【ナニWAA!セッション第6回】レポート
大変ご無沙汰しております。一昨年のセッションとなりますが・・・。
ナニWAA!セッション第6回のテーマは「WAAケーション~旅して暮らし、働く~」。
神出鬼没に日本全国から「世界が広がる、働き方を。」を自ら体現されている大瀬良さんをゲストにお迎えし、ユニリーバ・ジャパン人事部門のトップ・島田由香さんと、リーダーシップの観点、愛国心やアイデンティティまで今回のテーマにとどまらず、親交のあるお二人ならではの熱い想いが解き放たれた魂のセッションとなりました。
※すべての情報は2020年12月3日時点のものです。
【大瀬良氏の自己紹介ストーリー】
1.What‘s HafH ? ハフとは何か
「世界が広がる働き方を」がキャッチコピーになってます、HafHというサービスを始めて間もなく2周年となります。“Home away from home”=第二のふるさと、と日本語で訳されますがその頭文字をとりました。
HafHは定額で宿泊先を選んで、そこで旅をして働くことができるというサービスです。ゲストハウスで交流したり、リゾート施設でワーケーションをしたり、都心の中でリモートワークをしたり…と、働きたい場所を選んで旅しながら働けます。日本だけでなく世界中の人々が旅をして働くというサービスなので、世界26の国と地域、265都市、430拠点があります。
「働く」をコンセプトにしているので、ワークスペースとして便利な環境か、女性や外国人というのも含めてダイバーシティを受け入れられるか、クリーン&セイフティ、周辺の環境など100項目以上偏差値にして、この偏差値以上になったらOKと厳正なチェックをしているので、「HafHが選んでくれてるからどこでも安心だよね」と利用者が安心して使ってくれてます。
2.Why HafH? なぜハフなのか
なぜHafHを始めたのか。
僕は1983年長崎市に生まれ、高校を卒業して筑波大に行き、電通に入社しました。父が五島列島の育ちで、2~12歳の夏休みにはずっと五島列島のおばあちゃんちに住んでいて、今思うと僕は小さいころから2拠点生活をしていました。長崎の魅力を発信したいという思いから、電通に入社しました。首相官邸に出向する機会があり、安倍総理のSNSを担当していました。全外遊、あるいは被災地の訪問に同行し、その様子を僕の携帯で撮ってインスタグラムを上げていくという作業を3年間していました。その間、訪問国数はのべ70ヶ国政府専用機の帯同距離が地球15周分、約60万キロ。
今まで同じ場所で働いていた時には出社時間から逆算して何時まで寝られるという考えでした。でも、6:30にストックホルムで起きないとけないってなった時に、だったら4:30に起きて真っ暗でもいいから散歩しよう、何か学びたい、ちょっとでも街のことを知って帰ろうと、ネガティブなマインドがポジティブなマインドに変わり「総理がいなくてもやりたい!」と思うようになりました。実はこっそりイスラエルへ行ったりしてワーケーションやってたんです。6万円で行けるんです。長崎の往復と変らない。「あ、これ、世界を旅して働けるな」って気づきました。
世界の裏側から見えた日本のポジションって聞いてておもしろいんです。スウェーデン官邸の広報の女性に会った時、洋服をトップスは白、スカートは赤で日本の国旗のカラーでコーディネートされていたことがありました。こんなに日本のことを世界中の人たちが愛してくれてるってことを僕は知らなくて、やっぱりこれは戦後の先人たちの礼儀正しく日本人として過ごされてきたんだなと感動しました。こんな風に自分の成長速度が何倍にも早くなったことに気づきました。僕よりも10歳若い東南アジアの子たちが自国の発展を願い、日本で学び、働きたいという話を聞き、いざ、この子たちが日本に来た時に住まいは大丈夫なのか、と考えた時、日本の住宅事情にも触れ始めて、「あ、日本はヤバイ」と感じました。人口減少や少子高齢化や地方を何とかしないといけないというけど、だったら外国人にも活躍してもらわないといけない。
日本でこれから世界中の人たちがいろんな風にまじりあう中で、僕自身が旅をして働きたいし、そういう風になっていったらいいなと思ったら、実は“アドレスホッパー”という人たち、「家は要らない、敷金とか礼金は無駄」という人たちが出てきていていました。
世界を旅しながら働く人たちのことを“デジタルマド”ということも知りました。こういうデジタルノマドな人たちが働く場所をコリビングと言います。旅して働く人たちのための住まいが“コリビング”っていうんです。日本語で訳すと、どこでも働ける人達のためのシェアハウス。コワーキングにベッドがついていて、コリビングという考え方です。
あらためて長崎出島の町を振り返ってみると、出島は400年前に日本で唯一のコリビングだったなと。オランダ人がここに来て数ヶ月住んで日本のいろんなものを学び、日本人もいろんなものを学びながら、ここでいろんなまじり合いが起きていた。今、デジタルの時代にどこでも働けるのあれば、現代の出島を復活させたいなと思いました。「コリビング作りたい」と言っても通じませんが、「出島をつくりたい」って言ったら、長崎の人たち応援してくれるんじゃないかなと思い、「現代の出島を作る」というコンセプトで2018年の10月に、毎月定額で世界中を旅しながら働くというサ—ビスを長崎から世界に広めたいと、あえて長崎からという言葉を入れました。
3.Who is using HafH ? 誰が使っているのか
Withコロナにおいて、会社員の登録が増えて、経営者や役員を含め給与所得者が半数以上を占めています。利用者の年代は30代以下が76%、一番多いのが20代です。彼らがHafHを選ぶ理由は、自分に自信がない、将来が不安だからいろんな人たちに会って友達を増やしたい、と。これは何か漠然とした不安を抱えて変化とか学びを求めるミレニアル世代の共通の価値観だと感じています。
最近分かったことですが、会社員の登録の方はほとんど東京なんですけど、リモートワークで東京でHafHを利用しています。一方で地方の方は東京へ行かなくなっています。HafHを使って九州を一周しながらワーケーションをしていたり、大阪近郊の方が広島や白浜へ行ったり、あえてコロナが大変な東京へわざわざ行かなくなったということが起きています。ワーケーション初心者の方はまずはリモートワークで2日間という感じで利用しているのが現状です。
某IT企業の社員はサーフボードとPCモニターを持って来ました。「どこでも働けるようになったのでオフィスに30分かけて出社するのがバカバカしくなったんです」と。その他にもさまざまな企業の社員の方が利用しています。中には家でテレワークをしていると妻や子供にストレスをかけてしまう、妻孝行で家を出る、と利用されている方もいますし、共働きのご夫婦で交互にHafHを利用されている方もいます。また、海外で利用されていた日本の方がコロナで戻ってきた時に、東京に住む理由がないので、HafHを回りながら仕事をやるという方もいらっしゃいます。
4.HafH *Workation ハフから見たワーケーション
そんな中、4月5月あたりからワーケーションが盛り上がり、テレワーク=在宅勤務という風に訳されていることにモヤモヤしていました。僕らにとってテレワークは場所にとらわれず自分自身の働く場所を選べるというところにポテンシャルがあります。自宅で働くか会社で働くか、やっぱり自宅では集中しにくいから会社で働くのに戻そうという会社が結構出てきていますが、それは、場所にとらわれずに働くことを許してから考えることだと思います。
企業が誤解を生んだままワーケーションが広がっていくのは違うと思っていて、企業側への効果として5つのインパクトをご紹介します。
まずは“Health Impact”。Well-Being、気持ちが幸せになる、ストレスが減る、ということもあれば、“Business Impact”。何かやろうよ、という風な話につながったり、それが“Social Impact”、地域の課題解決につながったり、その結果“Green Impact”、海のごみをどうしようとか環境問題につながったり、“Family Impact”、さっきお話しした家族関係、夫婦や子供との関係が何か変わるなどです。
場所は代わっても働く時間はちゃんと取りたい。しっかりと働いて、今まで通勤時間でストレスをためていたところにサーフィンをやったり、釣りをやったり、地元の人と交流したり、何か学びに使ったりというのがHafH型のワーケーションです。
5.Conclusion 僕が感じていること
これまでのライフスタイルは朝起きて寝る場所1つ、働く場も1つ。旅行できる時間は週末だけの縦の決められたラインで変えられないものでした。これからのライフスタイルは住む・働く・旅をするというこの3つを自分ならではにデザインし、自分で自分の生き方を背負わなければいけないのではと思います。
最後になりますが、どこで働き、どこで暮らし、誰といることが自分にとってHappyなのか。いろんな価値観や可能性がある中でいろんな人たちにHafHを通じて見つけてまさに世界が広がる働き方につながればいいなと願っています。
パネルディスカッション
島田氏
「総理のSNS担当だったといことが、HafHに生きているんだね」
大瀬良氏
「そうなんです。めちゃくちゃ自分の中で大きかったですね」
島田氏
「日本という国の美しさ、豊かさ、素晴らしさというものを私たちは伝えていきたいし、ちゃんとwelcomeしてもっと誇りを持つべきだということを感じて涙が出そうになりました。そう考えると亮くん(大瀬良氏、以下同)が出島出身だということも偶然じゃない。電通にいたことも」
大瀬良氏
「人生の中で今まで自分がやってきたことが何も無駄がなかった気がしてます。HafHは自分が生きてて出会った人たちからもらったいろんなアイデアとか価値観を全部詰め込んでます。五島列島のおばあちゃんの話から総理の会話の示唆まで、仮に上下があるとしていろんなレベルの話を聞いたのは僕だけ。これは自分の強みとして活かして、多様な価値観を多様なまま受け入れできる社会プラットフォームを作りたいというのがHafHの思いです」
島田氏
「すごいハードスケジュールでこうやって仕事を全うできるのには、体力・気力・知力、何が必要だったの?」
大瀬良氏
「やっぱり、日本を好きな気持ちだと思います。愛国心…。自分のアイデンティティですね。日本っていうものを背負ってやってるという気持ちが自分にとって、気力も体力もパッションがすごくもったなと。忙しかったけど、官邸は最高の職場でした。総理は僕にも「大瀬良くん」だし、世耕さんにも「世耕くん」なんですよ。官邸でリーダーシップをすごく学びましたね。よく組織ってピラミッドで描かれることがありますが、総理って三角じゃなくって丸だなって思います。真ん中に総理がいてみんな等しい距離で総理の周りで手をつないでいる。手をつないでいるからどこかで当たられて切れてしまっても、横の人がすぐにつなぎ直せるイメージですね。だから丸のリーダーシップというものは僕のリーダーシップにもつながっています」
島田氏
「何がどうだと丸のリーダーシップができるんだと感じてる?」
大瀬良氏
「総理がやってる丸のすごさは常に人を笑わせようとするんです。そのためのあらゆる知識を持ち合わせてます。野球、落語、Netflixの話からすごく昔の話まで知識量がすごいです。食事の時にも全員にボールを打つんですよ、僕がいたら絶対僕をからませるし。ああ、ちゃんと見てくれてるんだなって思うと絶対何かその分フィードバックしなきゃって思う」
島田氏
「そうか。誰一人取り残さないんだね」
大瀬良氏
「1つリーダーシップ論みたいな話で。僕は大学で政治を学んだんですが、政治というより憲法を学んでたんです。憲法って国の在り方なんです。いわゆる統治じゃないですか。ソブリン、つまり国という大小あるコミュニティの作り方がそこに書いてあるんですよ」
島田氏
「なるほど。そうか、すごいね、その説明。憲法というのは国っていうコミュニティの作り方をガイドしてたり、説明してるんだって言われたら、憲法の見方が変わるね。安倍さんから総理が菅さんに替わって、政権って何だろうとか、国って何だろうっていうことを本当に感じていて、亮くんとワーケーションについて話すようになってから気が付いたこともいっぱいあって」
大瀬良氏
「ワーケーションていう言葉は新しい生き方とか働き方を考える上で一つのきっかけでしかないと思てます。これからまさに東南アジアの人たちが、例えば、高浜町にちょっとエンジニアの子たちを呼んで一緒に合宿をしてみよう、となった時にインドネシアの子たちが高浜町で楽しめる状況かどうかとか、サスティナブルなコミュニティづくりの話を頭の中に持った上で、こういう人たちが来ても大丈夫かという準備みたいな感覚でやるのも大事だと思って、ワーケーションの対応をしています」
島田氏
「それは素晴らしいと思う。今はコロナで制約や制限が多いけど、日本って世界における役割を持っていると感じているし、信じている。コロナが落ち着いてまた来るようになった時には、違う日本を見せられるんじゃないかと思ってるし、その準備なんじゃないかなと思ってる。なぜなら、私たち一人ひとりがあらためて日本の魅力に気づき始めてる。その中でこのワーケーションってすごい大事なんだよね。
質問がきてます。『亮くんにとって国境とか国とかって人類にとって必要だと思いますか?』」
大瀬良氏
「すごい、難しい質問ですね。国とか国境必要ですか…。必要なんじゃないですかね。なんでかっていうと、アイデンティティ、自分はこういう人間だっていう何かを一人ひとりがちゃんと持てることが大事。さっき愛国心って言ったんですけど、自分の今ここにいる意味みたいな、地球の中で今僕はここにいるな、僕は日本人で男性でこういうフィロソフィを持っていて暮らしているっていう、自分は人と違う距離感を持てるためにその要素はすごく必要だと思います。そのためにナニ人であるかという気持ちは大事なアイデンティティを持つ要素かなというのは、世界を回ってて感じています。」
島田氏
「なるほど」
大瀬良氏
「自分のことが分かっていると相手の距離感を取れるようになるんですね。自分のアイデンティティを持っていると。このくらいの距離感だったら嫌だけど、これくらいだったら理解できるって、やっぱり、自分のアイデンティティがないと分からないので、そのために性別とか民族とか国籍とかっていうカテゴリーはその1つの大事な要素だと思います。日本人は顔も一緒だし、話す言葉も一緒なのでどこどこ生まれという地方性が大事になってきてると思います。僕は九州とか長崎生まれってことはアイデンティティとしてすごく大事にしたいなと思ってて、アイデンティティを持つための要素は出来るだけ皆がたくさん持ってたらいいなと思っています」
島田氏
「そうだね。まさに私たちは一人ひとりが自分であることをもっともっと知って、理解して、認めて、ああ、自分は自分なんだ、と、自分は素晴らしいんだって思うから他人を認められる。ワーケーションっていう1つのキーワードは果てしない広がりを持ってる。どっかのエリアにいた人が別のところで働こうって思うってある意味、borderを越えるわけだから。今まで当たり前だったものを越えてワーケーションをしたいと思ったって、誰かからサボってる、遊んでるって思われている。それを変えていける一番パワフルなものは結果を出し続けること。そうすれば、あの人はどこ行ってもこうなんだねって、いい意味で諦めがあるのかもしれない。でも、本人は、パフォーマンス出し続けなきゃ、あーっ!ってなるから、もっと気楽にみんなが働く場所を選べるんだよ、それこそ、across the borderできたらいいのになって。最後に亮くんから皆さんにそこに関してアドバイスを」
大瀬良氏
「今、日本人のパスポートの所持率が23%なんです。世界で一番最も楽に海外へ行けるチケットを持ってる僕たちがそれを使ってない。2020年のスタートはラストチャンス。今、動くか、動かないか。動ける人はもう動いているので、まず、できることから動く。2021年HafHは『世界が広がる働き方』をちょっと変えて『可能性を解放しよう』と。一人ひとりが持っている可能性を働き方を変えることで解放されるんじゃないかと思っています」
島田氏
「亮くん、ありがとう。本当にすっごい豊かな時間だった。私が今思うのがシェイクスピアじゃないけど、『To be, or not to be.That’s the question』が私の中で、『To go, or not to go. That’s the question』 って感じ。企業もそうだけど、創始者の人の世界の見方がその会社を位置付けるという観点からしてもHafHというサービス、持っているものは大きいと感じました」
大瀬良氏
「まだやりたいことの数%しか動いてないですけど自分が死ぬ頃にはHafHが目指したい社会になってるといいなと思って頑張ります。本当は33歳ぐらいで死にたいと…。凝縮型の人生で死にたいと思ってて。なぜなら明日死んでもいい思うくらい幸せに生きているから。でもそういう人ほど長生きするって諸先輩方に言われて…」
島田氏
「ぜひ、長生きして。私は人生200年時代だと思ってるので。これからもお互いに協力できればいいなと思ってます。今日はありがとうございました」
大瀬良氏
「ありがとうございました」