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第14回牧水・短歌甲子園の歌

8/17・18と短歌甲子園を観に宮崎県日向市に行ってきました。昨年初めて行って大変いい体験だったので、今年もタイミングが合ってよかった。

当日気になった作品を引きながら、考えたことをいくつか置いておきます。

ビッグバン宇宙の法則きみ語りわたしは机上の赤べこになる

緒方ゆい

宮崎西の第1試合。題詠は「語」。一首としては語が渋滞しているところがどうしても気になるけど、宇宙と対置される「赤べこ」の存在感がとてもいいと思いました。
対戦相手の甲府東が台風で来れなかったので試合としては不戦勝扱い。今回は残念ながら3校が地震や台風で欠場だったのだけれど、一日目の最後に「やれなかった」試合について改めて作品を取り上げる時間が設けられていて、運営の手厚さを感じた。

弟の骨ばった手と腹筋とこのときめきが恋なのかなと

請関真歩

尚学館高校。題詠は「恋」。題詠のテーマは毎回伊藤一彦さんが決めているんだけど(今年は「語」「リモート」「恋」「望」)毎回必ず「恋」は入れるようにしているのだそうな。だから、大会として恋歌の蓄積と変遷があって、着想レベルでの難しさがある。請関さんの作品はこの題で「弟」を出したところで結構攻めた使い方をしている。評も盛り上がっていたけれど、やりようによっては「恋」の主体を弟に振り切っても良かったかもしれない。

また春が終わってしまう恋猫はどこでキスとかしてるんだろう

與那嶺陽大

興南高校。こちらも題詠「恋」。ちなみに、男子より女子のほうがストレートに自分たちの恋を詠む、っていう話が選評で出ていて、それはそうだよねってちょっと男子高校生に同情した。
で。この歌は語として「恋猫」の扱いに工夫の跡が見られて良いですね。リアル猫はキスしない→人間や同級生の言い換えとして機能する、という指摘を聞いて納得がいきました。

波だけがうるさく僕たちをつつみ(望郷)裂けて木はひこばえる

知念ひなた

興南高校の準決勝作品。題詠「望」でパーレン付きの熟語入れてくるの心臓が強すぎる。決勝トーナメントの歌稿は興南高校の6首が抜けて良かったです。歌も良かったんだけど、歌の良さを評がきっちり受け止めている安定感があって、普段どんな歌会してるのか大変気になる。

泣くほどに麩菓子を頬に詰めこんでお金のかかる子供でありたい

加藤湊人

個人戦の作品から。灘高校の加藤さんは準決勝の「きつくなる言葉望んでいなくとも姉が大阪を持ち帰ってくる」も良かったです。ロジカルに読み込むことができる良さもあるんだけど、意味や目的を先行させすぎずに、この辺に歌の旨味があるってわかってる感じ。

◎昨年、今年と見ることによって、色々作風とか傾向とか分かるようになって来ました。なので、学校毎に/選手たちが「どういう短歌観」で作品を作っているのかっていうのが気になっている。3人の視座が纏まっている/共有されているチームがやっぱり強いなって印象になるんだけど、

「戦略性」とか言ってるの、明らかに最近読んだ『メダリスト』の影響だと思うので話半分で聞いて下さい。

◎人間が目の前の作品について言葉を尽くしているのを見るのは大変良いものですが、自分で普段やっている歌会だと捌いたり回したりするのが忙しいのでその良さをゆっくり味わえないんですよね。客席に座っていればいい、しかも競技としてシステムが整備されているので安心。

◎お前は関係ないところで楽しんでいるからいいけれど、選手や審査員、運営のOBOGの立場だったら色々大変だろうな、というのもだんだんわかってきた。

◎夜はそのOBOGの「みなと会」のみなさんと歌会をしました。大会に習って題詠「恋」で詠む。辛かったけど一票もらった。そして後遺症で翌日は瀕死でした。

明け方に一瞬降って恋だった気がする、霰だった気がする

吉田恭大

◎作品の朗詠について「パフォーマンス賞」的なのがあってもいいとおもいます、てことを昨年伊藤一彦さんとお話したんですけども、今年から本当にパフォーマンス賞が設定されたので嬉しかったです。言ってみるもんだ。受賞された星野高校の方の朗詠も良かった。

◎連れていってくれた井口さんの短評はこちら↓

◎吉田の昨年の記録はこちら。

◎広告欄。


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