「なーんてね」に込められた意味~告白~
先日松たか子主演「告白」を観ました。原作は6年ほど前に読んだことがあり、懐かしかったので未視聴だった映画を見てみようと思ったからです。
ストーリー
というような内容になってます。
この森口の復讐ですが、直接的に殺したりするのではない、間接的なところが面白かったです。
例えば、「犯人に支給される牛乳の中にHIVのウイルスを混ぜた」というが、実際には入れておらずクラスの皆や犯人自身の心の圧力でじわじわ蝕まれていく、というようなものです。
これによって、人間の弱い部分によって落ち込んでいくような構成になっていて、この後の展開に不確実性をもたらしている感じがしました。
演出
結構重めな話になっていましたが、それを助けるように、光を感じさせないダークな雰囲気づくりや独特なカメラワークになっているなと感じ、この映画のどこか恐ろしい部分を表していました。
更に演出も面白いです。森口の復讐がクラスの前で実行され、犯人がクラスメイトに知られた後の新学期、落ち込んだ雰囲気になるのが普通です。が、うわべだけの明るい新担任を前に、クラスは陽気な雰囲気を帯び始めます。これと先ほど述べた暗めの雰囲気が絶妙な不協和を演出しています。
また、この映画は登場人物たちのモノローグが印象的です。それによって、各人物の心情がわかる、まるで本のような構成になっていました。しかし、肝心な主人公森口のモノローグはなく(多分)必ず誰かへのセリフでした。
これから、後半での森口の慟哭やラストシーンに考察の余地が生まれるなと感じました。
印象深いシーン
私の印象深いなと思ったシーンはラストシーンです。
というシーンです。
小説を読んでいた私ですが、このシーンは本当に印象的でした。その理由は二つあります。
一つ目は、小説で読んだ時はこのあたりでの森口の感情があまり書かれていなかったような気がしていてたので、「こんな顔で言ってたのか」と心情の断片を知れたからです。わずかな時間の中で二つの顔をする森口の中にどんな感情があったのか、考えてみたくなりました。
二つ目は最後の「なーんてね」というセリフです。小説にはこのセリフはありませんでした。このセリフの追加にはどんな意味があったのでしょうか。
考察
私はこの追加セリフについて二つの考察をします。
一つ目は「復讐を遂げたと嘘をついただけ」というものです。HIVのウイルスを牛乳に混入させたときと同様に、犯人の心を痛めつけるために嘘をついた、というのはあり得るのではないかと思いました。そのように考えると、直前の笑顔は慈悲の心の表れとも捉えられます。
二つ目は「あなたの更生の第一歩」というセリフのようにあなたのこれからがいいようになればな、という部分に対して「なーんてね」と言ってる、というものです。個人的にはこっちなのかなと思っています。こちらで考えると、笑顔は嘲笑のようなダークな感情から出てきたものだと考えられます。
映画版でのセリフの追加によって、森口の悪の部分がより強調され、人間性が増したような感じがします。
まとめ
小説とは大差ない構成だった映画版でしたが、ラストシーンでの変更から、より森口の心情を考える必要がある映画だなと感じました。そういう風にこの映画を捉えなおすのも面白いのではないかなと思います。
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