発電再エネ化の意義とハードル
地球温暖化をもたらすと考えられる温室効果ガスには様々な種類がありますが、環境省が2024年4月12日に報道発表した「2022年度の我が国の温室効果ガス排出・吸収量について」によると、日本の温室効果ガス総排出量11億3,500万トン(CO2換算)のうち二酸化炭素排出量が91.3%を占め、そのうちの93% (温室効果ガス総排出量の84.9%)がエネルギー起源の二酸化炭素になっています。
このエネルギー起源の二酸化炭素排出量を、電力および熱の生産者側の排出として部門別に計上した値を見てみると以下の通りとなります。
石炭や石油などの一次エネルギーを電力などの二次エネルギーに転換するエネルギー転換部門の二酸化炭素排出量が40.5%に上ります。そのうち発電に伴う二酸化炭素の排出は約9割を占めています (環境省 「エネルギー転換部門における現在までの排出量及び関連データについて」https://www.env.go.jp/council/06earth/y060-16/mat_04_2.pdf)。
つまり発電による二酸化炭素排出量は日本の二酸化炭素総排出量の約34%を占めていることになります。日本においては発電起源の二酸化炭素の排出をいかに抑えるかがとても重要であることがわかります。
一方、下記の地質関連専門家の声明にあるように地質学に携わる立場からすると、日本国内における原発立地条件および高レベル放射性廃棄物地層処分候補地の観点から、日本で原子力発電を推進する非合理性は明らかです。
[経済産業省 第1回 特定放射性廃棄物小委員会 地層処分技術ワーキンググループ 参考資料3 「声明 世界最大級の変動帯の日本に、地層処分の適地はない(2023年10月30日公表 赤井純治氏、岡村聡氏、関根一昭氏ら呼びかけ)」]
以下の図のように各種電源別のライフサイクル二酸化炭素排出量をみると、当然のことながら、火力発電所が二酸化炭素排出量では群を抜いています。
今後いかに省エネに挑みつつ、再生可能エネルギー (太陽光、風力、地熱、水力、バイオマス) の割合を増やし、石炭、石油、LNGなどによる火力発電を減少させていくかが重要です。
発電に関しては、私たちは各電力会社の発電実績と今後の目標設定について注視し、各電力会社が火力から再生可能エネルギーへ積極的に転換していくように企業努力を促していく必要があると感じます。
特に私は、火力による発電量 (二酸化炭素排出量に直接関係するため) と、再生可能エネルギー (太陽光、風力、地熱、水力、バイオマス) の総発電量に占める割合 (各社の発電規模にかかわらず環境に配慮した発電をおこなっているかどうかの目安になる) が、各社の企業努力を評価する上で重要な指標になると考えています。
資源エネルギー庁は電力調査統計表を公表しています。最新の2023年度発電実績のエクセルファイルでは月ごとの実績のみが掲載されていて、2023年度のまとめが掲載されていないようでしたので、2022年度の実績をみると、
総発電量(単位:1,000kWh):834,745,584 (100.00%)
火力発電(単位:1,000kWh):666,415,725 (79.83%)
再エネ発電(単位:1,000kWh):144,157,680 (17.27%)
(水力、風力、太陽光、地熱、バイオマス、廃棄物)
このうち、火力発電量上位20社を見てみると、下図のようになります。
この図に表れている会社に限りませんが、今後いかに火力発電による発電量を減らし、再生可能エネルギーの割合を時代の要請に見合ったスピードで増やしていくか注視していく必要があると思います。
再生可能エネルギーの議論になると、下記のような「系統制約」問題が話題になります。
[資源エネルギー庁 2017-10-05 再エネの大量導入に向けて ~「系統制約」問題と対策]
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/saiene/keitouseiyaku.html
再生エネルギー側に制限を設けるのではなく、水力であれば揚水型水力のようにあまった電力で水をくみあげて位置エネルギーとして蓄えたり、水素など別の形でエネルギーを蓄えたり、効率的で安価な蓄電池の開発努力など、再エネ発電を阻害しないで電力供給を平準化、安定化させる技術の開発・導入が非常に重要だと思います。
バッファーとしての火力が必要であるとか、ベースロードとしての原子力が必要であるとか、既得権益組にいつまでもだらだらと言い訳させないように、技術開発の推進と定着を政府は本腰を入れて行う必要があると思います。
下記のように火力・原子力・送電網に既得権機を持つ大電力会社の企業献金を受ける政府与党にはなかなか難しい政策課題だと感じますが。
[しんぶん赤旗 2021年12月27日(月)]