見出し画像

芸人の皆さん、僕みたいな失敗はしないで!TVのオーディションで爆コケした話。


どーも4月から気づけば芸歴4年目になってしまったピン芸人ナンジョウピアノです。


NSCを卒業してからの数年間、極度の人見知り、社交性の皆無、他人への興味を示さないなど芸人として致命的な性格が災いしてしまい同期はもちろん、先輩後輩との関係もほとんどないまま過ごしてきました。


そんな僕ですが、最近になってやっと後輩との付き合いも少しずつ増えていくことになったのです。

僕をイジって来てくれる子、プライベートでも遊んでくれる後輩など様々な付き合いが生まれました。

そのおかげで今では1ミリも売れてないにしても、数年前より確実に楽しい日々を過ごしております。




長々と今コイツは何の話をしているんだ?そう思われた方も多いでしょう。




だからこそ、そんな後輩たちに僕みたいな大失敗をして欲しくない!


そこで、僕の過去のオーディションでのアホすぎる失態を皆さんに聞いてもらいたいと思いました!


僕と何の絡みもない方もいらっしゃると思いますが、最低限の参考資料として見て頂けたらと存じます。 




目次

・1.まさかのテレビ局まで
・2.アンケートに唖然
・3.こいつ何しにきたん?
・4.一応確認したオンエア
・5.最後に

目次書き慣れて無さすぎて、タイトルのセンスに引きないなあ



【 1 オーディションのメールが届く】



私は吉本興業様に所属させていただいております。


まだ劇場にさえ所属できていない完全底辺な芸人ですが、そんな僕にでもテレビに出られるチャンスが与えられます。


吉本様から不定期にメールが送られてくるのです。


とある大型番組のオーディションの話だったり、ライブに出るためのお話、そして今回きたメール内容はこのようなものだった。



"将棋に詳しい方、大募集!"



このような趣味や知識についてのアンケートが来ることもある。


僕はこういったアンケートには少しでも知識があれば基本的に毎回返信することにしている。


もちろん今回も返信した。


将棋……まあ、別に嫌いじゃない。


初めてやったのは小学五年生の頃、誕生日プレゼントに買ってもらったボードゲームに入っていた。それを友達と教えてもらいながらやった。

ゲームでもやってたりしたし、1番レベルの高いCOMを倒したこともあるなぁ。


それくらいの知識しかなかった僕、こういった内容をアンケートに記してとりあえず送ってみた。


すると、数日後に吉本様からまさかの返信が来た。



"それでは、オーディションに参加して頂きます。○月×日、こちらのTV局までお越しください。"



ええっ⁈  



まさかの二つ返事でTV局までオーディション⁉︎


某テレビ局のeスポーツ番組で、最近新設された"将棋を元としたゲーム"のプロeスポーツ選手を芸人達から発掘しようという企画だった。



これはえらいことなってもうたで……


こうして僕は、数少ない将棋の知識だけを手にテレビ局まで赴くこととなった。



【 2.アンケートに唖然】





2022年 3月某日

メールの案内通り、言われた時刻にテレビ局に集合した。

先輩や後輩達など約10名ほどが集められていた。

ちなみに今日までオーディションの内容は全く知らされていない。とりあえずケータイアプリで将棋のオンラインゲームで何回か対戦だけやってきた。

集合時間となり、TV局のスタッフさんが我々の元へ来た。



「それでは、ご案内致しますね。」



入館用のストラップを首にかけて、我々は控え室へと移動した。



「こちらご記入お願いします。」



そして配られたのは事前アンケート。

なるほどこれを元にオーディションが進むのか。

よーし、とにかくたくさん埋めるぞーー!



アンケートに名前"ナンジョウピアノ"と記入する。

芸歴は2年目と……


名前と芸歴を記入し終えて少しでもアンケートを埋めようと奮闘する僕、だがその数秒後、目を向けた先にあった項目に焦りを隠せなくこととなる。



" 将棋歴  年 "



将棋歴聞かれてるやん⁈


将棋の猛者やと思われてるやん?


将棋歴?


別にそんなよ?


歴?


初めて将棋に出会ったのは小学五年生、そして今は24歳。だからといってずっと将棋を突き詰めてきたわけではないから、この期間が将棋歴とはならんよな?


でも少しハマっていた期間もある?


これなんて書けばええねん。とりあえずそのまま書いとくか。


そう思って僕は、わずか将棋歴の数字しか書くスペースのない空欄に

「将棋に出会ったのは11歳の頃ですが、ずっとやっていたわけでは無いので実際やっていたのは2年ほどだと思います」


という長文を無理やり埋めた。



その他いろいろ将棋のことについて聞かれる。



"将棋にまつわるエピソード"

"ハマったきっかけ"

"好きな棋士"


好きな棋士なんかおらんよ。

そんな将棋知らんねん俺。

将棋のオーディションに来てるのにもう詰んでるやん。


完全に場違いな所へ来てしまった僕。


しかし、このまま帰るわけにはいかない。


そう思った僕はアンケートの最後の項目に全てをかけることにした。



"その他何かアピールできることはありますか?"



よっしゃ、将棋に全く関係ない内容きた‼︎


ここで何か爪痕を残すしかない。


メールの内容では、プロeスポーツ選手の様子を追っていくと言っていた。


それなら発掘段階のこのオーディションの様子も放送されるのではないか?


もうプロeスポーツ棋士になることより今は放送されるであろうオーディションの様子で少しでもインパクトを残せるように頑張ろう。


そっちにシフトチェンジしよう!



その道に舵を切った僕、気づいたらアンケート用紙にこう書いていた。





" 将棋ギャグ考えてきました。"





えらいこと書いてもうた……


完全に調子乗った。


大博打かけすぎたかも…


別に俺そんなギャガーでもないし。


周囲には半裸の芸人や、強烈キャラの先輩芸人さん達が数名いた。


それやのに、なんでこんな普通の見た目のやつがアピールに" 将棋ギャグ考えてきました!" って書いてるねん。

1番おっかないやんけ。


ただもうこれはやるしかない。


オーディションは3グループに分かれての集団面接だった。

そして幸い僕は2グループの順番だったのだ。

1グループ目がオーディションしている間に必死になって将棋ギャグを考え、合計4つのギャグを用意することが出来た。



「それでは2グループの方、移動お願いします。」



こうして、僕はさっき作ったばかりの低クオリティー将棋ギャグ4つだけを武器にオーディション会場へと向かった。



【 3 .こいつ何しにきたん?】





「それではオーディション始めさせて頂きます。」


「よろしくお願いします!」


オーディション会場には椅子が3つ置かれており、僕は真ん中の席へと座った。


「まずは自己紹介お願いします。」


順番は基本面接側から見て左の人から話をしていった。

僕から見ると右隣になる。

名前までは忘れてしまったのでここはとりあえず"山本くん"としておくが、僕の一年後輩の男の子だった。

対して僕の左隣、彼は僕の同期だが歳は何回りも上のおじさん芸人"まろ"さん。


絶対将棋やってきてる人やん。

ガチの人やん。凄いなあ。



一通り3人とも自己紹介を終えて、いよいよ将棋オーディションの本題へと入る。


面接官(以降TV局さんと記す)からまず一つ目の項目が発表された。




「それではですね…

今から皆さんには、 "私と将棋" というテーマで1分程お話しお願いします。」











……無いよ⁉︎




別に今までの人生将棋と共に歩んできてないよ?



こんなんめちゃくちゃやん。


一瞬にして全身に汗が流れる僕、こんなもん何話せばええねん。

だがこちらも幸い、順番が2番目なので隣の山本くんが話す間に自分の内容を考えることが出来た。


その間、山本くんが話し始める。


「僕の親父が大の将棋好きでして、ウチは三兄弟なんですけれどもそれぞれ名前に将棋の駒の名前が1文字ずつ入っています。親父とは今まで何度も対局して一度も勝つことが出来なかったのですがこの前初めて勝つことが出来て、少し悲しそうな親父の表情がなんとも言えなかったですね。」






コイツめっちゃ将棋やん。


将棋一家のサラブレッドやん。


ちゃんと将棋のエピソード持ってるやん。



この時ばかりは将棋に囲まれた人生を歩んできた彼を羨ましく思わずにはいられなかった。


ちなみにまろさんも

「私は、将棋歴○十年‼︎ 1に将棋、2に将棋!幼い頃から親父と暇さえあれば将棋を打っておりました!以前、初めて女流棋士の〇〇さんとなんと対局させて頂く機会があり、非常に貴重な経験をさせて頂きました‼︎」



両サイドエピソード強いねん。


もうここにかけてる人らやん。



一方僕もこの質問に答える。


「えー、僕はですね、11歳の頃に買ってもらった誕生日プレゼントのボードゲームで初めて、将棋にふれあい、友達に教えてもらいながらやった思い出があります。ニンテンドースイッチの世界の遊び大全ってゲームでも将棋があるのですが、それの1番強いレベルを何回か倒したことが、ありますねー」


「はい、分かりましたー」





もう落ちたやん。


誰でも話せる内容やん。


将棋やってなくても言えるよこれ。

あときっと世界の遊び大全ぐらいやったら1番強いレベルでもそんなやろ。

ほんまにガチ勢のやつ将棋専門のゲームで戦ってるやろ。

ちょっとハードル下げてるやん。


一巡目が終わった後、既に僕は自信を無くしていた。


TV局さんが続ける。



「次はですね、将棋以外のことも聞いていきたいと思います。」



一旦将棋からは離れる。


また山本くんから順に趣味や特技について聞かれていった。


間も無く僕の順番がくる。



「ナンジョウさん、将棋ギャグを考えてきたというのは……」




きたきたきたきたっ‼︎‼︎


このオーディション、唯一の僕の見せ場が回ってきた。



「はい!考えてきましたよ‼︎」


先ほど肩落としていた姿とは一変、急に前のめりな姿勢を見せる僕。


「それでは見せていただいてよろしいでしょうか?」


「はい!…全部で4つあるんですけど良いですか?」


「…それでは4つ全部お願いします。」



「いきます……"角"ギャグ‼︎」


将棋の駒の動きを用いたギャグ。"角"は斜めに動く。

「うわ、財布前に落とした。取れへん、取れへん…」

しかし"角"は裏返る、すなわち"成る"ことができれば縦横にも一マス動くことができる。

「あ、そうか、成ったらええやん。」

と言って後ろを向き財布を取る。



会場には殺伐とした空気が張り詰め始めた。


おい、何やこの状況?

なんで俺今ここおるんやったっけ?


ただ忘れてはならない、僕はこんなクオリティのギャグをあと3つも披露しなくてはいけないのだ。


「続きまして、"歩"ギャグ!」


財布を落としたが駒の性質上取れない。でも成ったら取れるじゃん。という先ほど全く同じ要領のギャグをコイツはここで披露した。

ただ、それだけでは終わらない。

財布を落とすなんて、モーションでやれば良いのに何故かギャグの最中に実際に落とそうという考えにいたり、ポケットから取り出した。

しかし僕は普段財布とコインケースを分けてあるので、取り出した瞬間2つが同時に落ちてしまったので、TV局さん側からしたら「これどう見たらええねん」みたいな状況が生まれてしまった。

自分で作り出した地獄の空気の中、残りのギャグもやり終えて、TV局さんから一言。




「…これいつ考えはったんですか?」


しっかりクオリティバレてるやん。


その問いに僕はこう答える。


「昨日の夜ですね。」


何の嘘やねん。


きっと昨日の夜でも、さっき考えましたでも評価何も変わらんて。



僕のギャグ4連発のせいで確実に悪い空気へと進んでしまっているオーディション会場。


両サイドの2人からも「コイツなんで来たんや?」みたいな目で見られた。



いよいよオーディションは実技へと移る。


我々3人には、とある回答用紙が配られた。



「そちらは藤井聡太さんの対局中の図です。この状況から藤井さんは思いもがけないある一手を打たれました。その一手とはどんな内容だったのか?今から皆さんに予想していただきます。」




ガチ将棋オーディション来たやん。


藤井聡太さんの対局?そんなん分かるわけないやろ?


しかし、両サイドの2人は既に書き進めている。


凄いな。もう分かったん?

俺全然分からへんねんけど。

ちょっとだけ考えさせて。


するとTV局さんが言った。




「ナンジョウさん、早よ書いて下さいよ。」




怖っっ




語気強なってるやん。



コイツ将棋の知識ないくせにさっきから時間だけ取るから痺れ切らしてるやん。



流石に当てんくても良いから早よ書いて終わらすしかない。



ようやく3人が回答を書き終えると、また山本くんから答えていった。


「僕は6八金です」


「なぜそう思われましたか?」


「もし僕がこの状況なら絶対にここにこの駒を打たないと思ったからです。」


「なるほど、ありがとうございます。」



めっちゃ回答しっかりとしてるやん。当てにいってるやん。


「それでは、ナンジョウさん。」


「えー僕はですね、ここに金を置いて〜そっからこの飛車をそっちに持ってきて〜最後角で取ると思います…ね。」


「じゃあ次まろさんお願いします。」





もう俺に全然興味ないやん。


将棋知らんのにギャグと勢いだけ持ってきたやつに構ってられへんくなってるやん。


確かに俺の答えだけやけにもっちゃりしてたし。



その後もいくつかの将棋実技を経て、最後意気込み動画を撮ったのだが、「絶対にこの企画で売れまーーす‼︎」と大きい声で向けるべきカメラの目線を間違いオーディションは終了した。

全てのグループがオーディションを終えたあと、再びオーディション会場へと集まり結果を聞いた。


「こちらのお三方の中で合格者は………いませんでした。」


肩を落とす両サイドの2人、それとは対照的にそらそうか〜くらいの余裕さで平然と椅子に座っている僕。


一体今日彼はここに何をしにきたんだろう?


何もうまくいかなかった。


いや、うまくいくはずがないのだ。


だって薄い知識だけを持ってプロを目指しにきたのだから。テレビ局側からしたら、ただ舐めてるヤツが来たなぁとしか思わないだろう。


オーディションの落選を聞かされた僕はそのままTV局を後にした。



【 4. 一応確認したオンエア】





散々な結果となった将棋オーディション。


いや、そう仕向けたのも元々は全部自分の責任でしかないのだが。


オーディションの当日、番組のオンエア時期を事前に教えてもらった。

その時期に合わせて毎週番組をチェックしていた。

すると、いよいよその日がやってきた。



「芸人の中から、プロeスポーツ選手を目指せ!」



とうとう来た!そのタイトルコールと共に、あの日オーディションを受けた我々の個人写真がズラッと映った。


おお、自分の写真がテレビに映っている!


そして出場者達の紹介が始まった。


「将棋のアプリを1日3回は必ずさしてます。」

「高二の時に県大会ベスト4なりました。」


うわー、やっぱりみんなちゃんとこんなエピソード喋ってたんや。そんなことを思いながら見ていると、突然テレビからこんな声が聞こえてきた。




「将棋ギャグ考えてきました!」




ええっっ⁉︎


嘘おおお⁉︎



その画面には、見覚えのあるあの会場でほんの数分前に考えた将棋ギャグを披露している自分がいた。


いや、周りあんなキャラ強い人らおったのに。

それ抑えてなんで俺のギャグがオンエアされてるねん。

悪目立ちしてるやん。

あんなちゃんと将棋のこと語ってた人ら可哀想すぎたやろ。


これオンエアしてもらえるって、この日この会場で相当変なヤツやったんやろなコイツ。


おまけにテロップでは、将棋歴13年と書かれていた。


いや、そんな将棋歴重ねてきたやつアピールで決死の一発ギャグなんかせんて。


テレビから見える四角い会場の中で滑稽に動き回る自分の姿がそこにはあった。


オーディションには落ちたけど、ギャグのオンエアこれはこれでもう勝ちでええやろ。



【 5 .最後に】




僕から最後に後輩に言えること、それは……



"どんな状況でも、最後まで諦めずに勝ち筋を見つけろ‼︎"




……なんてものではなく、



"ほとんど知識もないアンケートに自信満々で返信するな‼︎‼︎‼︎ "



これにつきます!



"物事はちゃんと考えてから動け‼︎ "



絶対真似するなよ!痛い目見るぞ?


ほんまにあのオーディション会場の空気ヤバかったから。


みんながみんな「もうお前だけ早よ帰れよ」って目で見てたから。


あんなこと中々ないよ。

だって向こうからしたら来ていただいた立場やのに。


というか、普通はそうなること予想できるから語られへん内容のメールなんて返信せーへんのよ。


何をしてんねん俺はずっと。


まあでも、これも一つの例として皆さんは同じ手を踏まないようお気をつけ下さい。


こんなヤツでもよかったら皆さん笑ってやってください。
























この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?