運動音痴の呪いが解けた話なのだ
なとイさんは昔から運動音痴だったのだ。
親からも運動神経が無い無い無い無い無い無いと言われていたので、幼いながらに運動神経とやらが存在しており、それが無いからシステム的に出来ない物らしいとの考えもあって運動は大嫌いだったのだ。
当然、運動会のようなイベントはまず足を引っ張るか屈辱だったので憂鬱だったのだ。
一応、友達が誘ってくれたからという理由でバドミントン部に入っていたりもしたけれど、温情でダブルスの試合に出して貰って両方完封で負けるといったどうしようもない足の引っ張り方をした事もあり、死のうかなと思ったりもしたのだ。
回路が無い物はないのだ。
そんなこんなでなとイさんの中では運動というのは努力しても無駄な事だという認識だけがずっとあったのだ。だって運動神経の回路が無いらしいし…?なのだ。
それが一つ変わったことがあったとすれば、ダイエットなのだ。
何かをしないことにかけてはある程度コントロールが効くアライグマなので、食事制限は比較的出来るのだ。
性格的にも食べ物のカロリーやたんぱく質、食物繊維といった数字/値段はいつも意識して買うアライグマなので、タンパク質を必要量確保しつつカロリーを抑えて…といった考え方でやっていたのだ。
ただそれだけだとなかなか減らないのだ…、と思ったのでウォーキングをしてみようと珍しく考えたのだ。冬だったので暑くなかったのもよかったのだ。
それで始めてみると最初は1km歩いて息があがっていたのだ。これはしんどい…なのだ。
もっと遠くが見たかったのだ。すると…
とは言えやった分だけ早く痩せるというモチベーションがあったのでしばらく続けていると、1km地点が楽になったのだ。なので毎日少しだけ余分に遠くに行くことにしていたら3km地点までいけるようになったのだ。
3km地点から先はきつい登り坂があったのだ。そこで当分は距離更新は止めていたのだけれど、3kmも慣れてきたし上がってみようかなと思う日があったのだ。
実際にやってみると「滅茶苦茶きつい…」だったのだ。とはいえ、休み休みながらあがれたのだ。
これを調子が良い日だけやっていると、いつの間にか休まずに上がれるようになったのだ。この時往復距離は6km近くなっていたのだ。
気づけば坂道を上がり切っても息が上がらなくなったので勢いでそのまま歩くと往復距離は10km近くなったのだ。ただ、今度は10km歩くのにかかる時間が面倒になったのだ。
そこで今度は1km走ってみようと思ったのだ。最初の頃の1km地点まで走ってみると結構しんどかったものの、走れたのだ。最初は歩いて1kmで死にかけていたのに。
これはなとイさんにとって結構な衝撃で、それからは再び前日より少しだけ記録更新するルールで走るようにしたのだ。気づけば10km走れるようになったのだ。
この時、初めてなとイさんは「運動神経がなくて出来ないってもしかしてそういう呪いだったのだ…?」と考えるに至ったのだ。
少し変わったのだ。
結局、その後ダイエットの目的は達成したので運動はやめてしまったのだ。でもこの時得た想いはアライグマ1匹の中ではとても大きな事だったようでこれ以降、必要になったら適宜ウォーキングが出来るようになったのだ。4時間かけて20km歩いたのが最高記録なのだ。
相変わらず運動音痴なのは変わっていないのだ。ただ、ほんの少し何かが変わった事は確かだったのだ。 (終) ※10/11 一部表現と誤字を修正したのだ。
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