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最近の記事

栖鳳のとらえた一瞬の煌めき

山種美術館『【特別展】没後80年記念 竹内栖鳳』 前半は栖鳳自身の作品を、後半で円山・四条派に始まる京都画壇の先人から栖鳳の弟子たちまでを展示している。 「動物を描けばその体臭まで表す」と本人が語ったという竹内栖鳳。蛙を10日間観察して描いた《蛙と蜻蛉》の、今にも動き出しそう、いや目の前で動いているかのような躍動感、墨画《寒鴉図》の筆の勢いと精緻さ、《鴨雛》の雛の脚の描き方……確かな観察眼とテクニックで動物たちが本当に活き活きしている。 栖鳳動物画の真骨頂である重要文化

    • 「解像度」が上がるということ

      SOMPO美術館『おいしいボタニカル・アート』 植物学、薬草学の研究のために描かれた植物画=ボタニカル・アート。英国キュー王立植物園所蔵のボタニカル・アートのうち、食用(野菜、果物、ハーブ、スパイス)となる植物を描いたボタニカル・アートを展示し、イギリスの食文化を俯瞰する。 子供の頃、図鑑は小学館派だった。学研の図鑑は写真満載なのに、当時の小学館の図鑑は一部写真はあるものの、動物も植物も基本的にすべてイラスト。動物図鑑では、大好きなインパラやトムソンガゼルもイラストで描か

      • ヨシダナギの強かさ

        西武百貨店池袋店『ヨシダナギ HERO&QUEEN展』。 ヨシダのライフワークであるアフリカや南米の少数民族を撮影した「HERO」と、近年取り組んでいる、ドラアグ・クイーンたちのポートレイト「QUEEN」。両シリーズを一挙90点以上展示している。とにかくエネルギッシュな内容で、見終えたあと、僅かな興奮と確かな幸せを覚えた。 木々の緑、空の青、土の色に、カラフルな民族衣装を纏った少数民族たち。極彩色で、一度見たら忘れられない鮮烈な印象を与える作品だが、それらをていねいに見て

        • 視線を共有すること

          東京都写真美術館『野口里佳 不思議な力』を観る。 表題作や最新作、映像作品など展示されるなか、《父のアルバム》シリーズに心惹かれた。 野口の父親がハーフサイズのオリンパスPENで撮り続けた、家族の日常や自分の趣味の世界。生前にその膨大なネガを譲り受けた野口は、父の死後、それらをひたすらプリントし続ける。 その作業を通じて、野口は「人はなぜ写真を撮るのか」ということに思いを馳せる。野口の父の写真は、写真家のそれではなく、背景、構図なども整理されていない、視線のむき出しであ

        栖鳳のとらえた一瞬の煌めき

          ウィリアム・モリスとわたし

          府中市美術館『アーツ・アンド・クラフツとデザイン』。 数年に1度はどこかしらで開催されているウィリアム・モリス関連であるが、今回はアーツ・アンド・クラフツ運動に絞って、レッドハウスにはじまるモリスとその盟友たちとの活動から、その影響がアメリカに渡ってフランク・ロイド・ライトに至るまでを俯瞰する内容。 「暮らしのデザイン」のはじまり、というコピーの通り、とにかく多才なモリスのデザイナーとその思想に絞っているのでわかりやすく、コンパクトに「アーツ・アンド・クラフツとは何か?」

          ウィリアム・モリスとわたし

          神坂雪佳の独創と憧憬

          パナソニック汐留美術館『つながる琳派スピリット 神坂雪佳』を観る。 コンパクトな空間にぎゅうぎゅうに詰め込まれつつ、無駄のない、とてもよい展示だった。 第1章は前提としての琳派。細見美術館のコレクションを中心に、宗達、光琳、芳中、抱一、其一らの佳品が並ぶ。とくに芳中が愉しく、白梅小禽図屏風にしばし見とれる。 第2章以降に展開される雪佳の図案は、その時代のまさにモダン。イマジネーションの源泉は琳派への憧憬だった。テクニックの洗練や、表現の洒脱さにとどまらないユーモアもあっ

          神坂雪佳の独創と憧憬

          マネへの距離

          練馬区立美術館『日本の中のマネ』展、最終日に駆け込みで。 噂に聞いていた以上に異様な熱がこもった展示であった。作品の物量に圧倒されることは珍しくないが、キャプションの物量に圧倒される展示。 マネという画家が日本の中でどう受容されていったかーーに焦点をあてていて、構成としてもなるほど、とは思うのだが、圧倒的な物量、熱量のキャプションからは今ひとつそれが浮かび上がってこないような。そして、最終章にて、それまでの考察とか吹っ飛ぶような、現代アート(それも森村泰昌と福田美蘭のみ)

          マネへの距離

          ヴァロットンの光と闇

          三菱一号館美術館で『ヴァロットンー黒と白』を観る。 黒一色で刷られた木版画。「黒と白」は「光と闇」である。そこにグラデーションはなく、光と闇は画面では峻別されているのに、眺めているとその厳然たる境界が曖昧に見えてくる不思議。光に照らされたものが影をつくり、影が束となり闇になる。 黒と白で、時代を極めて冷静に、ときに皮肉も交えて切り取りながらも、どこかユーモア、温かみのある世界。その表現の頂点である「アンティミテ」で魅せる光と闇にしばし時間を忘れる。

          ヴァロットンの光と闇