技術者倫理と公益確保
技術士法では3つの義務と2つの責務が定められています。
技術士法第四章では「技術士等の義務」として、以下のように定められています。
これから技術士試験を受ける人は、もちろんこの内容と意味をしっかり理解しておく必要があります。なかでも「公益確保の責務」については、技術士のみならず、すべての技術者が常に意識するべきことではないかと思います。
これは日本技術士会が公表している「技術士倫理綱領」の前文にも次のようにはっきり明記されています。
また、本文の最初の2点、「安全・健康・福利の優先」と「持続可能な社会の実現」は、良識ある技術者が考えるべきものとして、非常に示唆に富んだ内容だと思います。
私は、いろいろと悩みながら技術者としての仕事をしています。とくに公益確保と技術者倫理の問題は、私自身常に意識し続けなければいけないなと肝に銘じています。
昨日、私は、東京電力福島第一原子力発電所の事故をきっかけに、技術やシステム、廃棄物処理、安全管理、いざという時の住民避難などの側面から冷静に見直せば、本来であれば、原発は日本にそぐわないエネルギーだという結論がすぐに出せたはずだと書きました。
私が、いまだに福島第一原発の廃炉のめども、核のゴミ処理のめども、耐震も、住民避難も、ろくな進展もないまま、原発を推進することに異を唱えない技術者の倫理観について疑問を呈したのは、「科学技術に関する技術的専門知識と高等の応用能力及び豊富な実務経験を有し、公益を確保するため、高い技術者倫理を備えた優れた技術者」を国が認定するために始まった技術士制度に明記されている「公益確保」や「技術者倫理」から逸脱しているのではないかと思うからです。
原子力の平和利用のための基礎的な研究を続けることや日々安全操業のために努力を続ける個々の技術者や作業員の並々ならぬ努力は尊敬しますが、それと国民の安全や環境に対する影響をマネージしきれない状態のまま原発を推し進める政府や企業と、それに疑問も感じず、あるいは疑問を感じても見て見ぬふりをしたまま、さらには原発推進を後押しをすることとは大きな違いがあります。特に原発や原子力の研究・開発を行う技術者にはその責任の重さを技術者倫理に立ち返ってぜひ深く考えてほしいと思います。
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