地球温暖化対策の国際的枠組み
地球温暖化の危機的状況が叫ばれ、「脱炭素」であるとか「カーボンニュートラル」であるとか、「ゼロカーボン」であるとか、様々なスローガンや目標が掲げられていますが、目標や施策は何を根拠に、どう設定されているのか今一つ分かりにくいところがあります。
そこで、いまさらながらではありますが、自分の頭の整理も兼ねて、少し調べ、まとめてみることにしました。
まずは国際的な枠組みを見ていきます。
[気候変動に関する国際的枠組み]
外務省のページでは以下の3つが気候変動に関する国際的枠組みとして取り上げられています。
(1) 国連気候変動枠組条約 (UNFCCC)
(2) 京都議定書 (2020年までの枠組み)
(3) パリ協定 (2020年以降の枠組み)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ch/page22_003283.html
(1) 国際気候変動枠組条約 (UNFCC)
1992年5月に採択され、1994年3月に発効しました。本条約に基づき、1995年から毎年、気候変動枠組条約締約国会議 (COP) が開催されています。昨年のCOP28はUAEで開催されました。今年は11月にアゼルバイジャン共和国・バクーで開催される予定です。
この条約の究極の目的として、「人類の活動によって気候システムに危険な影響がもたらされない水準で、大気中の温室効果ガス濃度の安定化を達成すること」が挙げられています。
先進国・途上国の取り扱いを分けています。先進国は二酸化炭素及び温室効果ガスの排出を1990年の水準に回帰させることを目指して、政策及び措置並びにその結果の予測に関する詳細な情報を提出し、定期的な審査を受けることとなっています。
(2) 京都議定書(2020年までの枠組み)
1997年12月の京都におけるCOP3で採択され、2005年2月に発効しました。
先進国に対して1990年比の削減目標を課しています。第一約束期間(2008~2012年)について先進国全体の平均年間排出量が基準年 (原則として1990年) の総排出量の95パーセント以下になるよう、各国の数値目標が決められました。日本は温室効果ガス排出量を基準年比で6%削減する義務を負っていました。
日本は国連の審査を経てこの目標達成が正式に認められています。しかし日本は第二約束期間 (2013~2020年)については「すべての国が参加する公平で実行性のある新たな国際枠組が必要」との観点から参加していません。途上国に対して削減を義務付けないことを不服としたのです。
(3) パリ協定 (2020年以降の枠組み)
2015年12月のパリにおけるCOP21で採択され、2016年11月に発効しました。先進国、途上国の区別なく、全ての国が温室効果ガス排出削減等の気候変動の取組に参加する枠組となりました。
長期目標として、産業革命以前と比較して気温上昇を2度 (努力目標1.5度) 以内に抑えることとしています。
現在日本はこの枠組みの中で、中期目標として2030年度に2013年度比で -46%、長期目標として2050年ネットゼロ (カーボンニュートラル達成) を掲げています。
[気候変動に関する政府間パネル (IPCC)]
ニュースの中で「気候変動に関する政府間パネル (IPCC)」という言葉をよく耳にします。これは1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画 (UNEP) によって設立された政府間組織です。
IPCCの主な目的は、気候変動に関する科学的な知見を提供し、各国政府が気候変動対策を立案する際の基礎情報を提供することです。
IPCCの報告書は、世界中の政策決定者から引用され、「気候変動枠組条約(UNFCCC)」をはじめとする国際交渉や、国内政策のための基礎情報となっています。たとえば、「第1次評価報告書(FAR)」は、1992年に採択されたUNFCCCにおける重要な科学的根拠とされています。
[資源エネルギー庁「気候変動対策を科学的に!「IPCC」ってどんな組織?」]
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/ipcc.html
これまでの国際的な動向を見ていると、先進国の責任と役割、途上国の台頭など国ごとの状況の変化にどう対応していくかなど、それぞれの国の事情、経済状態、思惑などを背景に、交渉や目標設定に苦労してきた側面があると思います。
しかし、これらの枠組みでコミットした目標を国内の政策に反映させていくことを考えた場合、これまで少数の大企業に独占されていたエネルギー産業の地域分散化や、新しい産業振興や技術開発の可能性、農業や他分野との協調など、私たちの暮らしを安全により豊かにしていく可能性も大いにあると思います。
既得権益を持つ、旧体制・旧産業構造に依存する企業や団体からの抵抗もあると思いますが、私たちはこの危機を乗り越えてさらに豊かになれるチャンスもあるような気がします。
今後はこれらの国際的枠組みの中で、日本国内の枠組みや。目標や、政策などがどのようになっているのか整理していきたいと思っています。
パリ協定では産業革命以前と比較して気温上昇を2度 (努力目標1.5度) 以内に抑えることを目標に掲げていますが、温度上昇は人間の排出する温室効果ガスだけではなく、自然現象も含めた複合的な反応の結果です。カーボンニュートラルが気温を下げることにどこまでつながるのかは今後のさらなる研究が必要になると思います。
ただし、カーボンニュートラルへの取り組み自体は、温室効果ガスの排出を削減するだけでなく、再生可能エネルギーの利用拡大やエネルギー効率の向上など、持続可能な社会の実現にも寄与するという点で大いに期待しています。