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「立法事実」の重要性。 – 人権を守ることにもっと慎重に、敏感になったほうが良いのではないか –

入管法改正が大きな議論になっています。この問題や立法事実について私自身把握しきれていない部分もありますし、法案の改正は外国人の人権にかかわる問題であるという点で非常に危惧もしています。

私たちは今回の出入国管理及び難民認定法 (入管法) 改正にあたり、日本の出入国管理および難民認定の問題点をどの程度正しく認識できているのでしょうか?そして正しく認識できる情報を提供されているのでしょうか?

今回内閣から国会に提出された入管法改正案については衆議院のホームページなどに法案の内容や経過が掲載されています。

また、以下の出入国在留管理庁ページにも国会に提出された法案が掲載されています。

https://www.moj.go.jp/isa/laws/bill/index.html

出入国在留管理庁とは出入国在留管理行政を遂行するために,法務省の外局として設けられた日本の行政機関です。

(出入国在留管理庁ホームページ)

https://www.moj.go.jp/isa/index.html

この出入国在留管理庁ホームページには入管法改正についての説明があります。
(出入国在留管理庁ホームページ 「入管法改正案について」)

https://www.moj.go.jp/isa/laws/bill/05_00007.html#midashi01

入管法改正の国会での議論が進むとこのページはアップデートされたり、消去されたりする可能性もあるので、2023年6月9日09:00 現在の情報をこの記事の最後に転載しておきます。

ここにまとめられているものが、今回の内閣が法改正の理由・根拠としている「立法事実」にあたるものと考えられます。

「立法事実」とは、法律を制定する場合の基礎を形成し、かつ、その合理性を支える社会的・経済的・政治的・科学的事実のことです。(参議院 「議員立法の立案プロセス」より。https://houseikyoku.sangiin.go.jp/seminar/seminar3.pdf)

今回の入管法改正案で私が最も注目するのはやはり難民申請した外国人の強制送還を可能にする規定です。改正案では送還忌避を防ぐため、3回目以降の申請では新たな資料を出さない限り強制送還の対象となることになります。

これは難民申請者の人権、場合によっては送還される人の命にもかかわる問題なので、このように法案を変えるためには、そのための非常に堅固な立法事実 (合理性を支える科学的事実) が必要だと考えます。

出入国在留管理庁 「入管法改正案について」に掲載されている「現行入管法の課題(入管法改正の必要性)」を見ると、送還忌避問題や収容を巡る諸問題などが今回の法改正の根拠として挙げられています。

私たちがこの「立法事実」を検証するとすれば、参考にできる資料としてはおそらく出入国在留管理庁が毎年1回出入国在留管理を取り巻く状況などをとりまとめている入管白書「出入国在留管理」ぐらいではないかと思います。

https://www.moj.go.jp/isa/policies/policies/seisaku_index2.html

この資料集を見ましたが、「どうしても法案改正が必要だ」という根拠を見出すのはなかなか難しいと感じます。

白書に掲載されているデータから送還忌避問題や収容を巡る諸問題などにフォーカスして強制送還も可能にするような立場でデータをみるのか、日本における難民認定の状況や諸外国との比較などにフォーカスして難民を保護する立場 (保護すべき人権の取りこぼしをできるだけ防ぐ立場) でデータをみるのかで私たちが受け取る印象は大きく変わってしまう可能性があります。

下記のDialogue for People (ダイアローグフォーピープル) の記事は人権擁護の立場でデータをどう見るか、出入国在留管理庁とは別の見方でデータをとらえている一例だと思います。

私たちは国際社会から信頼され、人権を大切にする民主国家であると認めてもらうためにも難民も含め日本に来る外国人の人権をどう守っていくか真剣に考える必要があると思います。どのような立場で入管法をとらえるか、政権や私たち自身の意識が問われているのだと思います。これ以上ないくらい人権にかかわる規定には慎重になってほしいです。

そしてもう1点。
科学技術に関わる人であれば当然意識することだと思いますが、技術者はデータの客観性・信頼性には非常に気を使います。データにバイアスがかかっていないかなどの検討も非常に重要です。そして信頼できると判断されたデータに基づいて議論する必要があります。

それが「立法事実」においても大前提であるはずです。今回、報道にもあるように、政府が法改正が必要な根拠として引用する「難民をほとんどみつけることができない」との発言をした柳瀬房子・難民審査参与員の年間審査件数が他の参与員に割り振られている数よりも非常に多いことがわかりました。

(東京新聞 2023年5月25日 21時50分)

「立法事実」の一部とされている発言内容に非常にバイアスがかかっている可能性が出てきています。

もしこれを法案根拠にとって大した問題ではないというのなら、「立法事実」などどうでも良いと言っているようなもので国民全体を愚弄することになります。立法事実に疑問があるまま法案を、特に人権に深くかかわる法案を通すことには反対です。私はこの法案の内容に賛成する立場の人であっても、このことをうやむやのまま法案採決を認めるべきではないと思います。

(参考)

(出入国在留管理庁 「入管法改正案について」 2023年06月09日午前9時 下記URLより)

https://www.moj.go.jp/isa/laws/bill/05_00007.html#midashi01


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