため、作戦内容の幅を広げられるし、ノルは神獣やモンスターをも操れる。その他の七勇者も全員配下に加えたかったが、バルダ以外は失敗したようだ。
また精霊の勇者であるアーク/聖母のククルは精神体としてこの世界を守っていた。このままでは計画の障害となる可能性があったため、1度蘇生した上で肉体を乗っ取り、改ざん者の手駒に加えたと思われる。
後の改ざん者の行動はRで描かれた通りだろう。ただし3000年前の改ざんはヒントが少なく可能性を絞るのが難しい等、全容はつかめていない。
改ざん者の計画と“イレギュラー”
改ざん者は予め立てた計画に沿って行動している。しかし6章終了時点はことごとく失敗し、計画の方向性を転換せざるを得なくなった状態だろう。
改ざん者は、本来の計画に無い事象をイレギュラーと呼ぶようだ。これまではミズハに対し『時渡り』を「イレギュラーな存在」と言った。またアーク復活後にも「イレギュラーが起こるとは」と発言しており、これはおそらく人間による死者蘇生のことだが、ククル解放も含むかもしれない。
アークRで描かれる時空は、大きく分けて4種類あると思われる。
・元の時空:改ざん者により書き換えられていない世界。
・ミズハがいた時空:改ざん者の計画が成功し、英雄が抹殺された世界。
・Rの序盤時空:未来から来たミズハが、ハルトと出会う世界。
・Rの黒騎士消滅後時空:ハルトとミズハの活躍で黒騎士が消滅した世界。
改ざん者の計画がうまくいった未来こそ、ミズハが本来いた未来(ゴーゲンのキャラクエの「未来からのビジョン」で描かれたもの)だろう。
<ミズハの未来についての主な判明点>
・ミズハは未来のハルトと共におり、それは現在のハルトより年上だった。
・ゴーゲン以外の英雄全員とハルトが、神の手によって殺された。ハルトは黒衣の聖母に殺された。
・ゴーゲンは「ミズハがアルディアのD.O.L.L.に似ている」と認識。
・ミズハが時間を跳躍し『ヨシュアの形見』に反応したことで、ゴーゲンは彼女に「ワイトの血を引く者」の特徴を確認し、「神に逆らったクロイツの八月計画の遺産」ではと推測する。ただし八月計画の遺産は神の手によって破壊されたはずであるとのこと。
・アルディアの皇帝は、クロイツとは別人。
キャラクエストを見る限り、未来のゴーゲンはいったん世界を諦めていた。それがミズハという存在の出現に希望を見出し、ミズハを過去へ送り出す手助けをした。
そしてR時空にやって来たミズハは、ハルトや英雄達と協力し、改ざん者を止めようと奮起。当初こそミズハ達が後手に回っていたが、3章のエルク帰還あたりから流れが変わりはじめた。
改ざん者率いる神の手やアルディアは、各地の英雄たち抹殺失敗、各国制圧の遅れなど徐々に押され始める。さらに五大精霊の復活、黒騎士消滅。決め手となったのはアーク復活&ククル解放だ。生命や力を支配し切れなかった改ざん者は、予定より早く「天の船」を呼び寄せざるを得なくなった。(計画通りなら、完全に星を掌握した後に呼び寄せるつもりだったと思われる)
この時代のゴーゲンは5章1幕で言った。「ミズハがこの時代に現れて、英雄たちと会ったことで。いや、何よりハルトに会ったことで確実に世界の流れが変わり始めておる。」「改ざん者にとって、ミズハの持つ能力が何よりも脅威なんじゃ。だから、お前さんにしつこくちょっかいを出してきとるんじゃよ。」と。この読みは正しかったはずだ。
また改ざん者は6章でアークが復活したことを「イレギュラー」と言った。おそらく「改ざん者が世界を変えるためにもっとも邪魔で、必要不可欠な存在こそがアーク」というゴーゲンの推測も正しいのだろう。
ミズハとアークらに対してだけ『イレギュラー』という言葉を使った改ざん者の根底には、「彼ら以外の人間は全て自分の思い通りに動かせている」という驕りがあったはず。
しかし改ざん者の計画を遮ったのは2人だけではない。ミズハやアークの意志とともに「世界を救いたい」と願うたくさんの人々の意志があり、皆が結束したからこそ強大な改ざん者に対抗できたと言えるだろう。6章4幕のアークの「お前は人間を見下し利用するだけで、彼らの本当の力を知ろうとはしなかった」「それこそがお前の弱点だ」は、改ざん者に向かってそれをストレートにぶつけた発言だと思う。
この場はうやむやになったが、改ざん者は、アークの言葉を聞いて何を思ったのだろうか。6章5幕を見る限りは特に意識していないようにも見える。だが改ざん者は経験をふまえて計画をアップデートするタイプな気がするので、案外今後の改ざん者側の計画には「人間への警戒」を練り込み、より成功率を高める方向へと舵を切る可能性もあるだろう。
ミズハの時渡りは、どんな結末を引き寄せるのか
6章の展開(サービス終了後に追加された「???」含む)をふまえても、人類は「改ざん者を倒し、世界を元に戻すこと」も目指しているのは明らかだ。
しかし元の世界とR世界では、10年前の崩壊の被害が大きく異なる。そのため仮にストレートに元の世界に戻った場合、「元の世界で死んでいた人々」「元の世界で存在しなかった人」は全員死亡してしまうことになる。
例えば元の世界でほぼ全ての陸地が水没していたスメリアやミルマーナの人々は、ロアンの例を見る限りほぼ全滅だろう。サイドやヴァリオら自警団、ミカヅチ三姉妹ら百鬼隊をはじめ、Rで登場した街の人々も、アマクニもリシェーナもポルタも死亡してしまう確率が高い。ロマリアやアララトスも犠牲者が増えるだろう。Rのプレイアブルキャラにはベルドランはじめロマリア関係者も少なくない(もちろんその逆の国もあるだろうけど。)
ハルトやミズハだって元の世界で何をしていたか、そもそも存在したかすら不明。チョンガラも魂が抜けた状態に戻ってしまうし、トッシュも故郷で暮らすことはない。
だからこそ私は、6章でアークが「俺達の生き残るという意志はどんなものにも決して屈することはない」と言い切った瞬間、不思議な希望を感じたんだと思う。
彼らの最大の目的は、世界を元に戻す事じゃない。皆で生き残る事なのだ。
さらにハルトはククルを救う際「(ククルとミズハの二人を)どちらも選択しない」「英雄たちのように、俺も二人を助けてそして必ずお前を倒す」と言い切った。紆余曲折あった結果はハルトの言葉に近い形となった上、アークまでも復活させることができたのである。
彼らはきっと世界を救うはず。それがどんな形になるかは不明だ。だけどきっと彼らなら、「全てを救いたい」ともがき最善を尽くすのは間違いない。
特に10年前に世界を救った“英雄”たちは、この10年で自分の無力さを何度も実感したはずだ。10年前は少人数で空中城に突っ込んで、ほとんど誰にも知られることなく、何とか黒幕だけは封印し。でも結果は味方を犠牲にし、崩壊を止められなかった。3とは違い、英雄として認知された彼らは、恨み言もたくさん言われたと思う。
世界には「あの時に救えなかった人々」が多く存在している。その代表が元アルディアのゲラー達だろう。彼らと共闘が決まり、世界中に味方が大量に存在する今なら、10年前のあの時より救える範囲も大きく広がったはずだ。
さらに6章のアークは言った。「神の記憶と、神に対抗するための力、そして、この世界に生きる者たちの意志の力。これがそろえば、必ず改ざん者たちを打ち破ることができるだろう」と。
仮に改ざん者が何を仕掛けてきたとしても、彼らなら間違いなく世界を救うことができるはずだ。「アークザラッドシリーズは、人々の強い意志が奇跡を引き寄せる物語」だと信じている。
なおRという物語は、人々が“アークとククルの復活”という奇跡を引き寄せ、未来への希望を示唆したところで幕をおろした。これはこれでとてもアークザラッドだったし、最初から最後まで追いかけた日々を振り返るとすごく楽しかったと思う。
しかし世界はまだ救われたわけじゃない。ミズハもハルトも他の人々もこれからまだまだ必死に走り続けなきゃいけないし、時には立ち止まって悩むことだってあるだろう。私はその過程こそが見たいんだ。Rの続きは、単純に元の世界に戻すだけの物語ではなく、「3とは全く違う形で2の続きを描き、かつ3へ繋げる物語」だと思うのである。
いつの日か、公式に「Rの続きを描く完結編」が紡がれますように。
その他の考察
アークRにはこの他にも様々な謎がある。ここでは個人的に2つをピックアップして考えてみた。
アークが復活した理由
少なくとも、あの星に現存する者の中で、明確に「蘇生能力」を持つのは改ざん者だけのようである。ではなぜ6章4幕では、改ざん者に頼ることなく「アーク復活」という奇跡を起こせたのだろうか。
まず押さえておきたいのは、私達の世界とこの世界ではそもそも生命に関する仕組みが違うようだということ。仕組みが違えば生き返らせるハードルも異なるはずだ。
この星には「死んだはずの人間を生き返らせる手段」が存在する。例えば、アーク2の紋次のように「モンスターとして再び生を与える方法」に加え、七勇者やククルのように「改ざん者により人間として蘇生させる方法」もあるようだ。(ククルらは生前そのままに見えるし、改ざん者も蘇生に自信を持っているように見える)
そして「この星の生命はどうやら“精神”と“肉体”で構成されている」と思われる描写がある。アークとククルの肉体は2のラストで消滅したが、精神は残った状態だ。元の歴史では1000年後を描く精霊の黄昏にもアークらと思われる声が響くあたり、ずっと精神体で存在していたのだろう。
もちろん全員の精神体が残るとは限らない。だが黒騎士を消滅させたということは、少なくともアークは“元の歴史通り”の存在に戻ったはずだ。6章4幕段階も精神体で存在していたはずであり、肉体をどうにか復活させ、精神を呼び寄せることができれば、アークの復活は実現可能だったと思われる。
さらに「(創造者がそのように作ったから)この星の人間は、この星の生命力を扱うのに特化した存在」ということも前提として押さえておきたい。中でも英雄や勇者らは、力のコントロールに優れた存在のようだ。
あの瞬間、あの場に居合わせた人間は
・神の血を引く一族であるワイト家の人間で、一時期は闇黒の支配者を封印できたほど物凄い力を持つ聖母のククル
・3000年前に世界を救った七勇者で、10年前に世界を救った英雄でもある伝説の魔導士ゴーゲン
・10年前に世界を救った英雄のトッシュ&イーガ&チョンガラ&シュウ(うち3人は七勇者の魂も継いでいる)
・元の世界では闇黒の支配者封印のキーマン(“聖櫃”作成という前代未聞の方法を思いついた)であり、R世界では考古学を追求するルッツ
・ワイトの力を持つ時渡りの少女ミズハ
・一時的に勇者に匹敵する五大精霊の加護を受けた少年ハルト
と、この時点の人類の中でもトップクラスに星の力を引き出せるはずの、そうそうたる面々である。
彼らが全身全霊で「ククルを助けたい!」と願い、ハルトとミズハは命をかけて力を注いだ(ハルトに至っては心臓が止まってしまうほど)。さらにククル本人は、おそらくキャラクエでのアークとの約束を思い出しつつ「生きることを諦めない」と強固な意志を見せたのだ。
こんな一世一代の状況が揃ったら、そりゃ星の生命力による奇跡(アーク復活)を起こせたって不思議じゃない。そう納得できるだけの状況も説得力もしっかり揃いまくってたと思う。
なぜシュウとルッツはあんなに活躍できたのか?
はっきり言うと、特に6章は不自然というか、あまりにもハルト達に有利になりすぎる展開が多い。その主な要因こそシュウとルッツだと思う。
6章でも様々な危機が訪れるが、その何割かはシュウが解決に導いたと言っても過言じゃない。部下と協力してゲラーとグレーゴルを同時に助け、エルクと元帝国軍との会合をセッティングし、遺跡ではルッツを連れてちょうどいいタイミングで登場した。
そしてルッツは故障し落下するエレベーターを超短時間で修理したり、これまでの研究の成果を活かし遺跡の地下71Fより下へ行く扉を開いたり、神の技術で作られた設備をその場で解析して動かしたりなど、6章3幕~5幕は獅子奮迅の活躍っぷりであり、もはや普通の人間の限界を超えている。
ただしルッツについては正直なところ「そりゃそうだろう」という感想しかでてこない。なぜなら彼は1000年後の精霊の黄昏の時代において『伝説のメカニック』として名を残す偉人となる物凄い人物だからだ。
元の世界(アーク3)では、14歳にしてそれまで誰も思いつかなかった“聖櫃を作る”という世界を救うほどの奇抜なアイデアを軽くひねり出すほどの天才である。そりゃ21歳(?)で登場したアークRで、遺跡のエレベーターだろうが門だろうがひょひょいと直したり、初見で“神”の装置を止めたり、あんな状況で脱出方法を思いついたりしたって不思議じゃない。
そもそもRのルッツは考古学や遺物の調査収集が専門の研究者だという。これは推測だが、おそらくルッツは何らかのきっかけで古代の技術(=神の技術)に触れたのではないだろうか。古代技術は現代よりも非常に進んでいたはずであり、そんな凄いのを彼が見ようものなら一瞬にして魅入られるに決まってる。
ルッツが遺跡回りに異常に詳しいのも納得であり、活躍は必然という他なかったわけで……もしかしたらルッツは“天才すぎた”がゆえに、登場が遅かったんじゃないかとすら思ってる。彼、いろいろ万能すぎるんだよなぁ。
そしてシュウはアークRにおいて、恐ろしいほど暗躍している。
全編を通してアルディアから英雄への情報源は、基本的にシュウだと思う。他にもシャンテに事前にぴったりの助言を送っていたり、トッシュを堂々とアルディアに侵入させたり。部下を送り込んで救出させたり、自らが味方のピンチに駆け付けたりというのも何度もあった。6章3幕の遺跡でハルト達を助けたのは偶然らしいが、それにしてもタイミングは完璧だった。遺跡に関してはルッツを連れて行ったのがシュウ最大のファインプレーだろう。
彼は確かにとても有能だ。頭が切れ、戦闘能力も隠密能力等も高い。だがあそこまで敵の動向を完璧に見切り、世界中の味方のピンチを救うように動けるものだろうか。しかもゲラーが話す“片目の件”に加え、シュウキャラクエストで「アルディアにより洗脳された」と思われる描写すらあったのに。
ところでアーク1~2には、Rのシュウととてもよく似た立ち回りをしている人物がいる。敵陣にこそいなかったものの、表舞台には顔を出すことなく、各地で彼の暗躍を思わせる描写があった。そしてパレンシアタワーでは実際にアーク達を助けに来たその人物こそヨシュアである。
アーク世界でシュウの立ち回りを自然に実現するためには、それこそヨシュアのように時渡りの力を手に入れ、何度も歴史改変を繰り返さなければ不可能な気がする。だがおそらくシュウに時は渡れない(もし渡れたら色んな前提が覆ってしまう!)。
まず思い浮かぶのは、「“時渡りの力を持つ誰か”がシュウを補佐した」という可能性だ。これがかなり現実的かつ直球な推測であり、おそらく該当者はヨシュアかワイトのどちらかではないかと考えている。
アークザラッド世界の構成要素
そもそもこの星には精霊や魔法が存在しており、私達の星とは法則や構造が根本的に異なる。その主な要因は「アークザラッドの舞台となる星が“強大な生命力”を持っているから」、「神の一人である創造者が、この星の環境に合わせる形で新たに“命”と“理”を生み出したから」と考えてよいだろう。
また「神のすることには基本意味がある」というのがアークザラッド世界の認識な気がする他、アークRの内容から想像するに「創造者が生み出した命や理」は生み出される段階で「それぞれ決められた役割を持つ」と思われる。さらに“改ざん者が手を加えたもの”や“人間が生み出したもの”などに関しても、意図的に何らかの役割を期待して設計しているように見える。ただし生み出されたものが、役割通りに動くとは限らないようだ。
ここではアークザラッド世界の構成要素の一部について考えてみる。
『精霊』とは?
アーク1~2の描写では『精霊』とは世界を形作り、動かしており、かつ自然のバランスを保っている存在のようだ。
さらにRにて、『精霊』は創造者が「力の管理者」として生み出した存在であり、この星の強大な生命力を管理する役割を任されていると判明した。
この星には様々な精霊がいる。
地・水・火・風・光の5要素をそれぞれ司る精霊の代表『五大精霊』。シオン山で封印の炎を見守る『山の精霊』。トッシュの刀には『かたなの精霊』がいるし、ポコは『音の精霊』の加護を受けていると(1の説明書より)。精霊の黄昏では、全5巻の『精霊辞典』によって、多種多様な精霊の存在や詳細を細かく知ることができる。
これらの描写をふまえると、精霊は人が作った物にも宿るし、目に見えないものにも宿るといえる。アーク2のペイサスの書籍『精霊の世界』によれば「精霊はすべてのものに宿っており、目には見えないが、選ばれた者の前に現れることがあると言われている」とのこと。
ただしアーク3でゴーゲンは「古の時代から人間が過ちを繰り返し世界を傷つけたことで、精霊達は力を失い姿を見せなくなった」と語る。これはRの序盤でも近い状況になっていると考えてよいだろう。
精霊はどうやって星の力を管理している?
世界を形成し動かしている精霊は、創造者より「生命力を管理する役割」を任されていると。ではどうやって強大な星の力を管理しているのだろうか。
ここからは推測だが、「創造者は全ての精霊を作ったわけではなく、五大精霊はじめ限られた精霊のみを作った」気がする。創造者は効率的な管理を目指していたが、創造者自身は星の力を制御できなかったと。ならば大枠だけを創造者が作り、細部は現場の精霊(=この星の力の管理に特化した存在)に任せたほうがより効率的で、実態に即した管理ができるはずだ。
これを裏付けるのがアーク1の、火の精霊が“炎の精霊を自身の下位精霊”だと言った後の「(人間は)我々の産み出した生命をもて遊び~」との発言だ。この前後から「精霊は精霊を生み出せる」とも解釈できる。
創造者死去後も精霊の手により新たな精霊を生み出せれば、「精霊はすべてのものに宿る」という情報もつじつまが合う。(もし創造者しか精霊を生み出せないとしたら“創造者死去後に誕生したものに宿る精霊”が存在しないことになってしまい矛盾する。)仮にこの解釈が正しいなら、「精霊が精霊を生み出す」のも星の力の管理に一役買うと考えてもよいだろう。
もしかして生み出す精霊が“下位精霊”かもしれない。例えば「炎の精霊は、火の精霊の下位=炎の精霊は、火の精霊が生み出した精霊」というように。
アーク1で風の精霊から「風が吹くのには理由がある、勝手な欲望で変えてはならん」との発言がある他、「精霊達はバランスを保つことを目指している」と思われる描写がいくつもある。またRでは「星に異変が生じると、精霊は機能停止する可能性がある」とのことから、生命力の管理システムは「世界の自然のバランスを変えない」ことを前提とした仕様だと思われる。
そしてアーク2の水の精霊の「私たち精霊もこの世界のバランスをたもつためにがんばっている」との発言からして、完全に自動で管理できるわけではなく、ある程度精霊自身が自力で働いて初めてバランスを保てるのだろう。
精霊は世界を傷つけると力を失う。さらにアーク1ではアリバーシャが人間の破壊で砂漠化したことを受け、恵みの精霊は「一度崩れた自然のバランスは、壊す時ほど簡単に戻らない」と。よって自然がそのままなら割と楽に管理できるが、一度破壊されると修復が非常に大掛かりで、管理者がものすごく苦労し消耗してしまう管理システムのようだ。
作中では「火の精霊が火を出現させる」など、精霊達がそれぞれ司る要素を自在に操るという描写が見られる。またアーク1の水の精霊の「警告をしても聞きやしない」発言からして、バランス崩壊の兆候を感じる時は人間に警告を出すこともあるのだろう。しかし世界の描写を見る限り、その警告はほとんどの人に届いていないのが現状のようだ。この2つは精霊が世界を管理するのに使える手段だと思われるが、精霊の力が失われることで、これらの手段も使えなくなってしまうのだろう。
たぶん五大精霊はみんな真面目そうだから、世界のバランスを保つために何百年、何千年、もしかしたらもっともっと長い間、ちゃんと真摯に管理業務を頑張って来たんだと思う。だけど実際に自然が破壊されまくったり、精霊の力が失われたりなあたり、世界のバランスは崩れに崩れているわけで。
自然が破壊されつつあるアーク2の水の精霊は「がんばっているけどそろそろ限界に来ている」と発言する上、時期によっては“姿を現せないほど精霊の力が弱まっている”との描写も確認できるほど消耗している。さらに炎の精霊は力を吸い取られたり、風の精霊は600年もオーブに幽閉されたり。そりゃ人間への不満を爆発させたくもなるだろう。
そんな状況で人間の一員であるアーク達のことを信じるって、精霊にとってはよっぽどのことだったのだろうと改めて思う。
『神獣』とは?
『神獣』については情報が少なく、現状はその実態を推測することしかできない。Rでは現状、『赤の神獣』と『黒の神獣』という2種類の神獣が確認されており、共にハルト達よりもはるかに巨大な獣の姿をしている。
『赤の神獣』は、ブラキアのバンザ山にて登場。Rではメイン2章やノルのキャラクエスト、『二人のノル』などにて確認可能だ。
『黒の神獣』は、2章段階で漆黒の痕(旧ロマリア)を徘徊し侵入者へ攻撃していた。リアとヴィルマーが調べた結果、黒の神獣の動きをある程度予測できるようになったとのこと。またミズハによれば、赤の神獣よりサイズが大きいらしい。5章段階では最果ての神殿へノルと共に移動したようだ。
ノルのキャラクエストで、黒衣の聖母は「かつて神獣は星の守護者であったが、精霊たちの力が失われ暴走を始めている」と語った。聖母から指示を受けたノルは『赤の神獣』を手なづけ、“真の星の力”を解放すべく封印を解きに向かう。2章ではバンザ山の内部で“精霊の書き換え”を完了させた際は「あとは好きに暴れさせれば」と言った。
ノルは神獣を手なずけてから封印を解きに行ったが、『二人のノル』では「封印の本命は神獣」とも発言。一見関係性が分かりづらいものの「“真の星の力の封印”と“神獣”が密接に関係している」なら成立する気がする。
1章のリーザは「古い言い伝えでバンザ山には神の使いがおり、姿は巨大な獣で、人が生まれる前からバンザ山を守護しているらしい」と。仮に伝承が本当なら“神の使い”ということで、神に代わり何かを行う者なのだろう。
少なくとも神獣は“神”の名を冠することから「神が作り出した存在」という点だけは確定してよいはずだ。ならば何らかの役割を与えられていると考えるべきである。(その神が創造者であるかは不明だが、改ざん者は0から何かを生み出す描写は無いため、おそらく創造者と考えてよいだろう。)
ここからは推測だが、神の話とあわせて考えるとおそらく「『神獣』は、星の生命力の一部を制限するために、創造者が生み出した存在」ではないだろうか。この星の生命力はあまりに強大とのこと。であれば一部の力を封印することで総量を制限し、力を扱いやすくするのは何ら不思議ではない。
「封印を解くと真の星の生命力が解放され、神獣が暴走する」ということから、神獣は“強大な星の生命力を閉じ込める器”のようなものと考えられる。ある意味では聖柩と近い性質の存在ではないだろうか。
ノルが「封印を解く」と言った後に「精霊の書き換え」を行ったと思われることから、封印に関わる作業=精霊の書き換えと考えてよいだろう。ノルは「“星の生命力の一部”を閉じ込める封印を行う精霊」を書き換えることで、封印を乗っ取ったと思われる。精霊の書き換えというと大層なことのようだが、聖母の発言からしてノルがやらなくても既に封印は解け始めていただろうし、書き換えの難易度はそこまで高くなかったのかもしれない。
そしてメインシナリオの描写から、ノルは封印を完全に消したわけではないだろう。なぜなら2章でも6章でもノルが近くにいる時は神獣は暴走していないからだ。だが6章でノルが遠くに飛ばされた途端、それまで大人しくノルに従っていた神獣が“制御不能”の状態に豹変し暴れ出した。
おそらくだが、封印は“神獣の理性的なもの”を閉じ込めているのではないだろうか。封印に関わる“精霊”を書き換えることで、ノルは封印の制御を掌握したと思われる。だから6章でノルが遠くに飛ばされた途端に封印が機能しなくなり「理性のタガのようなもの」が外れたことで、神獣は欲望のままに暴走しはじめたのではないだろうか。
なお精霊の黄昏の『精霊辞典・第5巻』情報では、『山の精霊』はそれぞれの山に宿っており、霊峰と呼ばれる聖なる山には必ずいるとのこと。よって神聖な山とされているバンザ山にも、山の精霊がいると考えられる。
さらにアーク1での「聖柩を封印する炎を見守ってきた」との発言より、シオン山の精霊が聖柩の封印担当だと考えてよいだろう。このことから「赤の神獣の封印担当は、バンザ山の精霊では?」とも連想できる他、神獣と聖柩の性質が近くても不思議ではないとの裏付けの1つにもなる気がする。
神獣ってどのような存在?
現在確認されている神獣は2体とも「相性:精霊」なことから、神獣は精霊の一種か、精霊に近い存在、または精霊の力を扱える存在と思われる。
さらに「精霊は自然のバランスを保つ存在」で、ある程度は自然物をコントロールできる力を持つらしい。赤の神獣が呼び出す『神獣の使い』が「相性:自然」なのも、神獣が精霊に近い存在である確率を上げると思われる。
なお『命の声を聴く少女ノル』のガチャ登場時台詞は「精霊も、神獣も、人間もモンスターも、この星の生命はみんな愛おしいわ」であった。少なくとも彼女は「精霊と神獣は別物」と認識していると考えられる。
だが一方で神獣は“獣”であり、かつモンスターに近い存在との描写も多い。
3章でコンラートは「神獣を目覚めさせた神の手はリーザと同系統の力を所持している」「(リーザの)モンスターを操る力の秘密を解明できれば、各地に眠る神獣でさえコントロールできる」と。おそらくコンラートは何らかの情報から神獣とモンスターが近いと認識しているのだろう。あわせて、赤や黒以外にも神獣が存在しているらしいことも読み取れる。
さらに『神獣』はRが初出ではなく、アーク2のカードに「『グレートドラゴン』は伝説に伝えられる神獣」との記述があったはずだ。これらは赤や黒の神獣をノルが「ドラゴン」と呼ぶことや、コンラートの認識とも合致すると考えられる。
諸々をふまえると「神獣は、精霊の性質とモンスターの性質を併せ持つ特殊な存在」と考えてよいだろう。
グレートドラゴンはアーク2のホルンのキメラ研究所にしか出現せず、属性は「風」である。リーザのモンスター図鑑から「ドラゴンの中でも特に大きな体をしている」ことは分かり、これも神獣の特徴とは合致する。
しかし特にキメラ研究所内の魔物はガルアーノらが各地から収集してきた、もしくは何らかの操作で人工的に作り出した可能性もあるため、グレートドラゴンの本来の生態は不明と考えられる。
なお関係あるかは不明だが個人的には神獣を見て『ラリュウキ』を思い出した。ラリュウキはかつて七勇者を襲撃した敵で、ゴーゲンによって封印された。3000年後のアーク1のオルニスの丘から繋がる幻界ではゴーゲンを捕らえている。さらに約1000年後のジェネレーションでは邪霊モンスターとして登場し、属性は「無」だ。ただしジェネの登場は少し特殊なので、その生態を考える参考にはしにくいかもしれない。
共通点はまず全体のシルエットだろう。頭部があり、胴体と大きな両腕などのバランスが両者ともに近い。サイズが人間よりもはるかに大きいのも共通だ。さらにラリュウキには胴体に“目のような球体”があるのだが、赤の神獣は肩や口の中に、黒の神獣は胴体に(通常は隠れており、特定攻撃時に確認可能)似たような球体がある。
どちらかといえば黒の神獣のほうがラリュウキ寄りだろう。黒の神獣にはラリュウキに書かれた文字らしき紋様と近い紋様が見られる。ただし作中での結びつけは確認できておらず、あくまで推測に過ぎない。
『人間』とは?
かつて創造者はこの星の環境に順応した多くの生命を生み出し、その生命に星の力をコントロールさせることを考えた。そして『人間』は、創造者が生み出した中で、最も自身に近い生命なのだという。
この星の人間は、見た目こそ私達のそれと近いが、性質は異なる可能性があると考えてよいだろう。彼らはこの星に特化した生命であり、少なくとも「この星の生命力をコントロールする」ことができる。だからこそ魔法をはじめ各種スキルを発動できるのだと。
また改ざん者による蘇生が可能であること、精神体のみで稼働する者も存在するあたりなどから考えて、生命自体の性質がそもそも私達とは異なる可能性がある。ただしこれらはあくまで例外中の例外だ。1度亡くなった者は基本蘇らないことを考えると、「命の大切さに関する感覚」だけは私達の世界とほぼ共通と考えられる。
だからこそ『トキワタリノ方舟』にて、死んだ者を追い求め、再びこの世に呼び戻すために禁忌の術に手を染めた上、多くの街の人の命を無作為に奪ったウルトゥスは『異端者』と呼ばれたのではないだろうか。
『モンスター』とは?
アークザラッド世界における『モンスター』は多種多様であり、複数のルーツを持つと思われる。
1つめは、科学と欲の力で「兵器」として人間により生み出されたモンスターだ。兵器目的でモンスターを生み出す者は、歴史上で複数確認できる。
現存する最古の伝承は、七勇者の時代の人間王によるものだろう。アーク2のペイサス図書館の書籍『いにしえの時代と人間の王について』では「王はすべての世界を手に入れるため、科学と自らの欲の力で生み出したモンスターを使い神に挑戦をした」との記述を確認できる。精霊の黄昏の「(モンスターは)相手を攻撃するという目的のために、人為的に誕生させられた」という説明は、おそらくこの補足と思われる。
1~2のロマリアでは、主にガルアーノがキメラの研究や生成を行っていた。旧来のモンスターに近いと思われる個体から、人間をベースにしたキメラ、本体となる人間を真似た幻影モンスター、機械とモンスターを合成した機械モンスターなど種類は多岐に渡る。そして実際にその技術を用いて大量のモンスターを生み出して各地に配備したり、普段は人間に擬態させて街に紛れ込ませたりするなどの描写も多く見られた。
Rのアルディアでは、コンラートを筆頭に科学造兵廠にてキメラや強化兵の研究を行っていて、各地の現地モンスターを兵器化したり、人間の肉体を改造して強化兵にしたり。ヘレーネが作ろうとしていた機神と人間を融合した新たな機神兵はキメラ技術の延長線だろう。また北方には“皇帝とは別の勢力”が研究所を構え、主にクローン兵を生成しているようだ。
Rにおける『強化兵』をモンスターと呼ぶかどうかは少々難しいところ。
だが少なくとも『能力強化剤』の投与を受けた強化兵のフォンは「その副作用でキメラ化が進んでいる(キャラ図鑑)」とのことなので、限りなくモンスターに近い存在と考えられる。おそらくグスタフも同様だろう。
フェリーツェも強化兵ではあるが、「損傷した肉体を機神の技術で機械化した強化兵」ということで少し事情が異なる。
2つめは、野生の「獣」としてのモンスターだ。3000年前の描写もふまえて全てのモンスターが「人造兵器」かというと、おそらくそうではない気がする。世界には自然由来と思われる人間外の生命が複数存在するようなのだ。
『創造者の記憶』の「この星の環境に順応した多くの生命を生み出し」「ワレに最も近しい生命である人間」という口ぶりから「この星の生命として人間のみではなく、他にも様々な生命を生み出している」とも読み取れる。ただしこれは解釈が分かれる言葉だろう。
3000年前を描くシナリオ『トキワタリノ方舟』のバルダは、統率の取れた行動を見て「野生のモンスターとは思えんな」と、普段から別途“野生のモンスター”に接していると思われる言葉を発した。そしてグラナダは、森に現れたモンスターを「野良モンスター」と呼んだ後、ミズハに対し「普段からモンスターと戦っているとなると、かなり辺境の地で暮らしていたようだな」と。この当時のモンスターの生態を考える上では興味深い発言だ。
また同じく3000年前を描く『二人のノル』の前半にて、ノルを含む人々は種族としてのモンスターのことを「獣」と称していた。
この他にも、何らかの要因で人間がモンスター化したと思われる描写が複数見られる。(アーク2のカードで「死者が悪霊に憑りつかれた」とされるマミィ、「瘴気の影響で蜘蛛と融合した」と思われるRのヴィオラなど)
またある意味、ルーツに謎がありそうなのが『ヘモジー』だろう。確認されているだけで『野生ヘモジー』『養殖ヘモジー』などという生態に関係ありそうなワードが組み込まれた種類が存在する他、チョンガラの召喚獣のヘモジーは『純正ヘモジー』らしい。3000年前のノル(命の声を聴く少女 ノル)のスキルで登場するのもおそらく純正ヘモジーだ。「“純正”とは何を指すのか」という点もヘモジーのルーツに関係するのかもしれない。
そしてハトは何も知らないエルクやガルアーノ(偽)からは“モンスター”に見えるようだが、「ミナルディアの守護獣」「聖なる獣型」などと称される存在で、しかも七勇者の1人だ。ハトはモンスターに属するのか神獣に属するのか、それともまた別の種族なのかは現状不明と思われる。
“アークザラッド世界”と“私達の世界”
アークザラッド世界の文化には、私達の世界に近いものが意外と多い。例えば言語だと、ロマリア文字はアルファベットと構成が同じだし、スメリア文字はひらがなや漢字などと同じようだ。
私はある時、アーク2などからの延長の感覚でアークRの独自言語を解読しようとしたところ、グライヒュングのスキルムービーに「三角比の相互関係の公式」らしき文字列が交じっていることに気づいた。
さらにクロイツが“神”から盗んだという技術(スキル)内には他にも「積分記号」「総和記号」らしきものなどがある上、変数の文字選出基準はこちらの世界のデカルトあたりから継承されたものが使われている気がする。
数学の記号は単なる記号ではなく、この理論が0から形作られるまでには多くの人々の膨大な努力があったはず。それなのに、アークザラッドの世界とこちらの世界でこんなに近い形で科学が発展するなどあり得るのだろうか。
もちろん双方の世界で真剣に本質を突き詰めたからこそ、完成形が近づく可能性はあるだろう。あっちの世界の“神”の星にもアルキメデスやデカルト的なすごい数学者が何人もいて、こっちと似た結論になったかもしれないし。
もしくは案外アークザラッドの星はこの広い広い宇宙のどこかに存在し、創造者たちは私達の星の人間なのかもしれない。そうなれば“神”が私たちの星から数学をはじめとする技術をアークザラッドの星に持ち込んでいてもおかしくないし、それが元に発展していったとしたら、こっちと似たような文化が各地にあるのも割と自然だ。
だがそもそも私たちの現在の科学力は、集団で遠い宇宙に有人調査に出かけるまでの発展には至っていない。あの星に創造者たちが到着し、生命を生み出し始めるのはずいぶん未来の話なのかもしれないな。
この記事について(余談)
元々私は初代からアークザラッドの考察が大好きだ。シリーズ作品を通して世界について、人物についてなど、特に学生時代は自分用ノートにまとめながら色んな考察を繰り広げていた。
Rの配信が始まってからはご縁あって『アークR 選抜YouTuber』という称号を頂き、YouTubeに攻略動画や考察動画も出していたが、サービス中はなるべく本編ネタバレを避ける内容を心掛けていた。私としては他の方がプレイする楽しみを奪いたくなかったからだ。(このあたりの考えは人それぞれなはずだし、ガイドラインを決められるのは公式だけだとは思う)
というわけで今までは自分1人で完結する形で考察しており、ネットに書くつもりはほとんどなかった。それがサービス終了が決まったあたりから、有難いことに「鳴海さんに考察出してほしい」的なリクエストをかなり頂いた。自分としても1度ちゃんとまとめることでより深く考察したいなぁと思ったのが、今回の記事を書くきっかけだ。
だからある意味、今回の記事は「私はアークRが配信されてから、こういう視点で作品の世界を楽しんでいた」という総括みたいな内容かもしれない。いつかまた新作が公開される日を気長に待ちつつ、私はたぶんこの先何度も気が向く度にR含めたシリーズ作品を振り返り続けるような気がする。
こんな妄想だらけの書き殴り長文を、最後の最後まで読んでくださったあなたに最大限の感謝を!
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