いっぽっぽ
朝、頑張らないと起きられない。
自分で朝走ろうと決めたスロージョギングを、やらなくてもいい気持ちになってしまう。
急に涼しくなり、毛布のなかからでたくない。
昨日は、ネットフリックスで「極悪女王」を最後まで観て、泣いてしまい顔が浮腫んでいた。
4時45分の目覚ましを止めて、見ないふりをした。
次にスマホを覗くと4時57分で、身体を揺らしながら、やっとこ布団から起き上がる。
寝室から隣の部屋に行き、一縷の望みでカーテンを捲る。
もやで白く濁る外は、雨は降っていなかった。
ふー。
朝のストレッチ動画をつける。寝転がり天井に手足を上げてぶらぶらするのがお気に入り。
やたらめったら、無茶苦茶に振るようにする。
着替えて外に出るとすっかり夏と秋はバトンタッチしていた。
子供の頃、リレーのバトンを受け取る時を思い出す。バトンゾーンはある程度の距離がある。
テイクオーバーゾーンというそうだ。夏と秋はそれを存分に使っているように見えた。
四季がないと口にする人に、今朝の空気を届けたい。これは、紛れもなく秋だ。
走り始めると大抵すぐに意気地なしの私が現れる。
体が重くて、足が思うように動かなくて、あれ、走れないかもと思う。
無視している。意気地なしの私は諦めが良いので、無視しているうちに、お部屋に帰る。
徐々に身体が温まり、負けず嫌いが顔を出す。
そうなれば大抵は大丈夫。走り切ることができる。
たいてい私は私の弱い心の言いなりだが、そればかりではいられないのだ。
仕事に行く日は、無理せず20分のタイマーをかけている。
20分走ることを目標にして2分少ない日も5分余計な日もある。
毎回、うちにたどり着く前にトイレに行きたい。
汗をかき加えて排泄欲が高まる。この振動が刺激になるのかもしれない。
走りながら、時間も距離も一瞬気にならない時がある。
ただ前を見て、息をして、いっぽいっぽ前に足をくり出す時。
邪念だらけの私には、その無が心地よく感じる。
帰ったらまずトイレ行って、シャワーして、多分もう時間ないから、弁当はご飯をいっぱい入れて、ごま塩して、梅干しのせて、おかずは酢豚オンリーで。
酢豚にしいたけもいれよう。なんてことをすぐ思い巡らしてしまう。
無なんて、あっという間に通り過ぎて手のひらには何も残らない。
曲がり角から、近所の小学生の女の子がお父さんと走ってやってきた。
もうすぐ小学校の持久走大会なのだろう。
いっぽっぽ
みんなが自分のいっぽっぽを今日も踏みしめている。