見出し画像

あの時私は赤面した

2011年4月1日、東日本大震災の直後、まだ余震が続き、計画停電が行われ、震災や東京電力福島第一原発事故の被害状況の全貌も今後のこともよくわからない状態の中で、私はUAEへ2回目の赴任に旅立ちました。

UAEでも連日日本の震災のニュースが流れ、原発事故についても大きく報道されていました。

UAEは2009年に韓国企業がUAEで初めての原子力発電所建設を受注し、まもなく建設が始まろうとしていた時期でしたから、原子力発電所の事故について注目するのも当然だと言えます。

UAEの原子力発電所建設の入札では、フランス、アメリカ、日本の企業連合体と韓国の企業体が争っていたといいます。

あの震災によって、自国の地域特性を熟知しているはずの日本の原子力産業が、実は日本国内の原発ですらまともにマネージできないことが明らかになったことで、多国籍企業体の中の一国とはいえ、UAEに対する原発の売り込みが成功していなくて本当に良かったと心から思いました。

あの原発事故をきっかけに、技術やシステム、廃棄物処理、安全管理、いざという時の住民避難などの側面から冷静に見直せば、本来であれば、原発は日本にそぐわないエネルギーだという結論がすぐにでも下せたはずです。

そして、いまだに福島第一原発の廃炉のめども、核のゴミ処理のめども、耐震も、住民避難も、ろくな進展もないまま、原発を推進すると言ってのける政治家の責任感も、企業やエンジニアの倫理観もどこかおかしくなっているとしか思えません。

まだまだ福島第一原発で、デブリに接触した汚染水を大量に発生させていたさなかの2013年に、当時の安倍総理大臣がUAEを訪問しました。その時、日本は震災後初めてUAEと原子力協定を結ぶことになりました。原子力発電所関連資材や技術の輸出を可能にする、日本の原子力産業にとってはとてもうれしい後押しだったはずです。

沢山の人たちが、福島第一原発の周りから立ち退かされ、農業も水産業も、その先行きが全く見通せないような状態だった2013年当時に、国内の被災者のことも考えず、どうどうと売り込みに来る日本企業と日本政府に、私はUAEに居て赤面する思いでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?