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福島第一原発汚染水削減対策。海洋放出の前にできることをすべき

昨日も書きましたが、東京電力は政府の方針に基づきトリチウムなどの放射性物質を含む処理水を、基準を下回る濃度に薄めた上で海洋への放出を開始しました。

東京電力福島第一原子力発電所で発生する汚染水はデブリとの接触などにより、トリチウムの他、セシウム137、ストロンチウム90、ヨウ素などの放射性物質が含まれます。これらの放射性物質は、通常の原子力発電所からの排水には含まれません。

これらの放射性物質はALPS処理後でも検出されています。政府や東京電力は海洋放出前には基準値未満にするためにさらに処理・希釈されると言っていますが、これらの放射性物質について総量規制はされていません。

このような点からも本来、基準値未満の処理水といっても海洋放出をしないことが望ましいはずです。

海洋放出をしないために、あるいは極力減らすためにできることはないのでしょうか?

福島第一原発から発生する汚染水は主に以下の2種類あります。

  • 溶けて固まった燃料デブリを冷やすための循環水が、燃料デブリに触れ放射性物質を含んだ「汚染水」となる。

  • 地下水や雨水が原子炉建屋・タービン建屋といった建物の中に入り込み、新たな「汚染水」が発生する。

[東京電力 「汚染水」「処理水」とは?|もっと知りたい廃炉のこと]

2023年7月24日付けで東京電力がまとめた資料「汚染水対策の現況と2025年以降の見通しについて」によると、2020年から2021年の3年間の汚染水総発生量と、地下水・雨水等流入による汚染水発生量とその汚染水総発生量に対する割合は次のようになっています。

[特定原子力施設監視・評価検討会(第108回)資料3-4
https://www.nra.go.jp/data/000441946.pdf より作成]

この資料から地下水流入による汚染水発生量と雨水流入による汚染水発生量を正確に分けることは難しいと思いますが、いずれにしろ、地下水・雨水の流入を防ぐことが汚染水総発生量を削減する重要なファクターになりそうです。

昨日紹介した朝日新聞の記事 (https://www.asahi.com/articles/ASPB6740TPB6UGTB003.html) でも取り上げられている福島大学などの地質・地下水研究グループによる論文集や、そのポイントを優しく解説したブックレットによると、地下水流入による汚染水を削減する抜本的対策として以下のような提言がなされています。

中長期的な対策:「サブドレンの増強」
建屋近傍の井戸(サブドレン)から地下水を汲み上げ、建屋周辺の地下水位を下げ、建屋への地下水流入や護岸エリアへの地下水流出を抑制していますが、それをさらに増強し、とにかく地下水を建屋やデブリに知被けないようにします。

長期的な対策:その1「集水井」
地下水を1か所に集めて効率的に排水するために用いられる工法です。地滑り対策などにも用いられており実績があります。

長期的な対策:その2「広域遮水壁」
現在行われている凍土壁よりも広範囲に深い位置まで設置します。「地中連続壁工法」と呼ばれる地下ダムなどでも実績ある工法で、凍土壁よりも安く早く確実に設置できます。

東京電力には海洋放出は最後の最後の手段と考え、その前にできることは何でも早急にしてほしいと思います。政府はそのような指導をする立場であるべきだと思います。

論文集 (地団研専報61)「福島第一原子力発電所の地質・地下水問題」
福島第一原発地質・地下水問題団体研究グループ編著 地学団体研究会

地団研ブックレットシリーズ16「福島第一原発の汚染水はなぜふえつづけるのか – 地質・地下水からみた汚染水の発生と削減対策」
福島第一原発地質・地下水問題団体研究グループ著 地学団体研究会


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