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短歌#6

探し物 見つけたくない 尋ね人 通りすがりの 夢の住人

つい先日、信号待ちをしていると、自転車に乗った老婦に話しかけられた。「このあたりにパーマ屋はないか?」と。どうやら髪を染めたいらしい。私が向かう先に美容室があるので、一緒についていくことにした。道中、会話はどこまでもとんちんかんで、次第にこの人は無事に自宅まで戻れるのか心配になった。

美容室についた。「わたしは外で待っているから」と老婦はいった。お店の人に料金を聞いて、老婦に伝えた。「それなら、家で染める!」と言い放ち、自転車にけんけんして乗って、あっという間に消えた。

後になってその出来事を思い返すと、本当に髪が染めたかったわけではないかもしれないな、と思った。外に出て、誰かと話がしたかったのかもしれない。老婦の次なる目的の場所は明確そうだったので、ひとまず安心した。

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