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栖鳳のとらえた一瞬の煌めき
前半は栖鳳自身の作品を、後半で円山・四条派に始まる京都画壇の先人から栖鳳の弟子たちまでを展示している。
「動物を描けばその体臭まで表す」と本人が語ったという竹内栖鳳。蛙を10日間観察して描いた《蛙と蜻蛉》の、今にも動き出しそう、いや目の前で動いているかのような躍動感、墨画《寒鴉図》の筆の勢いと精緻さ、《鴨雛》の雛の脚の描き方……確かな観察眼とテクニックで動物たちが本当に活き活きしている。
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栖鳳動物画の真骨頂である重要文化財《班猫》はやはり素晴らしい。栖鳳が滞在していた沼津で惚れ込んでもらい受けたという猫の、毛並みの流れ、ふさふさ感、しなやかなポーズ……その細密さ、美しさ。手を伸ばせばそこにいるようなあたたかさを湛えた感覚。しばし見とれてしまう。
今回が初公開となる《海幸》など魚を描いたものもよかった。
新鮮な魚の色は本当に美しい。見れば見るほど美しい。吾々はよくそうした新鮮な魚を市場で見て美しい色だと思う。しかしあの魚を海岸で、今捕ったばかりのトコ見ると、市場で見るよりも、更に美しい。魚の本統の美しさというものは陸に上げられた瞬間だけと言える。
栖鳳はまさにその、「一瞬の煌めき」を写し取っている。「写生とは無駄を排除するために描くこと」と語ったというが、写生の力によって、対象の美しさ、儚さを切り取る名手だった。
後半では西村五雲《白熊》に惹かれた。京都動物園で初めて白熊を目にした興奮のようなものが伝わってくる。毛の汚れ方もいかにも動物園にいるそれで、リアルでグッとくる。その他、蘆雪の《唐子遊び図》なども展示されていて、とても充実の展示であった。