ごめんね、ハズレだからね、ティッシュ使ってね。
コンビニやスーパーに行ったときに、レジにてくじが引けることがある。
お会計一定数ごとに一枚引けるという仕様が良く見られる。
お客さん側はその場でくじを引いて、当たりかハズレかをチェックする。
現在の僕のバイト先でも似たようなイベントを行なっている。
僕がレジ打ちをしているときに、お客さんにくじを渡して、そのくじを子供が引くことがよくある。
こういったくじ引きは子供の大好物なので、親は何も言わず渡すケースが多いのだ。
そして渡されたくじを子供がペリッとめくる。
するとそこに当たりかハズレか書かれてある。
当たりならもちろん、「わーおめでとうーー!」と賞賛するのだが、残念ながらハズレを引いてしまった子供には「残念〜ごめんね〜」などと声をかけてあげる。
自分自身がこういった声かけをしているとき、ふとある記憶が蘇った。
それは今から15年以上遡る。
当時僕はまだ幼稚園児。
おそらく年中ぐらいだったと思う。
その日は父親に連れられて、3つ上の姉と3人で本屋に行ったのだ。
それぞれ好きな本を選んだ中、レジに行った時のこと。
父親がお金を払いお釣りを受け取った後、店員のおじさんが僕と姉に抽選箱を差し出してきた。
「今、小学生以下のお友達にくじを引いてもらってるから、一枚引いてね。」
と声をかけてきた。
ほほお〜小学生以下のお友達はくじを引けるのか。
こういった場面では何故"小学生以下のお友達"といった言い方をするのだろう?
お前とは友達じゃねーよ。
今はそんなことどうでも良い。
まず初めに差し出された抽選箱に手を伸ばしたのは姉だった。
店員さんが腰を下ろし抽選箱を構える。
伸ばして、帰ってきた手に掴まれた一枚のくじを開く……
ハズレ
その文字に軽く絶望を覚える姉に対して、店員さんが声をかける。
「ごめんね、ハズレだからね、ティッシュ使ってね。」
と申し訳なさそうに、小学館のキャラが描かれたティッシュを渡していた。
続いて僕がくじを引く。
姉よりひとまわり小さい僕に対して、店員さんがさらに腰を低くして抽選箱を差し出す。
そして、くじを一枚引く。
ハズレ
するとまた店員さんが
「ごめんね、ハズレだからね、ティッシュ使ってね。」
というフレーズとともに僕にティッシュを渡してきた。
その店員はただの仕事としてそのセリフを言っただけなのだろう。
しかし、何故かそのセリフが僕達からしたらおかしくて仕方なかったのだ。
家に帰ってから、その店員さんのセリフを何度も何度も真似していた。
ご飯中、お風呂、ましてや眠る前の布団の中でまで!
姉「ごめんね、ハズレだからね、ティッシュ使ってね。」
僕「ギャハハハハハハーーーー!」
たしかに子供はすぐに真似をしたがるものだ。
このセリフもその習性の一つなのだろう。
「ごめんね、ハズレだからね、ティッシュ使ってね。」
一体何がそんなに面白いのだろうか?
父はその場に同伴していたからまだ本家を知っているとして、母からしたらポカーンと口が開いて閉まらないことだろう。
挙げ句の果てには、姉がそのセリフにリズムを付け出した。
「ごめんねぇ〜♪ハズレだからねぇ〜♪ティッシュ使ってねぇ〜♪」
と歌いだす始末。
子供の考えることはわからない。
だが、当時の僕達は腹が捩れるほどに笑い転げていた。
「ごめんね、ハズレだからね、ティッシュ使ってね。」
…てかそもそも店員さんも何でそんな申し訳なさげやねん。
「この子ら、せっかくくじが引けるってテンション上がってたのに、ハズレ引いてショック受けたんちゃうやろか?せめて最後にティッシュだけでも使ってもらおう!」
やないねん。
気使いすぎや。
ティッシュ使ってね?
使うよそら。
ティッシュやもん。
こういった店員の何気ない一言が、他人の記憶の中に永遠に残り続けることがある。
今はその本屋は潰れてしまったけど、あの時のおじさん、今はどこで何してんねやろなぁ〜
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