自由な校風の元で自由を大切に思う気持ちは育てられた
私は埼玉県川越市にある県立高校を卒業しました。一時文化祭のウォーターボーイズが有名になりましたが、私が卒業したのはそれよりもだいぶ前のことです。
この高校には校則の代わりに、生徒が定めた「生徒憲章」と「生徒規約」というものがありました。私は生徒手帳に記された3条からなるシンプルな生徒憲章を時々見返しては、この生徒憲章が制定された背景や、生徒憲章で保証された自由の意味、そして自分で自分をコントロールする責任について考えていました。
生徒規約には、届出が必要な事項 (校内施設器具の破損・汚損・紛失等、物品の盗難・紛失・拾得、自宅周辺での法定伝染病患者の発生、自主的民主的活動のための学校施設の利用、掲示物・印刷物 – 但し内容については干渉されない)、火気を取り扱う場合の許可取得、学校または付近の火災の対処、週番、体育時の運動服着用等についての記述があります。
ほとんど生徒の活動を縛る校則が無いに等しいのですが、学校側が生徒憲章と生徒規約を承認するにあたって下記付帯条項が付けられました。
この記述も含めて、生徒手帳には生徒憲章と生徒規約が掲載され生徒全員に配布されていました。当時の先生はこの生徒憲章をしっかりと認識し、生徒の自主性を尊重してくれていたと思います。
それでも男子校ということもあり、見るに見かねた先生がたまに私たちにくぎを刺すこともありました。例えば、「高下駄で廊下を歩くと廊下が痛むからやめてくれ」とか「臭いから、汗だくの柔道着で授業を受けないでくれ」とか「体操服はロッカーに入れたままにしないで持ち帰って洗濯しろ」などです。
こんなに自由な校風でしたが、私が在学中には目に見えた政治活動などは校内では行われていなかったようでした。ほとんど荒れることもない静かな3年間だった気がします。
ただ一度、生徒会長選挙の折に、この生徒憲章に対して「この学校の生徒は自由を活かしきれていない。こんな生徒憲章は無意味だ」というような発言がある生徒会長候補者からあり、生徒会長選挙が大荒れになった記憶があります。生徒の自由を保証する生徒憲章を守ることに意義を感じている生徒が意外に多いことに驚きました。
私は高校に入るまで、付近では校則が厳しいことで有名な公立中学にいましたので、この自由な高校の校風に戸惑いましたが、この校風は私の人生のなかで、自由に対する考えを深める機会となり、重要な影響を与えてくれたと認識しています。