HSE競争
HSEとは Health (健康), Safety (安全), Environment (環境) の頭文字をとった略称で、多くの石油会社がそうであるように、南国の石油会社でも組織目標の最重要課題に位置付けられています。
特に生産・掘削現場では健康に害を及ぼすリスク、安全に関するリスク、そして環境に悪影響を与えるリスクが高く、会社としてトップダウンでHSEのリスク管理、リスクマネージメントに取り組む体制ができています。
HSEに関する研修、E-ラーニングは頻繁に行われていて、部内の小さな会議でも、大きな株主会議でも、必ず会議の最初には「HSEモーメント」という時間を設け、HSEにかかわる数分間のプレゼンテーションやディスカッションを行うことにしています。
1件の人身傷害を引き起こすような大きなインシデントの陰には、29件の軽微なインシデントと300件の人身傷害を引き起こすほどではないインシデントが発生しているといわれています。これはハーバート・ウィリアム・ハインリッヒが提唱したもので、ハインリッヒの法則、あるいは 1 : 29 : 300 の法則などと呼ばれています。
日本ではこの300件の無傷事故を「ヒヤリハット」と呼び、ヒヤリハットの事例を集め、危険を認識し、対策を講じることで、重大な事故を未然に防ぐ「ヒヤリハット活動」が行われていますが、南国の会社でも「ニアミスレポート」という形で、無傷事故の事例を集め、重大事故を未然に防ごうとする活動が行われています。
とにかくこの活動では、「ヒヤリハット」あるいは「ニアミス」案件を集めることが重要です。身の回りの「ヒヤリハット」「ニアミス」案件を、それこそ毎日少なくても一人1件以上報告しましょうというようなノルマに近い形で、あるいは競争のような形で報告させています。そして報告された事案は対策が取られたり、注意喚起が行われます。報告を躊躇させないことが何よりも大切なのです。
これは普段何気なく見過ごしてしまうような小さな危険を見つけるのに大変効果があります。
ところで南国の会社では、いろいろな現場ごとに何日間連続で無事故を維持しているかレースのような形で、トップマネージメントから全社員に報告されていました。「この現場では1000日間連続無事故で、連続無事故レースでトップです」みたいな報告です。
わたしはこの報告にはなんとなく違和感を持っていました。それは一度事故が起こると、その部署は振り出しのゼロからの出発で、事故が起こってショックな上に、順位がガタ落ちすることで、部署のモチベーションが下がってしまいそうな気がすること。そもそも無事故を続けることが当たり前だと考えると、どこの部署も無事故を続ける限り、順位が変わらず、順位が変わるとしたらどこかの部署で事故が起こったからという、素直には喜べないメカニズムがあるからです。
そんなことを思っていたら、いつのまにか、南国の会社ではこのようなレースは聞かなくなりました。やはり、違和感を覚えた人が多かったのかもしれません。
連続無事故記録も大切ですが、事故の確率を減らし、事故が起こらないようにすることが大切ですね。