人命メーカー
ただ普通に生きてきた。
佐山翔(さやましょう):明朗快活。元気なムードメーカーみたいな存在。拓也を助けたことがある。
篠崎拓也(しのざきたくや):サッパリした性格。かといって冷たいわけではない。翔に助けられたことがある。
ナレーション:拓也が兼役
佐山翔:
篠崎拓也:
ナレーション:
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(翔、テレビを眺めている)
ナレーション:「今年の4月、生命機関が成立してから20年が経ちました。今回はその歴史を、さまざまな角度から振り返っていきたいと思います。この生命機関は、医療技術の進歩によって生み出された、新しい命のあり方とされていますが、具体的にはどういったものなのでしょうか。まずはVTRをご覧ください。」
翔:ふーん………さって、行きますか。いってきまーす!
(間)
翔:拓也ー!
拓也:おう!
翔:わりぃ!
拓也:いや、そんなに待ってねえよ。
翔:そか!よかった!
拓也:てか、急だったよな。ほんとは今日バスケ部1日練習だったんじゃねえの?
翔:午後はバレー部が体育館使いたいって、昨日言われた!
拓也:体育館半分に分けて使えばいいじゃん。
翔:男バレも女バレも使うって!
拓也:そういうことか…
翔:来週は1日使えるらしい!
拓也:ふーん。そっか。
翔:まあお互い様ってやつだな。バレー部はほら、大会近いから!!
拓也:まあ、ならしゃーないな。んで?どっちの用事から行く?
翔:お前が先でいいよ!
拓也:あんがと。んじゃお言葉に甘えさせてもらうわ!
翔:オッケー!それで?何買うの?
拓也:ん?ゲームと漫画。
翔:そんだけ?
拓也:服とかも見たいけど、とりあえずはいいかな。
翔:いや見ようぜ。俺の服も選んでくれよ。
拓也:いいけど、俺センスねえぞ?
翔:大丈夫!!俺の方がない!!
拓也:誇らしげに言うことじゃなくない…?
翔:とりあえず行こう!ゲームと漫画は何買うんだ?
拓也:お前に言ってもわからないだろ。
翔:分かるかもしれないだろ!!?
拓也:え〜?ゲームは「グスタフ」漫画は「ブルーバレット」
翔:………
拓也:だから言ったろ?
翔:……名前だけは知ってる。
拓也:ふっ。「名前だけは」な。
翔:くそう…
拓也:(笑ってから)うし、行こう。
翔:おう!あ!そうだ!お前飯食った?
拓也:あーそうだ。お前となんか食おうと思ってたんだ!もしかして食ってきちゃった?
翔:いや!俺もお前と食おうと思ってた!先に食おうぜ!
拓也:だな。なんか食いたいものある?
翔:ラーメン!!
拓也:オッケー。行くか。
翔:おう!
(近所のラーメン屋にて)
拓也:……あー。
翔:どした?
拓也:ああいや、テレビの番組がさ。
翔:ん?あぁ、人命メーカーのやつ?
拓也:そ。てか生命機関な?いちおう。
翔:あそっか。正直、人命メーカーの方が馴染みあるから、そっち使っちゃうんだよなあ。
拓也:それはわかる。あのさぁ、翔の同級生にメーカー生まれのやついた?
翔:うん。…小学生の時に、そのことでいじめられてたやつがいた。
拓也:マジ!?
翔:マジ。なんでそいつがメーカー生まれだって周りが知ったのかまではわかんないけど、色々酷かったよ。
拓也:例えば?
翔:んー…。そいつ運動苦手だったんだけど、「メーカー生まれの不良品はとろい」とかな。
拓也:えぇ…マジか。
翔:てか、これも「機関出身」って言ったほうがいいんだよね?
拓也:あ、そうだ。俺も正直どっちでもいいと思ってるから、その時によって機関出身もメーカー生まれも使っちゃうな。
翔:みんなそうじゃね?でも気にする人もいるみたいだし、一応気をつけたほうがいいんだろうな。
拓也:だな。
翔:拓也の方はそういういじめなかった?
拓也:全然。ってかメー…機関出身のやつがいたかどうかも知らない。基本打ち明けなくない?
翔:まあ、そうだよな…。
拓也:…なあ、これって、どうしても子供が授かれないっていう夫婦のために、養子とは別の選択肢としてできた制度だろ?
翔:まあ、そうだね。
拓也:子供できない人達が笑顔になるための制度なのに、周りに気を遣ったり、逆に遣わせたり、そもそも打ち明けられなかったりしてるのって、どうにかなんねえのかなって思っちゃうんだよな…。
翔:それは…その通り。
(ラーメンが来た)
拓也:あ、ありがとうございまーす!
翔:ありがとうございます!
拓也:やっぱ塩だわ。うまそ〜!
翔:ラーメンはコッテリ醤油豚骨だろ!
拓也:俺は脂っこすぎるとキツいの。うし!いただきます!
翔:いただきまーす!
(間) ゲームショップにて
拓也:OK、グスタフはゲット!あとはブルーバレット〜
翔:なあ拓也、グスタフってどんなゲーム?
拓也:ん?雑に言うと神様たちが戦うやつ。
翔:へえ…ブルーバレットはどんな漫画?
拓也:めっちゃ銃撃戦したり危ない仕事したりするやつ。
翔:そういうの好きだよなあ、お前…
拓也:お前はどんなの好きとかあるの?
翔:ゲームはパズル。漫画は青春チックなやつ。
拓也:うわーそういうのやらないし読まない。
翔:面白いのになぁ…
(間) 服屋にて
翔:俺が着るなら、こっちの赤のやつの方が似合う気がする!
拓也:いや青の方がパンツとの組み合わせもいい!!
翔:えーそうかあ!?
拓也:とりあえずどっちも試着してみろって。
翔:オッケー。(しばらくもぞもぞしている)
まず赤な?
拓也:うん。
翔:んで…(もぞもぞする)
これ青。
拓也:おう。
翔:…やっぱ赤がいい気がする!!!
拓也:えー!?マジィ!?
(間)
拓也:なぁ、翔?
翔:ん?
拓也:今日お前と過ごしてて思ったんだけど、俺ら全然好み合わないよな。
翔:そんなに?
拓也:んじゃ焼き鳥食うならタレと塩胡椒どっちがいいかせーので。
翔:おっけ。
拓也:せーの、
拓也:塩胡椒
翔:タレ (被せて)
拓也:な?
翔:えー偶然じゃね!?っていうかどうした?いきなり。
拓也:あぁいや、こんだけ好み合わないのに、よく仲良くなったなと思ってさ。
翔:あーそういうことね。
拓也:お前、俺と初めてあった時のことって覚えてる?
翔:あー覚えてる覚えてる!拓也が先輩に絡まれてたやつだろ?
(長めの間 ここから過去回想)
拓也(M):高校1年生の頃の夏。その日、俺は校舎裏で先輩2人に絡まれていた。理由は、その2人曰く、「生意気だから。」今時こんなことあるのかと思った。
拓也:2人とも落ち着いてくださいよ〜。別に2人がタバコ吸うことに文句があるわけじゃなくて、ここで吸うのはどうなのかなあ?ってだけで…
拓也(M):どうすっかなあ…諦めてボコられるか、ワンチャンにかけて逃げるか…
と、思考を巡らせていた時。
翔:うおーーーーーーい!!?
拓也(M):すごい勢いで現れたのが、翔だった。
拓也:は!?
翔:どらぁ!!!(先輩にタックルして吹っ飛ばす)
拓也:おい誰だお前!?っていうか(何してんだ)
翔:(前と被せて)行くぞ!!!来い!!!
拓也:はっ!?おい!!
(走り出す2人。拓也は手を引かれていたが途中から普通に走る)
翔:はっ!はっ!大丈夫か!?
拓也:はぁ…っ!まぁ…!一応…!
翔:よかった…!!あの2人は!?
拓也:めちゃ追いかけてきてるよ…!!どうすんだ!?
翔:任せろ、俺の自慢はでかい声だ!ここまでくれば届く…!!
拓也:はぁっ?
翔:(息を大きく吸う)須郷(すごう)先生ーーー!!!来て下さーーーい!!!
拓也(M):須郷龍臥(すごうりゅうが)先生。通称ドラT。生徒指導の先生で、滅茶苦茶強い。ホントに信じられんくらい強い。
翔:須郷先生ーーーーーーー!!!
拓也:マジで声でけえ…!!てかうるせえ!!
翔:あっ!先生ここです!!
拓也:来るのはや!?
ん、あっ!?あいつら逃げようと…!先生!あそこの2人タバコ吸ってました!!
(間)
拓也:ふぅ…お疲れ。
翔:そっちもお疲れ…
拓也:ビックリしたけど助かったわ。ありがとう。
翔:おう!でも、咄嗟だったからあんな無理矢理な感じになっちゃって、ごめんな!
拓也:いやマジで助かった。
翔:へへっ! んぁ〜、腹減った。なんか食って帰ろうかな。
拓也:あ、ならなんか奢るよ。
翔:マジ!?いいの!?
拓也:おう。助けてもらったし。
翔:よっしゃー!ありがとう! あ!俺、佐山翔!
拓也:あぁ、俺、篠崎拓也。呼び捨てでいいよ。
翔:拓也か!!よろしく!!
(回想終わり)
拓也:懐かしい…
翔:あの時のドラT凄かったよな。
拓也:あのガタイであのスピードは反則。追い詰められた先輩ビビっただろうなあ…可哀想。
翔:しかも結構距離あったよな?
拓也:それ。
翔:ん〜そうかあ、もう1年ちょいか!
拓也:そうそう。はええよな。
翔:あのさあ。
拓也:ん?
翔:俺らずっとこんなんなのかな?
拓也:どういうこと?(笑)
翔:いやだから、趣味合わねー!って言いながら遊んでんのかなって。
拓也:わかんねえけど、流石に1個くらいは合うやつあるんじゃね?好きなものみたいな、そういうの。
翔:そうかあ…まあそんなもんか!
拓也:多分な。
(間)
拓也:………
翔:(気分良さそうに鼻歌を歌っている)
拓也(M):わかりやすいなあいつ…高校2年にもなって誕生日であんなに浮かれるか?
翔:拓也!?今日は早いな!?
拓也:見つかった…(小声)
翔:へ?
拓也:なんでもない。誕生日おめでとう。
翔:ありがとう!!!!!
拓也:なんもないぞ。
翔:はっ………そうだよな…うん!!いやいいよ全然!!おめでとうって言われるだけで嬉しいから!!うん!!
マジでそれだけで嬉しいから……
拓也(M):ガキかこいつは…
拓也:今度暇な日にでも飯奢ってやるよ。
翔:本当!?ありがとう!!!!!
拓也:はぁ……(呆れつつ笑ってしまう)
(間)
翔:ただいまー!!
お!?今年は焼肉!?っしゃー!誕生日最高!!
(間)
翔:ごちそうさまー!!
ん?何、話…?おう、わかった。
翔:何2人とも改まっちゃって!!もしかしてまだなんかあんの!?サプライズプレゼント的な!?
あぁなんだ違うのか……じゃあどうしたのよ?
翔:………え?
(間)
拓也:翔!
翔:!?…おう。
拓也:ホームルーム終わったけど。お前、部活行かなくていいの?
翔:へ?…あっ!?
拓也:いってらっしゃ〜い(笑)
ああそうだ!翔!!
翔:うぇ!?何!?
拓也:明日暇?誕生日祝いに遊ぼうぜ。他にも何人か誘うし。
翔:あぁ…おう。オッケー。
拓也:テンション低!?まあいいや。とりあえず部活行ってこい!
翔:あっ!おう!
拓也:あいつ今日1日ずっとボーッとしてんだよな。
まさか好きな人でもできたか…?
(翌日)
拓也:結局みんな予定合わなくて俺だけか…ま、そのうちみんなで遊ぼうってなったからよしとして。翔のやつ遅いな…
拓也:あ、LINE来てる。
翔(M):「ごめん!今日行けない。」
拓也(M):「ええ!? 体調悪いとか?」
翔(M):「うん。マジでごめん。」
拓也(M):「いいよいいよしょうがねえもん!また今度な!」
拓也:はぁ…。いきなり暇になったな。にしてもあいつ、大丈夫か?
(間)
拓也(M):次の日、翔は初めて学校を休んだ。
次の日にはまた登校してきたけど、心ここに在らず。上の空。そんな言葉がピッタリ当てはまるような状態だった。
拓也(M):翔がそんな状態になってから、2週間ほど経った休日の夕方
拓也:ん?LINE?誰だ?
翔(M):「突然で悪いんだけど、今から会えないか?」
拓也:…? 「いいけど、どうした?」
翔(M):「直接話したい。」
拓也(M):「わかった。とりあえず高校近くの駅でいいか?」
翔(M):「ありがとう。」
(間 高校近くのちょっとした高台にて)
拓也:翔?
翔:ん、拓也。ごめんな急に。
拓也:いいよ別に。
翔:……
拓也:……
翔:拓也…
拓也:ん?
翔:俺さ…
拓也:おう。
(拓也、翔が話し始めるまで待つ)
翔:俺…
拓也:おう。
翔:……生命機関の出身なんだって。
拓也:…え?
翔:……
拓也:なに、どういうこと?
翔:誕生日の夜に言われた。俺は父さんと母さんとは血が繋がってないって。
拓也:なんで…
翔:俺のためなんだってさ。
拓也:…
翔:2人は…自分達は、運動とか、勉強とか、そういうので成績が良かった訳じゃないし、特別できることもなかったから…。それなら、そんな自分達の遺伝子を継ぐよりは、他の遺伝子の方がいいんじゃないかって…
拓也:いや!……いや、だってそんなの…
翔:ひどいよな。
拓也:……ん…
翔:親子で顔が似てないなんてザラだし、血がつながってるとは思えない!なんての、よく聞くだろ?だから、何も気にしたことなかったけど…
拓也:……
翔:まさか、本当に血が繋がってないなんて思わないじゃん。
拓也:…
翔:今まで一緒にいた家族が、本当は血の繋がってない赤の他人だったなんて…思わねえじゃんかよ…!!
拓也:っ…!
翔:…いつか、お前と生命機関について話したよな。
拓也:あぁ。
翔:その時はさ、「生命機関」でも、「人命メーカー」でも気にならなかった。「機関出身」でも、「メーカー生まれ」でも…。けど、自分がそうだと思ったらさ…嫌なもんなんだなあ、「メーカー生まれ」って…。
拓也:翔…
翔:なんか、人工のさ……。自分が命を持った生き物じゃなくて、ただの作り物みたいに思えてくる呼び方だなって思って…。今更だけど…。
拓也:そんなことねえよ。
翔:………
拓也:そんなことねえよ。何言ってんだお前。
翔:……俺。
拓也:ん?
翔:すげえ、小さい頃に…
拓也:うん。
翔:……
拓也:……
翔:同い年で…生命機関出身の子に…「お前人じゃないんだ」って、言ったことあって。
拓也:っ……うん。
翔:向こうから、俺に教えてきて。俺もそんな、深く考えないで言った。言い訳でしかないけど…。その時の俺の親、すごい複雑な顔してたよ。勿論、厳しい顔で叱られたけど、でもなんか、泣きそうでもあってさ。…そりゃ、そうだよな…
拓也:…それから?
翔:その子にも、その子の親にも、頭下げて謝って…まだ小さい子の言うことだから、反省してるみたいだし、今回は水に流そうって、向こうの親は言ってくれたし、その子も許してくれた。けど…
拓也:けど?
翔:俺、許されてよかったのかな?あんなこと言ったやつが、ヘラヘラ笑って生きてていいのかな…?人のこと傷つけて、両親にあんな顔させてさ。何やってんだって思うんだよ。
拓也:…そうか。
翔:もう2度とあんなこと言わない。自分が機関出身だって知って、今更、自分の言ったことの酷さが分かった。人間じゃないなんて…
拓也:…
翔:俺…最低だ…。
拓也:…翔。
翔:?
拓也:お前さっき家族のこと、「血の繋がってない他人」って言ってたよな。
翔:…
拓也:本気か?
翔:……
拓也:もし本気で言ったんならお前は大馬鹿だ。本気じゃなかったとしても馬鹿だ。
翔:……
拓也:家族って、血の繋がりだけじゃないだろ。
翔:うん。
拓也:あの人達以外にお前の本当の親なんていないよ。
翔:……うん。
拓也:小さい頃のことだって、それは、酷いこと言ったとは思うけど、今、本気で反省してるなら、それでいいと思う。
翔:…
拓也:親は、お前が機関出身だってことだけ伝えてきたの?
翔:2人は…
拓也:うん。
翔:なんか言おうとしてたけど、俺部屋に戻っちゃったから。何言おうとしてたかわからない。
拓也:あぁそっか…ま、しょうがない。
翔:何言おうとしてたんだろ。…ほんと、情けねえけど、怖い。
拓也:大丈夫。多分お前が心配してるようなことは言われねえよ。
翔:そうかな。
拓也:2人は、お前にずっと本気で接してると思う。息子に対して、親として。
翔:うん。
拓也:人として、家族として大切に思ってたから、お前が機関出身の子に言ったことに対して、本気で叱ったんだろ。きっと。
翔:そうだといいけど。
拓也:…あと、言う必要もねえとは思うけど、一応。俺、お前が機関出身だろうが普通の生まれだろうが、どうでもいいから。
翔:…
拓也:服とか、飯とか、遊びとか。お互いの趣味が1つも合わなくても。…生まれ方がちょっと違ってても。関係ねえよ。別にいいじゃん。「合わねえなあ!」って笑いながら遊べればさ。
翔:…他のやつは
拓也:え?
翔:他のやつは、俺のこと認めてくれんのかな。
拓也:それは…
翔:俺、小学生の頃に見てるんだよ!「人もどきは俺たちと同じもの食うな」とか、「化学薬品臭いから近寄るな」とか!それだけじゃない。物も壊されてたし、殴られてもいた!
拓也:小学生の頃の話だろ。俺たちもう高校生だぞ?
翔:学校の先生は俺たちよりずっと大人じゃんかよ!!
拓也:…は?どういうこと?
翔:生徒だけじゃない…担任もグルだった…
拓也:な…
翔:生徒が何しても見て見ぬ振りしてた。大人もそんなクソみたいなことするんだよ。じゃあ高校生は?もし機関出身だって知られて、何もされないって保証がどこにあんの?俺だって友達信じたいよ。けど……ダメだ。
拓也:翔…
翔:ごめん。
拓也:いや、いいよ。俺の方こそごめん。
翔:いや…
拓也:…でも、うん。信じるしかねえよ。
翔:…
拓也:もし、なんか言ってくるやつがいたら、俺呼べよ。ぶん殴ってやる。
翔:それは…ダメだよ。
拓也:冷静かよ。まあそりゃ、本当にはしねえよ。たぶん。
翔:…
拓也:お前の周りの人、みんないいやつばっかだよ。今まで話してきて、それは分かってるだろ?
翔:うん。
拓也:大丈夫だよ。ほら、全然趣味合わない俺だって大丈夫なんだから。 いや、それは関係ないか…
翔:ふふっ……分かった。信じる
拓也:うし。
翔:拓也!
拓也:ん?
翔:ありがとう。
拓也:気にすんな。 よし。帰るか!
翔:あ、夜飯奢るよ。
拓也:飯奢ってもらうほどのことしてねえよ。今度普通に飯食いに行こう。
翔:……おう!
(長めの間 後日)
翔:おっす!!
拓也:よ。
翔:悪いな!飯のついでに、また服選びに付き合ってもらうことになって…
拓也:へーきへーき。そのかわり・・・
翔:あ・・・
拓也:長谷部さんとのこと聞かせろよ。
翔:わ、わかった。。。
拓也:ったくいつの間にそんな仲良くなったんだ…デートなんてよぉ…
翔:へへっ…
拓也:ニヤけんなきもい。
翔:すまん。 あ、そうだ。あれから親と話したんだよ。
拓也:お。んで?
翔:「お腹を痛めたわけじゃないけど、大切な息子だ」とか「うちの子供として立派に育ってくれて嬉しい」とか、言ってた。
拓也:ほーーん。
翔:信じていいんだよな、これ。
拓也:なっ…お前なぁ!!
翔:うぇ!?
拓也:面と向かってそれ言ってもらって信じなかったら、何を信じるんだ馬鹿!!!
翔:そ、そうだよな!ごめん!
拓也:当たり前だろ! ったく…んで?服だろ?
翔:あ、そう!どんな服装で会おうかなって…
拓也:プランは?こんな感じで〜みたいな。
翔:わからん。
拓也:おおう…まああれだ。ラーメン食ってから考えよう。
翔:お願いします!
拓也:任しとけ。
(ラーメンが来た)あ、ありがとうございます!
翔:ありがとうございます!
拓也:いただきまーす。
翔:拓也、それなんて言って頼んだ?
拓也:ん?……あぁ、「麺硬め・アブラ少なめ・ニンニク少なめ」
翔:マジか!あっはははは!!
拓也:はぁ?なんだよ?
翔:俺、「麺やわめ・アブラマシ・ニンニクマシ」
拓也:…あぁ。なるほどな。それは笑うわ。
翔:だろ?
拓也:ホント、俺らって
翔:全然合わねえなあ。
了
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