ラジオファクシミリ
1990年代前半、私はベトナム海上の石油試掘現場で働いていたことがあります。
当時海上の掘削リグとホーチミンのオフィス、あるいはホーチミンから車で約2時間ほどの海辺の町ブンタウの石油資材基地とは通常無線でやり取りが行われていました。
ただし、朝の日報だけはインマルサットと呼ばれる衛星通信回線を使ってファックスによるレポートの送信と電話による報告が許されていました。
今でもそうかもしれませんが、当時は海上のリグにいると短波ラジオや短波を使ったラジオファックスやテレックスが貴重な情報源でした。
特に短波によるラジオファックスは、天気図や新聞の紙面がファックス画像として送られてくるのでなんとなく親しみがわき、日本人のクルーは壁に貼られたラジオファックスの解像度の悪い日本語の紙面をかわるがわる読んでは日本の様子に思いをはせていました。
1993年7月には北海道南西沖地震という大きな地震が発生しました。リグのクルーの中にも北海道出身の方がいて大変心配されていて、ラジオで聞くニュースと、ラジオファックスで送られてくる地震被害の記事を読んでは心を痛めていました。
ラジオファックスは日本の私の家でも、アマチュア無線用の機器 (短波受信機と多機能のターミナルノードコントローラー (TNC) とPC) があれば受信できましたので、ベトナムから帰国したあとも、世界中の通信社が電波で配信していたテレックスのニュースを受信したり、船舶向けに電波で配信されていた気象情報や新聞のFAXを受信したりして楽しんでいました。
たまたまYouTubeで、ラジオファクシミリで天気図などの気象情報を受信する様子うつした動画を見つけて、1990年代のベトナムの海上掘削現場のことを思い出してしまいました。
そういえば昔は海上の石油掘削現場とオフィスの間では朝の報告も短波無線で行われていたそうで、陸上でオフを過ごしている人たちも、毎朝、ラジオ代わりに現場からの無線報告に耳を傾けて掘削の状況を把握していたという話を聞きました。いろいろと情報が筒抜けになりそうで、現場の担当者も緊張してしまいそうですね。