漢方薬局に行ったら換気扇を渡された。の続き。
(※記事内に登場する薬はあくまでも「名仁川の体質に合わせて出された薬」なので、万人に合う薬ではありません。漢方薬による治療を検討している方は専門の医師、薬剤師さんにお問い合わせください。)
薬局で貰った薬『能活精』のベースとなっている生薬・羚羊角(れいようかく)。
これがどんな薬なのか、救心製薬の説明書には以下のようにあった。
………………。
スゴい動物だね(語彙力)。
昨年末から悩んでいた「やる気が出ない」「描く気が起きない」
「頭は四六時中ぐるぐるしていて休まらない」「下半身が冷たくて仕方がない」
これらの不調をどうするべきか悩んでいたところ、知人から漢方薬を勧められ
漢方薬局で冒頭の『能活精』を渡されたので飲んでみたら脳の過剰回転がピタッと止まった。
この『過剰回転が止まる』というのがどういう感覚なのかを、文字で説明しようとするとなかなか難しいのだけど
薬を飲んでしばらくすると、通常より余計に何かを考えようとした時、
頭の中がスッと『凪』のような状態になる…と言ったら伝わるだろうか。(伝われ)
とにかく、無風の海のようになる。
回っている洗濯機の『一時停止』を押した時のように、スッと濁流が止まるのだ。
何かを考える事は出来るけれど考え過ぎることが出来なくなった。この感覚がとてもとても不思議だった。
飲んだ日は頭が軽くなって、肩から上の重だるい感じも薄らいだ。副作用も特に感じなかったので、この薬を2週間、そのまま飲み続ることにした。
そして1月中旬。
「そうですか。じゃあ効果が感じられたんですね。良かったです」
2週間弱振りにお会いした薬剤師さんは少し微笑みながら言った。
「名仁川さんにお渡しした薬は受験生にもよくお渡しするんです。頭を使う人、あと目を使う人に。目は脳と密接に繋がっていますから、目の使い過ぎでも頭に熱がこもるんです」
『眼球は露出してる脳ミソ』って、前に誰かが言っていたのを思い出した。
スマホなどを長時間触っている人は目を酷使しているため頭に熱がこもっている事が多く、
そのために集中力が続かなかったり、物忘れが増えたり、イライラしたり…といった問題が起きてしまっているらしい。
「お腹はやはり冷えたままですか?」
「カイロをつけていても毛ーパンを履いていても冷たいですね…」
「お茶などはよく飲まれますか?」
「カフェインは身体を冷やすって聞いたので、緑茶とかはあまり飲まないようにしてます。代わりに生姜湯とか飲んでますけど、冷えが改善するまでには至ってない感じです」
「わかりました。『能活精』は効いているようなので、これは今後も頓服薬として気になる時に飲んでいてください。今日は他にもうひとつ、別の薬を提案します」
別の薬…
………ほう。
………ん?
………高血圧に効くって書いてある…。
………私、これ以上血圧が下がったら、もはや死ぬんじゃないかと思うんだが?
「確かに高血圧って記載されているんですが、中身は血流を改善させる薬なんです。
血の巡りを良くする丹参(たんじん)をベースに、紅花(べにばな)、
気を巡らせる香附子(こうぶし)、木香(もっこう)、川芎(せんきゅう)、
そして補血効果のある芍薬(しゃくやく)で構成されています。
どうしても座っている時間が長いと下半身の血の巡りが悪くなって冷えやすくなりますから。この薬で冷えが改善するかどうか、様子を見てみましょう。
1日2回、なるべく空腹時に服用してください。『能活精』もそうですが、空腹時に飲んだ方がよく効きます」
「……『能活精』と、この『和漢薬』は一緒に飲んでも問題ないんですか?」
「問題ないです。普段は『和漢薬』だけ飲んで、目や脳を酷使する予定がある時にはそこに『能活精』をプラスして飲む、みたいな感じで服用してみてください。
あとやっぱり、椅子に座っていても15分に一回は立ち上がって歩く事を意識してくださいね」
………15分に一回立とうと思っても気付けば2時間経っている人間だから、
それは無理だろうなと思いつつ「わかりました」と言って帰ってきた。
最初薬局に来た時、私の状態は気虚(ききょ)って診断されたけど、
説明を聞いている限り、私は血のバランスも悪いんだろうな。
『和漢薬はある程度の期間飲み続ける事で効果が出てくる』と薬剤師さんからは言われていたが、実際その通りで効果を実感し始めたのは服用から12日目の事だった。
下腹部を触ったら、温かい。
……マジか。
それまでカイロを貼っていても冷えきっていたのに、カイロがなくてもヘソ周りが温かい。
びっくりした。え、しゅごい。
これは嬉しい。
正直に言うと『能活精』より数段飲みづらい味だった。人によっては平気なんだろうけど、とりあえず味のエグみがかなり強い。
でもここに来て効果が出た途端、唐突にお友達になれそうな気がしてきた。効果を実感すると、どういうわけかそれまでより美味しく頂けるようになる。
暫くして、私に漢方を勧めてくれた女性に会う機会があったので、こんな感じで効果が出てきたよと経過報告した。
「そういえば姿勢が良くなった気がする」
と言われた。
姿勢が良くなった、という自覚は無かった。
「内臓が弱っている人ってね、こう、内臓を守るように、猫背になりやすいの。
前のめり感がなくなったって事は、薬が効いてるって事なんだと思う」
へえ~。
そんなやり取りなんかもしつつ、漢方薬の服用を淡々と続ける毎日を過ごした。
『能活精』は確定申告の準備中に重宝した。私は数字の計算、計算ミスの確認がすこぶる苦手で、ひとつの計算にアホみたいな回数で電卓を叩いてしまう確認中毒である。そしてそんな日の夜には、大体頭がグツグツに沸騰してしまっている。
確定申告の作業も漫画の作業もそうなのだが、根を詰めると大抵その日の夜は全く食事を受け付けない。
『能活精』と『和漢薬』を服用して暫くしてからは、それが少しずつ改善されてきた。どんなに疲れていても、夕飯が入るようになっていったのだ。
低体重にも地味に悩んでいたが、3月後半には体重が2キロ増えていた。これがすごく嬉しかったので、4月、薬剤師さんにもそう報告した。
「お腹の冷えは改善されたんですね。脚の冷えはどうですか?」
「歩いてる時はマシですけど、座っている時はさすがにまだ冷たいです」
「何ヵ月もかけて徐々に効いてくる薬なので、足先まで効果が届くようになるまでは、もう少し掛かるかもしれません。
まあそうこう言っているうちに夏になって、その影響で緩和されるかもしれませんが」
そうだね…汗
「ちなみに『和漢薬』は何時頃服用していますか?」
「朝起きてすぐに1包、あと午後1時過ぎにもう1包…ですね」
「すごく良いです。午後1時から3時は『小腸の時間』なんです」
「小腸の時間…?」
例えば23時~1時(子の刻)は胆の時間。胆汁の分泌が最も盛んであり、身体を修復する成長ホルモンも多く分泌されるので、この時間帯は睡眠をしっかり取っている事が望ましい。
起きていると肝臓や胆嚢を弱らせやすく、胆石ができてしまったり、決断力を鈍らせてしまう事もあるのだという。
1時~3時(丑の刻)は肝の時間。この時間に熟睡することで血液が肝臓に集まり、解毒作業が行なわれ、浄化された血液が生成される。ここで起きていると汚れた血液が体内を巡ることになり、ダルさやイライラをはじめとする、あらゆる不調に繋がってしまうそうだ。
そして小腸の時間であるという13時~15時(未の刻)は、養分の吸収が活発化する時間で、この時間帯に『和漢薬』を飲んでいたのは、割と良いことだったらしい。
このように2時間区切りで活発化する臓器が入れ替わる考え方を『子午流注(しごるちゅう)』というそうなので、気になる人は調べてみてね。(円グラフみたいな一覧表が出てくるよ)
「それからこの時期、陰と陽が入れ替わる季節なので、精神の不安定には気をつけてください」
「…陰と陽が入れ替わる、とは…?」
「半年に一度、陰と陽が入れ替わるんです。冬から春に切り替わる頃に、陰が陽に転じます。そのうねりの影響で、イライラや倦怠感を覚える人が増えるんです」
季節の変わり目は『能活精』を渡す機会が多くなるとも話していた。
五月病もその類なのかもしれない。
薬局に行く度に、新しい知識が少しずつ増えていっている。
でも子午流注にしろ何にしろ
それがどんなに有益な情報であったとしても、取り入れ方には注意が必要だと思っている。
経験上、こういったものはガチガチに守っても苦しみが勝るだけで、かえって駄目だった事も多かったから。
私の場合、10個知ったら
実行するのは2つくらいが丁度良い。
ーー
薬によるものであるかどうかは分からないけれど「作品作りが出来ていない罪悪感」が、4月後半あたりから吹っ切れ始めてきた。
手元には描きかけのネームが4本、描いたけど原稿に起こしたいと思うところまではいけてないネームが1本ある。
普通に生活している分には割とピンピンしているんだけれど、描画に集中しきってしまうと息苦しさが出てくるので、本当にちょっとずつしか描いていないのが現状だ。
早く完成させたいという焦りはゼロではない。
新作を待ってくれている人がいる事に有り難さを感じつつ(本当にありがとう)、それを提供出来ていないという罪悪感もゼロにはならない。
「でも、いずれ進められるだろうから」という、ふんわり温かい感覚が心に占める割合が、本当に少しずつだが大きくなってきた。
とある作家さんがご自身のSNS上で
「長らく宙ぶらりんになっていたいくつかの物事が、ここに来て一気にスルスルと動き始めた。
だから動かないものは動く日が来るまで、動かさなくてもいいのだと思う」
といったニュアンスの事を呟いていたので、この言葉に甘えてしまうことにした。
描けない時間を有効活用しようと思い、順調に描いていた頃にはしてこなかった事をした。
大河原に住む友人からお花見のお誘いがあって、複数の友人達と一目千本桜を見に行った。(宮城県民だけど初めて見た)
着たことの無いジャンルの服を買って、緊張しながら普段着として着て歩いた。
入った事のない映画館で映画を観た。
入った事のないカフェで抹茶ドリンクを味わった。
友人達と一緒に、真剣を使った試し切りに挑戦した。(スパッと切れて気持ちよかった)
作った事のない料理に挑戦した。
朝から晩まで本を読んだ。
ーー
そして6月。
誕生日を迎えた翌日に、薬局へ向かった。
『和漢薬』を渡されてからは、薬局には月に一回お邪魔している。
どうも「来店6回で1クール」という数え方をするらしく、一巡したこのタイミングで肌年齢、あるいは血管年齢の測定をしてみてもいいかもしれないと薬剤師さんに言われた。
「血流を改善させると肌年齢も血管年齢も若返りますから。
本当だったら服用開始前に測っておいて、服用後の数値と照らし合わせられたら良かったんですけど。
気が向いたら測定器のある場所を訪ねてみてくださいね」
…確かFANCL(ファンケル)にあった気がする。
横目で見ただけなので定かじゃないが。
帰り際、たびたび弱音を吐かせてもらっている占い師先生の所にお邪魔してきた。
「一、二年前と比べるとかなり元気になったね」
と言われた。
「前はねぇ、小さいケージの中のハムスターが、死に物狂いで回し車を回してゼーゼーいってるイメージだったんだけど。今は回し車を降りて、自由にひょこひょこ歩き回ってるイメージで見える。
見た目の雰囲気も凄く優しくなった。良かったね」と微笑まれた。
…占い師先生は以前から私を『過緊張・思考過多のハムスター』に例えて話す。
毎回思うけど、その残念なハムスター何?
「でもやっぱり、原稿を作ってない焦りは完全には消えなくて。もうちょい身体が楽になる方法無いですかね」
「遊んだ方がいいよ。今まで全然遊んでこなかったんだから。
遊んでエネルギーが充ちれば描けるようになるわよ」
そんなもんかなぁ…。
薬局に行ったら気が足りないと言われ、
占いに行ったら元気を充たせと言われる。
結局、『気』に行き着くのね。
ふと子供の頃の、描いても描いても足りず、楽しくペンを走らせていた自分を思い出すと、
身体は弱くても、なんだかんだ『元気』だったんだよなぁ。
大人特有の、『現実的な心配事』がまだ少なかったからってのもあるんだろうけど。
あの純粋だった頃のエネルギー、
今は取り戻したくて仕方がないよ。
ーー
前のnoteの投稿後、薬膳のアドバイスをくれた方々、ありがとうございます。
特に赤い食べ物と黒い食べ物が私の身体には良いみたいなので、積極的に取り入れてみます。
お心遣いに感謝です!
ここまで読んでいただきありがとうございます。多忙につき個別の返信はできませんが、それでもいいよって言ってくださる方、サポートしていただけると大変嬉しいです。