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「青焼き」で「青写真」は描けたか

子供の頃、家にはジアゾ式複写機、いわゆる「青焼き機」がありました。父親が家で仕事に使っていたものです。

今はほとんど見かけることはなくなりましたが、大学在学中も、研究室では地質調査用の大型地図のコピーから学生用のプリントや論文のコピーなど、いろいろな用途でよく使われていました。また、会社でも私が入社したての頃は大型図面の複写には業者に頼んで青焼きを作ってもらっていました。白黒のコピーよりずっと安かったのです。

トレーシングペーパーなどの透過性の高い紙に図面を描いたり手書きで原稿を書いたりしたものを、ジアゾ化合物が表面に塗られた感光紙に重ねて紫外線を当てると、文字や線の部分にジアゾ化合物が残り、その他の部分のジアゾ化合物は紫外線で分解され、この感光紙を現像液に浸すと、化学反応により文字や線が青色に浮かび上がってくるのです。

実際の機械は、紫外線を発する蛍光灯のような筒状の管とローラーの間を原稿と感光紙を重ねて通して感光させ、次に感光紙だけを別の2本のローラーの間を通すと、感光紙が現像液に浸されて少し湿って出てきます。そこには青い色の図面や文字が浮き出ているわけです。

子供の頃は、現像液のもととなる粉末の薬品と水を良く振って混ぜて、現像液をつくるのを手伝っていました。何となくアンモニア臭い、青焼き独特のにおいがしました。

小学校1年生の時の担任の先生は、学級通信を青焼きで作るため、たまにわざわざ私の家にまで青焼き機を借りに来ていました。やさしい先生が家に遊びに来てくれるようで、うれしかったことを覚えています。

「青焼き」とちょっと似た言葉に「青写真」があります。太陽光で印画できる青色に発色する写真のことだそうで、青焼き機が普及する前に使われていたそうです。こちらも機械図面や建築図面などの複写によく使われていたそうで、「設計図面」の意味で「青写真」という言葉も使われたりします。たとえば「人生の青写真」みたいな感じで使いますね。

大学、そして社会人と、青焼きでいろいろな図面をつくり、勉強や仕事をしてきました。そのようなことをしながら、考え、経験を積み、技術者としての将来の青写真を描いていたのかと言うと、そうでもなかったなというのが正直なところです。

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