短評:「警察官」1957年、並木鏡太郎 監督
シネマヴェーラ 「警察官」1957年、並木鏡太郎 監督。国際テロ・スパイ団組織に、警察官・宇津井健が潜入捜査を試みる。敵の首魁は丹波哲郎。
「殺人と拳銃」につづき、これも50年代の警察ものだが、リアリズムよりも活劇的な要素が大きい作品。宇津井健の恋人である上司の娘、ガソリンスタンドで働いているが、潜入捜査中の宇津井を見かけて声をかけそうになる。再度出会って会話しているところを、組織に見とがめられてばれてしまう。
女性の愛情が仕事の邪魔をしてしまうという描写、ややマチスモ的に思えるだが、監督がよく撮っている時代劇のような作劇に近いのだろう。監督は同時期に「魚河岸帝国」「風雲七化ケ峠」「右門捕物帖 からくり街道」「大岡政談・妖棋伝」「風雲三条河原」などを撮っているのでさもありなん。
谷口千吉「33号車応答なし」における警官の奥さんの描写と比べてみると興味深い。これは、警察官の奥さんということで隣近所にやや距離を置かれてしまい、クリスマスにも帰れない夫に不満を感じて、アバンチュールに惹かれてしまうというもう少しモダンな筋書きであった。