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世界一の猫ねむのこと

2021年4月、なんとなく退屈な日々を過ごしていた。コロナで外出も減り、友人と会うこともなくなり、夫は大学院に通い始めバラバラの休日を過ごすことが増えた。そんな中で友人から届いた一通のLINE「うちでお世話してた猫が子供を産んだんだけど飼えないかな?」添えられた動画ではあまりにも小さい三毛らしき赤ちゃん猫が母猫に咥えられて運ばれる姿が映っており、見た瞬間に私はメロメロになってしまった。この子を飼いたい…今なら家にいる時間も増えたし…と夫と相談し、数日後にその子を引き取ることに決めた。

我が家にやってきた子猫は生後一ヶ月ほどの三毛猫の女の子だった。何度も呼びたくなるかわいらしい名前がいいなあ…と思って「ねむ」と名付けた。離乳食を食べられるようになったばかりのヨチヨチ歩きの子猫との日々は幸福でしかなく、家に帰るのが楽しみでしかたなかった。実家で猫を飼っていたが、三ヶ月くらいでうちに来たその子のときとは随分勝手が違うし、そのときはお世話の主体は自分の両親だった。今度は病院でもお父さんお母さんと呼ばれ、本当に自分たちがねむの親なんだなあというくすぐったい気持ちだった。
親としてねむを守ってあげなければならないので、スーパーズボラ夫婦も少しずつ生活を変えていった。変なものを食べてお腹を壊さないよう部屋を片付け、ごはん後はすぐに食器を洗った。障子とソファはボロボロになり、ぬいぐるみはすぐに齧られてしまうのでお気に入りのものは出しておけなくなった。長期のお留守番時の最適方法が見出せず、旅行も2泊3日までしかしなかった。そんなこと何も気にならないくらいねむとの日々は楽しくて可愛くて最高だった。

ねむは一年に一度動物病院でワクチンの注射を打っており、あわせて健康診断を受けている。今年の健康診断で、心臓が少し弱いかもしれないので後日精密検査を、と告げられた。今までまったくもって指摘がなかったため驚いたが、ねむは毎日元気だしまだ2歳半なのでそんなに悪いはずがないと思っていた。注射を打ったあといつもより落ち着かない感じが気になって、後日ではなくその場で精密検査を受けることになった。それからわずか3日後、ねむはお空へ行った。本当に突然すぎるお別れで全く受け止められず、何もできなかった自分を責め、ずっと泣いていた。出会って13年泣き顔を見たことがなかった夫も大泣きしていた。これから先のねむのいない暮らしに耐えられる気がしなかった。

本当に手のひらに乗るくらい小さかったけどあっという間に大きくなったね。朝起きて栗饅頭食べてたときはびっくりしたよ。スイーツが好きでご飯よりもパンとかケーキを我々が食べているといつも手を出そうとして。それでもテーブルに乗らずいい子にしてるとちゅーるがもらえることを理解してからはすごく上手に待てるようになったね。お皿を片付けるときにちゅーる早く〜ってにゃあにゃあお喋りしてくれるのいつも嬉しかったよ。お喋りねこちゃんですねって言われるくらいたくさんコミュニケーションとってくれたね。ねむはすごく甘えん坊だったから、お留守番ばかりで寂しい思いをさせてごめんね。毎晩私の足に挟まって一緒に寝る時間が本当に幸せだった。もうあのふわふわで暖かくて柔らかいねむがいないことがすごく寂しい。世界一可愛くて賢くてえらい、最高なネコチャンねむ。

今、お式をすませたねむは小さな壺に入って我が家に帰ってきている。若い子でしっぽの先までこんなにきれいに残ってる子は珍しいんですよ、と斎場の方が言っていた。最後までねむは本当にすごい。どんなに眠っていても自動給餌器のピッという音で飛び起きご飯を食べにきていたねむ。おりんを鳴らすかわりに給餌器をピッと鳴らして話しかけている。姿が変わってもねむはここにいる。そう思いながらなんとか日々を過ごしている。


夫が斎場のノートに描いた。戒名?も考えたよ。





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