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思い出の複利効果から考える人生論
現代の資本主義社会を攻略するための最古にして最強の武器。
それが、「複利」です。
発見は古代ローマまで遡り、イスラム教の聖典コーランではやばすぎて禁止され、20世紀にはアインシュタインが人類最大の発明と呼び、21世紀にはトマ・ピケティが「r>g」を発見した。
複利とは良くも悪くも、人生を大きく左右する代物です。
複利とは、利子にもまた利子がつくこと。
たとえば、元金(もともとのお金)が100万円あり、この100万円を金利2%(年利)で1年間預金したとすると、1年後には102万円になる。この場合、2万円は、元金に対してついた利子である。この2万円も含めて(つまり102万円を)再び金利2%で1年間預けると、1年後には104万円となるのではなく、104万400円となる。この400円は、利子である2万円についた利子である。このように、利子にもまた利子がつくことを、「複利」という。
要するに、持っているお金を長く運用することによって、時間が経過すればするほど利子が膨れ上がっていくという仕組みです。
トマ・ピケティが発見した「r>g」とは、「労働によって得られる収益(g)よりも、株式や債券などの資本から得られる資本収益(r)のほうが大きいから、お金持ちと労働者で経済格差は広がるばかり!」という話。
ですので、資本主義を生きる現代の我々が経済的な豊かさを手にするには、まずは労働によってお金を稼ぎ、稼いだお金よりも少ないお金で暮らしてお金を蓄え、蓄えたお金を株式や債権などの資本に変えること。
そして、少しでも若いときから資本の蓄積と運用を始めることによって、複利効果のおかげで資本は時間が経てば経つほど拡大していきます。
これがおそらく、最もシンプルで合理的な人生戦略になります。
★★★
と、ここまでは教科書通りの話なのですが、「経済的に豊かであること」と「幸福であること」はまたちょっと別の話。
お金をたくさん持っている人でも不幸を感じている人はいるし、逆に、お金をそれほど持っていなくても幸せを感じている人もいる。
この差はどこにあるのか。
幸福とは様々な要素が複雑に絡み合っているからこそ、「ズバリこれだ!」と単純明快に答えを出すことはできず、それをやってしまった瞬間から間違うような気がするのですが、ここでもやはり「複利」がカギを握っているとは僕は思っています。
なにに複利が働いているのかといえば、「思い出」です。
つまり、最初はそれほど大したことのない思い出だったとしても、時間が経過するほどに複利が働き、それがいずれは人生の幸福度を大きく左右するようになるということ。
今回はそんな話を掘り下げていきます。
★★★
まずは大前提として、「本当に思い出に複利なんて働いているの?」という疑問から検証していきたいと思います。
おそらく多くの人が経験のあるところでいえば、学生時代の部活動や受験勉強で考えてみます。
特になにがあるわけでもないのにスポーツや文化的なことを頑張った期間というのは、その当時はむしろ苦しかったことや大変なことばかりだったと思います。
受験勉強でも同じです。
合格したい学校に受かったからといって何があるわけでもなく、それでも勉強を頑張る。
その努力はきっと、楽しさよりも苦しさのほうが多かったと思います。
このように考えると、思い出が人生の幸福度に左右するといっておきながら、思い出はむしろ苦しいものだったかもしれません。
ですが、時間が経過すると不思議な現象が起こります。
「あのときは大変だったし、なんの意味もなかったけど、それでもなんだかんだ頑張ってよかったな」と思い出す。
そうです、苦しくて大変だったはずの思い出が、なぜか懐かしく、意義深いことだったことのように思えるのです。
そして、10年20年と時間が経てば経つほどに思い出はより喜びを引き出すものとなり、しかも消えてなくなってしまうこともないので、思い出は人生を幸福なものに導きます。
これがつまりは、「思い出の複利効果」になります。
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当然のことながら、苦しかったことだけで思い出になるわけではなく、そのときその瞬間に楽しかったことも思い出です。
ですが、その当時にリアルタイムで感じた「楽しい」という感情よりも、時間が経過してから思い出す「楽しかった」という感情のほうがきっと大きくなっていると思います。
年齢を重ねるほどに過去の思い出話を仲間内でよくするのだって、そのためです。
過去の話しか共通の話題がないというよりも、過去に経験したことが複利によって膨らみ、それをいま、喜びとして引き出しているわけです。
この前カフェで仕事をしていて、隣に座ったマダム3人がバブル期の話をしているのを横耳で聞いてしまって、「いつの時代の話だよ!!」と心の中でツッコミを入れつつ、「ああ、いい感じに熟成された思い出話をいま楽しんでいるんだな」と一人で納得しました。
楽しかったことだけでなく、苦しかったことも含めて、「思い出すことがある」というただそれだけのことが、人生を豊かにしてくれるのだと思います。
★★★
さて、ここまでが大前提の話になります。
大事なことはここからで、「仮に思い出に複利効果が働いているのなら、じゃあどのように人生を考えればいいのか?」が本題です。
大きくは2つのことがいえると思っていて…
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