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可逆変化と不可逆変化

中学生の時に理科の先生から「可逆変化」と「不可逆変化」という言葉を初めて習ったような気がします。

教科書的には「一つの系がある状態から他の状態に変化し、外界に何らかの効果を残さずに系をもとの状態に戻すことができるとき、この過程を可逆変化という。外界に何らかの効果を残さずにもとの状態に戻すことができない場合には、これを不可逆変化という」というように説明されるようです。

初めてこの言葉を聞いたときは早口言葉の一種のようだと思いました。

現実的には、厳密な意味での可逆変化はほとんど存在せず、外界に何らかの影響を及ぼすと考えられます。

一方、系の状態を無限にゆっくりと変化させて、系がいつでも外界と平衡にあるような変化過程は純正的過程と呼び、可逆変化とみなされます。

言葉の厳密な定義はともかく、私が「不可逆変化」という言葉を聞いて思い浮かべるのは地球温暖化の過程とそれに対する対策です。

地球温暖化あるいは寒冷化の過程は非常に複雑なプロセスだと考えられます。地球が現在温暖化傾向にあることはデータが示していますし、地球温暖化には人類が排出した二酸化炭素などの温室効果ガスが強く影響していることはほぼ確実です。しかし、その他の要因がどの程度影響しているかはまだ完全には理解されていません。

地質学の観点から見ると、地球の歴史上、現在よりも極端な温暖化や寒冷化が、人類の活動とは無関係に起こってきたことが分かっています。したがって、温暖化の速度や規模に関する議論はありますが、人類が排出する二酸化炭素以外にも、地球が温暖化する可能性は否定できません。

地球の温暖化のプロセスも寒冷化のプロセスも完全に理解できたと言えない状況の中で、たとえばカーボンニュートラルがどの程度地球の温暖化にブレーキをかけることができるのか、慎重な検討やモニタリングが必要だと考えます。

今のところ我々にできる温暖化対策はそれほど急激なものはありませんが、今後科学技術の発展の中で、急激に大気中の二酸化炭素を減らすことができるようになったとしても、温暖化に対する危険性評価と同じように、地球環境に及ぼす影響を慎重に評価する必要があると思います。

私たちには変化を元に戻すことは非常に難しいと思います。私たちが引き起こす急激な変化は不可逆的であると理解しておくべきだと思います。

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