見出し画像

正常性バイアスを乗り越える

自分にとって都合の悪いことは素直には認めたくないというのは多かれ少なかれ誰にでもあることだと思います。

海上油田や掘削現場に行く前の安全に関する研修でも、現場で何かしらの異常や不都合な事実を検知しても、人間の心理的特性として「これは今までの正常範囲の延長なのだ」と過小評価してしまう傾向があるということを学びます。これを「正常性バイアス」と呼んでいます。

正常性バイアスが働くと、認めたくない事実から目をそらしたり、自分にとって都合の悪い情報を無視したりすることもあります。

正常性バイアスは予期せぬ出来事や認めたくない事象から心を守る反応と考えられているようで、危険を知らせる情報でパニックになることを防ぐ効果がある半面、対処や避難の遅れにつながる場合もあり、より深刻な災害や事故につながる場合もあります。

私たちは現場で、「ニアミス・レポート」というものを毎日できるだけ提出するように求められています。日本では「ヒヤリハット活動」などとも呼ばれています。無理やりにでも身近な異常を探し出して報告するように求められます。

この活動の背景にはハインリッヒの法則というものがあります。ハインリッヒの法則とは、1 件の重大事故の背後には29 件の軽微な事故があり、さらにその背後には300 件の無傷事故(異常)があるというもので「1:29:300の法則」などとも呼ばれています。

「ニアミス・レポート」や「ヒヤリハット」の活動は、この300件の異常を意識的に見つけ、報告し、対処することで重大事故を未然に防ぐ目的もありますが、この活動は、異常を「異常」として認識するのを妨げてしまう正常性バイアスの発現を抑止するのにも役立ちそうです。

私たちは日々の暮らしの中で、異常を「異常」として認識できなくなっている可能性があると思います。それは正常性バイアスによるものかもしれませんし、「慣れ」によるものかもしれません。「ニアミス・レポート」活動のように、おかしいことはおかしいと意識的に、何度でも、自分自身や周りに伝える努力が必要なのかもしれません。

災害や事件や事故だけではなく、私たちは自分や家族をはじめ身近な人たちの暮らしを脅かすさまざまな社会の異常を「異常」として認識できるように努力する必要があるのではないかと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?