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開発計画の最適化ということ

UAEで働いていた時、出向先の石油会社では油田開発計画の最適化を行うように株主からの要請を強く受けていました。

私たちは油田開発計画を立てるために、地下の油層の地質モデル、油層シミュレーションモデルを作って、どのように、何本の井戸を配置すればよいのか、どのような開発スキームで石油を生産すればよいのか、どのぐらいの規模の生産施設を作ればよいのかなど、スタディを行い、開発計画を立てます。

あらかじめ油田全体の開発計画を立てて、それに見合った井戸や施設をデザインすれば、つぎはぎだらけの施設増強や井戸の増掘などをしなくてもすみ、開発コストも安く抑えられると考えると、油田開発の計画の最適化を行ってほしいという要請もわからなくはありません。

しかし、忘れてならないのは、私たちの作る地質モデルや油層シミュレーションモデルは、自然現象の産物である油層を完璧に理解し再現できるものではないということです。

モデルには必ず不確実性が含まれています。

このモデルをいくらこねくり回して開発計画の最適化、つまり、このモデル上でもっとも効率よく石油が回収できる開発計画を最適化したとしても、それはあくまでもモデルに対して最適化したということで、実際の油田・油層に対して最適化したとは言い切れません。

モデルの中の油層性状の不均質性も、どこが生産性が良い場所で、どこに井戸を配置すればよいのかも、ある意味油層の中を見渡せる「神様の目を持って」開発計画を最適化しているようなところがあります。

油層性状に不均質性があり不確実性がある場合、実際に井戸を掘ってみたら期待したほど石油が出なかったり予想外の障害が発生したりする可能性もあるわけです。

だから、どのくらいの確率でこの程度の生産量が達成できるか、どのくらいの確率で期待したような井戸が掘れるのか、期待値を計算することになります。

実際には井戸を掘って新しいデータが得られれば、そのデータに基づいてモデルをアップデートして、開発計画もアップデートしていくのが現実的です。

自然を相手にする場合、そのような不確実性を考慮しながら、計画を軌道修正できるフレキシビリティーが大切だと思います。

初めからがちがちの開発計画を立てて、ぎりぎりの見込みで開発計画を立ててはどこかで必ず破綻してしまいます。モデルの不確実性を理解して、その時点でできる「最適化」の意味を正しく理解しておくことが大事だと思います。

これは石油開発に限ったことではありません。自然を相手にする仕事や経済活動全般について、自分でコントロールが出来ない要素が経済性やプロジェクトの成否を大きく左右する場合、不確実性を考慮に入れて、最悪の事態を避けるような計画を立てることが重要なのだと思います。どのように計画を更新していくかのプランも重要だと思います。

最適化の中身を理解し、何を目指すのか、どのようなリスクがありどう対処するのかなど関係者間でしっかり共有することが大切なのだとあらためて痛感しています。

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