【観戦記事】 決勝戦:難波 直也(Hareruya Hopes) vs. 本田 博樹(コミかる堂高崎・おもちゃのきじま)
By Yohei Tomizawa
ちょうど1年前のこの大会で、初プロツアーから帰国した難波 直也をラウンド1のフィーチャー席へと呼んだ。
そしてその日。決勝戦のフィーチャー席へも難波は現れ、あっさりと優勝を果たした。難波というプレイヤーが世に認知されるのはそれから1年後のことであるが、既に群馬県内ではその若さにも関わらず、圧倒的強さを誇っていた。
それでも、マジックの勝敗とは実力だけで決まるものではない。“運”という要素を切り離すことはできず、実力者が必ずしも優勝できるわけではない。
決して難波の実力を疑うわけではない。プレイヤーが介入できる領域には限界があるのだ。だからこそ今大会ではディフェンディングチャンピオンである難波を先ずラウンド1のフィーチャー席へと呼んだ。
これから始まる決勝戦の席へ、難波は再び座っている。スタッフの懸念も、周囲のプレッシャーも関係なく、二連覇すべく難波は決勝戦へと挑む。
対するは準決勝で栗原を破る大金星を挙げた本田 博樹。老舗“おもちゃのきじま”の生き残りはお手製の「グリクシスコントロール」を手にここまで勝ち上がってきた。FNMの時とは違い手に馴染み、プレイヤーの意志を汲み取るかのように必要なカードを届けてくれている。
本田の周りをコミかる堂のプレイヤーが取り囲み、にぎやかにアツい声援を送る。それこそ本田のデッキの中身を知り、対戦相手の難波をよく知っているからこそ、だ。
ブック破りなんて起きるわけない。台本通りに進む決勝戦を盛り上げるために。
:ゲーム1
《野茂み歩き/Wildgrowth Walker》《アズカンタの探索/Search for Azcanta》と2ターン目から双方にパーマネントが並び、《マーフォークの枝渡り/Merfolk Branchwalker》がクロックを増強する。2度のアタックで本田のライフは14まで落ち込むも、《煤の儀式/Ritual of Soot》で盤面を一掃する。
リセットの返し、難波は《破滅を囁くもの/Doom Whisperer》を送り込むもここへは《喪心/Cast Down》。ライフを支払いデッキトップを操作すると、次のターンには《ハイドロイド混成体/Hydroid Krasis》で失った手札とライフを補充する。
このタイミングで本田は2枚目となる《喪心/Cast Down》をトップデッキし、安全に《ウルザの後継、カーン/Karn, Scion of Urza》をテイクオフ。ライブラリトップをめくると《炎鎖のアングラス/Angrath, the Flame-Chained》と《思考消去/Thought Erasure》という強力な2枚。悩むもプレインズウォーカーを与えるわけにもいかず、難波は《思考消去/Thought Erasure》を手札へと送る。
《ヴラスカの侮辱/Vraska's Contempt》もないため、《ウルザの後継、カーン/Karn, Scion of Urza》を対処するにはクリーチャーを用意しなければならない。難波は《採取+最終/Find+Finality》で《マーフォークの枝渡り/Merfolk Branchwalker》と《ハイドロイド混成体/Hydroid Krasis》を回収すると、前者を即召喚。
本田は《ハイドロイド混成体/Hydroid Krasis》を落とすために《思考消去/Thought Erasure》をキャストするとそこには3枚もの《ハイドロイド混成体/Hydroid Krasis》が!1枚を落としただけでは脅威に対処したことにはならない。
だが、ここでも《ウルザの後継、カーン/Karn, Scion of Urza》が解決策を届けてくれる。ここでライブラリトップから現れるのは《喪心/Cast Down》と《人質取り/Hostage Taker》の2枚。ここで《喪心/Cast Down》を与えるが、《人質取り/Hostage Taker》の存在が重くのしかかる。なんせ除去するだけではなく、奪ったカードでリソース回復も行えるのだから。
これだけでは終わらない。本田は《破滅の龍、ニコル・ボーラス/Nicol Bolas, the Ravager》までも召喚し、更にプレッシャーをかける。いきなり《アズカンタの探索/Search for Azcanta》、《ウルザの後継、カーン/Karn, Scion of Urza》、《破滅の龍、ニコル・ボーラス/Nicol Bolas, the Ravager》と対処しなければいけないパーマネントが3つに増え、しかも《ハイドロイド混成体/Hydroid Krasis》をテンポよく対処する《喪心/Cast Down》がすでに本田の手にはあるのだ。
《ハイドロイド混成体/Hydroid Krasis》を封じられた難波はトップデッキした《破滅を囁くもの/Doom Whisperer》を召喚する。《喪心/Cast Down》を忘れたわけではないが、出さないわけにはいかない。
難波を手玉に取るかのように、ゲームは本田の思い通りに進む。《アズカンタの探索/Search for Azcanta》は変身し、8マナ揃えると《煤の儀式/Ritual of Soot》で再び小型クリーチャーを一層しつつ、《ウルザの後継、カーン/Karn, Scion of Urza》を起動する。《人質取り/Hostage Taker》を手札へ加えると即サモン。
ここで悩む難波。彼の手札には変わらず《ハイドロイド混成体/Hydroid Krasis》が2枚。しかし悠長に召喚していては、次のターンに《人質取り/Hostage Taker》によって奪われた《破滅を囁くもの/Doom Whisperer》を召喚と《喪心/Cast Down》でハイドラを対処と詰みの状況をつくられてしまう。ならば、身を切るしかあるまい。
スタックして起動される《破滅を囁くもの/Doom Whisperer》。2点、4点、6点と難波はこの状況を一気に打開できる《採取+最終/Find+Finality》を求めてライブラリトップを削る。
8、10点と血の支払いは増え…19もあったライフはあっという間に7へと落ち込む。それでも求めるものは、未だに見えない。《破滅の龍、ニコル・ボーラス/Nicol Bolas, the Ravager》の攻撃を前に最後のに2点を支払い5とするも、いずれも墓地へ。攻撃により残るライフを1として、自身のターンへと入る。
このドローに全てはかかっている。《採取+最終/Find+Finality》ならば…
そこに望むカードはなかった。
難波 0-1 本田
:ゲーム2
《思考消去/Thought Erasure》で《ヴラスカの侮辱/Vraska's Contempt》を奪うと《正気泥棒/Thief of Sanity》で先にクロックを用意したのは本田。それも難波の手から《クロールの銛撃ち/Kraul Harpooner》が登場するまでだったが。
《マーフォークの枝渡り/Merfolk Branchwalker》《薬術師の眼識/Chemister's Insight》と互いにデッキを掘り進めるも、ここで難波の土地が4枚でストップしてしまう。しかも青マナがない状況で、だ。
手札に攻めるカードはあるものの、土地がない難波。《ウルザの後継、カーン/Karn, Scion of Urza》は《ヴラスカの侮辱/Vraska's Contempt》で即応するも、《思考消去/Thought Erasure》により《破滅を囁くもの/Doom Whisperer》を奪われてしまう。これで残るは《喪心/Cast Down》と《ハイドロイド混成体/Hydroid Krasis》となる。
それでもここでトップデッキしたのは《翡翠光のレインジャー/Jadelight Ranger》。これで一気にマナを伸ばすことを狙うも、デッキトップがまさかの《ビビアン・リード/Vivien Reid》2枚!土地を引くこともできず、更に大切なプレインズウォーカーまで失ってしまう。
難波が求めるものは、デッキトップにない。やっと《繁殖池/Breeding Pool》を引き込むころには本田は《炎鎖のアングラス/Angrath, the Flame-Chained》をキャストし、ゲームを終わらせにかかっていた。
このまま終わるわけにはいかない。難波は《暗殺者の戦利品/Assassin's Trophy》をキャストするも、本田の手に握られていたのは《否認/Negate》を!これにより逆転への足掛かりとしようとしていた《ハイドロイド混成体/Hydroid Krasis》まで失ってしまう。
《炎鎖のアングラス/Angrath, the Flame-Chained》が難波の手札を攻め、《ウルザの後継、カーン/Karn, Scion of Urza》が本田の手札を潤す。土地5枚のため、難波は《殺戮の暴君/Carnage Tyrant》すらも捨てざるを得ない状況なのだ。
やっと《翡翠光のレインジャー/Jadelight Ranger》により6枚目の土地を確保する頃には、全てが遅すぎた。
《人質取り/Hostage Taker》が《翡翠光のレインジャー/Jadelight Ranger》を奪うと、《ウルザの後継、カーン/Karn, Scion of Urza》のトークンと合わせ少しずつ、しかし確実に難波を蝕んでいく。
本田が握る《否認/Negate》を見透かしたかのように、難波は逆転の芽がないことを悟り、右手を差し出した。
難波 0-2 本田
ゲーム1が終わると驚きの声が上がり、ゲーム2で難波がマナスクリューに陥ると、静寂のみがその場を支配した。開始時はあれほど賑わっていたプレイヤーたちも、静まり返る。
本田が難波に勝つなんてあり得ない。
あの「グリクシスコントロール」が勝てるわけない。
ブック破りは起こりえない!!
しかし、本田は勝った。それもストレートで、圧倒的に。
特別なことは何もない。天才的な閃きも、劇的なキープレイも、連続したトップデッキがあったわけでもない。淡々とできることを、手札と盤面から導かれる最適解を続けた結果、勝利した。
難波の少しの不運とゲームをコントロールし急所に付け込めるだけのデッキ構築、冷静なプレイスキルを持ち合わせた本田だからこその勝利なのだ。
君こそが、今日の勝者に相応しい。
本田 博樹、『GUNMA CHAMPION SHIPS 2019 winter』優勝おめでとう!
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